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アイバンのラーメン

カテゴリー:社会

著者:アイバン・オーキン、 発行:リトルモア
 東京は世田谷に、アメリカ人によるラーメン屋があるそうです。京王線の芦花公園駅の近くです。今度、私も行ってみましょう。といっても、開店日にはかなりの行列が出来ているようなので、行っても食べられるか心配です。
 店主は、生粋のアメリカ人です。それも、コロラド大学を出て、シェフになったうえで、日本にやってきて自己流のラーメンを作り上げたというのです。すごいものです。伊丹十三監督の映画『タンポポ』を見て、ラーメンにあこがれたというのですから、大した根性です。
 店主の父親は知財専門の弁護士です。すごく成功しているそうです。
アイバンで出るラーメンが見事な写真で紹介されていますが、どれも、いかにも美味しそうです。ともかく、メンもスープもトッピングの卵も、すべてが手作りだというのです。しかも、感心したのは、仕入れが近所の商店街からなのです。いやあ、実にいいことですよね。共存共栄の精神をまさに実践しているのです。
サイドメニューとして焼きトマトがあり、豚飯があり、デザートのアイスクリームまであるのです。スープは豚骨スープではありません。塩ラーメンとしょうゆラーメンです。これも脂の多すぎるラーメンにしないようにしているからです。
毎日でも食べられるラーメンであるために、豚の脂は10cc未満しか入れていない。有名ラーメン店のラーメンは、基本的に一杯のラーメンに30~40ccの動物性の脂が含まれている。こんなに大量の脂が入っていると、身体に良くないし、毎日なんか、とても食べられない。
アイバンのラーメンは、さわやかな味だそうです。食べたあと、よい気持ちになるラーメン。これがコンセプトというのです。ここまで聞いたら、一度は食べずにいられません。でも、1日、120人の客しか入れない。営業時間も平日は夕方から夜のみ、土日は昼から夕方まで。そして、水と第四火は休み、というのです。席も10席しかありません。そのくせ、キッチンは広々としているというのですから、異例づくめです。
 メンはスープとよくからんでいる。メンをすすると、スープが口に入り、メンマも細長いので、同時に口に入る。一度に3つの味を楽しめる。さらにチャーシューと卵を合間に食べたら、すべての味がなじんで、ひとつのラーメンの味になる。一口ですべてが味わえるのが、アイバンのラーメンだ。
 いやあ、ぜひぜひ行って味わってみたいラーメンです。
(2008年12月刊。1600円+税)

スーパー弁護士の仕事力

カテゴリー:司法

著者 荘司 雅彦 ほか、 出版 日本実業出版社
 弁護士の書いた「仕事術」の本が、ビジネスマンから高い評価を得ているそうです。うひゃあ、そうなんですか。私も『法律事務所を10倍活性化する法』という小冊子(新書版)を出しましたが、マスコミの評判は得られませんでした(ううっ、ついつい涙ポロポロ……)。
 スーパー弁護士のカバンの中に何が入っているか、写真で明らかにされています。なんとアイポッドが2つも入っていました。私も泊まりがけの出張のときにはアイポッドを持参しています。夜、ベッドに入ってシャンソンを聴くためです。
 弁護士は、あらゆる場面で質問力を必要とする。ほしい情報を得るには、いかに適切な質問をするかが大切なのだ。
 時間は現代人にとって、もっとも希少な財だ。だから1分1秒を徹底的に有効活用することが必要である。交渉において、明確な勝者と敗者を生むことがその目的ではない。交渉相手の立場や主張、大義名分を十分に理解し、交渉の結果に対して相手もそれなりの満足度が得られることが大切なのだ。そのためには、交渉の場でかっとならず、あくまでも冷静に組み立てていくことが秘訣である。
 交渉の場で興奮すると、契約書に調印するときに興奮のあまり手が震えてしまうことがあります。これって、ちょっとみっともないんです。気取られないようにしていますが……。
 優秀な交渉人(ネゴシエーター)は、意思を表明する勇気を持ち、裏表のない正々堂々とした態度でいられる人。臨機応変に対応でき、明朗さと包容力がある人を言う。
 自分はすばらしいが、相手もすばらしい。自己も他者も肯定し、受容する。相互にOKの精神をもつ。交渉相手は敵ではなく、知人あるいは友人となる相手であることを忘れない。うむむ、これって、口で言うのは簡単ですが、実行は難しいんですよね。
 クレーム対応の初めての場では、ひたすら謝罪し、いいわけなどしない。出されたお茶には手をつけず、背筋をピンと伸ばし、相手の目を見て謝る。
 口頭でプレゼンするときには、はじめの10分間で全体を見渡せるようにする。
 準備書面では、裁判官が読みやすく、論点をそらさない。その最大の目的は、争点整理にある。よけいなことには触れず、必要最低限のことを押さえ、一番大事なことを厚く書く。
 書面はクオリティを犠牲にして、まずは速度優先で書く。とにかく書き上げて、それから推敲する。そして、最後に一度、声に出して読んでみる。
 なるほど、なるほどと感心することの多い本でした。
(2009年1月刊。1200円+税)

資本主義はなぜ自壊したのか

カテゴリー:社会

著者 中谷 巌、 出版 集英社 インターナショナル
 オビに、改造改革の急先鋒であった著者が記す「懺悔の書」とありますが、本文を読むとまさしくそのものずばり懺悔をしています。お金儲けばかりを優先して、人間を大切にしてこなかったことを反省するなかで、キューバやブータンに行って、人々の幸せとはいったい何なのかを考えたというのです。これが対比として、実によく分かるのです。私も、前にキューバもブータンも、その実情を描いた本をこの書評欄で紹介したことがあります。
 著者がグローバル資本主義は間違っていると大きな声で叫び始めたわけですが、これを今さら遅いと叱る向きもあるようです。私は決してそう思いません。過ちは、まだ何とか是正することが可能なのです。もっとも無責任なのは、懺悔も後悔もせずに、論戦の場からこそこそと逃げ出していくような輩(やから)ではありませんか?
 グローバル資本主義は、世界経済活性化の切り札であると同時に、世界経済の不安定化、所得や富の格差拡大、地球環境破壊など、人間社会にさまざまな「負の効果」をもたらす主犯人でもある。そして、グローバル資本が「自由」を獲得すればするほど、この傾向は助長される。
 「改革」は必要だが、その改革は人間を幸せにできなければ意味がない。人を「孤立」させる改革は改革の名に値しない。
 アメリカでは、スーパーリッチ層が輩出した反面、かつてのアメリカを支えていた豊かな中流階級の人々が「消え去った」。所得上位1%の富裕層の所得合計が、アメリカ全体の所得に占めるシェアは、8%から、なんと17%にまで急上昇した。
 ヨーロッパ諸国では、かなりの銀行に公的資金が投入され、事実上の国有化がすすんでいる。
 今回のバブル崩壊の結果、アメリカが主導してきたグローバル資本主義は大きな方向転換を迫られる。
 グローバル資本主義には3つの本質的な欠陥がある。その一は、世界金融経済の大きな不安定要素となること。その二は、格差拡大を生む「格差拡大機能」を内包し、その結果、健全な「中流階層の消失」という社会の二極化現象を生み出すこと。その三は、地球環境汚染を加速させ、グローバルな食品汚染の連鎖の遠因となっていること。
 いまや、グローバル資本主義はフランケンシュタインのモンスターさながら、その創造主である人類そのものを滅ぼしかねないほどに暴走してしまった。
 新自由主義思想は、一部の人々、はっきり言ってしまえばアメリカやヨーロッパのエリートたちにとって都合のいい思想であったから、これだけ力を持った。これは格差拡大を正当化する絶好の「ツール」になりうるものである。
 コーポレート・ガバナンス改革が進むにつれて、実際に起こったことは、実は未曾有の「高額報酬の常態化」であった。
 いやはや、これはひどいですね。私も、コーポレート・ガバナンスって、少しはましなものかと錯覚していました。とんだまちがいでした。いまの経営者に期待するのは幻想でしかないのですね。キャノンの御手洗をよく見ていれば分かることではありますが……。 
 自分のことしか考えず、日本人の多くの若者がどうなろうと知ったことじゃない。そのくせ、今の若者には倫理観が欠如しているから道徳教育が必要だというんですからね。笑止千万ですよ。プンプン。
 従来の資本主義とグローバル資本主義は、同じ「資本主義」という名を冠していても、そこには大きな質的な違いがある。グローバル資本主義においては、労働者と消費者が同一人物である必要はないからである。
 プレカリアートとは、プロレタリアートをもじった言葉で、不安定な立場に置かれた無産階級という意味。
 日本は、いまや貧困層の割合がアメリカに次ぐ世界第2位の「貧困大国」になっている。日本の「平等神話」は崩壊している。日本は、4世帯に1世帯が貧困に分類される国。貧困層に冷たい国になってしまった。
 シングル・マザー(ファーザーも)世帯の貧困率は60%に達している。日本が「希望なき貧困大国」から脱することがなにより優先されるべき政策課題だ。日本社会が安定することこそ、日本の底力を発揮するための前提条件である。
 大変すっきり読みやすい、告発の本でもありました。
(2009年2月刊。1700円+税)

ハダカデバネズミ

カテゴリー:生物

著者 吉田 重人・岡ノ谷一夫、 発行 岩波科学ライブラリー
 世の中には、まさしく珍妙としか言いようのない生き物がいるものです。女王とか兵隊というのは、アリとハチで知っていますからよく分かりますよね。ところが肉ぶとん係というのがいるっていうんです。いったい何のことかと不思議に思いますよね。
 ハダカデバネズミとは、文字通り体毛がなく、前歯が出っ張っていて、そしてネズミである。彼らは、東アフリカのケニアあたりの大草原の地下にトンネルを掘って集団で暮らしている。ネズミなのに、ハチやアリと同じように女王がいて、働きデバや兵隊デバがいる。女王はトンネルを定期的に巡回し、さぼっている個体を見つけると、どやしてまわる。どやされた個体は、服従のポーズをとり、反省の意を示す。
 ハダカデバネズミは、17種類もの鳴き声を持ち、状況に応じてこれらを使い分けている。 女王は王様に交尾を要求する鳴き声をもっている。これを聞いた王様は、女王にマウントして交尾しなければならない。ところが、王さまは交尾すればするほど、やせ衰えていく。
 なぜ体毛がないのか?地下トンネル内の、1年中30度前後に安定した環境のなかで暮らし、しかも、ノミやダニの温床となりうる毛皮を自ら捨てたのだ。
 哺乳類であるけれど、自分で体温調節が出来ない。いや、する必要がない。
 いま飼っている女王の推定年齢は37歳。その身体サイズから予測される寿命の10倍以上は長生きだ。
 デバたちは、80~300匹の群れで暮らす。繁殖に関わるのはメス一匹と、1~3匹のオスのみ。そして、役割分担のある社会で生活する。
 デバの女王は、生れながらの女王ではない。厳しい戦いを勝ち抜き、ようやく女王の座を得る。女王は、常に巣穴をパトロールして、ライバルたちを威嚇してまわる。そやって自分以外の繁殖能力を抑制している。
 女王の在任期間は20年以上に及ぶ。女王は群れの中で一番体が大きく、強くて、偉い。狭いトンネルですれ違うとき、他のデバは女王のために道を譲らないといけない。
 女王への反逆を決意した第二位メスは、最初に女王を襲うのではなく、まずは王様を歯にかける。
 兵隊デバは、トンネルにヘビが侵入してきたとき、闘うというより、まっさきにヘビに食べられてしまうのが仕事。
 ハダカデバネズミの役割は、成長にともなって変化する。生まれつき固定されたものではない。働きデバの一部は、女王に子が生まれると、床に寝そべって、ひたすら子どもたちのふとん係に徹する。もぞもぞ動きながら、子どもたちを保温する役目を果たす。肉ぶとん階級である。ただし、一生この仕事をしているのではない。
ハダカデバネズミの巣穴の全長は、最大3キロメートルにも及ぶ。食べるのは植物の根。ただし、飼育するときは、リンゴが一番の好物。うむむ、なんだか変ですね、これって……。
 大変飼育の難しいハダカデバネズミだということですが、上野動物園のほか、埼玉県こども動物自然公園そして千葉大学サイエンスプロムナードで見れるそうです。私も、この珍妙な生き物を実物で見たいと思いました。やっぱり学者って、すごいですよ。感心・感嘆・感謝です。
(2008年1月刊。1500円+税)

買物難民

カテゴリー:社会

著者:杉田 聡、 発行:大月書店
 還暦を迎え、膝が痛かったりする私にとっても、歩いて買い物に行ける商店街がなくなってしまうというのは他人事(ひとごと)ではありません。郊外型スーパーとコンビニばかりになってしまったら、老人は生きていくことができません。少なくともひとりで買い物をする楽しみが奪われてしまいます。
 日本の飲食料品小売店の数がピークだったのは1980年ころ。このとき73万軒の店があった。それから20年間で26万軒が減った。人口10万人未満の地域でもっとも大きな影響があった。
 2005年、65歳以上の老人の自動車免許取得率は28%ほど。女性では半分の14%にすぎない。75歳以上だと免許を持っている人は20%。
 高齢者がバスに乗ったとき、多くの中高年は無視し、むしろ若い人の方が席を譲る。「いまどきの若者は・・・」というより、むしろ「近頃の中年は・・・」と言わざるをえない。
 近年のアメリカでは、大型店、量販店が同じ屋根の下に集まっている「スーパーセンター」の人気が落ちている。その原因の一つは、店内が広すぎて買い物が大変なことにある。大きなスーパーで体を休める場所がなかったり、椅子が少なすぎたり、トイレが外にしかなかったりする。これでは老人は困る。かごもカートも大きすぎて負担がある。
 買い物に行けなくなって、食事をありあわせものでしのいでいるうちに、栄養失調になってしまった高齢者も少なくない。
 日本には2005年現在、4900万世帯がいて、そのうちひとり暮らし世帯は1446万世帯(29%)ある。世帯主が65歳以上だと1350万世帯(28.5%)。75歳以上だと550万世帯(35.5%)である。これから、単身世帯はもっと増えて4割近くになると予想されている。
 コンビニは高齢者にとって便利とは限らない。
 役所は町の中心地に存在し続けるべきだ。このように著者は提言しています。中心地の空洞化は避ける必要があるのです。
 老人を大切にしない社会は、同時に、昨今の「派遣切り」に見られるように若者も切り捨てる、「株主」のみを優先し、人間無視の冷たい社会になってしまいます。
 マイカーがあればいいということでは決してありません。昔は、市の中心部にデパートがあっても、その周辺にたくさんの商店があり、デパートと共存共栄していました。歩いて買い物ができないことになったとき、その人の人生はきわめて味気なくなることは必至でしょう。今のうちに抜本的な解決策をみんなで考え、少しずつでも実行に移す必要があるように思います。
 日曜日、久しぶりに庭仕事をしました。チューリップの芽があちこちでぐんぐん伸びています。クロッカスの黄色い可憐な花が咲いているのも見つけました。あっ、白梅がもう咲いている。そう思ってよく見たら、その上には紅梅がたくさんの赤い花を咲かせていました。隣の家では、あでやかなピンクの桃の花が満開です。
 庭のあちこちに水仙が花を咲かせています。黄水仙も一つだけ咲いて自己の存在をアピールします。枯れたライラックを根から掘り上げ、肥料になる生ゴミを一番下に敷いて新しく買ったライラックを植え付けました。
 庭仕事の最中、ときどきくしゃみが出ます。花粉症に悩まされる候となりました。春近しです。陽が伸びて、夕方6時まで庭に出ていました。
(2008年12月刊。1600円+税)

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