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ダチョウ力

カテゴリー:生物

著者 塚本 康浩、 出版 朝日新聞出版
 ええっ、ホントなの…!思わず、そう叫びたくなることばかり書かれた本です。これじゃあ、ダチョウって、まるで天才、人類の救世主じゃん…、と、つい思ってしまいました。
 身長は2.5メートル超。巨体から振り下ろすキック力のすごさ。時速60キロを超える駿足。年間100個も卵を産む高い生殖能力。60年も生きる生命力。すごーい……。
 鳥の中で世界一大きいのは、ダチョウだ。ところが、ダチョウの脳はネコなみに小さく、ネズミのように脳のしわがない。体重100キロを超す巨体でありながら、脳みそは300グラム。人間の脳の5分の1しかない。ええーっ。
 ダチョウは集団行動をする。群れをなして行動する。軍隊行進のように足並みをそろえて走り出す。しかし、ダチョウの群れにリーダーはいない。一羽が動き出すのも、危険を知らせて仲間を守るというような高尚なものではない。何も考えていない一羽が何かのきまぐれで走りだし、それにつられて周囲のダチョウも走り出すというだけ。それぞれのダチョウが勝手に動いて、勝手に群れが振り回されて、右往左往しているだけ。いやはや……。
 ダチョウのオスは、メスの前で求愛ダンスをする。くちばしが真っ赤になり、長い首をくねらせながら、羽を大きく広げて踊り出す。うむむ、ちょっと気味悪いかな……。
 ダチョウには声がない。だから、群れがあっても物静かな集団だ。
 ダチョウを飼うときには、主食はもやしを1日4キロ与える。オスはもやしとおからのみ。メスは卵を産むため、殻の原料になるかきがらを1.5キロ、おから、大豆のくず、ペレットを混ぜる。ダチョウの腸は直径10センチもあり、長さも2メートルと非常に長い。この腸管で消化吸収に40時間もかける。主食のもやしは水分と食物繊維がほとんど。ダチョウは食物繊維をムダなく消化している。ダチョウの糞に臭いが少ないのは、腸内環境がいいから。
 食中毒に対応させたダチョウ抗体を口から摂取すると、悪玉といわれる大腸菌などの腸内細菌を減らし、腸内環境を整える働きがある。
 ダチョウは、乾燥してホコリっぽいサバンナが原産だから、砂が目に入らないように、まつげがびっくりするほど長い。成鳥になると、警戒心が強く、何年付き合っても人になつかない。
 ダチョウは脱走しても単独行動が苦手なので、放っておくと習性で必ず仲間の元に戻る。逆に、追い詰めれば追い詰めるほど、警戒して凶暴になり、かえって危険だ。
 ダチョウの卵は、机の角にぶつけて割ることができない。殻は陶器のように硬くて分厚い。
 2005年に日本全国に1万羽のダチョウがいた。それが3年で5000羽に減った。ダチョウは飼育に大変だし、お金にならないから。ダチョウは、ビジネスとしてはまったく成り立たなかった。ダチョウは人間の女性は襲わない。中肉中背の男性をライバルと見て襲う。
 ダチョウは1個の卵から4グラムの抗体がとれる。ダチョウマスクに使うとしたら、卵1個から8万枚のマスクが作れるうえ、品質の均一性もある。
 ダチョウ抗体マスクは、新型インフルエンザを食い止めることが出来る。ダチョウ抗体マスクの表面に塗っておくと、ウィルスが侵入しようとして攻撃をしかけてきたとき、ウィルスの増殖に関わる突起部分に抗体がカギとカギ穴のようにパカッとはまり、マスクの内側にまで侵入してこようとするウィルスの動きを止めてしまう。
 ダチョウは簡単には死なない。ダチョウの傷の治り方は、並はずれて早い。ダチョウの傷の治りが早いのは、傷口の組織の細胞の歩き方が早く、傷口がふさがりやすいから。アトピー性皮膚炎、ひいてはガンの治療薬としても有望なようです。
 うへーっ、こんなお馬鹿なダチョウがこれほど人間の役に立つ動物だなんて、信じられませんね。
 それにしても命がけでダチョウ飼育に挑戦した学者と学生の皆さん、お疲れ様でした。ありがとうございます。
 
(2009年3月刊。1300円+税)

タカの巣とり

カテゴリー:生物

著者 猪崎 隆、 出版 鉱脈社
 楽しく読める童話のような話の本です。山里育ちではない私でも、なんだか身近なものとして想像できる少年時代のなつかしい話でした。
 いまでは、宮崎でも、このような山里の体験をしている少年は少ないのではありませんか。実にうらやましい少年時代の思い出です。ですから、サブタイトルに「我が生涯の最良の日々」とあるのも、素直に、そうだろうなとうなずけます。
 というのも、あのサシバをヒナを巣から獲って育てて、野に戻したという貴重な経験が淡々と語られているからです。すごいですよね。おかしなことに、タカと間違ってフクロウの子を巣から奪って育てようとした話も紹介されています。
 そうはいっても、成鳥にまで育てる苦労は大変なものですね。毎朝、早くから田んぼなどに出て、カエルだけでなく、カナヘビまでとってきて、餌として与えるのです。
 私も、子どものころはザリガニ釣りに夢中でした。ですから、カエルを捕まえると、片足を持って地面に思い切りたたきつけ、両手でカエルの両足を引き裂き、ザリガニ釣りのエサにすることに何の抵抗もありませんでした。今は、とてもそんなことはできません。子どもって、本当に残酷です。
 タカ(サシバ)の子を巣から奪うにしても、あまりに早すぎると、人間の手で育てるのは難しい。卵の様子を見て、いつごろにヒナがかえるか判断する。これもすごいですね。
 卵の汚れ具合で、だいたいの産卵時期を予想できる。産みたての卵は真っ白だ。日が経つにつれて茶色っぽくよごれていく。それで、ヒナがかえる日を想定する。なーるほど、ですね。そして、ヒナがかえっても、すぐには奪ってはいけないのです。
 カラスは、人の目につく場所でも大木なら巣をつくる。しかし、サシバは木の大きさよりも、まず場所を選ぶ。人の近寄らない、見晴らしのよくきく山腹の急斜面を選ぶ。
 サシバの喉には、子どもがいたずら書きでもしたような、一本の黒いタテの線があり、こっけいな感がする。この千から、サシバの名前がついた。
 そして、サシバを育て上げ、ついに野に放すまでの日々が描かれています。
 著者は、よき父と母をもったものだと感心しながら読みました。
 我が家の庭にも小鳥たちはやってきますが、さすがにタカは来ません。私と同世代の著者の少年時代を描いた、いい本でした。
 
(2009年5月刊。1000円+税)

法律相談のための中国語ノート

カテゴリー:司法

著者 宇都宮 英人、 出版 林田印刷
 これはすごい。心底、そう思いました。著者は私と同世代、福岡市内で活躍しているベテラン弁護士です。京大空手部で主将をつとめていた猛者だなんてとても信じられない優男(やさおとこ)です。でも、今でも日の里団地で子どもたちを中心とした空手サークルを主宰しているのです。いつぞや、結婚式で空手の型を演じてくれましたが、さすがに見事に決まっていました。身体がぶれないのです。
 そんな著者は、これまた見かけによらない語学の天才なのです。以前、一緒に中国領事館を訪問したことがありますが、そのとき中国語を苦もなく話をしているのを、私など呆気にとられて眺めていました。
 その著者が、今度は中国人が日本で法律相談をするとき、どんなことを訊いてくるのか、それにどう回答したらいいのか、例文をあげて中国語表現を併記した本を作ったのです。まことに実践的な本です。たとえば次のような例文が紹介されています。
 Q,離婚したら在留資格はどうなりますか。日本にそのまま住み続けることができますか。
 A,離婚したら、配偶者という在留資格を失います。ですが、子の親権を取得して一緒に生活していたら、定住者の在留資格を取得できます。
 A,中国人の夫婦であっても、日本の裁判所に離婚訴訟を起こすことができます。ただし、裁判所は、離婚の成立や効果について、中国の法律によって判断を下します。
 著者は、弁護士活動の中の得意分野の一つとして、高齢者・障がい者問題も扱っていますので、その分野の問答もあります。
 たとえば、「合理的配慮をしないことも差別である」という文章は、実は、中国語表現では、「合理的な便利さの提供を拒絶する」となるといいます。これは視点の違いから来ているのではないかと著者は指摘しています。なるほど、と改めて感心してしまいました。
 私も、外国人と結婚した夫婦の破綻後の子どもの親権などをめぐる相談を受けることがあります。この本は、それが中国人だったらどのように言ったらよいのか、分かりやすい例文と中国語が併記されていますので、すぐに使える実践的な手引書です。
 福岡を拠点として、中国語の同時通訳者として活躍中の張愛氏が監修していますので、一段と安心して使える本になっています。ぜひ、みなさん手にとって見てください。なお、この本は、単行本としては著者の3冊目となります。
 
(2009年6月刊。1260円+税)

罪祭

カテゴリー:日本史(戦後)

著者 山下 郁夫、 出版 創思社出版
 戦争中、大牟田にフィリピンでバターン死の行進をさせられたアメリカ兵捕虜を収容していた俘虜収容所があり、そこで捕虜を虐待したことを理由として極東軍事裁判で4人もの死刑判決が出て、巣鴨プリズンで実際に絞首刑が執行されていたことを伝える本です。
 私がある小集会でうろ覚えの話をしたところ、その場で私の話を聞いていた依頼者の一人からこの本を提供していただきました。実は、この俘虜収容所は、私が小学1年生のころまで住んでいた自宅の近くにあったのです。もちろん、今では跡形もありません。そもそも捕虜を駆使していた三池炭鉱自体もないのです。
 昭和18年8月から昭和20年9月まで、大牟田市新港町に福岡俘虜収容所第17分所があった。その初代所長が五島出身の由利敬少尉だった。ここに、バターン死の行進の生き残り捕虜505人を三池炭鉱で働かせるために連れてきた。この収容所は、最盛時には2000人もの捕虜がいて、敷地面積は1万1000坪あった。
 2代目の福原所長も絞首刑となった。その訴因は、捕虜に対する殴打だった。
 由利所長の死刑判決の理由は、逃亡常習癖のある捕虜を裁判にかけることもなく、部下に命じて背中から刺殺させたこと、盗癖のおさまらない捕虜を独房で死亡(餓死)させたことである。
アメリカ軍GHQは、横浜において軍事法廷を昭和20年12月から開始した。その第1号死刑判決が由利所長であった。また、衛兵だった軍属2人(33歳と40歳)も死刑になり、そのほか、福岡の俘虜収容所長(菅沢大佐)も死刑となった。
 由利所長の裁判は、翌21年1月7日に判決言い渡しで終わった。3対2で有罪、絞首刑が宣告された。そして4ヶ月後の4月26日に処刑された。戦犯として絞首刑となった第1号が由利初代所長で、第2号は福原2代目所長であった。
 戦前の日本に起きた捕虜虐待、そして戦犯としての日本人処刑という悲しい話を忘れるわけにはいきません。
(1983年7月刊。1800円+税)

宇宙開発戦争

カテゴリー:アメリカ

著者 ヘレン・カルディコット、 出版 作品社
 宇宙を武装すると、世界はより安全になるか?宇宙に兵器を配備する必要があるか?その答えは、宇宙に兵器を配備すれば、世界は今よりはるかに危険になる。宇宙兵器を持つと、さらに危険な状態に陥ってしまう、ということである。なぜなら、宇宙を武装すれば、間違いなく宇宙での軍拡競争が始まり、恐ろしい戦争が勃発しかねない。こんな危険なスターウォーズを防ぐには、今すぐに声をあげなければならない。
 ミサイル防衛というのは、実効性のあるシステムは不可能である。ところが、はっきりしていることは、相互抑制システムを維持するコストだけは、どんどんつり上がっているということ。アメリカは、およそ1500億ドルを投入して、ミサイル防衛システムを開発してきたが、実のところ、大陸間弾道ミサイルに対しては、まったく無力だった。おとりの一群に囲まれた核弾頭を打ち落とすことはできない。つまり、実戦で確実に考えられる状況には対応できないのである。
 アメリカがミサイル防衛計画にかけている年間費用は、104億ドルから2倍になりかねず、2007年度で最大の単独計画になっている。この費用は、2013年までに190億ドル、2006年度から2024年までを合わせると、合計2470億ドルにまで膨れ上がりかねない。
 ペンタゴンが曖昧にしておきたがっているのは、ミサイル防衛システムの主な能力が完全に機能しても、ほとんど効果はなさそうだということ。日本政府も、それを知っておきながら、計画をすすめているのです。
 北朝鮮のミサイル実験を問題にしているアメリカは、インドが2006年7月に行ったミサイル実験については一切抗議しなかった。うひゃあ、これっておかしいですよね。
 通信衛星にかかる費用は、海底ケーブルよりもかなり安く、海底ケーブルが1億7500万ドルかかるのに、8000万ドルですむ。
 GPS衛星は、1978年に初めて打ち上げられたが、全面的にシステムが稼働したのは1995年のこと。GPSは、現在、28基の衛星を利用していて、それぞれの衛星は12時間ごとに地球を周回している。GPSの年間維持費用は、4億ドルである。
 アメリカは今、4000億ドルの年間赤字と膨大な貿易不均衡を抱え、貧困層などへの福祉の切り捨てをすすめている。そのときに、こんなとてつもない費用を実働性の保障されていないミサイル防衛計画に投資するのは、国民の価値基準を根本から明らかにするだろう。
地上と違って平和と思っていた宇宙が、実は熾烈な開発競争のターゲットになっていることを知り、驚きました。
 
(2009年4月刊。2400円+税)

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