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象虫

カテゴリー:生物

著者 小檜山 賢二、 出版 出版芸術社
 コクゾウムシ。幼いころはコクンゾムシと呼んでいました。米びつにわく小さな虫です。つまんで外に捨てていました。今は昔の話です。
 ゾウムシは、このコクゾウムシの一つです。すごい写真集です。圧倒されます。体長3~6ミリの小さなゾウムシなのですが、それをくっきり鮮明なまま、超拡大写真で見せてくれます。怪獣です。それも、想像を絶する怪獣たちのオンパレードです。ヘンテコリンな顔や形。鼻も目も不気味な形をしています。色は怪しげに光り輝いています。
ゾウムシは世界に6万種いる。恐らく20万種はいるだろう。日本では1300種が確認されている。日本の蝶が200種なのに比べて、いかにゾウムシの種類が多いか分かる。ゾウムシは生物界でもっとも種数の多いグループなのである。
 ゾウムシは1億年1上の年月にわたって命をつないで進化してきた、進化のトップランナーである。ゾウムシのキーワードは、多様性。色、形、大きさ、ともに多様性に富んでいる。ゾウムシは高度に進化した昆虫なのである。
 この写真集を見れば、まさしくそのことが実感としてよく分かります。
長い鼻を持っているように見えるが、実は鼻ではなく、口。口吻(こうふん)という。
 ゾウムシの仲間は飛ぶことが苦手だ。飛ぶことをあきらめて、身体を鎧で固めたのが、カタゾウムシである。
 大部分のゾウムシは、死んだふりをして敵をやり過ごそうとする。
 擬死は、あくまで死んだふりである。地上に落ち、やがて動き出して逃走する。
 まず、カブトムシとかクワガタムシを想像して下さい。そして、派手な色をその体にペインティングします。さらに鼻(口吻)を長く伸ばします。眼はトンボやハエのような複眼です。背中はカミキリムシのようなスッキリしたものもあれば、毛がふさふさ生えているものもあります。その部分を拡大した写真があります。色つき真珠を背中にちりばめたような情景です。
 いやあ、この世にはこんな生きものが無数にうごめいているのですよね。生命の神秘をひしひしと実感させてくれる、素晴らしい写真集です。
(2009年7月刊。2500円+税)
 玄関脇に赤いチューリップが10本咲いています。一番遅いグループです。夜帰ったときは静かに迎えてくれますし、朝出かける時には元気ハツラツで行ってらっしゃいと見送ってくれます。奥の方には黒いチューリップも咲いています。真っ黒ではありませんが、かなり黒っぽいのです。アレクサンドルの小説「黒いチューリップ」を思い出します。
 昔、オランダというかヨーロッパでチューリップの球根が投機の対象となったことがありました。
 アイリスがたくさん咲いています。甘い芳香を漂わせるフリージアのほか、イキシアやシラーも咲いています。春の花園に入ると、身も心も軽く、浮かれてしまいそうです。

日本でいちばん大切にしたい会社2

カテゴリー:社会

著者:坂本光司、出版社:あさ出版
 鳩山首相が国会の所信表明演説で引用・紹介したこともあって、大変人気を呼んでいる本の第2弾です。
 トヨタやキャノンのような、労働者を人間(ひと)と思わず使い捨てにすることしか考えない経営者にこそ、ぜひ読んでもらいたい本だと思いました。
 この本の良いところ、読んで感動を呼び起こすところは、日本はアメリカのように株主優先であってはいけない、社員とその家族、今と将来のお客さん、そして地域住民とりわけ障がい者や高齢者を大切にするのが本当の企業経営だと実例をあげて力説しているところです。
 株主(出資者)の幸福・満足は結果としてもたらされるものであって、追及する必要はないものなのだ。本当にそうですよね。株主へ高配当しようとして短期の業績を追い求めると、ろくなことは起きません。
 もうかっていない会社は、例外なく本社機能が大きい。総務・人事・経理の社員が多すぎる。本社の社員は、社員が多すぎると思わせないように、「管理」という仕事を考え出す。管理しようと、本社がいろいろと口出しをしたり、手を出しすぎたりすると、現場の思考能力が停止する。すると、社員は自発的にものを考えなくなり、モチベーションが下がって、結果としてもうからなくなる。
 二流、三流の会社は本社が大きく、一流の会社は本社が小さい。本社が小さいと、よけいな口出しができなくなるため、自然に分権がすすむ。何より、本社部分のコストが下がり、低コスト経営ができる。
 ホウ(報)レン(連絡)ソウ(相談)をもてはやす企業は多いけれど、ホウレンソウを禁止し、なにより自分の頭で考えろという会社がある。
 うへーっ、ホウレンソウというのは経営向上マニュアルのなかでも必須のものだと思っていましたが、企業によっては禁止しているところもあるのですね。
 たしかに、社員一人ひとりが自分の頭で意欲的に考えたほうが企業の業績を上げ、その長続きに貢献する結果を生み出すだろうことは大いに賛同できます。
 第3弾にも、大いに期待したい本です。
(2010年2月刊。1400円+税)

負けない議論術

カテゴリー:司法

著者 大橋 弘昌、 出版 ダイヤモンド社
 アメリカ(ニューヨーク州)の弁護士が、アメリカで鍛えた議論術を紹介しています。
 アメリカと日本はまるで違うかと思うと、そうでもなく、意外なことに似たところ、共通するところが多いようです。
 相手を説得したいときは、自分と相手の共通点を探してみる。出身地、学校、職業、家族構成、趣味など、何かひとつくらいは共通点があるはず。相手にその共通点を示し、同類の人だと思われるように議論を進める。そうすると、相手は賛同しやすくなる。
 自分の誇らしい話をしたいときには、自分の失敗談や弱点をまじえて話すのが良い。
 大きな目的を達成するためには、小さなことには目をつぶることも必要。すべてが自分の思い通りに動くとは考えないことである。
 陪審員のいる法廷では、法律理論をふりかざしたからといって裁判に勝てるわけではない。むしろ優れた弁護士は、クライアントを有利に導く証拠をストーリー仕立てにして、陪審員の心の中に植え付けていく。陪審員の心に染みいる話を聞かせるのだ。
 人間の判断は感情によって大きく左右される。合理的かつ論理的に判断しなくてはいけないときでも、実は感情にしたがって判断している。感情に訴えることは、議論に負けないための大きな力となる。
 アメリカには、ルール・オブ・スリーという言葉がある。物事を説明するときに三つの要素で構成すると説得力が増し、受け手に覚えられやすくなり、スムーズに受け入れられる。
 私は、いつも「2つあります」といって、指を2本たてて、「一つは……」、「もう一つは……」と話すようにしています。そして、これをたいてい2回は繰り返します。このとき、相手の顔つき、表情を見て、本当に分かってもらえたか、測りながら話をすすめるのです。
日本の弁護士にとっても、大変役に立つことが、たくさん書かれている本でした。
 
(2009年11月刊。1429円+税)

江戸府内・絵本風俗往来

カテゴリー:日本史(江戸)

著者 菊池貴一郎、 出版 青蛙房
江戸時代の人々の生活をビジュアルに知ることのできる貴重な本です。
明治38年に出版された和本を昭和40年に復刻したものを、2003年5月に新装版として刊行されました。こういう企画の本は貴重ですね。これも大いに期待します。
 明治38年本は、古書店で2万円ほどするそうですが、この本は4300円です。  
 江戸時代の人々の生活というと、士農工商、切り捨て御免、男尊女卑、大飢饉、身売り、一揆など、否定的かつ暗黒のイメージばかりが強いのですが、実は案外、町民たちはおおらかに生きていたという実態があったようです。
 それは、この本に描かれている絵をみると、よくわかります。
 この本を読んで、私が一番驚いたのは、私の趣味と一致するからかもしれませんが、江戸市中で、植木や花売りがとても多かったということです。虫かごに入れたキリギリス売りも歩いていました。朝顔売りは、毎朝、未明のころから売り歩き、昼前には売り切っていた。
牡丹は珍しく、牡丹屋敷と呼ばれるところがあった。かきつばた(杜若)は、名所が江戸のいくつかにあった。
ホタルの名所もある。町には、金魚売も通ります。
子供たちは学校(寺子屋)で勉強し、別の町内の子たちと勇ましくケンカもしていました。
4月になると、行商の魚屋は初ガツオを売ります。江戸の人たちは厚切りのさしみで食べるのを好んでいたようです。現代人と同じです。
夏には花火も楽しみ、春の花見など、江戸の人々が四季折々の風流を味わっていたことがよく分かります。
江戸時代に人々がどんな生活を送っていたのか、具体的ん飽イメージを掴むためには、この本のように目で見てみるのも不可欠だと思います。
(2003年5月刊、4300円+税)

民主主義がアフリカ経済を殺す

カテゴリー:アフリカ

著者 ポール・コリアー、 出版 日経BP社
 アフリカの現実は今もってなかなか厳しいようです。どうして光明が見えてこないのか、不思議でなりません。一刻も早く、南アメリカのような大きなうなりのなかで、人々の安定した生活が平和のうちに確立されることを願います。
 この本は、アメリカの国々のかかえる現実を冷静に分析し、その対処法について考えています。
 1945年以降、全世界で成功したクーデターは、357件。その陰には、多くのクーデター未遂がある。アフリカでは、成功したクーデターは826件。未遂は109件。未然防止が145件もあった。アフリカでは一つの国で7件の「外科手術」が試みられたことになる。
 民主主義は貧しくない社会では安全を強化するが、貧しい社会をいっそう危険に陥れる。その分かれ目は、一人当たり年2700ドル、1日7ドルの所得ラインだ。最底辺の10億人の住む国の所得は、すべてこれを下回っている。民主主義は、これらの国では暴力の危険性を高める。
 これらの国では、有権者は自分たちの目の前にある選択肢について、ほとんど情報を持っていない。得られる情報が杜撰なうえ、有権者は民族的アイデンティティーによって支持するかどうかを決める。有権者は、民族的忠誠の殻に閉じこもり、候補者がたとえ犯罪者でも支持する。このとき、犯罪者だけが腐敗という機会を活用する。
 シエラレオネは安定している。これは、常駐するイギリス軍兵士はわずか80人にすぎないが、何か問題が発生したらイギリス本土から一夜にして部隊が飛来するという10年協定が結ばれていることによる。
 国際的な援助のうち11%が軍事費に流れている。そして、軍事費は暴力の抑止力になっていない。むしろ、紛争後の政府による高額の軍事費は逆に暴力を誘発している。
 正規軍が使用するために購入された銃が、反政府勢力に流れている。
 政府軍の兵士の給料が低いので、兵士たちは武器庫から盗んで売ろうとする。安価に手に入る銃が内戦リスクを高めている。
 最底辺の10億人の国々の全体の軍事費は、合計90億ドルだが、そのうち最高40%が援助金によって賄われている。そして、越境が容易な地域では、一国の政府が購入した大量の銃が徐々に近隣諸国の闇市場に漏出している。闇市場で取引される安価な銃が内戦リスクを高めている。紛争後の国はたいてい軍事費大国になるか、軍は逆効果をもたらしており、抑止力になるどころか、まさにリスクを誘発している。軍事費は過剰であるばかりか、援助費がそれを支えている。
 若い男性は非常に危険だ。全人口に対する若い男性の割合が倍増すると、内戦リスクは5年間で5%から20%まで増える。ただし、エリトリア人民解放戦線の3分の1は女性だった。
 最底辺の10億人の国々の大半では、公共監視システムはその最上階から解体されている。その結果である巨大な腐敗は、公的資金を浪費したばかりか、政治的詐欺師たちに力を与えた。こうした国では、横領によって資金を調達する利権政治が権力維持の標準的な手法だった。
 いやはや、アフリカの再生にはまだまだかなりの時間を必要としているようです。残念です。暴力によらない再生を目指す人々の集団がうまれ、その集団がうねりを起こしていってほしいものです。
 
(2010年3月刊。2200円+税)

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