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ランドラッシュ

カテゴリー:社会

著者 NHK食料危機取材班、  出版 新潮社 
 
 世界的に優良農地の争奪戦がすすんでいるのですね・・・・。知りませんでした。それを知ったら、ますます日本の減反政策なんてとんでもないことだと思いました。
ウクライナに進出したイギリスのランドコム社は世界的な穀物価格の高騰を追い風に莫大な利益をあげ、農業ビジネスの成功例として注目を浴びた。この会社は、イギリス陸軍から900人近い兵士を雇って、ウクライナに連れてきた。現場には、軍人あがりの外国人経営者と、自動小銃で武装した傭兵と、まるで犯罪者のような扱いを受けて働く地元農民の姿が目につく。このイギリスの会社は既にウクライナに12万ヘクタール、これは東京都の半分にあたる土地を確保し、さらに拡大しつつある。
ウクライナでは、日本人の農家も挑戦している。青森県の人(58歳)だ。いやあ、すごいですね。単身ウクライナに乗り込み、大豆の大規模栽培に挑んでいるのです。偉いですね。でも、なかなか報われないようです。
なぜ、海外の農地を囲い込むのか。それは穀物市場システムへの信頼が崩壊してしまったから。輸入に頼っていた国々では、食糧危機が起きたときに備えて、自分たちで食料を確保しようと、おのおのが海外農地の獲得に乗り出した。これが「ランドラッシュ」だ。
世界中に広がるランドラッシュに拍車をかけているのが、将来予想される食料不足である。インド政府も海外での農地獲得を後押している。なぜか?インドは国内に広い農地をもち、食料をほぼ100%自給している。そのインドは、これから「水」の問題をかかえる。だから・・・・。それじゃあ、日本はどうしたらいいのか、考えさせられます。まずは、国内農業の保護と育成でしょう。じいちゃん・ばあちゃん農業を保護しなかったら大変なことになりますよ。切って捨ててはいけません。
ウラジオストックを含むロシア沿海地方にニュージーランドの実業家が進出している。そして、韓国の現代重工業も・・・・。初めての海外農地経営である。なぜ、韓国の企業が海外で農地経営に乗り出そうというのか。それは、韓国内の農業が死に瀕しているためだ。韓国の穀物自給率は27%。しかし、コメを除くと、実は95%を海外に依存している。そして、韓国内で農地を広げることは出来ないから、海外に農地を確保するしかない。
インドの企業がエチオピアで31万ヘクタールもの農地を獲得している。これは東京都の1.5倍の面積だ。エチオピアでは外国企業が大規模に食料を生産しているにもかかわらず、エチオピア自体は慢性的な食料不足に苦しんでいる。エチオピアには、これまでインドをはじめ5カ国が農地を確保するために進出している。これから、九州の面積の4分の3に匹敵する300万ヘクタールの土地に外国企業を受け入れる計画がある。
現在、世界は常に、北(先進国)では食料過剰、南(途上国)では食料不足の状態にある。食料は公平に分配されているわけではない。そして、そこで大きな利益を得ているのは、巨大アグリビジネスだ。肥料や農薬をつくり、農化学産業として知られるモンサント社やシンジェンタ社、穀物メジャーと呼ばれるカーギル社やADM社などがもうかっている。
こんな状況でTPP「開国」なんて、日本農業そして日本人に立ち直れないほどの大打撃を与えるだけだと思います。その問題点が十分に議論されないまま、TPPは当然だというマスコミの論調が強まっているのに、私はかつての郵政民営化のときと同じような危っかしさを感じます。いまや郵便の公共性を誰も言わなくなり、営利追求一本槍になってしまっているのではありませんか。果たすべき公共的役割を軽視してはいけません。郵便局をコンビニに置きかえても農山村に住む人々の利便と幸福の追求にはつながらないのです。
(2010年10月刊。1500円+税)
月曜日、東京に雪が降りました。重たいボタン雪でしたから積もるはずはありません。私が大学生だった40年前にも東京で3月に大雪が降りましたが、そのときは入試に影響が出るほど積もりました。
春の前には、春一番をふくめて気候が不安定になるようです。白梅が満開です。黄水仙が庭のあちこちに咲き、チューリップの咲くのも、もう間もなくとなりました。
花粉症さえなければ春は本当にいいのですが・・・。

冤罪をつくる検察、それを支える裁判所

カテゴリー:司法

著者  里見 繁 、  出版 インパクト出版社
 冤罪をつくり出した裁判官たちが実名をあげて厳しく批判されています。裁判官は弁明せず、という法格言がありますが、なるほど明らかに誤った判決を下した裁判官については、民事上の賠償責任を争うかどうかは別として、それなりの責任追及がなされて然るべきだと思いました。裁判官だって聖域ではない。間違えば厳しく糾弾され、ときには一般市民から弾劾もされるというのは必要なことなのでしょうね。
 著者は民間放送のテレビ報道記者を長くしていて、今では大学教授です。本書では9件の冤罪事件が取り上げられていますが、うち1件を除いて季刊雑誌『冤罪ファイル』で連載されていたものです。
 この9件の冤罪事件を通じて、冤罪は偶発的なミスとか裁判官や検察官の個人的な資質から生まれるのではなく、日本の司法制度そのものに冤罪を生みやすい土壌、もっと言えば構造的な欠陥があり、それがこれほど多くの冤罪を生み出す契機になっていると考えざるを得ない。
裁判官がミスを犯す大きな理由の一つは忙しすぎること。また、厳しい管理体制の中におかれ、出世競争の厳しさは検事の世界以上だ。出世の決め手となる成績は、一にも二にも事件の処理件数ではかられる。どんなに分厚い裁判記録も裁判官にとっては、たまった仕事の一つにすぎない。
 能力主義が能率主義にすり替わり、それが昇進に直結している。独立しているはずの裁判官が厳しい出世競争の中でサラリーマン化してしまい、倫理も正義もかえりみるひまがない。
 日本のマスコミでタブーとなっているのは三つある。天皇制、部落問題そして裁判所。あらゆる職業のなかで、裁判官だけはマスコミが自由に取材することのできない唯一の集団である。
 高橋省吾、田村眞、中島真一郎の3人の裁判官は、結局、医学鑑定書を理解することができなかった。長井秀典裁判長、伊藤寛樹裁判官、山口哲也裁判官は本当に刑事裁判の基本を理解しているのか、と批判されている。
 山室恵裁判官は痴漢冤罪事件で懲役1年6ヶ月の実刑判決を言い渡した。
このように実名をあげての批判ですから、名指しされた裁判官たちも反論ができればしてほしいものだと読みながら思ったことでした。でもこれって、やっぱり難しいというか、不可能なことなのでしょうね。今、それに代わるものとして裁判官評価システムがあります。10年ごとの再任時期に限られますが、このとき広く市民から裁判官としてふさわしいかどうか、意見を集めることに一応なっています。もっとも、この手続について市民への広報はまったくなされていません。私は広く知らせるべきだと前から言っているのですが・・・。
(2010年12月刊。2000円+税)

昆虫未来学

カテゴリー:社会

著者  藤崎 健治 、   出版  新潮新書  
 
 フランス語のクラスで、ちょうど人類の未来の食料は昆虫だというテーマを扱っていたときに、この本を読みました。いま、日本はTPPに参加して強い農業をつくるとか言っていますが、食料自給率を維持しておかないと近い将来の日本人は大変な食糧不足に泣くことになるのは必至だと思います。そのとき、昆虫を食べればいい、なんてことにはならないのではありませんか・・・・。それはともかくとして、昆虫類を知っておくことは大切なことです。昆虫類の最大の特徴は、肢が三対、すなわち6本あること。
昆虫は赤道付近の高温多湿の環境で誕生した。系統的に昆虫にもっとも近い節足動物は、エビやカニなどの水生甲殻類である。その次は、ムカデなどの多足類だ。
昆虫種の数は100万を数え、全生物種の3分の2を占める。植物種は30万種。魚類は3万種。哺乳類は4000種である。しかも、毎年、新種の昆虫が3000種も追加されており、将来は500万種から1000万種に達する可能性がある。そうなると、地球上の全生物種の5分の4以上を占めることになる。地球が「虫の惑星」と呼ばれる所以である。
 昆虫は翅を発明して、空中という三次元の世界に進出した。昆虫のもつ開放血管系は酸素を取り込みやすいシステムであり、飛翔筋の活発な代謝のためには酸素が不可欠なのである。
ハエは、光の明滅を1秒間に300ヘルツまで感知できる。ハエは人間の10倍のスローモーションで映像を見ていることになる。
成長過程で形態を大きく変化させる変態を行うのは昆虫の大きな特徴のひとつ。完全変態の昆虫は成長のステージによって生息場所を買えることで、生息場所の悪化のリスクを分散させることができる。たとえ環境変動があっても絶滅せずに生き抜く確率が高くなる。
体サイズの小型化こそ、昆虫類の繁栄のもう一つの要因である。体サイズの小さな生物ほど、世代時間が短く、個体群の増加率が高い。
 昆虫では、全神経細胞の90%が体表の感覚細胞となっている。センサーとして働く感覚毛には、音や触覚などを感じる受容器、嗅覚や味覚の受容器、湿度や温度の受容器もある。同波数特性の異なる毛を持つことによって、空気の振動を感知し、逃避行動をとることもできる。
昆虫の不思議な能力と人間社会との関わりを知ることのできる驚きの本です。
(2010年12月刊。1200円+税)
熊本で弁護士会が主催した道州制についてのシンポジウムに参加してきました。パネリストとして熊本市長が出席していて、国保税の負担が地方自治体にとって大変になっているので、国にもっと負担してもらいたい、市の一般会計からお金をまわすのは問題だという発言をしていました。それに対して民主党の参議院議員(弁護士)が、公共下水道は一般会計で負担しているし、見直すなら全面的にすべきだとコメントしていました。
私は、福祉面では国が全面的に責任を持つべきではないかと思います。ただし、そのために清算税率の引き上げが必要だというのは短絡的です。その前に大企業の法人税率や軍事予算、大型公共工事など、取るべきところから取り、不要不急の支出は抑えるという方策が必要だと考えています。
いずれにしても、地方分権とか地域主権は福祉の充実のために必要なものだとしないと変な論議になりかねないなとシンポジウムに参加して思ったことでした。
チョコさんが元気にご活躍の様子で、安心しました。

世界130カ国、自転車旅行

カテゴリー:人間

著者 中西 大輔、    文春新書 出版 
 
 自転車で、地球を2周りしたという日本人青年の壮挙を本人が再現した本です。今どきの日本の若者もやるじゃないですか。たいしたものです。パチパチパチ・・・・。
 日本を出発したのは1998年7月。アラスカを起点として、アメリカ大陸をずっと南下します。太平洋にそって南下して、ペルーではフジモリ大統領(当時)の姉に会見してもらえました。それからヨーロッパに渡り、アフリカに行き、オーストラリアへ飛ぶのです。地球2週目は、イースター島を経て、南アメリカに行き、ブラジルでサッカーのペレに会ったあと、アメリカでもカーター元大統領に会ったりしたあと、ヨーロッパへ飛びます。ポーランドではワレサ元大統領と会い、アフリカそしてインドさらには中国経由で2009年10月、ようやく日本に帰国します。すごいですね。まず、コトバはどうしていたのでしょうか。そして、危ない目にはあわなかったのでしょうか。さらには、軍資金は・・・・?次々に疑問が湧いてきますよね。
競輪選手の太ももは60~80センチもあって、瞬発力がある。しかし、自転車の長距離レースの選手などは、足の細い人が多い。そうなんですか・・・・。
 パンク修理など自転車の基本を学んでいないと海外遠征は難しい。うむむ、なるほど、そうでしょうね。
熊本で営業マンをしていて、3年あまりで1000万円をためたというのですよ。ところが、11年3ヶ月の旅にかかった費用は、なんと700万円。1年あたり60万円ほどでしかありません。ええーっ、嘘でしょ。と言いたいですよね。
アフリカでは警察署に泊めてもらったそうです。消防署や軍隊にも。
南アフリカをうろうろしているあいだに、スペイン語は自然にマスターした。旅行者にとっての武器は「銃」ではなく「言葉」である。なーるほど、話してこそ、分かりあえるのですよね。そして、各地で新聞やテレビの取材を受け、パスポートの役割を果たしたといいます。ふむふむ、きっとそうでしょうね。
 つかった自転車は日本でつくってもらった特製品です。車体は18キロの重さ。6つのカバンに詰め込んだ荷物は40~50キロにもなる。初めて見た人からはオートバイかと見間違われるほどの重量級だ。つかったタイヤは82本、パンクは300回。ふだんは1時間で平均20キロ、一日平均100キロすすむ。
 一人で何もせずに長い時間を過ごす退屈さや孤独に強いのが著者の強み。危い目にもあった。目を合わせない人間はたいがい怪しい。相手の言動を注意深く見る。話をすれば、相性がいいかどうか、だいたい分かる。相性がいい相手から「家に泊めてやる」と言われたとき、「この人なら、盗られたら盗られたでしょうがない」という気持ちで泊めてもらった。それで、盗られたことは一度もなかった。しかし、ブラジルでATM詐欺にひっかかったこともある。でも、人間って、本当にいいものだと思う。そう書いてあります。読んで心の温まる本でした。
(2010年11月刊。880円+税)

オルレアン大公暗殺

カテゴリー:ヨーロッパ

著者  ベルナール・グネ、  岩波書店  出版 
 
 ジャンヌ・ダルクが活躍する直前の中世フランスの情勢が活写されている本です。
 フランスの政治状況がよく理解できました(実のところ、そんな気にさせられただけということかもしれません・・・・)。
 シャルル6世がフランスの王位についた1380年、フランス王国は平和と繁栄のうちにあった。その前には、飢饉があり、黒死病があり、イングランド王からクレシーとポアティエの二度にわたり、フランス王は屈辱的な敗北を味わせられた。
 1380年、シャルル6世は、弱冠12歳だった。そして1392年、シャルル6世は23歳にして狂人となった。ところが、1422年に死ぬまでの30年間、フランスの王様だった。したがって、その間フランスには導き手がいなかったことになる。
 1407年11月23日、ブルゴーニュ大公は自分の従兄弟(いとこ)にあたるオルレアン大公を暗殺した。その結果、またもや内戦が始まった。イングランド王ヘンリー5世は、この機に乗じてフランスの国土を侵略した。それはフランス軍にとってアザンクールでの壊滅的敗北(1415年)をもたらした。シェイクスピアがアザンクールの戦いを描いていますよね。
 1419年9月、ブルゴーニュ大公が暗殺された。復讐が果たされたのだった。
 フランスで1300年に存在していた名門(旧家)の大部分は、1500年には断絶していた。貴族の割合こそ変動していなかったが、その内実は変動していた。
 戦争だけが貴族の活動ではなかった。実は、貴族は教育を受けていた。大学で学んだ貴族は信じられた以上に多かった。
 乗物は社会的地位を示した。交通手段として欠かせない馬が、社会を対照的に二分していた。貧しい人々は馬を持てず、裕福な人々は馬を所有していた。いやしくも地位のある人物は、一人だけで騎行することはなかった。
 暴力は見世物として喜ばれ、ひとを魅了した。暴力は合法的であり得た。それどころか暴力は高貴でもあり得た。子どものときから武器を操る習慣のある貴族は、それを携帯する権利を持ち、戦闘と同じくらい危険な戦争遊戯に加わったが、貴族にとって武器の使用は自分たちの身分特権であった。殴りあいは平民にまかせておき、貴族は武器をつかった暴力に高貴で騎士らしい何かを認めていた。うへーっ、これって怖いですね。
 1400年には、西洋の多くの国々で、君主の近親者あるいは君主自らがその手を地で汚していた。シャルル6世の時代には、暴力はありふれた現象であった。だが同時にそれは、貴族のものであり、王侯のものであった。王侯貴族の暴力こそ、他にもまして警戒しなければならなかった。その点は、昔も今も変わらない気がしますね。
 国王の第一の義務は、常に裁判によって平和を強制することだった。なーるほど、です。
 宮廷は、あらゆる秩序あらゆる野望、あらゆる敵対関係、あらゆる憎悪、あらゆる危険に満ちた場であり、宮廷人はみなそこを呪ったものの、一方で、人はみな望んでそこで生活し続け、そこで認められようとした。そこで死ぬか、あるいは殺すかという事態も辞さなかった。
当時、ブルゴーニュ大公はフランス筆頭諸侯の称号と権勢を富を有し、年齢と経験において王国の真の主人であった、それに対してオルレアン大公は王国のただ一人の弟である。王国に次ぐ者は彼であった。
アザンクールにおけるフランスの大敗のあと、ブルゴーニュ大公は重みをさらに増大させた。1429年、ジャンヌ・ダルクが登場し、シャルル7世と会見した。
 フランス中世史の分かりやすい概説書です。
(2010年7月刊。4900円+税)

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