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カテゴリー: 生物

アフリカではゾウが小さい

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 岩合 光昭 、 出版 毎日新聞出版
 私とほぼ同じ団塊世代の著者は、最近ではネコ写真のほうが有名な気がします。
 でも、本業はあくまでネコに限定されない動物写真家です。末尾にカメラを抱えた著者の写真がありますが、そのカメラは、なんとバズーカ砲なみのデカさです。
カメラは、今ではミラーレス。機動性の良さと、驚くほどシャープに撮れるのに感動したとのこと。私もシャープさには憧れがありますので、今度はミラーレスのカメラを持つことにしようと思います。
 著者はアフリカには何度も取材に出かけていて、今回の写真も、ボツワナ、ナミビア、タンザニア、マダガスカルの各地の動物たちの生き生きとした姿が実にシャープにとらえられています。
 アフリカでは取材するにもルールがあります。宿泊ロッジを夜明け前に勝手に出ることは許されていません。そして、日没前に戻らないと閉め出されてしまう。ええっ、閉め出されたときは、いったい、どうするんでしょうか。まさかテント張って野営するのでしょうか…。
 朝、出かけるときは、順番に並ばなければいけません。そして、走ることのできる道は厳しく制限されていて、道を外れることは許されない。
 著者の乗った自動車のすぐそばでライオンのメスが昼寝を始めた。著者は車のドアを開けてカメラを向けて同じ高さで撮ろうとする。距離はわずか1メートルしか離れていない。それに気がついた運転手が大声で「戻れ」と叫ぶので、あわててドアを閉める。いやはや、野生のライオンの1メートルしか離れていないところでカメラを構えるだなんて、勇気があり過ぎます。
 著者はアフリカの大草原で双眼鏡なしでクロサイを肉眼で見つけたとのこと。緑したたるアフリカの大草原にずっといるときっと視力が良くなるのでしょうね。
ほとんどのゾウは、その牙が右と左で長さが違う、どうやら右利き牙と左利き牙があるらしい。
 アフリカで撮影をしていると、身体の感覚が研ぎ澄まされていく。目が良くなる。勘も相まって10キロ先まで見える。遠くの茂みに隠れている動物を見つけ出せる。
 風が運んでくるさまざまな情報や気配にも敏感になる。五感だけでなく、意識にも変化が表れる。待つという概念が消えていく、何時間もじっとカメラをかまえていなくてはいけなくても一切苦にならなくなる。
たしかに、これだけシャープで生きのいい動物たちの素顔を切り取っていけば疲れも吹っ飛んでしまうと思いました。手にとってじっくり味わいたい素晴らしい、感動と躍動感あふれる動物写真集です。
(2023年2月刊。2500円+税)

ここにいます

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 伊藤 隆 、 出版 鳥影社
 小鳥たちの見事な写真集です。信州・諏訪地域、霧ヶ峰高原、八ヶ岳山麗そして諏訪湖周辺で野鳥を撮っています。すごい執念です。霧ヶ峰高原は、著者宅から車で20分ほど。野鳥撮影のため、年に40~50回は足を運ぶとのこと。まさしく、ホームグラウンドですね。
 それでも野鳥撮影を始めて、まだ15年とのこと。本職は公認心理士で、スクールカウンセラーや心理カウンセラーの仕事に従事しています。
 脚立のついた超大型のカメラを抱えた著者の写真もあります。早朝や休日を利用しての野鳥撮影です。それこそ好きでなければ絶対にやれないことですよね。
 カメラは一眼レフからミラーレスへと大きな転換点を迎えているとのこと。私もフィルムカメラのときはペンタックスを海外旅行先にまで持参し、フィルムを30個以上もスーツケースに入れていました。帰路は現象していないフィルムがX線検査で露出させられないか心配して、特別の袋に入れて日本へ持ち帰っていました。
 派手な冠羽と大きなくちばしが印象的なヤマセミは実に生き生きしています。
白一色の冬景色の中に浮かび上がるピンク色のオオマシコは派手というより躍動感にあふれています。
 もっと原色の赤に近い身体の色をしているのが、文字どおりアカショウビン。3時間も待ってとらえた貴重な写真が紹介されています。
 鮮やかなブルーの尾羽が特徴的なカワセミは、私の自宅近くの小川に見かけることもあります。
 わが家の庭に来てくれるのはメジロ、そしてジョウビタキです。秋から冬にかけて、私が庭仕事をしていると、ジョウビタキがほんの1メートル先の小枝に止まって、私を見つめ、「何してんの?」と声をかけてくれます。独特の鳴き声で存在を知らせてくれるのです。人間のやってることにすごく関心があるようなんです。その愛らしい仕草に心が惹かれます。
 こんな立派な野鳥の写真集(130頁)なのに、1800円という安さです。思わず頭が下がりました。
(2023年3月刊。1800円+税)

犬に話しかけてはいけない

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 近藤 祉秋 、 出版 慶応義塾大学出版会
 タイトルからは何の本なのか、さっぱり見当もつきませんよね。「内陸アラスカのマルチスピーシーズ民族誌」というサブタイトルのついた本なのです。
 マルチスピーシーズ民族誌というのは、人間以外の存在による「世界をつくる実践」に着目する。人新世が地球上を覆っているように見える一方で、実際には、人間と人間以外の存在とが絡(から)まりあって継ぎはぎだらけの世界をつくっている。「人新世」とは、人間の時代のこと。それは、人間が資源を枯渇させ、生物種の絶滅を引き起こし、自分自身の生存基盤を掘り崩しかねない時代である。
 若者はアラスカ先住民の村で実際に暮らしました。「犬に話しかけてはいけない」というのは、アラスカ先住民のなかにあるタブー(禁忌)の一つ。これを破ると、病で人々が多く亡くなる異常事態を引き起こす。
 犬は太古の時代には人間の言葉を話した。世界の創造主であるワタリガラスは、人間が犬に愛着を持ちすぎるのを嫌って、犬の言語能力を奪ってしまった。
 内陸アラスカ先住民の社会では、ひどい飢饉(ききん)のときを除いて、基本的に犬を食べものとみなしていない。伝統的に、飼育動物を殺して食べる習慣はない。犬肉食は食人に限りなく近い。
ワタリガラスとオオカミは行動を共にする機会が多く、両者が相互交渉する頻度も高い。コヨーテは狩ったノネズミをすぐに食べてしまうが、オオカミは狩った獲物で遊ぶことが多く、食べないこともある。なので、ワタリガラスは、ノネズミをくすねることのできる確率が高いオオカミを選んでつきまとっている。
 アラスカでは、カラス類は犬肉を好むという神話上の共通設定がある。
 渡り島が何かの事情で渡りをせずにそのまま残ってしまうことがある。これは留島というより「残り島」。人の手に頼らずに生きのびることは現実には厳しいので、先住民のなかには次の渡りまで「残り島」を飼い慣らす人がいる。そうでなければ餓死するよりましと考え、ひと思いに殺してしまう。
 アラスカ先住民の生活の一端を知ることのできる本でした。
(2022年10月刊。2400円+税)

犬だけの世界

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ジェシカ・ピアス、マーク・ベコフ 、 出版 青土社
 人類が消えてしまったとき、犬だけで生きのびることができるのか…。私は、出来ると思いますが、全部の犬種ではないでしょうね。野良犬として生きのびている犬種、雑種はなんとかして生きていくでしょうけれど、チワワみたいな座敷犬、人間に頼り切りの犬は生存していけないだろうと思います。
 犬は自力で生きていくのが得意ではない。人間がほとんどの犬から狩猟本能を奪ってしまったから。なので、犬の大半は、人間が消えたら、生き残れない。ただ、最初の調整期間が過ぎたら、犬も十分生き残れるだろう。
 イヌが自然の本能にしたがって生き残って変化していっても、狼(オオカミ)に戻るとは考えにくい。
 全世界に犬は10億匹近く存在する。アメリカには、8300万匹の犬がいる。
 イヌ科の動物の行動は多彩かつ日和見主義的で、コミュニケーション能力が高く、分散して行動する傾向にある。
 犬はメスの発情周期が年に1回ではなく、年に2回ある唯一のイヌ科動物。
 犬が家畜化したのは、4万年前から1万5千年前のあいだ。だから、犬と人間の関係は古いのです。比較的新しい猫とは比べようがありません。
 オオカミは全世界に30万匹しかいない。
 自由に歩きまわれる犬で、野犬との境界線は非常にあいまいで、犬はこの流動的なカテゴリーを行ったり来たりすることができる。
 世界中の犬の30%、3億匹が「純血種」。犬種は固定されたもの、発明品ではなく、常に変化を続けている。
 犬種特有の性格というのは実はなく、犬それぞれの性格があるだけ。うひゃあ、これには驚きました。犬種と性格は絶えず一緒だと思っていました。
イヌ科の動物は、走行性の動物。生まれながらのランナーで、耐久アスリート。
犬の尾は、気分や意見を示す重要なツール。敵意や服従、性的受容、怒り、ふざける気持ち、不安といったシグナルを送っている。犬に尾がないと、犬にとって社会的コミュニケーションの重要なツールがないので、大きな負の影響が出る。
 オス犬は、父親として子育てに関わることがある。そして、両親以外の成犬も子の養育に参加する。メス犬の妊娠期間は63日間。
 犬の死因の最大は人間によるもの。犬の衣食住にとってもっとも重要な時期は生後3週から8週ころ。したがって、子犬をもらう(買う)のなら、生後3ヶ月ほどたってからが一番ということです。適切な衣食住を受けた犬は、従順で落ち着きがあり、辛抱強く、心理的にも感情的にもバランスのとれた犬に成長する。
群れには階級制度(ヒエラルギー)がある。エサにありつく順番、繁殖が許されない、という不利がある一方、機能的な集団内で暮らしていけるというメリットもある。 犬は団結力のある集団を協力してつくり、共通のゴールを達成する。
 犬は非常に頭が良く、洞察力が鋭い。人間の考えや感情を人間より先に察することができる。犬は遊ぶ。一人遊びもするが、それは「楽しい」から。
 日本人が犬を飼うのは、この30年間に、国民1千人あたり犬が20匹だったのが、90匹に激増した。なるほど、犬をよく見かけるようになりました。
 犬にまつわる話が満載で、面白く読み通しました。
(2022年11月刊。2400円+税)

にっぽんのスズメ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 中野 さとる ・ 小宮 輝之 、 出版 カンゼン
 鳥って、あの恐竜の生き残りなんですよね。でも、スズメがティラノサウルスと同じ恐竜の仲間だなんて、信じられませんよね。可愛らしい小鳥ですからね…。日本にいるスズメの生態を間近で撮ったスズメの写真集のような本です。
 わが家にも、かつてはスズメ一家が2家族すんでいました。2階の屋根裏と1階のトイレの窓のすぐ上です。子どもが生まれて子育て中になると、トイレのすぐそばで、にぎやかな声を聞きながらほっこりしていました。
 わが家からスズメが姿を消したのは、すぐ下の田圃でお米を作らなくなってからのことです。お米をつくっているときは、梅雨に入るころは水田で鳴く蛙の鳴き声がたまりませんでした。でも、水田の上を吹き渡ってくる風はまさに涼風でした。なので、エアコンなしの夏を過せていました。休耕田となった今は、エアコンなしでは夏は過ごせません。
 スズメはスズメ目スズメ科スズメ属。留鳥。地上で移動するときは、両足をそろえてピョンピョンする、ホッピング。スズメは稲穂だけでなく昆虫も食べる、雑食性。子育て期には昆虫をせっせと食べる。
スズメは清潔好き。寄生虫の予防のため、水浴びと砂浴びを欠かさない。きれい好きのスズメの巣の中には寄生虫がいない。
スズメは卵を1日に1個、合計4~6個うむ。すべての卵をうみ終わってから、抱卵を始める。同じころに卵がかえるようにしている。抱卵日数は、2週間ほど。そして、ふ化してからヒナが巣立つまでも2週間。
スズメは人の住んでいない高山や深い森林には生息していない。
 紫式部の『源氏物語』、清少納言の『枕草子』の、どちらにもスズメは登場している。スズメの仲間のニュウナイスズメは留鳥ではなく、漂鳥。
スズメが減ったのは、スズメのねぐらになるようなヤブやすき間の多い民家が減ったから。
スズメの仲間のイエスズメは、南極以外のすべての大陸に分布している。地中海に注ぐ、ナイル川の下流域が原産地。
スズメの百選写真集といってもよい本です。好きな人は、ぜひ手にとってみて下さい。
(2023年3月刊。1500円+税)

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