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カテゴリー: 生物

オホーツクの12か月

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 竹田津 実 、 出版 福音館書店
 北海道の東部、網走にも近い小清水町で獣医師として働きながら、野生動物の写真を撮り、また傷ついた動物たちを無料診療している著者の四季折々の観察記です。
 アイヌの人々は、福寿草の黄金色の花が咲くと1年が始まると言った。なので、1年の最初の月は4月。フクジュソウは、北国では一番早く咲く花。
 4月21日、夏鳥としては、ヒバリが一番手でやってくる。
 春耕は一斉に始まる。どこかでトラクターの音がしたら、その日の午後は、畑じゅう、トラクターだらけになる。遅れてはならないのだ。遅れたら、その分だけ、ほかの家に比べて収量が少なくなる。春耕は、10羽ほどのムクドリをお供えにしている。
 5月は野火の季節。野火をしないと、花園にならない。草花の種子が発芽できないのだ。
 春一番のおいしい魚は、アオマス。地元の人は、クチグロと呼ぶ。山陰地方のノドグロ(魚)の美味しさは、なんとも言えませんよね・・・。
 桜とギョウジャニンニクが登場すると、人々は春が今年もやってきたことを実感する。
 北海道の人は、ギョウジャニンニクが大好きだ。身体にいいし、風邪薬にもなる。食べるだけで、便秘、脚気(かっけ)、肺病など、何にでも効く。凍傷、火傷、打撲傷などの外用薬にもなる。
 桜が散り、カッコウが鳴くと5月が終わる。
 マガモのヒナを7羽、もってきた人がいた。親から見捨てられたので、可哀想だから・・・。でも、親鳥は子どもを棄(す)てたのではない。人間が来たので、身を隠しただけ。それを人間は勘違いする。すると、獣医師は、とたんに忙しくなる。でも、決してもうかる仕事ではない。
 6月の知床に出てくる蚊は大型。知床の登山は蚊の大群を引き連れての苦行と化す。
 知床の自然保護に役立っているのは、ヒグマと大型の蚊の大群。この二つは守り神といって良い。ただ、蚊は風に弱い。なので、生理現象は強風のあたる場所ですます。
少し飛んで10月。タラの芽が採(と)れるようになると、鹿の角(つの)がポロリと落ちる。冬に全身が真っ白になるユキウサギの毛の変化は10月にはじまる。最初は、耳・足の部分や腹部から白毛に変わる。それは、足の裏、耳のうしろ、腹の下など、自分では見えないところから・・・。やがて、頭部や背と白い刺毛(さしげ)が増えてき、白化が及ぶ。もはや、神の技(わざ)だ。
死が近づくと、いかなる生物も、野生を放棄する。自分を守るために装備した攻撃性をどこかに置き、わが身にとっての、いかなる運命も甘受するというのだ。
ヒグマは冬眠中に子どもを産む。うつらうつらのなかのお産だ。生まれた直後は、400~500グラム、生後3ヶ月齢で10倍の4~5キログラムになる。「小さく産んで、大きく育てる」を地に行っている。
ヒグマは、繁殖のための諸儀式は、比較的ひまな初夏。そのため、「着床遅延」というシステム(テクニック)を確立した。受精卵にしばらく待機を命じ、時期が来たら着床させて発育させるというシステムだ。
17年も前の本です。書棚を整理しているなかで発見したのです。素晴らしい写真がいくつもあって、実に素晴らしい本になっています。
(2006年3月刊。2200円+税)

水族館飼育員のキッカイな日常

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 なんかの菌 、 出版 さくら舎
 水族館の主役は生きもの。水族館というと、福岡の海の中道にあり、別府の「海たまご」そして、鹿児島のイルカの泳ぐ水族館をすぐに思い出します。
 水族館も博物館のひとつだなんて、初めて知りました。
 著者は水族館とは専門違いの美術史専攻で、博物画を研究していたのですが、ひょんなことから水族館に飼育員として就職してしまったのです。そのトホホ…な苦労話が、ホノボノ系のマンガとあわせて紹介されていますから、よく理解できました。
 魚も大変個性が強いということを初めて知りました。脱走癖のあるタコ、元気なのに突然絶食する魚、高価なエサ(エサ)しか食べない魚、ずっと隠れていて担当飼育員でもめったに見ない魚…。
 同じ種でも、個体によって性格が違う。なので、イルカやアザラシ、ペンギンなどの海獣類の個性が顕著なのは当然のこと…。気の強いアシカ、騒がしいのは嫌いなアザラシ…。
 イルカになめられると、水をかけられたり、ボールでもてあそばれたりする。
水族館の飼育員になって辛いのは、生きものの病気や死に何度も向き合わなければならないこと。
 水族館の目玉商品として「イワシの大群」の乱舞がある。その大量のイワシは、飼育員が総出であたる。重い、揺らしたらダメ、距離が長い、1秒でも早く移さないとダメ…。こうなると、命がけのバケツリレーとなる。いやはや、必死なんですね…。
 採集・調査して得た生きものの名前を判別する「同定」は意外と難しい。長年のプロであっても苦労するものだ。
 イルカのトレーナーになるのはかなり難しい。もともと需要が少ないうえ、競争倍率はすごく高い。
 水族館の裏(バックヤード)も図解されていて、絵でよくわかる仕掛けになった、楽しい本です。
(2023年7月刊。1400円+税)

幻のユキヒョウ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 木下 こづえ・さとみ 、 出版 扶桑社
 ユキヒョウはネコ科のヒョウ属。ロシアや中央・南アジアの高地に生息する。推定8000頭未満、絶滅の危機に瀕している。
 ユキヒョウは雪山に適応して毛が長く、足裏までぎっしり生えている。子育て期間は22ヶ月ほどで、長い。大牟田の動物園にもいる。
 長い尻尾でバランスをとりながら、急な崖も軽快に移動する。ユキヒョウは声帯が小さく、骨の構造が異なるため、大型ネコ科動物のなかで唯一、咆哮(ほうこう)ができない。
 ユキヒョウは頭からお尻までの体長が1メートル、尾の長さも体長と同じ1メートル。どんな体勢であっても、しっぽが地面に擦れてしまうなんてことはなく、その先端はいつもカッコ良くヒュッと上がっている。
 寒さの厳しい山々に生息するユキヒョウは、行動範囲が広く、また警戒心がとても強いため、人間の足で直接観察によって探すことはほとんど不可能。そこで、ユキヒョウがいそうな場所に赤外線カメラを仕掛ける。雪のうえなら足跡が見つかる可能性がある。そして、ひたすら下を向いてユキヒョウの糞を探す。糞は、きわめて貴重な手がかりで、研究者にとっては宝石みたいに価値がある。ユキヒョウは排泄前に後肢で地面を掻き、掻き集まった土の上に排尿し、見せつけるようにその上の糞を出す。
 モンゴルのゲルに泊まると、なかは広々としたワンルーム。トイレも風呂も着換えする個室もない。トイレは青空。夜はゲルから外に出ると、見渡すかぎりすべてが星。トイレの場所は決まっておらず、草原のどこでもOK。なので、窪みや岩の影を探し求める。
 遊牧生活の燃料は家畜の糞。糞を乾燥して使う。モンゴルの草原では、木材は貴重品。
 ユキヒョウは好奇心旺盛な動物でもある。
 次は、インドの3256メートルもある高地に行ってユキヒョウを探します。いきなり富士山の山頂付近に降り立ったようなもの。高山病対策として、寝たらダメ。寝たら呼吸が浅くなって危ない。ひたすら紅茶でも飲んでしゃべっていること。眠ると呼吸が浅くなって酸欠になりやすく、高山病が悪化する。うひゃあ、なんとなんと、眠ったらダメなんですか…。
 ユキヒョウは、大型ネコ科のなかでは気が弱いせいか、人間を襲って殺したという事例は過去に報告されていない。
双子に生まれた姉妹によるユキヒョウ探検記が写真とともに紹介されています。双子のひとりは研究者で、もうひとりはコピーライターです。二人がうまく息をあわせて面白い本になっています。
(2023年4月刊。1760円+税)

魚と人の知恵比べ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 マーク・カーランスキー 、 出版 築地書館
 魚釣り、とりわけフライフィッシングの世界を奥底までのぞき込んでいる本です。
 フライフィッシングといえば、すぐにアメリカ映画『リバー・ランズ・スルーイット』を思い出します。見事な竿さばきが展開するシーン(情景)は今も鮮明な記憶として脳裏に残っています。
 フライフィッシングには、破ってはならないルールが2つだけある。その一つは、水中で転んではいけない。その二は、フライをできるだけ長く水中に保たなければならないこと。
 川に棲むマスは、水温が20度をこえると、エサをとることも繁殖することもなく、死んでしまう。温度の高い水には含まれる酸素が足りないからだ。
 フライフィッシングは、もともとサケ科の魚を釣るために考え出された。サケ科は頭が良くて狡猾で、強く、運動能力が高く、頑固な生き物だ。人間は簡単には釣れない。
海水魚は昆虫を食べない。マス用と海用のフライには、小魚やエビに似せられていることが多い。
竿は弓なりにたわみ、生まれて初めて、至上の喜びともいえる魚の「引き」を感じる。釣り人の素質がある者なら、引きの喜びを一度味わったら、決して忘れられない。それは、筋肉に刻み込まれ、繰り返し繰り返し、感じたくなる。
 釣り人の目的は、魚が疲れきるまで遊ばせること。そうして初めて魚を取り込むことができる。そのような状態にある魚は、血中の乳酸濃度が高まる。濃度が高まりすぎると、魚は死ぬ。
 魚釣りの楽しさを、私は父から教わりました。父の運転するオートバイのうしろに乗って父にしがみついて、弁当をもって菊池川の上流に足をのばしました。それほど釣れたという記憶はありませんが、清流に向かっていい気分でした。私自身は大川あたりの筑後平野のクリークでの鮒(フナ)づりです。浮きがすーっと沈んでいくのに当たると心が踊りましたね…。
 フライフィッシングは残念なことにしたことがありません。それにしても、フライフィッシングだけで290頁もの紹介本です。これもすごい世の中ですよね。
(2023年5月刊。2700円+税)

モンシロチョウの結婚ゲーム

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 小原 嘉明 、 出版 蒼樹書房
 庭でのキャベツ栽培に私も挑戦したことがあります。春になると、それはそれは大変でした。毎朝、庭に出て青虫を割りバシでつまんで足で踏みつぶさないといけません。青虫がチョウになるのを喜んで待っているわけにはいかないのです。放置していたら、とんでもない虫くいキャベツになってしまいます。ところが、とってもとっても青虫は、それこそ湧くように出てきます。これではキャベツの生産者が農薬を使うのも当然だと実感しました。
 モンシロチョウは、キャベツづくりをやめた今でも、春になると庭をヒラヒラと飛びかっています。著者によると、モンシロチョウの飛び方は、オスとメスとで違うそうです。なにやらジグザグに飛びまわっているのはオス。メスは葉にしがみついてせっせと産卵にはげんでいる。なので、飛び方だけでオスかメスかを言いあてることができる。
 では、オスはなんで、そんなにジグザグに飛びまわっているのか…。もちろん、結婚相手のメス、それも未婚のメスを求めて飛んでいるのです。
メスはオスが近づいてくると、3つのタイプの反応を示す。まず第1に、翅(ハネ)を開いて腹部を押し立てる、逆立ち反応。これはメスのオスへの拒否反応。第2は、メスが小刻みに翅をバタバタ開閉する、はばたき反応。オスはすぐに飛び去っていく。第3は、翅を閉じたまま、ぐっと静止の姿勢を続ける。オスはただちに交尾行動に入り、すぐに交尾が成立する。
それでは、なぜオスはメスをすぐに見分けることができるのか…。オスとメスは形や大きさに違いはなく、大変似ている。しかし、どこかが違うはず。何が違うのか…。
その答えは、紫外線です。紫外線写真をとると、メスは白く、オスは黒くうつるのです。メスの翅は強く紫外線を反射している。つまりメスの翅は紫外色を含んでいる。オスの翅には紫外色はまったくない。なので、オスはひたすら真っ白のメスを探しているというわけです。
ところが、この本では、なんとモンシロチョウの眼にメガネ(黒いサングラス)をかけたらどうなるのか、という実験までしています。まずは、その方法です。透明のビニールに小さなガラス棒をつき立て、出っぱったところをはさみで切り取る。メガネをかけるときは、チョウを冷蔵庫に入れて冷温麻酔しておく。そして、チョウの眼にカプセルをかぶせ、後ろのところを蜜ろうで固定する。そのうえで、メガネに黒ラッカーを塗る。すると、チョウの眼を痛めることはない。この状態のメスは、オスが近寄ってきても逆立ち反応をまったくしない。つまり、逆立ち反応はあくまで視覚的なものであることが裏づけられた。これは、ホルモンの分泌を促すことと関係があるのではないか…。
 いやあ、学者って、モンシロチョウの眼に黒いサングラスをかけてみたらどうなるのか、なんてことまで実験してみるのですね…。驚きます。
実は、この本を読んだのは30年近くも前のことなんです。そのとき受けたショックはとても大きくて、本棚の目立つところにずっと鎮座していました。久しぶりに読んで、ぜひ皆さんにお知らせしたいと思ったのでした。
(1994年5月刊。2300円+税)

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