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カテゴリー: 人間

進化する人体

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 キャロル・アン・リンツラー 、 出版  柏書房
今日のアメリカでは、虫垂切除はもっともありふれた救急手術で、子どもに対してもっともありふれた外科手術だ。年に25万から30万のケースで手術されている。朝に入院して、夜には帰宅している。私は、今もしっかり虫垂を保持しています。盲腸といってけなされますが、無用の存在ではないという考えもあるようです。
体全体の毛深さで上位にくるのは、日本のアイヌ、オーストラリアのアボリジニ、インド南部のトーダ族、インド北部のドラヴィッダ人。
毛が少ないのは、アメリカ先住民、アフリカ人、ミャンマー人、中国人、朝鮮人、ベトナム人、そして金髪の白人。
人間の体毛が目立たなくなった理由は、まだ定説がない。
人間は耳を動かせない。しかし、人間だけでなく、チンパンジーやオランウータンも耳は動かせない。
ゾウの歯は24本あるが、一度に4本しか使わない。すり減ると、奥の歯が前に移動して出てくる。最後の第六大臼歯はゾウが65歳のころに抜ける。歯がなくなるとかむ力がなくなって、動物の世界では死ぬことに結びつく。
ワーテルローの戦いでは5万人もの戦死者が出たが、その歯は、競って歯を抜いた死体あさりの人々の手で生きた。ブリッジをつくるのに使われたのだ。なんだかおぞましい話ですよね・・・。
肋骨は人類には12対だが、チンパンジーやゴリラは13対。
人間の身体は、これからも進化していくのでしょうか・・・。力強くかむ必要がなくなった現代人はアゴがほっそりしていると書いている記事を読みました。顔のかたちは確実に変わっているわけです。だったら、他の部分の身体も、これから変化が起きることは当然あるのでしょうね・・・。
(2019年3月刊。2200円+税)
 日曜日、朝からフランス語検定試験(準1級)の口頭試験を受けてきました。3分前に渡された問題は日本政府が70歳定年に延長しようとしているのをどう考えるのかと、旅行者過剰をどう考えるのか、でした。私は前者を選んだのですが、定年のない職業なので、実は深く考えたことのない問題なので、何をどう答えてよいのか頭がまとまりません。そうすると、フランス語の単語まで出てこないのです。あれあれ、今回は不合格かな・・・と落ち込みました。
 地球温暖化問題、オリンピック問題、育休、貧富格差増大などにヤマをはっていたのが見事にはずれてしまいました。
 3分間スピーチは本当に大変です。トホホ・・・。

男はつらいよ お帰り寅さん

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 山田 洋次 、 出版  松竹株式会社
私は大学生のときから「男はつらいよ」を見はじめ、その全部ではありませんが、ほとんどみています。「男はつらいよ」第1作が劇場公開されたのは1969年8月27日。しかし、私の記憶では東大本郷の五月祭(ごがつさい)で先行上映されたという記憶です(間違っているのかもしれません)。
1969年1月に東大本郷では派手派手しい安田講堂攻防戦があり、3月に授業再開し、5月ころ本郷に進学したて、まだ学生の気分がすさんでいたところに笑いで吹き飛ばす映画をみんなで見たという記憶があるのです。地下に食堂「メトロ」のある法文31番教室が会場で、そこへ大勢の学生たちが詰めかけ、満員盛況でした。みんなで爆笑したように思います。
その後、郷里の福岡へUターンする前、東京の場末の映画館でみたときは、場内が爆笑して騒然とした雰囲気で、スクリーンに向かって野次を飛ばす威勢のいいオッチャンたちもいて、心地よい気分に浸ることができました。ところが、銀座の封切館でみたところ、観客があまりにお上品で、みんなでどっと笑ったりすることがなく、野次が飛ぶなんてこともありませんでしたから、いささか物足りない思いをしたこともあります。
郷里に戻ってきて、子どもたちが小学校に通うようになると、正月には欠かさず寅さん映画をみんなでみて、腹の底から笑うことができました。
渥美清が20年も前になくなってから久しぶりに苦々しい寅さんをアップで拝むことができ、本当に感激しました。そして、その登場シーンがストーリー展開に本当によく溶け込んでいて、まったく違和感がありませんでした。すごいです。たいしたものです。
寅さんが今、どこで何をしているのか、もう死んでいるとかいう話はまったく出てきません。話の展開のなかで、そのことを不思議に思わせることがないのです。これって、すごいことですよね・・・。
そして泉さんは国連難民高等弁務官事務所につとめているということで、ヨーロッパやアフリカの難民問題まで映像で紹介されます。泉さんはタクシーのなかで上司とフランス語で会話しますが、ちゃんと聞きとれて、フランス語を勉強していて良かったと思いました。やっぱり、話が分かると、うれしいのです。
国連で活躍中の中満泉さんの本『危機の現場に立つ』も参考文献として紹介されています。後藤久美子は、素敵なキャリアウーマンとして登場してきますが、初めは誰だか分かりませんでした。
主題歌をオープニングで桑田佳祐が歌い、最後に渥美清本人が歌います。しみじみと聞いて、映画の余韻に浸って映画は終わり、あたたかい気分で外に出ることができました。
疲れを吹き飛ばしてくれるすばらしい映画です。ぜひ、あなたも映画館に足を運んでみてください。
(2019年12月刊。1200円+税)

作家と魔女の集まっちゃった思い出

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 角野 栄子 、 出版  角川書店
著者の『魔女の宅急便』は良かったですね。舞台で演じられ、実写映画にもなったそうですが、私はアニメでみました。もちろん、本も読みました。
ホウキにまたがった魔女が宅急便の荷物を運ぶなんて、すごい発想ですよね。
この本を読むと、著者がものすごいバイタリティーの持ち主でもあることがよく分かります。なにしろ、24歳のときブラジルに渡り、2年間、そこで暮らしたというのです。そのとき知りあった母と子の話が本書で紹介されますが、子のほうは作家としてのデビュー作のネタになったのでした。
『魔女の宅急便』の原点は、著者の12歳の娘が描いた魔女の絵だったそうです。ほうきの柄にトランジスタラジオがぶらさがり、ビートルズの音楽でも聞きながら飛んでいるようで、魔女の周囲を音符が踊っている。そんな絵だったのです。それを見て、ひらめいたのでした。
魔女のキキには、あり得ないことと、あり得ることを飛んでつなげてもらう。そしたら物語は面白くなりそう。そのなかでキキは次第に自分の場所を見つけていく。こうやって自分の楽しみも広がっていった。
主人公の名前は、そこから物語の世界が始まるといってもいいくらい大切なもの。1ヶ月ほどして、魔女の女の子はキキという名前に決まった。モノカキを自称する私も、主人公そして登場人物の名前は苦労していますし、工夫しています。
言葉の意味にばかり頼りすぎると物語は次第に貧弱になっていく気がする。
言葉の意味よりも、言葉のときめきを大切にしたい。
ときめきは、形ある風景として立ち上がってくる。そこを読み手といっしょに歩いていく。そしたら、どんなに楽しいことか・・・。
84歳の作家は、いつまでも幼い少女のようなういういしさを失っていないようです。うらやましい限りですね・・・。
(2019年9月刊。1400円+税)

消えた山人、昭和の伝統マタギ

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 千葉 克介 、 出版  農文協
私の終わりころから9年間、秋田などの東北の山で活動していたマタギを追った貴重な写真集です。
マタギは、「山をまたぐ」が語源と言われていますが、実際、1日に10キロといわず数十キロも歩いていた。
狩り、ケボカイ(皮はぎの神事)、熊祭り、山の神祭り、小屋かけ、火起こしなど、昭和時代の山中でのマタギの生態が写真によく残されています。忘れてはならない山の狩人たちです。
マタギは産火と死火を忌み嫌い、家で出産や死亡があると、火が穢(けが)れると考え、その家の人間は1週間、狩りに出かけなかった。また、クマ狩りの前の1週間は夫婦の性交渉もできなかった。
マタギには、「狩人」と「狩り」の両方の意味がある。漢字では、古くから「又鬼」と書かれる。
大正・昭和初めのマタギ装束の着方が写真で再現され、解説されています。カモシカの毛皮を上に着ます。背負うのは村田銃です。
クマの胆(い)は、万能薬として珍重され、金と同じ値段で取引されていた。1回に飲む量はゴマ粒3つ。
マタギにとって、クマは捨てるところがなく、クマの骨や血、冬眠時の糞も薬として売られていた。
クマが獲れるのは集落にとって大きな喜びで、老若男女が集まってくる。
クマの肉を骨ごとに煮込み、ナガセ汁をつくる。最高のマタギ料理だ。
マタギは個人であり、集団であり、それを支えてきたのは集落である。
今ではほとんど消え去ったマタギの生態をたくさんの写真とともに解説した貴重な本です。
(2019年8月刊。2500円+税)

ふたりの桃源郷

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 佐々木 總 、 出版  文芸春秋
電気も水道もない山奥で暮らしている老夫婦を30年にわたってテレビで紹介していった番組について、裏話をふくめて活字にしたものです。似たような話があったような・・・、と私は映画のパンフレットを探し出しました。
2014年の韓国映画「あなた、その川を渡らないで」です。こちらは30年間ではなく1年3ヶ月間でしかありませんが、老夫婦はなんと98歳のおじいさんと89歳のおばあさんです。山奥の一軒家ではありませんが、小川の流れる小さな村に住んでいます。毎日、ふたりはおそろいの服(上着は、白で、チマはライトブルー)を着て、手をつないで歩いていきます。枯れ木や山菜をとりに山へ、市場へ買い物に出かけます。春には花を折って互いに飾り、秋には落葉を投げあってほほえみ、冬には雪合戦をしてはしゃぐ。そんな老夫婦の日々が淡々と紹介されます。韓国では480万人もの観客を動員していますが、その半数を20歳台の若者が占めたといいます。私も福岡・天神の映画館でみましたが、心が震えました。まだみていない方はぜひみてください。
日本のほうは、たびたびテレビのドキュメンタリー番組となり、全国放送もされています。2016年には映画(『ふたりの桃源郷』)化されたそうですが、残念ながら私はみていません。今も各地で上映されているそうなので、ぜひ、みてみたいものです。
寅夫じいちゃんは大正3年生まれ、2007年(平成19年)6月に93歳で亡くなった。フサコばあちゃんは大正9年生まれ、2013年(平成25年)1月に同じく93歳で亡くなった。
この二人が初めてテレビに登場したのは今から28年も前の1991年(平成3年)のこと。
地元の山口放送は1993年に30分番組で紹介した。それから2018年まで、実に27年間にわたって紹介したというのですから、中途半端な話ではありません。
桃源郷の山小屋には、電気も水道も通っていない。でも、四季を通じて山から水が湧き、切り拓いた土地をぐるっと囲むように2本の水流があるため、1年を通して水には困らない。何十メートルもホースをつなぎ、湧き水を山小屋のすぐ脇まで引いている。小屋の表にある水がめには、いつだってきれいな水があふれていた。
夜、明かりを灯したり、洗濯機をつかうときには発電機を回す。暖をとり、煮炊きするのには、もっぱら薪だ。毎日のように山の木々を切り出し、斧を振りおろして薪をつくるのは、70代も半ばを過ぎると、重労働だ。
1979年(昭和54年)秋、夫婦そろって18年ぶりに山に戻った。二人は、人生を山で再スタートしたのだ。
山口放送が取材して放送したのは27年間で100回にもなる。全国放送されたことも12回ある。
山には電話がないので、取材は事前にアポイントの取りようがなかった。テレビ取材は、アポなしの突撃取材だった。
風呂は五右衛門風呂。87歳のじいちゃん、82歳のばあちゃんの老夫婦二人だけの山での生活。「夫婦円満の秘訣は何ですか?」と訊くと、答えは、「そりゃあ、セックスじゃのう・・・」。これでは放送できない。東京から全国放送するとき、同じ質問があった。どうなるか・・・。答えは、「そりゃあ、『夜』じゃのう・・・」。
えがった、えがった・・・。なにしろナマ放送だったのです。
23年間続けた山での暮らしを寅夫じいちゃんとフサコばあちゃんは自分の意思で終わらせて、ふもとの町の老人ホームに入って生活するようになった。
こんな人生のすごし方も魅力的ですよね・・・。でも、山に住むということは、蛇だって、虫だって、すぐ身近な存在なんですよ。怖くもあります。都会生活に慣れていたら、やはり山に住むのは無理だと思います。窓にヤモリがくっつくのは可愛いものですが、ゴキブリが出てきて、ナメクジが台所あたりをはいまわるのが耐えられますか・・・。
(2019年10月刊。1500円+税)

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