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カテゴリー: アメリカ

三重スパイ

カテゴリー:アメリカ

著者  ジョビー・ウォリック 、 出版  太田出版
アメリカ映画『ゼロ・ダーク・サーティー』をみました。深夜0時半を意味する言葉です。アメリカ軍の特殊部隊ネイビーシールズが2011年5月1日、パキスタンに潜んでいたビン・ラディン邸宅を急襲し、ビン・ラディンを殺害した事件が映画化されたというので、さっそくみてきました。
 アメリカという国は、本当に野蛮な国だとつくづく思います。よその国の主権を踏みにじっても一向に平気なのです。しかし、それにしてもアメリカのすごいところは、いわばアメリカの恥部が堂々と映画化されるところです。CIAの女性調査官がCIAから裏切られ、CIAとたたかう話も映画化されました(『フェア・ゲーム』)し、FBIの捜査官が実はソ連のスパイをしていた(『アメリカを売った男』)というのも映画になりました。
 それはともかく、この『ゼロ・ダーク・サーティー』のなかに、2009年12月30日、アフガニスタンのCIA基地でアルカイダのヨルダン人医師の自爆テロによってCIA要員7人が即死するというシーンが登場します。この事件はオバマ大統領にも大変なショックを与えたようで、この事件の後は無人機を活用するように変えたといいます。
この映画では、ビン・ラディンの所在をCIAが追いかけて10年間、何の成果も上げられなかった苦労がずっと紹介されています。アルカイダの人間を捕まえて拷問にかけるのですが、しまいには拷問したCIA要員のほうが心を病んでしまうのです。
パキスタンやアフガニスタンの町の様子が紹介されます。たくさんの人々であふれかえって活気のある町です。軍隊と兵器だけでアメリカが勝てるわけはないと確信させる映像です。無人機をつかってアルカイダの幹部を殺害したり、ビン・ラディンを殺しても、第2、第3どころか、第100、第1000、どんどん次から次に代わりの活動家が生まれることでしょう。人を殺したら、その反作用があることを一刻も早くアメリカは悟るべきだと思います。
 2時間半という長い上映時間でしたが、最後まで身を固くしてスクリーンに釘付けになりました。だから、肩がこりました。
12月30日、パキスタンのCIA基地の司令官は45歳の女性だった。それにCIA屈指のターゲッターが一緒にいた。ターゲッターとは、テロリストの隠れ場所を発見し、追跡するエキスパートで、CIA暗殺部隊に目ざすべき場所を教えるのが仕事だ。
CIAのパネッタ長官はジレンマに陥っていた。CIAのミサイルは標的を片づけていくが、それだけでは十分ではない。司令官が殺されれば、また代わりが現れる。しばしば前の者より若く、さらに過激な思想を持ち、世界に打って出る野心を燃やす司令官が登場する。アルカイダは、そうした状況に適応している。地域のさまざまな部族組織のなかでアルカイダに従おうとする者たちがネットワークを広げていく。その一方で、アルカイダの頂点に立つ指導者は、安全な隠れ場所にいて、全体の戦略を立てる。
 アフガニスタンには、CIAの資金で創設された対テロ追跡の特殊部隊がある。訓練はCIAの特殊活動部が担当する。活動領域はアフガニスタンの東半分で、兵士の数は3000人。パキスタン生まれとアフガニスタン生まれのパシュトン人の混成国なので、部族の衣装を着て国境を越えて情報収集、テロリスト容疑者の拘束・暗殺をする。
 この本で自爆テロを敢行したヨルダン人医師はCIAのスパイになったふりをしていたようです。アルカイダのほうが、この医師をCIAのスパイとしてアルカイダの上層部に食いこんでいると仕掛けていたというのですから、何事も一筋縄ではいかないということです。
 CIA基地にやって来て、アルカイダのことを教えてくれるものと思ってCIA幹部たちが16人も出迎え、7人が即死したのでした。覚悟の自爆では防ぎようもありません。
 まさしく泥沼の世界です。憎しみが憎しみを生んで、報復の連鎖が続いています。
ペシャワールでがんばっている中村悟医師のような取り組みこそ応援したいものだと思いました。
(2012年12月刊。2300円+税)

ロボット兵士の戦争

カテゴリー:アメリカ

著者  P・W・シンガー 、 出版  NHK出版
戦場でアメリカ人が殺されないようにロボットを使い、無人飛行機を操作する。その結果、どうなるか。本当に「紛争」は解決するのだろうか?
この本を読むと、実は、その逆になる危険、つまりアメリカ本土での9.11並みの無差別大量テロを誘発する危険が高まるということが分かります。
 無人技術の使用は、大衆のアイデンティティーにもとづく政治的結束に拍車をかける。敵は機械を使って離れたところから戦っている。それに抵抗することは、自分の勇敢さ、人間らしさを示すことになる。不屈が新たなスローガンになっている。負けても反撃し続けろとね。
 普通の人間は、無人システムをイスラエル人とアメリカ人はやはり冷酷で残酷だというしるしと見なしている。自分たちと戦わせるために機械を送り込んでくる臆病者だと考えてもいる。男らしく戦おうとせず、戦うのを怖がっている。だから、自分たちが勝つには、イスラエルやアメリカの兵士を何人か殺すだけでいい。
 無人システムの使用が増大するほど、テロリストにアメリカ本土を攻撃する動機を与えることになる。
イラクの武装勢力は、自分たちの勢力地域を守ろうとしているのであって、占領者とみなす部隊に狙いを定めている。戦場で敵の兵士を殺すことができなければ、どこかよそで殺さざるをえない。戦場のアメリカ兵を減らすほど、武装勢力をアメリカ本土への攻撃に駆り立てるだろう。
 向こうが、こんなまったく不平等なルールでやるのなら、場所がアメリカであれ、こっちもこっちのルールでやらせてもらおう。
 アメリカが無人システムの使用を増やせば、テロリストはパニックを起こさせ危害を加えるため、はるかに邪悪な方法を見つけるだろう。
 いやはや、これは本当に怖いことですよ。アメリカ本土について遠隔操作で「テロリスト」親玉を暗殺して喜んでいると、実は身近に「テロリスト」が忍び寄っていることになるだろうというのですから・・・。思わずブルブル震えてしまう現実です。
 イラク戦争は、インターネットから戦闘の映像をダウンロードできる、まさしく最初の戦争だった。2007年の時点でイラクでの戦闘を撮影したビデオがユーチューブで流れたものだけで7000件をこえていた。
 無人システムによる誤認は、民間人の生命を犠牲にするだけでなく、味方の部隊に対しても起こりうる。
 敵からの距離が物理的にも気持ちのうえでも大きいほど彼らを殺しやすくなる。近くにいる兵士や直接戦っている兵士のほうが、殺すことにはるかに抵抗を示すが、距離が増えると、殺すことへの抵抗は、はるかに少なくなる。
 掃除機ロボット「ルンバ」は、あいロボットがアメリカ空軍用に設計したロボット「フェッチ」を進化させたもの。「フェッチ」はクラスター爆弾を取り付けていた。
あいロボットの売り上げと収益は5年間で10倍に増えた。2007年には7000点で300万台をこえるルンバが売れた。戦争用ロボット事業は年間60%も成長して、2008年には国防総省との契約額が2億8600万ドルに達し、3000台のマシンを供給した。あいロボットの軍事ビジネスは売上の3分の1を占める。
 小型戦車のような外観で、キャタピラーがついて、重さ45キロのタロンは最高時速9キロ、5時間も持続できる。2008年、イラクの戦場に2000台のタロンが活動した。イラクの地上では、22種類のロボットシステムが活動していた。
重さ510キロのプレデターは1機2450万ドル。滞空時間2400時間で、7900メートル上空を飛行できる。3000メートル上空から車のナンバープレートが読める。操縦する人間はアメリカにいて、アフガニスタン上空のプレデターを操縦する。プレデターは敵を発見すると、攻撃を指揮することができる。
 2007年にはプレデターが180機いて、プレデターが1年間にこなした任務は2000件をこえる。240件の奇襲攻撃を行った。
ロボット兵士は人間に代わるものではありえないことがよくよく分かる本でした。アメリカの軍需産業のためにたくさんの人々が殺されている現実を一刻も早くなくしたいものです。
(2010年10月刊。3400円+税)

ロッキード・マーティン、巨大軍需企業の内幕

カテゴリー:アメリカ

著者  ウィリアム・D・ハートゥング 、 出版  草思社
アメリカのF・35を日本の航空自衛隊は2011年12月に採用を決めた。しかし、技術的な問題を抱えており、実用化が遅れている。これに対してF・22ラプターは世界最強と言われるアメリカ空軍のステルス戦闘機。日本の航空自衛隊も欲しがったが、最新技術の流出を怖れるアメリカ政府が輸出やライセンス生産を禁止したため実現しなかった。
 このラプターは当初計画では750機を250億ドルで調査するはずだった。それが、その後、その半分以下の339機を倍以上の620億ドル(7兆円)ということになった。なぜ数を半分に減らしたのに、コストのほうは2倍半に膨らんだのか。
 それはバイ・インという手法による。先に契約をとっておいて、あとで値段をつり上げる手法だ。ロッキード・マーティン社は実際にははるかに多くかかることを知りながら、見積を低く入札したのだ。ここに、必ず予算オーバーになるからくりがある。
 2001年から2003年にかけてのアメリカ国防予算の増加分だけで、イギリス・中国をふくむ世界の主要国の国防予算の総額を上回っていた。
 アメリカの次期大統領専用ヘリコプター開発計画は、1機5億ドルもかかる。
 このヘリコプターは、アメリカ核攻撃を受けても、飛行しながら大統領は機内で調理された夕食をとることができる・・・。なんということでしょうか。
 ロッキード・マーティン社は、アメリカ最大の軍需企業である。連邦政府から受注した360億ドルのうち、290億ドルが国防総省との契約だ。ロッキード・マーティン社は、このほかキューバのグァンタナモ米軍基地にあるテロ容疑者収容施設へ取調べ官の派遣、アフリカのダルフールにおける人権侵害を監視するスタッフの派遣、ハイチでの警察官の訓練、コンゴ民主共和国で郵便事業の運営、アフガニスタンの憲法草案作成の手助けなど、さまざまな業務を行っている。
ロッキード・マーティン社は、議会へのロビー活動と議員の選挙運動資金の寄付として、2009年だけで、1500万ドルを使った。従業員は14万人。
ロッキードは朝鮮戦争で大いにもうかった。1952年までに国防総省が調達した航空機は第二次大戦後に減少した時期の3倍以上の9300機だった。
 1947年に19万2000人だった航空機産業の従業員数は、その3倍の60万人に膨れあがった。
 まことに、戦争というのは軍需企業を肥え太らせるものなんですね。これが戦争が世の中からなくならない大きな理由です。戦争で死んで亡くなる人、それを嘆き悲しむ大勢の人々がいる一方で、もうかつての笑いの止まらない一握りの金持ちがいるわけです。
 C-5Aという巨大な輸送機を見たことがあります。この本によると、このC-5Aは巨大な金食い虫であったばかりか、粗悪品、欠陥機とも呼ばれる代物だったというのです。知りませんでした。
 オスプレイは既に日本に配備されましたが、何回も死亡事故を起こし、欠陥機と指摘されている飛行機です。
ブッシュ(父)政権の国防長官だったディッグチェイニーはオスプレイ開発計画をつぶそうとした。それをクリントン大統領が予算を増額して推進した。
 クリントン政権初年度に年間30億ドルだったミサイル防衛関連予算は、2期目の最後の年の2000年には50億ドルにまで増えた。その結果、ロッキード・マーティンが受けとったのは、ミサイル防衛関連だけでも10億ドルをこえた。
 チェイニーの妻がロッキード・マーティン社から受けとっていた役員報酬は年俸50万ドル(5000万円)。
退役将軍の多くは防衛産業とつながっている。退役した将軍たちは頻繁にテレビに出場して、ブッシュ政権のイラク戦争の正しさを視聴者に売り込んだ。
 そうなんです。要するに軍というのは利権の巣なのです。だから、昔から軍人は戦争を好みます。嫌ですよね・・・。
 10年に1度戦争を起こし、在庫一掃の大チャンスだ。これが軍人のホンネなのです。
(2012年9月刊。2600円+税)

かつての超大国アメリカ

カテゴリー:アメリカ

著者  トーマス・フリードマンほか 、 出版  日本経済新聞出版社
いまやアメリカの全盛期は去り、中国の全盛期に取って代わられた。アメリカ人の多くがそう思っている。
 アメリカ人の切迫感は、アメリカの政治体制が、最大の難問と取り組むどころか、きちんと組み立てられてもいないという事実から生じている。
 現在、MITの工学部の教授団375人の4割は外国生まれだ。
 アメリカでは、破産にそんなにひどい汚名は伴わない。しかし、だれも破産を奨励してはいない。破産すると、数年間は与信に汚名がつくが、そのうちにそれも消える。簡単に破産できる分、簡単にやり直せる仕組みになっている。
 シリコンバレーの起業家たちは、なにかに挑戦して失敗し、破産を申告して、また挑戦し、それを何度もくり返し、やがて成功して金持ちになる。
アメリカ人には、政府は経済で積極的な役割を果たすことができないという誤った考えがある。これは危険だ。
 法律事務所で最初に解雇される弁護士は、信用バブルと住宅バブルの最中に仕事が急増したときに就職し、仕事をやり、やり終えると仕事がなくなった連中だ。
 いまも仕事があるのは、新しいテクノロジーや新しいプロセスを使って従来の仕事をもっと効率的にやる新しいやり方を見つけたり、これまでは存在しなかった仕事を考案し、新たなやり方でやったりしている弁護士だ。法律事務所も、あらゆる面でもっとクリエイティブかつ柔軟になる必要がある。
 アメリカの富裕層の上位1%が国民の年間収入の4分の1を手にしている。これを資産でみると、上位1%が全体の40%を支配している。25年前は、それぞれ12%と33%だった。
 その間、上位1%は10年間に18%収入増となったが、ミドルクラスの収入は逆に減少している。
 現在の富裕層は社会一丸となった行動の恩恵を必要としていない。自分たちの公園がある。自分たちだけのカントリークラブがある。自分たちの私立学校があり、公立学校に通う必要はない。自家用ジェット機や運転手付き自家用車など、自分たちの輸送システムがあるから、公共交通が老朽化しても平気だ。
 なーるほど、それで大金持ちは社会全体の福祉向上に関心がないのですね。それでも、一歩外に出たら多発する犯罪にビクビクしなくてはいけないと思うのですが・・・。
 民主党も共和党も、それぞれ中道派が消滅した。この2党は、互いをますます敵視し、相手の「皆殺し」を図っている。
 つい先日も、アメリカの小学校で痛ましい大量殺人事件が起きましたが、銃規制が進まないアメリカを見ると、いったいこの国はまともな国かと疑います。ましてや、全教員に銃を携帯させて教壇に立たせたらどうかという意見が出ているというのですから、アメリカは狂っているとしか思えません。
 それもこれも、殺し、殺されるのが昔からあたりまえという国だからなのでしょうね。ベトナム戦争、そしてイラク、アフガニスタンと戦後ずっと侵略戦争を仕掛けてきた国は、アメリカ国内の社会と人心を荒廃させてしまったのでしょう。
 そんなアメリカに盲従してきた日本政府も同じレベルだというのが悲しいところです。
 この本に、アメリカのしてきた侵略の歴史についての反省が見あたらないのが残念に思いました。
(2012年9月刊。2400円+税)

無罪

カテゴリー:アメリカ / 司法

著者  スコット・トゥロー 、 出版  文芸春秋
うまいですね、読ませますね。こんな小説を私も一度は書いてみたいものです。
 『推定無罪』の続編の名に恥じないとオビ裏に書かれていますが、まさしく、そのとおりです。そのストーリー展開に圧倒され、無言のまますばやく頁をめくっていきます。次の展開がどうなるのか知りたくてたまりませんから・・・・。
 推理小説ですし、ネタバレしてしまうのは、これからの読み手の楽しみを奪いますので、内容(ストーリー)は書きません。
 一般的に言うと、被告人は証言するほうがいい。無罪判決の70%は被告人が証言席に着いて自分を弁護したときに出ている。
 アメリカの刑事裁判では、被告人の本人尋問の機会がとても少ないような印象を受けます。日本では、被告人本人の尋問をしないなんて、まず考えられないところです。
 この本では、アメリカの裁判官が国会議員と同じように選挙で選ばれること、そして、選挙民の評判を落とさないため、自分が離婚したことが知られないようにすることが前提になっています。
 主人公は、妻と離婚したどころか、「妻殺し」として起訴されてしまうのですが、時間的にズレがあって、州の最高裁判事には当選するのです。
 しかし、かねてから主人公を面白く思っていない検察官たちは、「妻殺し」を立証できる証拠集め、ついに起訴に持ち込むのでした。つまり、検察官が裁判官を殺人罪で起訴するのです。
 しかも、この裁判官は20年前にも殺人罪で起訴され、無罪となったのです(『推定無罪』)。ですから、検察官の汚名を挽回すべくなされたのが今回の起訴だったのです。
 話は裁判官の情況証拠がきわめて疑わしいところで推移していきます。
 この裁判官は、実は不倫していた。その相手は部下だった。そして。そのことを「殺された妻」も知っていたのでは・・・。とてもよく出来た推理小説でした。
(2012年9月刊。2200円+税)

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