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カテゴリー: 社会

決戦!株主総会

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 秋場 大輔 、 出版 文芸春秋
 ドキュメント、LIXIL死闘の8ヶ月。辞任させられたCEOが挑んだ勝目の薄い戦いは、類例を見ない大逆転劇を生んだ。これが、サブタイトルであり、オビの文章です。
 創業者の一族がいつまでも大企業を牛耳るというのは、まるで感心しませんが、天下のトヨタも相変わらず創業者一族がトップなのですから、嫌になります。こうやって、下々の庶民階級とは別レベルの上流階級が日本の支配層として君臨しているのでしょうね・・・。
 創業家出身者といっても、株式自体は3%しか持っていないのです。なのに、天下の大企業を支配できるというのは、どんなカラクリがあるのか・・・。それも知りたくて読みすすめました。
 3%しか持っていない少数株主であり、会社に顔を出すことも滅多になく、月の半分以上はシンガポールで過ごしているというのに、日本の大企業を牛耳って、自分の思うように動かすなんて、信じられません。シンガポールでは、骨董品を収集したり、プロの声楽家を呼んで発声練習したり、悠々自適の生活。こんな生活を送りながら、鋭敏な経営感覚を持ち続けるなんて、ありえないことだと、しがない弁護士でしかない私は思います。
 ところが、世の中には、現場の実務なんて経営者は知らなくてもいい、大きな方向性を打ち出すだけでいい、そう考える人がいるのです。驚きです。
株主総会をめぐる死闘において、その背景にうごめいているのが弁護士。この本では、森・濱田松本法律事務所ともう一つ、西村あさひ法律事務所が登場します。CEOの解任が正当な手続を踏んでなされたのかどうかを検証する委員会が立ち上げられ、そこにも弁護士が関与しています。問題は、その内容を会社として、どういう形で外部に公表するか、です。あまりに会社に不利なないようだったら、会社としては隠しておきたくなりますよね。
財界、経済界の人脈は大切なようです。麻布・開成・武蔵という「私立御三家」の人脈、そして東大の人脈も登場します。私のような田舎の名もない県立高校の出身だと、人脈なんか、何もないわけです。大企業に就職しなくて本当に良かったと思います。
 アクティビストとは「物言う株主」。臨時株主総会の開催要求を常に視野に入れている。
プロキシーファイトとは、委任状・争奪戦のこと。ここでも弁護士の助言が求められます。機関投資家は、アクティブ投資家と、パッシブ投資家に大別できる。
こんな有象無象と渡りあう仕事なんて、私は絶対やりたくありません。なんで、こんな職業に大勢の若い人が興味があるのでしょうか・・・。私には理解できません。地方で人間と向きあっていたほうが、やはり一番私の性にあっています。田舎で弁護士をやるって、本当に面白いのですよ・・・。
(2022年6月刊。税込1870円)

テレビ番組制作会社のリアリティ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 林 香里 ・ 四方 由美 ・ 北出 真紀恵 、 出版 大月書店
 私はリアルタイムでテレビを見ることはありませんし、ドラマを見ることもありません。ただし、「ダーウィンが来た」とかドキュメントものを録画で見ることはあります。若者のテレビ離れが叫ばれて久しいわけですが、この本はテレビ番組をつくるほうの現状と問題点をレポートしています。
 テレビ局にとって、視聴率はイコール収入。なぜなら、広告収入の多くを占めるスポットセールスは、視聴率によって料金が決まる仕組みだから。
 持株会社グループとしては、番組を1本完全パッケージで外注するのではなく、必要なスタッフを労働力として「購入」することで、経費削減を図る。そのとき、自社系列の制作子会社に製作委託を集中させ、そこから番組にスタッフを派遣させ、また外部に孫請けさせる方法も増えている。
 製作会社のプロデューサーは、責任者ではあるが、あくまで下請けでしかなく、最終的な決定権は放送局の側にあるため、「調整役」だ。
 中堅世代の空洞化。スピーディーな意思決定が必要になるため、末端の若手制作者たちは全体像を見渡す時間的余裕がないまま歯車となって働くことを強いられている。そこで、入職して数年で辞めていく者が後を絶たない。
 制作会社と放送局の関係は、最近は「植民地」状態になっている。対等になるどころか、完全に子会社になっている。
 放送局では、入館証を首から下げる紐(ひも)の色で放送局員と制作会社の人の区別がつく。「番組」チームとして一体になって働いているが、実は、見えないけれど、厳然として「壁」が存在している。
 ディレクターになることで「Dに上がる」として「昇格」という感覚が共有されている。ところが、その判断基準は不透明だ。
 自主制作率は、大阪で3割、名古屋で2割、その他の地方は1割というのが目安だ。
 放送局内部の製作現場の厳しさがひしひしと伝わってくる本でした。
(2022年8月刊。税込2860円)

自民党の統一教会汚染

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 鈴木 エイト 、 出版 小学館
 読めば読むほど腹の立ってくる本です。もう、ホント、つくづく嫌になります。これが日本の政権党の実体かと思うと、恥ずかしいやら、悲しいやら、いえ、はっきり言って、吐き気をもよおします。衆院議長の細田博之は依然としてダンマリを決めこんでいますよね。萩生田光一・政調会長も同じです。逃げきりを許してはいけません。ひどすぎます。
 統一協会(この本は「教会」としていますが、協会が正しいのです)の教義は、日本人について、「人間的に考えれば、許すことのできない民族」と決めつけ、原爆投下も引きあいに出して悔い改めを迫っているのです。
 文鮮明(元教主。故人)は、儀式のなかで日本の天皇を自分の前でひざまづかせました。その妻であり、絶対君主のように君臨している韓鶴子現総裁は、安倍元首相について、自分たちに侍(はべ)るべき存在とみて、「教えてあげ、教育しなければならない」としていました。
 安倍元首相や桜井よしこなどは「美しい国・ニッポン」などと声高に叫んできた(いる)わけですが、日本は韓国に隷従すべき存在であるから、贖罪(しょくざい)するのは当然のこと、莫大な献金をしても、まだ足りないという統一協会の教義とはまったく相反するはずですが、お金と票、そして「反共」の点で醜い手を結んだのです。
 この本は、自民党議員が、いかに統一協会と手を結んでいるのかについて、突撃取材も繰り返しつつ明らかにしています。大変貴重な労作です。発表以来の3週間で4刷というのも当然ですし、もっともっと読まれるべき本です。
 たとえば、自民党の北村経夫参議院議員は統一協会の組織票8万票を上乗せして当選したこと、その裏では、アベやスガが画策したことが明らかにされています。
 統一協会が日本の政治家へ働きかけ、抱き込みを図っている目標は、真(まこと)の父母様(文鮮明と韓鶴子)の主権によって日本という国を自由に動かすこと。人類の使命は、真の父母様の民となること、というのです。実に恐ろしい教義です。
 菅元首相は、首相官邸に統一協会の幹部たちを招待していました。これまた、とんでもないことです。
 そして、安倍内閣のとき、統一協会と関係の深い議員たちが次々に内閣や自民党の要職に抜擢(ばってき)されたのです。これまた驚くべき事実です。これは、今の岸田政権でも同じことです。その典型が萩生田政調会長でしょう。
 統一協会は日本は過去に間違ったことをした、とんでもない民族なので、自分をかえりみることなく(すべてを捨ててでも)、全てを惜しみなく(韓国の人々に)与えなければならないと教えています。もちろん、受けとるのは韓国の民衆ではなく、文鮮明・韓鶴子とそのファミリーです。その利権をめぐって、文鮮明の死後に、母親と息子たちとのあいだで醜い争いがあり、アメリカでは裁判にまでなったのでした。なにしろ、日本から韓国に送金された金額は毎年300億円以上(何十年と続いています)なのです。
 体当たり取材も重ねて自民党と統一協会との深い関係、その闇を明らかにしている大変貴重な労作です。300頁ほどの本ですが、怒りをおさえながら、1時間あまりで読みあげました。
(2022年10月刊。税込1760円)
 博多駅で映画「ザリガニの鳴くところ」をみてきました。原作はアメリカで2019年、2020年に一番売れた小説です。全世界で1500万部突破したというのですから、すごいものです。
 私は昨年読んで、まさしく圧倒されました。なので、もちろんこのコーナーでも紹介しましたし、本好きの人に勧め、感謝されました。
 ともかく自然描写がすごいのです。森の中、沼地で生活する、しかも家族がどんどんいなくなり、少女が一人で生きていくのです。
 ところが、世の中には蔑視するだけではなく、親切な人もいて、やがて学校に行かなくても読み書きが出来るようになり、ついには恋人までもつくれました。しかし、それが裏切られてしまい、ついに殺人の疑いで起訴される…。
 いやあ、原作ほどの感銘はありませんでしたが、すばらしい映像です。必見です。そして原作を読むことを絶対おすすめします。

小さな労働組合、勝つためのコツ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 鈴木 一 、 出版 寿郎社
 今の日本社会ほど労働組合の存在が忘れられている時代はないように思えます。
 著者は、あとがきに次のように書いていますが、まったく同感です。
 先進資本主義国のなかで、日本ほど実質賃金の下がった国はない。その原因は、労働運動が弱くなったことにある。労働組合の多くが、企業で不祥事が起きても、それを告発したり防止しようとはせず、ただ傍観するだけの「名ばかり組合」になっている。政府や資本を牽制・対峙するような労働運動が日本にほとんどなくなった。
 そして、このような状況を打破するため、著者はその32年間の血と汗、苦労のエッセンスをこの本に実例とともに分かりやすくまとめました。いわば労働相談の手引書です。
 著者は、これまで150をこえる職場で労働組合を結成したというのです。すごいですね。そして、その8割で組合つぶしの不当労働行為が発生して、たたかったのでした。
 労働組合の結成を成功させるコツは、組合員に労働者の権利と不当労働行為制度を理解させること。当事者が腹をくくり、専従オルグがしっかりサポートすれば、職場での多数派を直ちに形成するところまでいかなくても、組合結成は必ず成功する。
 組合員がパニックに陥らないように、あらかじめ対策を立てておく。会社側が表の顔と裏のそれを使い分けているようなときには、裏で何を企むのか、想像力を働かす必要がある。
 団体交渉では、ハッタリにひるまないようにするのが肝心。団体交渉は、格闘技であり、相手をどう抑え込むかにかかっている。
 何の計画性もなく、ただ「その場で思いついた」という争議行為はとても危険だ。
 32年間ものあいだ、労働組合づくりと団交等に生き甲斐をかけた日々を振り返って後進に自分の経験から学べるものを伝えるべく、整理しています。とても実践的かつ分かりやすい本です。どうぞ手にとって読んでください。
(2022年10月刊。税込1980円)

若葉荘の暮らし

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 畑野 智美 、 出版 小学館
 40歳以上の独身女性というのが入居条件となっているシェアハウスに入居するようになり、そこでの生活にいつのまにか安らぎを覚えるようになる主人公の日常生活が描かれています。とくに何か大事件が起きるわけではありません。
 主人公は一度も結婚したことがなく、ずっと独身。それでも、彼氏はいたのです。ところが、なんとなく踏み切れないまま別れてしまったのでした。仕事は、洋食屋のウェイトレス。小さな店なので、正社員ということではなく、アルバイト。
 ところが、コロナ禍で客が激減し、店の存続が心配になる。オーナー夫婦はいい人だし、従業員同士の人間関係も悪くはない。シェフ見習いは、新しいメニューを開発しようとしていて、試作品を店員みんなに持ち帰らせて、意見を求める。主人公もシェアハウスに試作品のコロッケなどを持ち帰って、その住人に意見を求めてみる。
 飲食店はコロナ禍の下、客が減って大変だ。主人公は、かといって簡単に転職するなんて考えられない。まったく移る先の宛(あて)がない。
 主人公が5年前までつきあっていた彼氏は、別の女性とも交際していて、結局、そちらを選んだ。浮気とか二股とかとは、少し違う。なので主人公は怒ってはいない。彼氏が対等に生きていける女性を人生のパートナーとして選んだ。そのことをとがめだてするつもりはない。今は、洋食店に客としてやって来る男性と交際してもいいかなとは思うものの、なかなか踏み切れない。
 彼氏とは別れる直前までセックスもしていたけれど、それは特別なことではなくて、日常的な行為だった。セックスは、若いときほど貴重でないというが、そんなに大事にすることなのかなという感じ。経験した人数は、そんなに多くはないし、どちらかというと少ないとは思うけど、ひとりとしか寝ないということでもない。もっと色んな人と寝ておけば良かったと考えることもある。
 もう子どもを産むこともないだろう。そうすると、セックスになんの意味があるのか、悩んでしまう。これから彼氏ができたとして、なんのためにセックスするのか…。それが愛の証(あかし)と言えるような、重要なことには思えない…。
 これが40代の独身女性の心境なのでしょうか…。
 このシェアハウスは、もとは学生向けのアパートだった。それを改装して、台所と風呂場とトイレを共有スペースにして、40歳以上の独身女性限定のシェアハウスにした。
 学校でちゃんと勉強してきた人と、そうでない人で、ベースが違うと感じたことがあった。中学生や高校生のときに、まったく興味がもてないと文句を言いながらも暗記した日本史や世界史、なんの話をしているのか分からないと思いながらも考え続けた生物や化学や物理、見るだけで頭が痛いと感じながらも解き続けた数学。役に立ったとはっきり思えるような出来事があったわけではないけれど、たしかに覚える力や観察する力、そして考える力が養われていたのだ…。
 女性にも、男性にも、それぞれ抱える問題がある。本来は、政治がどうにかしていくべきことなのだろう。でも、それを期待できるような国でないことも、分かっている。声を上げることは必要だ。でも、変わることを待つばかりでなく、自分たちで助けあう方法も考えなくてはいけない。
 いろいろ、しみじみと考えさせられるストーリー展開でした。
(2022年9月刊。税込1980円)

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