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カテゴリー: 社会

日本人は、なぜ世界一押しが弱いのか?

カテゴリー:社会

著者  齋藤 孝 、 出版  祥伝社新書
私は一般的な日本人論を読むのを好みません。聖徳太子の「和をもって貴となす」というのは、当時あまりに紛争(裁判)が多かったので、日本人よ、もめごともほどほどにせよと諭したということなのです。ところが、今ではまったく逆に昔から日本人はもめごとを好まなかっただなんて、とんでもない使い方がされています。
 また、イザヤ・ベンダサンにも一時期ころっと騙されてしまいました。なあんだ、正体は日本人だったのか、よくぞなりすましてくれたものだと思いました。とは言っても、この本には得るところがありましたので、紹介します。
 テレビのワイドショーでは、思いついたことの8割は言えない、言ってはいけない。なぜなら、本当のことは、ほとんど人を怒らせることだから。日本のテレビでは、人を怒らせることや傷つけることを言う人は、だんだん出演が減っていく。
 私も、30年ほど前にNHKの朝「おはようニッポン」の全国生中継番組に出演したことがあります。事前の打ち合わせのとき、たとえば国内の先物取引業者を悪く言ってはいけないと釘をきつく刺されました。同じようなだましの手口を使っても、政府公認の業者は許せということです。
 日本人は大陸から渡ってきた民族だ。つまり、押しが弱いために土地を追われ、大陸から押し出されてしまった人々の末裔なのではないか。
 ええっ、これって、ホントでしょうか・・・。信じられません。
 中国人や朝鮮人に比べて日本人は肉食が向いていない。肉は日本人の弱い胃腸には適さない。同じように、胃腸の弱い日本人は量をたくさん食べることもできない。
 日本人は、超肥満になれない。超肥満になるには、それだけインシュリンを多く分泌する能力があるということ。内臓の弱い日本人は、インシュリンもたくさんは出ない。そのため、超肥満になる前に糖尿病になってしまう。
 日本人には「個」が弱いから、一人では生きていけない。集団でなければ生きていけないので、集団で生きるために忍耐力と協調性が必要となった。
 日本は、場の空気を読むことが常に求められる社会である。
 葦原(あしはら)の瑞穂(みずほ)の国は神(かむ)ながら、言挙(ことあ)げせぬ国
 これは『万葉集』におさめられた柿本人麻呂の歌。日本は太古から「言葉にしてはっきり言わないこと」をよしとしてきた。それをしてしまうと争いになるからだ。
 日本人の微笑(ほほえ)みは、人間関係を穏やかにするための相手の配慮である。
 セックスは全身的な行為なので非常に疲れるうえに、気を遣うので、精神的にも負担を感じてしまう。セックスは対人行為なので、ストレスが生じるが、自慰はストレスがないから気が楽だ。
 日本人の学校好きは筋金入りだ。その証拠に日本人は同窓会が大好きだ。
 日本の古文は、世界に誇るべき奇跡の文章だ。古文は、誰が、誰にというのがほとんど書かれていない。読み手が、それらをすべて補わなければならない。古文は、すべてが曖昧である。
日本の文化には、お笑いと温泉と食べ物という三つの世界に誇るべきものがある。
 日本人は押しが弱いけれど、その分穏やかという特性をもっている。性格は、明るくまじめ、几帳面で粘り強い。
 今どきの学生は、ケータイ(スマホ)がネットしか使っていない。一人ひとりが自分の見たいときの自分の見たい情報しか見ないようになっている。これは、とても危険なこと。情報の共有ができなくなっている。
 多くの人が同時に情報を共有していることは、それ自体がとても大切なこと。なぜなら、みんなが知っていることで初めから話がすすむということがあるから・・・。
 弁護士の中にも口頭での討論を不得意とする人が増えてきて、心配です。
(2012年6月刊。780円+税)

ブラック企業

カテゴリー:社会

著者  今野 晴貴 、 出版  文春新書
だれでも知っている日本有数の大企業までもブラック企業なんですね。おどろきました。まあ、たしかに日本経団連は人間とりわけ若者の使い捨てを率先してすすめていますから、有名大企業がブラック企業だとしても驚くことはないのでしょう。
 でも、こんな事をしていたら、日本の若者をダメにしてしまうし、ひいては日本の将来をお先まっ暗にしてしまいます。一企業の私的利益に日本の若者ひいては日本の将来を奪わせてはなりません。
 「おまえたちは人間のクズだ。なぜなら、今の時点で会社に利益をもたらすヤツが一人もいないから。お前たちは先輩社員が稼いできた利益を横取りしているクズなのだ」
 こんなことを堂々と新入社員の前で演説する人事担当役員がいるというのです。ひどい話です。自分の胸に手をあてて考え直してほしいものです。実は、あなたもかつてはクズだったんですよね。そして、定年退職してからの年金を負担しているのは誰なんですか。あなたが、「クズ」と決めつけた「若者」たちではないのですか・・・。
 人事担当役員が「カウンセリング」を始めると、徹底的に自己否定することを強いられる。会社によるハラスメント手法に共通するのは、努力しても何をしても罵られ、絶え間なく否定されるということ。新入社員研修では、ひたすら精神面の指導が行われる。
 技術の向上や基本的な社会人としてのマナーを教えることが目的というより、従順さを要求し、それを受け入れる者を選抜することにある。
○○シロでは、店舗運営のマニュアルを暗記することが求められる。社外秘の資料なので、自宅で復習するためには店で書き写すことが求められる。明らかに不効率な方法だが、そこでは、根気があるか、会社に忠実かを見ている。
 半年で店長になれるのは、4分の1から3分の1くらい。入社して2年間は本当に採用されるために活動しているようなもの。その間に半分は辞める。店長になる過程は、同時にリタイアする過程でもある。
○○シロでは、みずからの過剰労働やパワハラを労働災害だと実は理解している。
成果主義のような目に見える効率一辺倒の企業体質は労働基準法を無視し、働く人を使い捨てします。
ブラック企業問題は、若者の未来を奪い、さらには少子化を引き起こす。これは日本の社会保障や税制を根幹から揺るがす問題である。同時に、ブラック企業は、消費者の安全を脅かし、社会の技術水準にも影響を与える。ブラック企業の規制を実現してこそ、日本経済の効率性を高め、社会の発展を実現できる。
 なんでも「規制緩和」万能の風潮が強まっていますが、とんでもありません。労働者保護は、日本社会の健全な発展に必要不可欠なものです。ぜひ立ちどまって考え直してほしいと思いました。
 まだ30歳という若手の著者です。大変勉強になりました。ひき続き、がんばってください。
(2012年12月刊。770円+税)

「移民列島」ニッポン

カテゴリー:社会

著者  藤巻 秀樹 、 出版  藤原書房
現代日本にも、アメリカやヨーロッパほどではありませんが、たくさんの移民が住んでいるのですね。
 その実情を現場に足を運んで取材した日経新聞記者のルポルタージュです。
フランスには全人口の8%にあたる490万人の移民がいる。
 日本の外国人登録者数は208万人近い(2011年末)。総人口に占める割合は1.63%にすぎない。
日系ブラジル人やペルー人がデカセギ労働者として日本に来ている。ブラジル人は21万人いて、東海地方に日系人が集中している。
 浜松市は人口82万人のうち、外国人が3万人いて、その6割が日系ブラジル人だ。その子どものなかには、日本語も母国語のポルトガル語も身に付いていない子どもがいる。
 新宿区大久保はコリアンタウン化がすすんでいる。地価も上昇している。大久保には、1980年代以降に来日したニューカマーが多い。
 中国人が67万5000人とトップを占め、池袋には1万2000人が住んでいる。
江戸川区には2000人のインド人が住んでいる。ほとんどがITの技術者である。そのため、2、3年でインドに帰っていく。
 新宿区の高田馬場には1000人のミャンマー人が住んでいる。カチン族も500人いる。
 日本にいる移民の実情を多角的に知らせてくれる本でした。
(2012年10刊。3000円+税)

感情労働シンドローム

カテゴリー:社会

著者  岸本裕紀子 、 出版  PHP新書
 上司が部下に注意をしたとき、部下が逆ギレして過剰反応することがある。
 「そういう、上から目線、やめてくれませんか」
そんな部下は、自分に自信がなく、劣等感にさいなまれている。そして実は、主導権を握って、それでバランスをとろうとしているのだ。
 ところが、問題は、それを言われたときの上司の対応。意外にも深く気にして、その言葉に縛られてしまうのだ。それは、今という時代が、「他人から気に入られる」ことにポイントが置かれた時代だから、下から上への攻撃に対して、狼狽するばかりになってしまう。
 感情労働は、相手が期待している満足感や安心感をつくり出したり、不安感を解消させるために自分の感情をコントロールするものである。
 感情労働が求められる職業には三つの特徴がある。
 第一に、対面、声による顧客との接触が不可欠である。第二に、他人に感謝の念や恐怖心など何らかの感情の変化を起こさせなければならない。第三に、雇用者は研修や管理体制を通じて、労働者の感情活動をあるある程度支配するものであること。
 感情労働がそのまま要求される職種としては、看護師、介護士、保育士、そして医師や弁護士。いずれも困っている人の悩みにより添う仕事。また、役所や銀行の窓口業務なども、感情労働が要求される仕事である。
 感情労働とは、仕事において、相手が望んでいる満足感や安心感をつくり出したり、不安感を解消させるために、自分の感情をコントロールする労力のこと。
 弁護士にも営業力が求められている。クライアントをいかに獲得するか、そしてかに引き留めておけるか。この営業力が採否を決める大きなポイントになる。
 これは、本当にそのとおりです。クライアントの心をつかみながら仕事を進めることのできる弁護士が求められています。きちんと会話ができて、問題点を正確につかむ。そのうえで法律構成を考える。さらに事件の処理の進行過程を逐一クライアントに報告して信頼を増していく関係を築きあげる。
 「オレにまかせておけ!」
 こんな旧来のやり方の弁護士ではもう時代遅れです。
 新しい視点を提供してくれる本でした。弁護士にも実務的に役に立つ内容がたくさん書かれています。
                (2012年11月刊。760円+税)

「本当のこと」を伝えない日本の新聞

カテゴリー:社会

著者  マーティン・ファクラー 、 出版  双葉新書
ニューヨーク・タイムズ東京支局長というアメリカの記者が日本の新聞は「本当のこと」を伝えていないと厳しく批判しています。残念なことに、まったくそのとおりと言わざるをえません。
 先日の総選挙のときもひどかったですよね。民主党大敗、自民党大勝を早々と大きく打ち出して世論を露骨に誘導しましたし、「第三極」を天まで高く持ち上げました。まさしく意図的です。月1億円の勝手放題に使っていい内閣官房機密費の最大の支出費は大手マスコミの編集幹部の買収費に充てられているのではないかと思えてなりません。
とは言うものの、アメリカの新聞・テレビも、遠くから眺めている限り「権力者の代弁」という点では日本と同じではないかとしか思えません。民主党と共和党の違いは、カレーライスかライスカレーかの違いと本質的にはあまり変わらないのではありませんか。オバマ大統領への期待もすっかり薄れてしまいました。
 日経新聞は企業広報掲示板である。
 私は日経新聞の長年の愛読者ですが、実は、そのつもりで読んでいます。大企業をいかなる場合でも露骨に擁護する新聞だからこそ、企業のホンネがにじみ出ているものとして価値があると考えています。
 日経新聞は、当局や一部上場企業が発進する経済情報を独占的に報道している。それは寡占というレベルではない。日経新聞の紙面は、まるで当局や起業のプレスリリースによって紙面が作られているように見える。大きな「企業広報掲示板」と同じだ。大手企業の不祥事を暴くようなニュースを紙面を飾るようなことは、まずない。
日本の新聞記者は日経新聞に限らず、大企業の重役たちと近く、べったり付きあっている。だから、いざというときに踏み込んだ取材をしたり、不正を厳しく指摘することがない(できない)。たとえば、民主党の有力参議院議員の誕生日を祝う会が担当記者50人の出席で開かれた。もし、こんな誕生会を企画して国会議員にプレゼントまで記者たちが贈っていることが分かれば、ニューヨークタイムズの記者なら即刻クビを宣言されるだろう。ジャーナリストとしての基本が疑われる重大問題なのだ。
 日本の記者はあまりにエリート意識が強すぎる。記者は東大や京大といった有名国立大学、そして早稲田や慶應という難関私立大学の出身者ばかりだ。つまり、官僚とジャーナリストは、同じようなパターンで生みだされている。大学で机を並べていた者たちが、官庁と新聞社という違いはあるにせよ、「同期入社組」として同じように出世していく。権力を監視する立場にあるはずの新聞記者たちが、むしろ権力者と似た感覚をもっている。
このことにアメリカの記者である著者は率直に驚いています。
 日本のマスコミ(記者)は、政治家に対しては割と批判的なのに、行政バッシングはできるだけ避けようとする。
 東大法学部を卒業してマスコミ業界に入っていく人は昔から多いのですが、その彼らが官僚や政治家そして自民党に何重ものしがらみでからめとられている実情を聞かされて大変おどろいたことがあります。
 日本のマスコミには、大いに反省してほしいと思わせる本でした。
(2012年9月刊。800円+税)

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