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カテゴリー: 社会

いちえふ(1)

カテゴリー:社会

著者  竜田 一人 、 出版  講談社
 福島第一原発で働いている現役作業員がマンガで仕事を紹介しています。
 写真より、もっと臨場感がある気がします。現場作業員が実際に働くまでには、毎日、大変な手順をかけることを改めて知りました。頭から靴まで、全身を汚染からガードするために完全防備するのです。これでは息苦しくてたまりません。夏には、炎暑のため、汗だくだくになるそうです。
 そして、ヘルメットをかぶると、たとえば鼻の先がかゆくても、かけないのです。ガマンするしかありません。これって辛いですよね・・・。
 そして、この本では、福島第一原発の作業員になる大変さも紹介されています。
 ハローワークには、たくさんの求人広告が出されているようです。ところが、そのなかにはインチキ会社も混じっているようなのです。そして、運良く採用されたとしても、すぐに原発の現場作業に入れるとは限りません。
 なにしろ、東電の下の下の下の下の下の下あたりの会社に入ることになり、日給2万円のはずが、日給7千円とかになってしまうのです。そして、そこから宿舎の費用や弁当代が差し引かれるというのです。現場作業では熱中症にかかったり、いろいろ大変のようです。マンガで、その大変さがリアルに紹介されています。イメージとして、よく伝わってきます。
 「原発事故は収拾した」なんていう政府発表なんて、まったくのインチキだと言うことも実感できるマンガです。
 現場作業員の実際が絵に描かれていますので、原発事故の対応の全体像が描かれているわけではありません。だから、その恐ろしさが十分に伝わってこないという恨みがないではありません。それでも、暑さのなかでの全身防護服での作業をしていることの大変さ自体は、よく伝わってきます。
 日本人、とりわけ原発輸出に賛成している人には、必見のマンガなのではないでしょうか。
 あなたにも、この原発災害の復旧現場で働く覚悟がありますか?
 私は申し訳ありませんが、その覚悟はありません。ただただ、原発の即時廃止に向けての工程表を一刻も早く確立すべきだと主張するばかりです。
(2014年1月刊。580円+税)

伊藤彦造、降臨!神業絵師

カテゴリー:社会

著者  松本品子・三谷薫 、 出版  河出書房新社
 剣戟(けんげき)場面の挿絵は実にリアルで、迫真的です。これが新聞の挿絵だったら読まれること間違いないでしょう。私も、伊藤彦造の名前こそ覚えがありませんでしたが、この絵はなんとなく見覚えがありました。
 ともかく迫力があり、真に迫っています。それもそのはずです。一刀流の開祖である剣豪・伊藤一刀斉の末裔として生まれ、幼いころから父親より剣の手ほどきを受け、小学4年生からは真剣で修行していたのです。
 ですから、そこには壮絶な死を予感させるような緊迫した剣戟シーンがつくり出されています。そして、濃密なペン画ですから、緊迫感が画面いっぱいにあふれています。
 66歳で絶筆し、2004年に100歳で亡くなるまで、絵を描かなかったというのもすごいことです。絵の迫力が違います。すごい日本人がいたものです。ぜひ、絵をみてみてください。
(2013年12月刊。1800円+税)

亡国の安保政策

カテゴリー:社会

著者  柳澤 協二   、 出版  岩波書店
 安倍首相の狂ったような暴走ぶりは、まったく度しがたいものがあります。この本のオビに、日本にとって最大の「脅威」は安倍政権だ、とありますが、本当にそのとおりです。
 韓国・中国と対立・反目しあい、アメリカからは大いに失望されている安倍首相の支持率が6割近いだなんていったい、日本人は何を考えているのでしょうか・・・・。
 昨年12月に成立した「特定秘密保護法」については、その必要性に疑問を唱えてきた。その秘密の範囲があいまいで、政府が恣意的に「秘密」を指定する可能性がある。そして、いったん指定された「秘密」が永久に公開されないおそれがある。また、一般国民を対象として犯罪者として恣意的に取り締まる危険性があるから。
国家の安全は、国民の知る権利(これは、国民主権を意味する)に優先すると自民党の有力議員が発言したが、とても信じられない。
安倍首相は、次のように言った。
 「今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、アメリカが攻撃されたときに血を流すことはない。そういう事態の可能性は、きわめて小さいが、それでは完全なイコールパートナーとは言えない」
「血を流す」というのは、自衛隊員の生命が失われること。自ら生命の危険に身をさらすことのない立場の人間が、日本人である自衛隊員の命にかかわることを軽々に口にすることに怒りを覚える。
 今日の尖閣諸島をめぐる日中対立の原因は、中国の強硬路線への転換に主因があり、日本外交の失敗がこれを顕在化させた。尖閣問題は、戦に日本が弱腰だから発生したわけでも、日本が強腰なら解決するわけでもない。それは、双方のナショナリズムの発露なのであった。
 安倍政権は、小泉政権のポピュリズムの流れを引き継いだ。メディアという「劇場」で、分かりやすい「敵」を設定し、その敵をやっつける「ヒーロー」を演じて、大衆を陶酔させる。そこで求められているのは論理ではなく、感情に訴えることである。
 安倍首相は、アメリカとの軍事的双務性をすすんで追求し、アメリカのと対等な関係を築くことによって、大国としての日本を「取り戻す」という「報酬」を求める型のパワーポリティクスへ転換しようとする。ところが、このパワーポリティクスこそ、タカ派と言われた中曽根首相をはじめとして、歴代の自民党政権が露骨に追求することを避けてきた手段であった。この手段をとれば、憲法に真正面からぶつかる必然性がある。その点、安倍政権は、歴代の自民党政権とは明確に異なる指向性をもつ。日本にはその実力がなく、あったとしてもアメリカが同調することはなく、日本の国益にも反する歴史認識と尖閣問題は、安倍政権についてのアメリカの一貫した懸念事項であった。
 2013年10月に来日したケリー国務長官とヘーゲル国防長官は、アメリカの閣僚として初めて千鳥ヶ淵戦没者墓苑に参拝した。この千鳥ヶ淵参拝には、歴史認識に関して日本がアジアの情勢における緊張要因とならないようにアメリカがアメリカが釘を刺すという意味があった。にもかかわらず、それが無視された。安倍首相の靖国神社参拝は、アメリカとの矛盾を顕在化させ、政権維持のよりどころである与党・公明党の反発を招いた。安倍首相が本来の「安倍カラー」を出さなければ強固な支持層の失望を招き、出せばアメリカと連立パートナーとの矛盾が表面化せざるをえないところに、安倍政権のかかえる構造的な脆弱性がある。
 砂川事件の焦点は、在日米軍基地の拡張であり、日米安保条約による米軍への基地提供が問題とされていた。
 集団的自衛権は、現実の世界では、大国が小国に軍事介入することを正当化するための論理として使われてきた。
 集団的自衛権を行使する国というのは、「普通の国」ではない。それは「大国」以外にありえない。いま考えるべき一番重要なことは、日本が真にやる必要があるのは、他国の軍隊を守ることなのか、住民や文化を守ることなのか、ということ。つまり、海外に展開する米軍に対する攻撃のため、日本が出動するということがあっていいのか・・・・。それは、無用の戦争に日本が巻き込まれてしまうことを意味している。
 日本政府は、戦後一度もアメリカの武力行使に反対したことがない。
 「総理大臣の総合判断」ということに歯止めの役割を期待することはできない。
 尖閣諸島に「武装した集団」の上陸があったときには、日本に対する侵略として、防衛出動で自衛隊が出動して排除することができる。これは個別的自衛権であって、集団的自衛権ではない。
 安倍首相のいう「積極的平和主義」というのは、憲法解釈変更への国民の抵抗を減らすためのトリックにすぎない。
 日本が、歴史認識や尖閣諸島をめぐって強硬な姿勢を貫けば、アメリカだけでなく、日本自身の国益を損なうことになる。今日の北東アジアでは、日本ばかりでなく、韓国も中国も、政権の正統性を守るため、国民感情をあおり、戦争を避ける方向とは逆の方向で行動している。危機の本質はそこにある。国民の感情を必要以上に掻き立てないことが求められている。
 著者への講演を開いたことがありますが、いたって冷静、かつ防衛現場の実情をしっかり踏まえた内容でしたので、とても納得できました。
 いま、大いにおすすめの本です。
(2014年4月刊。1400円+税)

もう一度、天気待ち

カテゴリー:社会

著者  野上 照代 、 出版  草思社
 あの黒澤明監督の下で働いていた著者による大スターたちの生態は興味深いものがあります。
 クロサワがミフネの演技にわずかにしても不満を抱いたのは、おそらく『赤ひげ』が初めてだろう。
 三船敏郎の主演する映像では、なんといっても『七人の侍』ですよね。かなり前ですが、福岡の映画館でリバイバル上陸があったのを見ました。やはり大きなスクリーンで見ると迫力が違います。家庭のテレビ画面とは迫力が違います。仲代達代と三船敏郎が出演する『椿三十郎』にも度肝を抜かれました。血しぶきのすさまじさに圧倒され、声も出ません。
 三船も仲代も、セリフを手書きで書いて、丸暗記していたようです。やっぱり、すごい努力のたまものなのですね・・・。
 しかし、三船と仲代はロケ先で口論し、その後は競演していない。
 三船敏郎の酒乱は有名だった。日頃は、とても気をつかうので、お酒を飲むと、その反動で、爆発したのだった。
 『七人の侍』で撮影現場になったのは、東宝撮影所の前の田圃。今は、団地になっている。雨の合戦にしたのは、西部劇には雨がない。よし、雨で勝負だと黒澤監督が考えたから。撮影したのは2月。田圃には氷が張り、消防車8台を借りて、ホース40本。足もとは、膝まで埋まる泥んこで、馬が暴れるから身動きもできない。三船敏郎は裸同然で寒さに震えて、歯をガチガチいわせていた。
 『七人の侍』には、老人ホームの素人にも登場してもらっているとのこと。映画のお婆さんたちがそうです。
戦後まもなく、ヒロポンが禁止されていなかったころ、撮影現場では、ヒロポンが堂々と注射されていたという話には驚かされます。ヒロポンは、今の覚せい剤みたいなものでしょう。もちろん、今では厳禁です。
ガチンコは、画と音をあわせるための唯一の手がかりだ。画面と録音された音をあわせると、セリフと物音が同時に再現される。
 三船敏郎のように周囲に気を配ってばかりいる人には映画監督はできない。優れた映画監督というのは、たいてい我がままで、他人が何を言おうと気にしない。自分が撮りたい対象をつくるためには、他人の迷惑なんかかえりみないという人なのだ。
 さすが、世界的巨匠であるクロサワ監督の身近にいた人による鋭い観察だけある本でした。
(2014年2月刊。1900円+税)

虚像の政商(上・下)

カテゴリー:社会

著者  高杉 良 、 出版  新潮文庫
 いつものことながら読ませます。この著者の筆力には、進むたびに驚嘆するばかりです。ぐいぐいと修羅場に引きずり込まれ、ついつい憤慨してしまったりするのです。
 今回の舞台は、政商です。いつの世にも、政治をビジネスチャンスとしか見えない守銭奴のような人間がいます。でも、まあ、それが軍需産業でないだけ、まだ平和な社会なのかもしれません。といっても、安倍首相は、武器輸出三原則を緩和してしまいましたから、おいしい軍需産業が大型公共事業にとって代わるのかもしれません。いやですね、というより怖いことです・・・。
 解説文を紹介します。
 ある銀行のトップが、こう言った。
 「池井戸潤も許せないが、高杉良はもっと許せない」
 高杉良は銀行にとってのタブーに挑戦している。池井戸は銀行を取りまく「闇」にはアタックしていない。闇に踏み込むには、作者にも危険を恐れない覚悟がいる。高杉良は、見ていてハラハラするほど、それを当然のものとして小説を書いてきた。
 百田尚樹は、出光佐三を偶像視しているのに、高杉良は、労働組合のない、社員にとって息苦しい会社をつくった男として出光佐三を描いている。
 この小説のモデルは、オリックス会長の宮内義彦。高杉良の『週刊新潮』の連載が終わったとき、宮内義彦は、「ホッとした」ともらした・・・。
 宮内義彦は、まさしく政商の典型です。規制緩和のかけ声に乗って、自らビジネスチャンスをつくり出して、大もうけしていったのでした。本当に許せません。まさに、宮内義彦は「利権を食うひと」でした。
 公職につく者が、その地位により誰より早く得られる情報を活用して事業を推進すれば、それがどんなに崇高な精神で行われたとしても、うさん臭いものに墜落してしまう。ましてや、崇高な精神なんて、全くなかったとしたら・・・。
 「改革」とは名ばかり、大きな虚業を生み出して、日本経済をむしばんでいった・・・。
 宮内義彦が組んでいた竹中平蔵については、次のように断罪されています。まったく同感です。
 「デフレ不況のさなかに無用なまでに厳しい資産査定を断行し、日本経済の屋台骨を支える多くの中小企業の息の根を止めた男だ。自らの失敗を恥じるどころか、円安による輸出企業の好調で、マクロ経済が底を打ったことを、銀行の不良債権処理による功績とすり替えた、稀代の詐欺師と評する向きもある」
 こんなロマンのない男たちを書きながら、その部下を主人公としてロマンを感じさせつつ、一気に展開し、さらにリース業界の専門用語まで駆使するのは、さすが、さすがと言うほかありません。
(2014年4月刊。750円+税)

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