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カテゴリー: 社会

原点

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 安彦 良和、斉藤 光政 、 出版  岩波書店
私は見たことも読んだこともないので、どんなストーリーなのかも全然知りませんが、『機動戦士ガンダム』の作者が自分の生い立ちなどを語っている本です。著者は私と同じ団塊世代で、弘前大学で全共闘のリーダーとして活動していて、大学占拠の罪に問われて警察に逮捕され、刑事被告人にもなったとのことです。
弘前大学というと、連合赤軍事件で生き残って逮捕された植垣康博と青砥幹夫という二人も著者と同じころの卒業生になります。
「弘前大学の全共闘運動をとおして、大まじめにばかをやった。いま考えると、たしかにこっけいだけど、シリアスな問題もかかえている」
著者は、このように語っています。
「憎しみをバネにした革命の時代は終わった。そういう革命は、人を幸せにしない」
この言葉には、私もまったく同感です。もしも全共闘が革命に成功して、天下をとっていたら、カンボジアのポルポト政権と同じようなこと、大虐殺をしていたことでしょうね。恐ろしいことです。なにしろ、「敵は殺せ」の論理でしたから・・・。
いま、著者のマンガは、分かりあえない時代や社会だからこそ、分かりあえたら、どんなにいいだろう、という考えに立脚しているとのこと。素晴らしいです。惜しみない拍手を贈ります。
著者は、北海道北部の北見地方に生まれ育った。父親は屯田兵二世。
幼いことから絵を描き、マンガを描いていた。ちばてつやも同じでしたね。
イラストやマンガは習うものではない。教えてくれる人はいなかったので、見よう見まねで幼いころから描いていた。自分の絵に師匠はいない。
著者は手塚治虫の虫プロダクションに入り、アニメの世界にもしばらくいました。そのうち、独自の世界を切り拓いていったわけです。
この本の最後にある著者の言葉を紹介します。
「いま、ぼくが描いている機動戦士ガンダム・ジ・オリジンは戦争の話だ。戦争に巻き込まれる人たち、これから巻き込まれるであろう人たちが、たくさん登場する。大量死の運命を避けられない市民や、大切なぬいぐるみを抱いて親に手を引かれ、逃げる子どもも出てくる。そんな絵を描くのはとても辛い。そこに生があり、生活があるのを感じるから、あったのを感じるからだ。生は死よりも重い。たぶん、ずっとずっと、重い」
大学解体なんて無責任なことを言って、建物だけでなく人間関係を破壊していた全共闘だった人のなかに、今、こんなに真面目に、人の優しさを大切にしようと考えている人がいるのを知ると、うれしくなります。また、同じような思いを抱いている人の存在を知って、力強く思います。
(2017年3月刊。1800円+税)
この連休中、近くの小山にのぼりました。頂上で知人一家が食事中なのに遭遇して驚きました。私は、いつもの360度パノラマの地点で、おにぎり弁当をいただき、帰りはミカンの白い花を愛でながらおりました。
庭にアスパラガスが毎日のように伸びています。連休中は一度に5本もいただきました。春の香りを口中に味わう幸せを感じます。
いま、庭は、キショウブの黄、ショウブのライトブルー、そしてオレンジなど、見事にカラフルです。ウグイスの声を間近にききながら、ジャガイモの手入れをしました。6月の収穫が楽しみです。

働く青年と教養の戦後史

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 福間 良明 、 出版  筑摩書房
今からちょうど50年前(1967年)の4月に上京して、大学生活を始めました。そして、高校の先輩に誘われて学生セツルメント活動に足を突っこんだのです。
私は、子ども会ではなく、青年部に所属し、地域の若者サークルにセツラーとして加わりました。私たちのサークルではグラフ「わかもの」という雑誌をつかっていましたが、近くに「人生手帖」をつかった緑の会という労働者のサークルがあり、その会合に私も参加したことがあります。いかにも真面目な労働者のサークルという雰囲気でした。やがて、そのなかのごく一部の人たちが「京浜安保共闘」を名乗り、赤軍派になり、連合赤軍へとつながっていったようです。もちろん、それはごくごく一部の人たちです。日本安保を考える無数の若者サークルが出来ていたころのことです。
この本は、その「人生手帖」と緑の会の歴史的な歩みを解明していますので、私にとっては、ぜひ読みたい本でした。
「人生手帖」は8万部近くを発行していたが、「中央公論」の12万部、「世界」が10万部、「新潮」6万部に比べて、決して少なくはない。
中卒で集団就職して大都会に出てきた勤労青年層には、進学への希望を抱きながらも、高校に進学できず屈折した思いを抱く人が少なくなかった。彼らは安穏に書物に親しめる環境にはなかった。長時間労働で、休暇は少なく、安い賃金は思う存分に書物を買うゆとりはなかったし、経営者から思想傾向を知られて警戒されたりもした。
それでも、彼らは学歴エリートとは異なる形で、教養を求めて駆り立てられた。
「人生手帖」のような人生雑誌には、知識人層へのいら立ちが吐露されていたが、同時に知や知識人への憧れも強かった。
「人生手帖」に対しては、「マルクスみかん水」という批判もあった。マルクス主義を水でうすめ、糖分や香料も加えて口当たりを良くしているというのだ。
高校進学率はどんどん上昇していた。1950年代半ばに5割ほどだったのが、1961年に62.3%、1963年に66.8%、1965年には7割をこえた。そして、1970年には82.1%に達した。
大学進学率は、1968年には、23.1%でしかなかった。今日の半分以下の水準である。
「人生手帖」のような人生雑誌は、高校進学率が70%をこえ、8割を上回るよいうになると、衰退していくしかなかった。進学できない理由が家計の問題から学力の問題へと移行していった。
私が「人生手帖」の緑の会を知ったのは1967年から68年にかけてだと思いますので、中卒の集団就職組のなかの知識への渇望に踏み出していた労働者の集団を目撃していたということになります。ちなみに、そのころテレビはもちろんありましたが、まだ白黒テレビでしたし、カラオケはなく、ボーリング全盛時代でした。オールナイト・スケートとか早朝ボーリング大会などを若者サークルの連合体として企画していました。もちろん、若者がたくさん集まり、それはそれはにぎやかなものでした。若者たちが群れをなして、話し合い、歌っている時代です。
(2017年2月刊。1800円+税)

人間力を高める読書法

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 武田 鉄矢 、 出版  プレジデント社
私は年間500冊以上の単行本を、この30年以上よんでいます。でも、それは私の人間力を高めようと思ってしていることではありません。基本は知的好奇心です。次から次に、世の中のことを知りたいと思って、本を読み漁っています。知れば知るほど、知らないことが世の中にいかに多いか、愕然とする思いなのです。
著者は私と同じ福岡県生まれで、私より一学年だけ下になります。もちろん、例の「タバコ屋の息子」のバラードは好きな歌ですし、『幸福の黄色いハンカチ』は泣けました。ですから、何年か前に、夕張に行き、現地にも立ってきました。
歌に劇に大活躍していることは私も知っていました(テレビは見ませんので、実は活字を通して、ということですが・・・)。ところが、この本によると、なんと23年間もラジオのパーソナリティをつとめて、ほとんど毎日、よんだ本を解説しているというのです。すごいですね。敬服します。
「この組を本にしないのは文化的損失です」という口説き文句で本になったとのことですが、この本の密度の濃さは半端ではありません。読書家を自称する私もついタジタジとなってしまいました。
ちなみに、私の書評コーナーも、9.11の年(2001年)に始めましたので、もう16年たっています。ところが、誰も「本にしなければ文化的損失になる」とは言ってくれません。トホホ・・・。
この本の圧巻は、私も書評で紹介した『狼の群れと暮らした男』(築地書館)です。
オオカミにさわられて育てられたという「狼少年・少女」の話はインドにありますが、青年男性が狼の群れに飛び込んでいって、受け入れられる過程が描かれている本ですので、その迫力にはド肝を抜かされます。少しでも犬に関心のある人には強く一読をおすすめしたい本です。
この本を著者はコメント付きで詳細に紹介しています。まさしく、ありえない過酷な状況に自らを置いて厳しい試練を受けるという、信じられない話なのです。この本は、この部分を読むだけでも大いに価値があります。
ノモンハンそしてミッドウェー海戦における日本軍の大失敗も著者は紹介していますが、この大失敗を今、安倍政権の暴走を止めきれなかったときには、現代に生きる私たちは同じ大きな過ちを繰り返すことになるでしょう。
この本の出だしは、「1行バカ売れ」です。なるほど、キャッチコピーは偉大ですよね。
著者の知的レベルの高さには完全に脱帽でした。この本を読んで、私の人間力が少しくらいは高まったかな・・・。
(2017年3月刊。1300円+税)

流しの公務員の冒険

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山田 朝夫 、 出版  時事通信社
東大法学部を卒業して自治省のキャリア官僚になった著者が地方へドサ回りしているうちに、古巣の中央官庁には戻らず、各地を転々とし、ついには定着してしまうという実話です。
すごいですね、鹿児島県、大分県、愛知県の県と市へ派遣されています。その間に、衆議院法制局、自治省選挙課、自治大学校にも勤務しました。
公選法の改正に関わった自治省選挙課では、まさしく不眠不休で仕事をしていたとこのこと。その実情を知ると、ちらっとだけキャリア官僚にあこがれたこともある私ですが、本当にならずに良かったと思いました。
では、ドサまわりを経て、中央官庁でのエリートコースの道を歩まなかったのは、なぜなのか・・・。この本を読むと、さもありなんと納得できます。
仕事とは問題を解決すること。問題とは、あるべき姿と現状のギャップである。問題には、見える問題、探す問題、つくる問題の3種類がある。
人間社会で起こっていることは、人間の仕業(しわざ)である。人がどう動くのかは、人がどう考えるのかによる。人の考えは、多くの場合、合理的ではない。感情で動く。人の心は、どのようなときに動くのか。それは、驚いたときだ。
上から目線では人は動かせないという著者の体験は、集団で物事を考えていく力になっていったのでした。
立身出世よりも、やり甲斐。この社会に、いささかなりとも貢献できているという満足感が著者のエネルギーを支えていたように思います。
そして、ユーモアたっぷりに仕事をする。仕事は楽しいものだという実感を、中央官僚では味わえなかったものを、地方で体感したからこそ、地方に定着してしまったのでしょうね。
読んで元気の出る、いい本でした。キャリア官僚を目ざす学生にはぜひ読んでほしい本です。
表紙にはトイレの便器を素手で掃除している笑顔の著者がうつっていますが、充実した人生を送っていることを見事にあらわしています。
(2016年12月刊。1500円+税)

ダブルマリッジ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 橘 玲 、 出版  文芸春秋
私は、これまでフィリピン人、韓国人との離婚事件の裁判を担当したことがあります。もちろん、日本の裁判所です。ちなみに、相続登記の関係ではアメリカ、ブラジルそしてスウェーデンの人が登場してきました。スウェーデンの件では在日大使館にお世話になり、時間はかかりましたが、なんとか解決しました。アメリカやブラジルについては、現地にある日本の大使館とか領事館に協力をお願いしました。ともかく、なにかと手間と時間がかかります。
フィリピン人女性との離婚裁判では、訴状の送達が大変でした。訴状が届いたという証明書がないと裁判は始まりませんが、それがなかなか得られないのです。ぐずぐずしているうちに、相手方の女性が日本に再びやってきて、居場所が判明したので、ようやく裁判が進行しました。そのとき、相手のフィリピン女性が、「戸籍なんか、お金を出したら簡単にいくらでもつくれるのに・・・」と言ったので、腰を抜かしそうになりました。ちょうど、フィリピンでの自動車運転免許証が国際免許証として日本で通用するかどうかが問題になっていたころの話です。そうなのか、フィリピンでは運転免許証も戸籍もお金を出せば買えるものなのか・・・。私はカルチャーショックを受けました。今のフィリピンがどうなっているのかは知りません・・・。
この本は、フィリピンに駐在していたとき、日本の若い会社員が現地のフィリピン女性に子どもを産ませて認知したあとの話として展開していきます。ありそうな話ですよね・・・。
フィリピンには、日本人の父親をもつ子どもが3万人はいる。これは日本国籍をもつ人をふくめると20万人は下らない。
2004年がピークだったが、8万人のフィリピン人女性が興行ビザで日本に入国した。
私が20年も前にフィリピンのレイテ島へODAの現地視察に行ったとき、辺ぴな田舎の村の広場に、日本製の大型ラジカセで音楽を聴いている若者がいたのを目撃しました。
遠くて近いフィリピンとの関わりを戸籍を通して描いた小説です。
(2017年1月刊。1500円+税)

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