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カテゴリー: 社会

バラ色の未来

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 真山 仁 、 出版  光文社
日本でカジノが合法化されるなんて、私は夢想だにしませんでした。自民党や公明党の推進派議員は、それこそお金がすべて、お金がもうかれば何をやってもいいという発想なのでしょう。そんな考えで日本の政治をひっぱっていきながら、その反対の手ので、子どもたちへの道徳教育をもっともらしく語るのです。まるで真逆の所業ですよね・・・。
自民・公明党のセンセイ方は、日本中にこれだけパチンコ店があり、ギャンブル依存症の患者があふれているというのに、カジノまで増やして、一体、この日本をどんな国にしようというのでしょうか・・・。私は、それを思うたびに怒りに身体が震えてなりません。
勝てば、もちろんうれしい。だが、それ以上に勝負のテンションを上げるのが、負けたときなのだ。バンカーにしてやられた悔しさ、カネを失う腹立たしさ、さらに自分に賭けてくれた他の参加者に対する申し訳なさも相俟って、我を忘れるような興奮状態に陥る。そして、次こそ勝つとリベンジを誓い、もっと大きく張る。しかし、そうなれば、ただただギャンブルの沼に引きずり込まれるばかりで、勝利の女神の微笑は遠ざかる。
負けが込んだら、そこで止める。そしたらバカな負け方はしない。これは、誰もが知っている理屈。だが、カジノの現場に立つと、それがとてつもなく勇気のいることだというのを思い知らされる。
本質も現実もカジノ誘致なのに、建前というか表面上はIRと呼ぶ。IRとは、国際会議施設やコンベンションホール・テーマパークなどのアトラクション施設等を統合したビジネスとリゾートの融合施設のこと。
実際の富を生み出すカジノは、その一部分にすぎないというのが建て前。この手法はラスベガスで確立され、シンガポールで成功した。トランプ大統領もカジノでもうけた一人でしたよね・・・。
昼間は家族サービスやビジネスに汗を流し、夜はゴージャスな遊びで大人の時間を満喫する。東京都内にIRを誘致したら、1兆5000億円の経済効果が期待できる。外資系の投資銀行の調査報告書には、このように書かれていますが、とんでもないことです。
カジノで潤う街には、独特な雰囲気が生まれる。それは、カジノに群がる人々から放たれる邪気のようなもので、ディーラーをしていると肌で感じる。
カジノには、人間の欲望のたがを外す仕掛けが巧妙に用意されている。よほど理性的な者でも、その仕掛けにはまってしまう。それほど巧妙なのだ。
本書で展開される、日本へのカジノ誘致合戦を背景に、首相とコンサルタントが国民不在で暗躍していくさまは、まるで現在のアベ政権そっくりで、ヘドが出そうになります。
人を不幸にしておいて、自分と家族だけはバラ色にしようとしても、不幸は拡大していくばかりです。カジノの本質的問題点を鋭くえぐり出す社会派小説だと思いました。
(2017年2月刊。1600円+税)

ストレスのはなし

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 福間 詳 、 出版  中公新書
イラクのサマーワにも行った元自衛隊精神科医官によるストレスの原因、そして対処法を明らかにした本です。
南スーダンへ派遣された自衛官から早くも自殺者が出ました。苛酷な「戦場」体験によるストレスだったのではないでしょうか。イラクのサマーワでも、自衛官たちは大きなストレスにさらされていたことが本書によっても分かります。
A隊員は、一見すると明るい好青年。しかし、1ヶ月で14キロの体重減少。部下の班員の愚痴を一方的に聞く役にまわって、自分のストレスの発散ができない状態だった。
B隊員は、子どものように「早く帰国させてください」と泣きじゃくった。
C隊員は、サマーワでスケープゴートのターゲットになり、追い詰められていた。
サマーワには、任期3ヶ月間に、10名の女性自衛官が派遣されていた。大半は20代の若い女性。この女性自衛官には、治療を必要とする人は一人もいなかった。彼女らは、対人関係のトラブルを回避するため、一定期間ごとに部屋換えをしていた。
6ヶ月間の任期のうち、5日間、「戦力回復」としてドバイで休養できた。交通費は自弁だけど、宿泊費は支弁。サマーワと違って、欲酒できる。ゴルフやキャバレーで楽しむこともできて、バカンス的な要素が強い。したがって、緊張をゆるめてしまう隊員が出てくる。すると、かえって疲れやすくなる隊員が続出する。ストレスへの対応として、このような気持ちの緩みは致命的。これは、よろしくない。
イラクのサマーワでは、味気ない非常食ばかりだったのか、温かい味噌汁が出るようになって、自衛隊員の表情がやわらいだ。
世の中のストレスはつきものです。この本を読むと、ストレスは悪いものばかりではないということも分かります。
ストレスという敵とたたかうためには、まずは城塞である自分の身体のメンテナンスを怠ってはいけない。日頃からの健康管理意識と規則正しい生活、バランスの良い食事、適度な運動・・・。
これがストレスに備える第一歩。ストレスに打ち勝つために、健康な身体と体力の保持が頑丈な盾となる。
「戦場」体験の話もふまえていますので、説得力があります。
(2017年4月刊。800円+税)
いま、あちこちにアガパンサスの花が咲いています。すっくと背を伸ばしたライトブルーの花です。花火のような花弁で、私の好きな花の一つです。我が家の庭にも咲いています。
ほかには、オレンジ色のコウゼンカズラです。そして、アジサイです。今年は、ガクアジサイは青い花ばかりで、白い花に元気がありません。
先日、東京・銀座で「マイビューティフルガーデン」という映画をみました。
ガーデニング大国として知られるイギリスで、庭に見事な花を咲かせて楽しむ人の話です。というか、恋を語る秘密の花園というストーリー展開です。ブルーのデルフィニウム、紫のサルビア、黄金に咲き誇る百合・・・。
あっ、この花、我が家の庭でも咲いている・・・。そうなんです。片田舎に住む私の楽しみは、我が家の庭に四季折々の花を咲かせることなんです。
ガーデニングは人生を豊かにしてくれるものだと実感させてくれる、心地よいイギリス映画でした。

読んじゃいなよ!

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 高橋 源一郎 、 出版  岩波新書
著者による人生相談の回答は、いつも感嘆・驚嘆・敬服しています。人生とは何かについての深い洞察をふまえた的確な回答には胸のすく思いがします。
著者は、学生時代は全共闘のメンバーとして暴れまわって、結局、大学は卒業していません。私は当時、アンチ全共闘でしたし、暴力賛美は間違いだと当時も今も考えていますが、著者は、その間違いを自ら克服し、人間としての幅と深みをしっかり身につけています。同世代として、うらやましい限りです。
そして、自らは大学を卒業していないのに、今では大学教授として学生を指導する身です。著者から教えられている学生は幸せです。私だってもっと若ければ、著者の教室にもぐり込んで、聴講生になりたいくらいです。
そんな著者のゼミに哲学者と憲法学者と詩人を招いて学生たちが質疑・応答をするのです。読んでいると、世界が広がる気がしてきます。学生の自由な発想にもつづくやりとりが面白くて、350頁もある分厚い新書ですが一気読みしてしまいました。
大学って、一体、何を学ぶところなんだろうと疑問に思っている若い人にはぜひ読んでほしいと思いました。
ちなみに私の場合には、学生セツルメント活動に3年あまりも没頭して、そこで学んだことが大学生活のほとんどすべてです。ですから、今、そこで十分でなかったこと、学び足りなかったこととしてフランス語を学び続け、本を大量に読んでいるわけです。
(2016年11月刊。980円+税)

安藤忠雄・建築を語る

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 安藤 忠雄 、 出版  東京大学出版会
有名な建築家である安藤忠雄が東大の大学院生を前に5回連続で講義した内容が本になっています(1998年秋)。独学で建築学をきわめ、アメリカの大学で教え、そして東大の教授になったという経歴の持ち主です。すごい人です。
私も行ったことがありますが、瀬戸内海の直島に素敵な美術館をつくりました。地中美術館というのでしょうか、面白い構造をしています。ありきたりの形や構造はしていません。
東大の学生・院生の多くがゼネコンに就職し、会社に入ったとたんにおとなしくなるという現象を痛烈に批判しています。
終身雇用・年功序列で無難に行こうと思って、安定した生活を初めから求めるので、委縮してしまって、会社にしばられる。そうでなくて、これからは実力主義だと考えて、きっちり発言していくべき。そうでないと、世界は激動しているし、これまでのように日本の国のなかでだけ通用していた会社主義では生き抜けない。個人が強く意思をもって研さんし、しかも互いの異なる意見を認めあう客観性を備えて、きっちりと話し合う習慣を早く身につけておくべきだ。
フリーの建築家だったら75歳までは自分のペースで仕事ができる。ところが、それも若いときから、ある程度は自分が生涯かけてしていくことを決めておかないと、そんな年齢まで持続していくのは難しい。なーるほど、やっぱりそうですよね。
一流企業に入って、終身雇用・年功序列で、安全第一でいきたいと考え、まさしく20代で老化している人がいる。かと思うと、75歳でいつまでも青春を謳歌している人としか思えない人もいる。
肉体が老化していくのは止められない。しかし、精神のほうは、努力次第でむしろ挑戦する心や勇気はレベルアップしていくことが可能なのだ。
著者は、神戸の崖に大きな集合住宅(マンション)を建てています。私の身近にも、病院や保育園がかなりの斜面に建てられていました。大震災に強いマンションなら、何も問題ないわけですが・・・。
ちょっとハンディを与えてくれる崖だと、建築家としてガゼンやる気を出して本領を発揮するのでしょうね。そこが、プロは違います。
CADやCGによって描かれた図面からは、個性が見えにくい。手描きの図面だと、描いた人の思いや迷い、その文化的背景まで見えてくる。CADの図面は、一見すると完成度が高く充実した内容を伴っているように見える。ただ、その反面、世界中の誰が描いても似たような表情になってしまう。そんなところには文化が宿らないのではないかという懸念が生じるのも当然のこと。そして、その以前に、建物の致命的な機能上の欠陥が見落とされてしまうのではないかという問題もある。つまり、CADの図面では、描き手の不安や迷いがあらわれず、おさまっていないのを、あたかも収まっているかのように見えてしまう。
建築家になるためには、感性をみがく必要があり、それには旅に出かけるのが一番だという著者の持論が展開されています。まったく、そのとおりです。
本箱に「積ん読く」状態にあった本をひっぱり出して読んでみました。
(2003年11月刊。2800円+税)

舞台をまわす、舞台がまわる

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 山崎 正和  御厨 貴 ほか 、 出版  中央公論新社
現代に活躍する劇作家、評論家の半生の語りを聞くと、生きた現代日本史がよく分かります。
著者(語る人)は戦前の満州の小学校に入学しました。軍国主義化が進んでいたようです。教師による鉄拳制裁はあたりまえの世界だった。満州の小学校には、ここは戦場と地続きだという意識があったからだ。
秋になると穂先の赤くなる高梁畑に真っ赤な太陽が沈んでいくと、見渡す限り燃えるような赤になる。
これは、ちばてつやのマンガにも描かれていましたね・・・。
敗戦後、満州は無政府状態になったが、そのなかでも、日本人の親は子どもを学校にやった。男は外に出ていったら撃ち殺されるし、母親は地下室に隠れている状況でも、学校はやっていた。そして、学校には首吊り死体がぶら下がっていたが、誰も気にせず、授業がすすめられた。
これには、驚きますね。日本人のいいところかもしれませんが・・・。
そして、著者は京都に引き揚げてきて、15歳、中学3年生のとき日本共産党に入党し、党員として活動を始めた。
これまた信じられないことです。15歳で政治活動を始めただなんて、早熟すぎます。
そして、京都大学文学部に入ります。当時の共産党は暴力革命路線をとっていましたので、山村工作隊に入る学生もいましたが、著者はその暴力路線に嫌気がさして、共産党を辞めたのでした。
そして、大学院に入り、アメリカに留学するのです。フルプライトの指名によります。
アメリカは昔から賢いですよね。これはと思う人物を招待して、アメリカに学ばせて「洗脳」するのです。アメリカ的価値観をしっかり身につけて日本で活躍してくれるのですから、こんなに安上がりな「洗脳」システムはありません。
そして、日本に帰ってきて、東大闘争(紛争)に関わるのです。私も初めて知る話でした。
著者と京極純一と衛藤瀋吉の三人が佐藤首相の秘密のブレーンになっていて、東大入試を1年だけ中止するというショック療法を思いついたのです。そして、佐藤首相を安田講堂の前を長靴姿で歩かせたのでした。
これについて、後藤田正晴は警察庁次長をしていたけれど、何も聞かされておらず、「余計なことをした」と批判していた。
著者は総理官邸のなかで仕事をしていたといいます。いつのまにか、権力の中枢で「弾圧」する側の知恵袋として活躍していたのですね。
著者は日本の非核三原則も「不可能な話だ」と切って捨てます。
アメリカに楯突くという発想がまったくありません。フルブライト仕込みが生きているのですね。そのあとも、内閣調査室(内調)のお金をつかって研究会をすすめます。
著者は、アメリカに少しは抵抗しようとした宮澤首相を小馬鹿にした感じで評しています。
そして、全共闘に対しては「可愛かった」として、シンパシーをもっています。きっと似た体質があったのでしょうね・・・。
ただ、著者の指摘する近代日本の知識人における自我の欠如だとか、森鴎外が自我の「ない」ことの苦しみと不安を生涯のテーマとして書いた人だという分析は、さすがに鋭いと感嘆しました。「不機嫌の時代」だとか、日本人の多くは世は無常なので、明日はどうなるか分からないから、今日のところはちゃんとやろうと考えるのが日本人だとする点は、私にも共感できるところがありました。
それでも、JR東海の葛西って、評価できる人物だとは私には思えません。安全無視で金もうけ本位の日本をつくりあげた張本人の一人なのではないでしょうか。
JR九州も最高益だといいますが、新幹線の駅のホームに駅員を置かないで、乗客の自己責任ということで安全手抜きの体質は、いずれとんでもない大事故を起こしてしまうのではないかと私は心配しています。
上下2段組み340頁もある大作です。大変勉強になった本であることは間違いありません。その頭脳の鋭さに驚嘆しつつも、権力本位の発想が身にしみついている人間だなとつくづく思ったことでした。
(2017年3月刊。3000円+税)

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