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カテゴリー: 社会

性風俗世界を生きる・・・

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 熊田陽子  明石書店
 性風俗店のスタッフとして2年あまり働いて、その実情を探求し、考察した真面目な本です。
 著者は大学院生であり、研究目的であることを明かしてオーナーの了解のもとにスタッフとして働き始めました。ただし、そこで働く女性たちには身分も目的も明かしていません。
 番なしのSMプレーもする性風俗店です。女性は20歳から42歳までの56人。そのうち結婚しているのは5人、9人は1歳から中学生までの子どもがいる。
 客層は30代から50代の男性を中心としていて、20代の客は珍しく、70代も数人しる。女性客もいる。
 女性たちが、何とか生きるために頑張っている実情がある。
 都市は、何とか生きようとする人々が集まる空間であり、窮地に陥った人が生をつなぐ見込みを見出す場でもある。入店のため面接を受けた女性が全員採用されるわけではない。美しくもない、話術が巧みでない、スタイルが悪い(太りすぎ)、年齢が高い、目立つ傷、皮膚が滑らかでないなどで拒否される。
 東京圏には、警視庁統計だけでも5200件ほどの性風俗店があり、巨大な市場を形成している。
 この店の料金は50分で1万8000円。このほか、ホテル代とタクシー代がかかる。客は週に2回という人もいるが、一般的には1ヶ月から3ヶ月に一度というペースが多い。年末ボーナスに一度だけという客もいる。地方からの客もいるし、海外からの客もいる。
 店には、顧問税理士がいて、広告業者に月50万円は支払っている。客への広告と女性募集広告。
 女性の入店希望は、お金を稼ぐこと。この店は日払い。多い人は週7日間、一日5時間働く。週に1回か2回、また夜の7時から3時間はたらく、土曜日の午後だけという人もいる。昼の仕事をしている人も少なくない。
 待機室にいて、客からお呼びがない状況が続くと、女性は単に収入がないというだけでなく、自分が否定されたと感じるようになる。
 女性たちは、ことばの達人になっていく。相手に合わせ、他人を傷つけないように会話を運ぶのが上手になっていく。
 女性たちは高給取りのようでいて、実際には腰を痛めたり、精神的にもう無理になったりする人も多く、継続して月50万円の稼ぎを確保するのは難しい。
 女性たちは、よく笑う。怒るのではなく、笑うことで、客は主、自分は従という枠組みのなかでも笑いの転換機能によって、状況的に優劣を逆転させながら、自分にとって生きやすい場を求めている。男性による風俗現場探訪記は読んだことがありましたが、このように当面から学術的研究目的での性風俗店への潜入ルポと分析的レポートは初めてでした。
 日本社会の現実を知らせる貴重な一冊だと思います。
 
 
(2017年8月刊。3000円+税)

市民政治の育てかた

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  佐々木 寛 、 出版  大月書店
 このところ新潟で奇跡が相次ぎました。市民と野党が一致して取り組んで、政権与党にせり勝ったのです。その立て役者が著者です。政治の研究を職業とする政治学者が、政治の表舞台にかかわり、その舞台裏の苦労話を語った本です。
この本には参院選挙と知事選挙までですが、その後の衆院選でも見事に勝利しました。参院選での森ゆうこ候補の当選は、その差わずかに2279票。夜12時近くになって、ようやく「当確」が出たのでした。
 日本にとって新しい政治とは、政治的な領域に市民が積極的にかかわるようになったということ。私はまだまだ足りないと思うのですが、それでもこの動き自体はもちろん高く評価しています。そして、これは、あの違憲の安保法制法を安倍内閣がゴリ押ししたことから市民に壁を乗りこえさせたのです。アベ政権も市民を目覚めさせ立ち上がらせたという点では立派に反面教師の役割を果たしたと評価できるのです。
この本のテーマはアート(技)としての市民政治です。それは、どういうことか・・・。
地域を変えるのは、若者、よそ者、ばか者だ。なるほど、あたっていると私も思います。もちろん、最終的には、本体である地元の人々が立ち上がらなければ本当の変革はありません。ただ、昔からの地元民は何かとしがらみがありすぎて、腰が重いことも多いのです。
全国ですすんでいる「野党統一候補」運動の最大の功労者は共産党。志位和夫は、いま永田町で一番光っている政治家だ。しかし、陰の功労者は、歴史上例をみないほどに分かりやすく国民を愚弄し続けているアベシンゾーだろう。野党を結束させたのは、他でもない与党の強権政治だ。
 3.11のあと、日本でもこれまでデモに行ったことのないような人が大勢、国会前や公園・広場で異議申立活動を日常的に行うようになった。これは、日本のデモクラシーが一歩前進した証だ。
選挙とは、まるで戦争みたいなもの。選挙の6割は、最初の仕込みで決まる。どういう政治的文脈で、どういう候補者を立てるかが決定的に重要。残りの4割は、選挙運動のがんばり次第。相手が金と権力にものを言わせて物量でくるなら、こちらは市民のネットワークと創意工夫でたたかう。
新潟で勝った要因の一つが投票率が6割だったこと。低い投票率は、自民・公明に有利なのです。ですから、棄権せずにみんなが投票所へ足を運べば、必ず世の中はいい方向に変わります。何もしないと、悪い方向へすすむばかりなのです。
選挙とは定期試験のようなもので、大切なのはふだんからの勉強の積み重ね。
著者は、「政治とは悪さ加減の選択である」と言い切ります。えぇーっ・・・。
政治家は、たいてい汚いところも持っていて、100%信頼できるなどということはありえない。また、政治には常にきれいごとではない、妥協や取引がつきもの。けれども、市民が学ばなければいけないのは、そういう政治でも関与し続けることをあきらめてはいけないということ。関与をやめたら、政治がどんどん悪くなっていっても、ブレーキをかけられないから・・・。
新潟に学ぶところは大きいと思わせる本でした。
(2017年11月刊。1600円+税)

「日米指揮権密約」の研究

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 末藤 靖司 、 出版  創元社
「軍隊」(ここでは自衛隊を指します)の指揮権が日本に実はない、という知られているようで知られていない事実を歴史的経緯をたどって解明した本です。これが本当なら(残念ながら本当なのですが・・・)、日本は戦後70年以上たってもアメリカの支配下にあって、まだ完全な独立を果たしていないことになります。
要するに、「軍隊」の首ねっこを他国におさえれていたら独立国家とは言えないということです。私たちは、このような情けない現実にきちんと向き合あい、そこからの脱却を図るべきではないでしょうか。
日本の再武装論者は声高く叫んでいますが、肝心のアメリカ軍との関係は、わざとあいまいにぼかしているように思えます。
自衛隊は、すでに何年も前から、アメリカのカリフォルニアやアラスカまで出かけていって、アフリカや中東の砂漠で戦争するための軍事訓練をアメリカ軍と一体になって、やっている。
憲法9条のもつ日本の自衛隊がそんな訓練をやっていいはずがありません。訓練である限り、事故死はあっても戦闘死はないので、あまり表沙汰にならなかったのでしょうね・・・。
どうして、こんな一体となった軍事訓練ができるのか。それは、戦争になったら、自衛隊はアメリカ軍の指揮下に入るという「指揮権密約」があるから。
いまや富士山の周囲は、日本人の普通の感覚では、とても理解できないような、巨大な日本共同の軍事的演習場となっている。北富士演習場は、イラクやアフガニスタンにあるような民家に似せてつくったコンテナが4棟あり、都市型の戦闘訓練もしている。
カリフォルニアの砂漠や北富士演習場でおこなわれている訓練は、アメリカ軍が日本の周辺だけでなく、地球の裏側でも自衛隊を指揮して戦争するつもりであることを示している。
アメリカが日本に再軍備をさせたのは、日本を守るためではなく、アメリカがソ連などと世界中で戦争するときに、自らの指揮下で使うためだった。
軍隊の指揮権は、国家の主権のなかでもっとも重要なもの。
アメリカ政府は、平和条約の発効したあとも、日本軍(自衛隊)の指揮権を握り続けるのに成功した。この成功には、売国奴ともいうべき外務省の歴代高官の存在なしにはありえなかった。ひどいものですね。日本の外務省のトップたちって・・・・。吉田茂首相も、それに乗って動いた役者の一人だったようです。
日米合同委員会で合意したことは、日本の国会の承認を得なくしても実行できる。国会を上回る権威をもつ委員会なんて、憲法上ありえません。
自衛隊は、誕生したときからずっとアメリカ軍の指揮下にある。自衛隊は、今ではアジア、太平洋地域をこえて、地球上のどこでも、日米同盟の義務をはたす存在となっている。「調整」と称して、自衛隊は、平時からアメリカ軍の指揮を受けている。
写真がたくさんあり、とても平易なわかりやすい文章で語られていますので、ことの本質がよく理解できます。それにしても、なんでアメリカの言いなりのアベ政権を許しておいてはいけませんよね。本書を読んで、ますます確信を深めました。ご一読を強くおすすめします。
(2017年10月刊。1500円+税)

強欲の銀行カードローン

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 藤田智也 、 出版  角川新書
 かつての「サラ金地獄」が、今では「銀行カードローン地獄」と言える状況になりつつあります。金利規制そして貸出規制が減って多重債務者が減り、自己破産の申立件数が減って喜んでいると、再び破産者が増え始めているのです。その原因が、銀行カードローンの拡大にあることは明らかです。
 いま、銀行は一般的には苦境に立たされている。貸出金利が歴史的低水準になっているため、利ざやを稼ぎにくくなっている。それで個人をターゲットにしている。
 この本は、銀行カードローンの表向きの言い訳を紹介しながらも、その内情を明らかにしています。2016年の自己破産申立件数が13年ぶりに増えた。そして、その原因は、銀行のカードローンにあるのだろう。貸金業法が2006年に改正され、上限金利が年15~20%に引き下げられ、2010年に完全施行となった。貸出額は年収の3分の1をこえてはいけないという総量規制も働いている。
 ところが、カードローンを提供する銀行は、貸金業者でないため、この総量規制の対象とはならない。
 銀行のカードローン残高は2013年3月に3兆5千億円だったのが、3年後の2016年3月には5兆1円億円と急増している。なぜ、銀行には年収の3分の1以上という総量規制が必要ないというのか・・・。
 それは、銀行には、返済能力をきちんと見極める力があるから、だという。ええっ、そんなこと信じられません。銀行のカードローンの審査は、わずか30分。それで、そんなことが可能とは思えない。サラ金も銀行もテレビCMは同じように茶の間に流れている。どこから違いが生まれるというのか・・・。
銀行は行員カードローンの利用者を広げるためにノルマを課している。すると、借金を現に抱えている人にも2枚目、そして3枚目のカードをつくらせることになる。「利便性がある」とか「ニーズがある」というのは、昔サラ金学者がよく言っていた。同じことを銀行が言っているのはおかしい。長い目で見て、返せないような借金をかかえてしまえば「利便性」なんて問題にならない。ただ、人生を壊しているだけ。7割もの借り手の人生が壊れたり、壊れかけたりしている。
 銀行カードローンも当然に同じような規制が必要です。
 タイムリーな告発書となっています。
(2017年9月刊。800円+税)

新聞記者

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 望月衣塑子 、 出版  角川新書
 まさにタイムリーな新書です。時の人が、こんなに早く本を書いて出せると言うのも素晴らしいことです。
 スガ官房長官の記者会見の場での答えに対して、若者はこう迫った。
「きちんとした回答をいただけると思わないので、繰り返し聞いています。すみません、東京新聞です」
 そうなんです。スガ官房長官の、いかにも国民を小馬鹿にした態度・表情で、実(じつ)のある説明をまったくしないのをジャーナリストがそのまま許してはいけないのです。モリカケ事件について、きちっと解明することこそマスコミの責務です。
記者会見が始まってから37分をこえ、その間に著者は23回も質問していた。すごい執念です。ここで残念なのは、その場にいた他の記者からの援護射撃がなかったことです。これでは記者クラブって弊害しかないことになります。
それどころか、「記者クラブの総意」なるもので著者の質問を抑え込もうとしたというに至っては、御用記者の集団なのかと、ついののしりたくなってきます。それでも良かったことは、テレ朝系の「報道ステーション」やネット・メディアで著者の質問光景が流されたことです。
 これを見て、スガ官房長官の言いなりになる記者だけでないと知った国民の多くが著者を励ました。声を上げなくても、まだマスコミも捨てたものではないと思わせたのです。マスコミ各社の大幹部の何人かも直接、著者へ励ましの声をかけたとのこと。いいことですよね・・・。まだまだ日本のマスコミも捨てたものではありません。
 それにしてもアベ首相もスガ官房長官もひどすぎます。カゴイケ氏は既に4ヶ月以上も拘置所に入っているのに、カケ理事長はまだ1回もマスコミの前にあらわれていません。アキエ夫人にいたっては、公衆の面前で面白おかしく話しているのに国会では話そうとしない(夫が話させない)のです。ひどい、信じられない事態が進行中です。これで愛国心教育を学校ですすめようというのですから、政権トップの頭は変になっている、いえ狂っているとしか言いようがありません。
 前川喜平・文科省前事務次官に単独インタビューしたときのことが紹介されています。前川氏は退職後に自主夜間中学で教えるボランティアをやっていますが、改正前の教育基本法の前文を暗記していて、暗唱してくれたというのです。驚きました。この前文は素晴らしい内容です。
「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない」
 いまの学校教育は、どんどんこの「前文」からかけ離れていってますよね。ストップをかけましょう。
 著者のますますの活躍を心より願っています。尊敬する大阪の石川元也弁護士から、まだ読んでないのかとお叱りを受けて、あわてて読みました。すっきり、さわやかな読後感の残る本です。一読をおすすめします。
(2017年11月刊。800円+税)

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