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カテゴリー: 社会

アフリカ少年が日本で育った結果

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 星野 ルネ 、 出版  毎日新聞出版
カメルーン生まれで関西(姫路)育ちの少年が日本で育つとはどういうことか、マンガで描かれていて、よく分かります。
なんでカメルーン生まれの少年が3歳のとき日本にやって来たのか・・・。
父親は、日本人の学者としてカメルーンの森の生態を研究に出かけたのです。そして、村長の娘・エラに出会い結婚することになりました。マンガによると、カメルーンでは家族の前でプロポーズすることになっているとのことです。
エラの両親は、日本の若い学者と結婚して孤立無援の外国に嫁いでいく決意があるかと問いかけ、娘エラは結婚に踏み切ったのです。そして、日本にやって来たのでした。
3歳から日本に住んでいるので、著者は、外見は外人(ガイジン)でも、中身は日本人そのもの。基本は関西弁と、母親と話すフランス語です。英語はうまく話せません。
母親は、さすがカメルーン人。シマウマ食べた、センザンコー食べた、ニシキヘビもクロコダイルも食べたといいます。ヤマアラシだって食べるようです。鍋で煮込むと、針が簡単に引き抜けるとのこと。本当に美味しいのでしょうか・・・。
そして著者がテレビに出ると聞いたら、そのバックで母親は友人と一緒に踊ったというのです。さすがですね。
いやあ、よく出来たマンガです。感嘆・驚嘆しました。
親も子も日本で生活するのは大変だったと思いますが、こんな楽しくさわやかなマンガとして紹介できているのですから、やっぱり偉大なのは親の力だと思いました。
心に残る、いいマンガです。さっと読めますので、ぜひ手にとって読んでみてください。
(2018年9月刊。1000円+税)

サリン事件死刑囚

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  アンソニー・トゥー 、 出版  角川書店
 私は上川陽子という法務大臣の人間性を疑っています。この人には、人間らしさというものがまったく欠けているのではないでしょうか・・・。
オウムの死刑囚13人が一挙に処刑されました。それ自体が私には許せませんし、残念でなりません。でも、それ以上に、死刑執行を命じた法務大臣が処刑前夜に安倍首相の前で万歳三唱の音頭をとったというのを知り、心が真っ暗になりました。
その場は、「自民亭」と名づけられた飲み会です。FBで写真が公表されていますが、要するに安倍首相の自民党総裁選挙で勝利するための若手議員かかえ込みの場でした。しかし、ちょうど、広島などで集中豪雨の大災害が報じられているなかでの大宴会です。この宴会のためということでもないのかもしれませんが、大災害指定がなされず、ずるずると延ばされているなかでの宴会でした。それはともかく、その宴会のトリに、死刑執行が翌朝にあることを知っている法務大臣が最後に万歳三唱の音頭をとったというのです。これって、おかしくありませんか、いえ狂ってませんか、その感覚が・・・。
死刑執行してしまえば何も残りません。この本の主人公の中川智正は、京都府立医科大学で大学祭の実行委員長もつとめるなど、在学中の評判は良かったのです。ヨガからオウム真理教に入ったようです。麻原の主治医として大変信頼されていたようです。なんで、こんな真面目な若者が「殺人教団」に入るようになったのか、もっと私たちは中川に語らせ、そこから学ぶべき教訓を引き出すべきではなかったのでしょうか・・・。殺してしまえば、もう中川から何も聞き出すことは出来ません。
この本を読んで、法務省が実は、2012年に死刑囚を一挙に処刑しようとしていたことを知りました。どうしてそんなに早く早くと処刑を急ぐ必要があるのでしょうか。世界の大勢が死刑廃止に動いていることを法務省だってよく知っているはずなのに・・・。
これは、菊池ほか3人の長期逃亡者が自首したり発見されて裁判になったことから延期されたのです。この3人の刑事裁判が終わって、処刑のために全国の拘置所に分散されて、死刑執行は秒読みに入っていたとのこと。恐ろしいことです。
では、この死刑囚、中川智正はいったい何をしたのか・・・。坂本弁護士一家の殺害に加わり、松本サリン事件、東京地下鉄サリン事件に関わっています。なるほど、それでは今の量刑基準表では「死刑相当」になるでしょう。でも、本当に執行してよいのか、それが疑問です。
坂本弁護士一家の殺人事件で、オウムの関与が強く疑われていたにもかかわらず、当時の神奈川県警は、まともにとりあわず坂本弁護士の事件関係者による犯行とか、過激派との関係とか、とんでもないデマを流して、マスコミ・世論をごまかし続けました。このとき、警察がきちんと捜査していたら、地下鉄サリン事件をはじめとする一連の殺害事件は起きていなかったはずなのです。
坂本弁護士一家3人がオウム真理教によって殺害されたのは、今から30年前の1989年11月4日のことです。私も坂本弁護士一家が住んでいたアパートを見学に行きました。まだ犯人がオウムだと確定されていない時期に、弁護士会の現地調査に参加したのです。
オウムは、このほか、小林よしのり(漫画家)、大川隆法(幸福の科学)、小沢一郎(自由党)、江川紹子(ジャーナリスト)も殺害しようとしていたとのこと。まさしく恐るべき殺人教団です。ところが、その後継団体に今なお入信する信者がいるというのです。信じられません。
死刑囚である中川智正と拘置所で15回も面会した台湾出身のアメリカ人学者の本です。大変勉強になりました。
(2018年7月刊。1400円+税)

EVと自動運転

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 鶴原 吉郎 、 出版  岩波新書
私は車に毎日のっていますが、実は車の運転は好きではありません。断然、電車を好みます。車中では本が読めないからです。仕方がないので、車中では、ずっとNHKフランス語のCDを聴いています。聴き流しのほうが多いのですが、それでも耳は慣れます。
自動車事故による死者はピーク時(1970年)の年間1万千人が、今では4千人弱(2017年)に減った。しかし、全世界では125万人もの死者が出ている(2013年)。
そして、そのなかで65歳以上(私も立派に該当します)が50%を超えている。
この交通事故の原因の9割は人間のミス(認知ミス・判断ミス・操作ミス)によるもの。
実は、最近、私は裁判所構内で愛車(レクサス)を駐車しようとしたところ、なぜか暴走して庁舎壁にぶち当ててしまい、6万円余りの補償金を支払わされました。レクサス側は私の操作ミスとして片付けようとしていますが、本人はレクサスの構造(メカニズム)に何らかの欠陥があるのではないかと疑っています。庁舎への衝突事故から3ヶ月たつのに、レクサス側は一向に事故原因をきちんと明らかにしません。『空飛ぶタイヤ』を、ついつい思い出してしまいます。
デフレ社会と言われる日本にあって、自動車の価格は一貫して上昇し続けている。「カローラ」119万円が187万円と、30年間に57%も値上がりしている。
日本国内の新車販売台数は、ゆるやかに減少している。1990年に780万台、2005年までは600万台弱で安定していたが、2009年に470万台に急落し、その後は500万台前後で推移している。
日本では軽自動車が4割前後を占めている。そして、ハイブリッド車(HEV)が日本では販売台数の4分の1以上を占めている。これは世界的に珍しいこと。
日本では自動車産業は成熟産業だが、世界全体では、これから1億台をこえる見込みであり、まだまだ成長産業である。
世界で販売されているクルマの3分の1は、日本メーカー製か日本メーカーの合弁企業製が占めている。アメリカで販売されているクルマの4割弱は日本メーカ-製。ところが、日本製クルマはヨーロッパでは存在感がない。
日本経済は、自動車への依存度を高めている。自動車産業の出荷額は主要製造業全体の2割にあたる52兆円。関連就業人口は1割、550万人にのぼる自動車産業の屋台骨になっている。
アメリカの自動運転車が注目されたのは、軍事作戦で戦死者が出るのを減らすためである。「2015年までに軍事用地上車両の3分の1を無人化する」ことをアメリカの国防総省(ペンタゴン)は目標としている。2007年には1位の車の平均時速は、時速23キロだった。
自動運転の車は、レーザー光線を使ったレーダーによる。周囲360度レーザー光線を照射し、物体にあたってはねかってくるまでの時間を測定することで、車両の周囲のどこに物体があるのか、その物体までの距離はどの程度かを把握する機能をもっている。物体の位置だけでなく、形状までを数センチという非常に高い誤差で正しく検知できる。
日本と世界の車について、その現状と展望をコンパクトに明らかにしている新書です。
(2018年3月刊。780円+税)

国体論

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 白井 聡 、 出版  集英社新書
この若手の政治学者の指摘には、いつも驚嘆させられるのですが、今回も期待を裏切りませんでした。その切り口が、想像したこともないほど斬新なので、刮目(かつもく)せざるをえません。
国体(こくたい)とは、国民体育大会の略称でありません。戦前の日本では、その内容が曖昧(あいまい)なまま至高のものとされてきました。そして、この国体は日本の敗戦と同時に掃滅・追放されたと考えていました。ところが、著者は「そうではない」と異を唱えるのです。
現代日本の入り込んだ奇怪な逼塞(ひっそく)状態を分析・説明することのできる唯一の概念が「国体」である。「国体」は、表面的には廃棄されたにもかかわらず、実は再編されたかたちで生き残った。しかも、アメリカの媒介によって「国体」は再編され、維持された。
安倍首相に連なる右翼は、「天皇は祈っているだけでよい」、「天皇家は続くことと、祈ることに意味がある。それ以上を天皇の役割だと考えるのは、いかがなものか」などと、平成天皇の言動を真っ向から否定している。
日本会議と同じ傾向にある八木秀次は、「天皇・皇后は安倍政権の改憲を邪魔するな」という小文を雑誌に発表した。
平成天皇夫妻は、現代日本において、平和憲法を守れと叫ぶ有力メンバーの1人になっていると私は考えていますが、日本会議や安倍首相周辺は天皇夫妻の言動をいかにも苦々しく考えているのです。
自民党などの「永続敗戦レジームの管理者」たちは、アメリカからの収奪攻勢に対して抵抗する代わりに、その先導役として振る舞うことによって自己利益を図るようになり、対米従属は、国益追求の手段ではなく、自己目的化した。
アベ首相の自称する「保守主義」とは、この暗愚なる者を二度までも宰相の地位に押し上げた権力の構造を、手段を選ばずに「保守する」という指針にほかならなかった。
昭和天皇が積極的にアメリカを「迎え入れた」最大の動機は、共産主義への恐怖と嫌悪にあった。
日米地位協定は、多くの点において、世界でもっともアメリカに有利な内容になっている。アメリカのカイライでしかないアフガニスタン政府より日本政府の位置づけは低い。
日本の対米従属の理由は、日米間の現実的な格差、軍事力の格差ではなく、軍事的な緊急性にもないことを意味している。
諸外国のメディアは、安倍首相についてアメリカのトランプ大統領に「へつらう」と報道されているのに対して、日本国内では、アメリカのトランプ大統領とうまくやっている日本の首相というイメージが流通している。
アメリカは日本を守ってくれている。
アメリカは日本を愛してくれている。
どちらも、大変な間違い妄想をしている。
敗戦の前、アメリカ軍は日本人について、愛情や敬意どころか、人種的偏見と軽蔑だった。戦前、アメリカ軍は日本人の特性について深くきびしいものがあるとしていた。
「日本人は、自分自身が神だと信じており、民主主義やアメリカの理想主義を知らないし、絶対に理解もできない。アメリカ軍にとって、天皇制の存続それ自体はどうでもよいことで、円滑な占領のために必要だったに過ぎない」
アメリカのマッカーサーは、天皇の戦争責任の追及よりもより原理的な「国体の敵」から天皇を守った。その敵とは共産主義である。昭和天皇は、マッカーサー三原則の意味、天皇制の存続と戦争放棄の相互補完性を、当時の政府首脳の誰よりもよく理解していた。
戦後の日本は、アメリカの同盟者として「冷たい戦争」を闘い、そこから受益しながら、勝者の地位を獲得した。アメリカは、日本に代わって八紘一宇を実現してくれたのであり、日本は、それを助けたのである。
平成天皇が「お言葉」を読みあげた、あの常のごとく穏やかな姿には、同時に烈しさがにじみ出ていた。それは、闘う人間の烈しさだ。この人は、何かと闘っており、その闘いには義がある。著者は、そう確信した。不条理と戦うすべての人に対して抱く敬意から、黙って通り過ぎることはできないと感じた。
著者の固い決意がひしひしと伝わってくる終章です。
まことに、不条理を黙って許しておくわけにはいきません。不条理の行きつく先には全破壊の荒涼たる破滅が待ち構えているからです。鋭い指摘に胸のすく思いがしました。
(2018年6月刊。940円+税)

権力の背信

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 朝日新聞取材班 、 出版  朝日新聞出版
森友・加計学園問題で朝日新聞はよくよく健闘していると思います。そのスクープの現場が実況中継されている本です。
 それにしても、これだけ明らかに一国の首相が国会で平然とウソをつき、そして高級官僚の多くがそのウソを必死でカバーするという構図がまがり通る日本って、これから一体どうなるのでしょうか・・・。
私は、何より日本人の投票率の低さがウソつき首相の開き直りを許している最大の原因だと考えます。政治家不信、バカバカしいと、棄権してしまったら、それこそアベ首相と取り巻き連中の思うツボなんですが、現実には投票所に足を運ぶのは、有権者の半分ほどでしかありません。でも、決してあきらめてはいけないのです。
モリ・カケ騒動で野党の追及が甘いという人がいます。だけど、決してそうではありません。アベ・チルドレンとそのお仲間たちが国会の議席を多数占めているため、国会でまっとうな正論が無視されているだけなのです。
モリトモ学園は、アベ首相と思想を同じくするカゴイケ夫妻が「安倍晋三記念小学校」を設立しようとしていたのでした。
「大人の人たちは、日本が他の国に負けぬよう、尖閣列島、竹島、北方領土を守り、日本を悪者として扱っている中国、韓国が心改め、歴史教科書でうそを教えないよう、お願いいたします。安倍首相がんばれ、安倍首相がんばれ。安保法制、国会通過よかったです」
これが幼稚園の運動会で代表の園児4人が声をそろえて叫んだセリフです。涙が出てくるほど、私は悲しいです。
カゴイケ理事長は、自分の幼稚園について、「日本国を良くしようとする教育機関」と言ったそうです。驚き、かつ呆れてしまいます。子どもたちの豊かな人間性をはぐくむというのではなく、国に奉仕する人材育成のための幼稚園だったのです・・・。信じられません。
モリトモ学園は表面上は8億円の実損(税金)のようです(本当は、もっと高額でしょうが・・・)。それに対して、カケ学園はケタ違いです。アベ首相のアメリカ留学仲間のコータローのためにありえないことが起きたのです。100億円ではすみません。「総理案件」ということで、「特例」に次ぐ「特例」。このことが愛媛県庁の職員の報告文書で明らかになっているのに、アベ首相は今なおシラを切り、コータローは国会で証人喚問もされません。
アベ首相から今やバッサリ切られたカゴイケ氏は拘置所に長く閉じ込められたのに、コータローは「文春砲」をふくめて、マスコミの突撃取材もないまま、もうウンザリ、人の噂も49日・・・、を待っているようです。許せません。
この本を読んで、日本の民主主義を守るためには、私たちはもっと怒り、もっと声を上げ続けなければいけないと改めて強く思いました。
(2018年6月刊。1500円+税)

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