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カテゴリー: 人間

驚異の小器官・耳の科学

カテゴリー:人間

                                (霧山昴)
著者  杉浦 彩子 、 出版  講談社ブルーバックス新書
 年齢(とし)をとって、少し耳が遠くなっているようです。聞こえにくくなりました。同世代では補聴器をつけている人もいますが、幸い、まだそこまでではありません。
人間は、時間情報については、視覚よりも聴覚の方が優位な影響をもつ。目でとらえた変化に対して身体が動くよりも、音に反応して体が動く反応の方が早い。
 素早い動きをしなければならないスポーツでは、聴覚が重要な役割を果たしている。
 人間は、まず音を聞いてから、目で確認している。
 聴覚障害の方が視覚障害よりも疎外感が深い。
 胎児は、胎内で母親の心音や話し声を聞いている。
 壊れた鼓膜は、すぐに再生してくる。耳鼻科では聞こえないのを治すため、わざと鼓膜を破ることがある。
 キヌタ骨、ツチ骨、アブシ骨という耳小骨は、生まれたときから成人のサイズとほぼ同じ大きさをもつ例外的な骨。5万個ほどの神経細胞が小児期のあいだに、どんどん死滅して、10代では3万個台に減ってしまう。90代には1万個台になる。
 母国語を聞き取るためには、小児期における神経淘汰が大切だ。これは、神経細胞の数を減らしていくことは、よく聞く言葉のパターンを覚えていくということ。
 1歳までにある程度パターン認識できたかどうかが、その後の言語発達に重大な影響を及ぼす。言語の臨界期は6歳頃。言葉は、まず聞いて、話して、読んで、書いて、という4段階で発達していく。どんな複雑な言語も、まずは聞くところから始まる。繰り返し決まったパターンの発音を聞いていくことで言語を認識するための脳が育っていく。
 音楽と言語では、脳の使い方が異なっている。言語中枢はあるが、音楽の方には中枢はないようだ。
 最後に、耳垢について、著者は何もしないのがよいと強調しています。自然に出てくるのです。まあ気にはなりますけどね・・・。それだけのことなんです。
(2014年10月刊。860円+税)

フラガール物語

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                                 (霧山昴)
著者  清水 一利 、 出版  講談社
 蒼井優の踊りには圧倒されました。映画『フラガール』の話です。大きなスクリーンでみて、また我が家のテレビでみました。
 常盤炭鉱が行き詰まってつくられた常盤ハワイアンセンター。誰だって、半年もてばいいほうだと思っていました。
 女の子がへそ丸出しで踊る。そんな踊りにスケベな男はともかくとして、リピーターがいるはずがない。私だってそう思います。ところが、その限界を突破したのです。そして、ついに日本アカデミー賞をとる映画にまでなったのでした。
 それでは、どうやってフラガールが誕生したのか、どんな苦労があったのか、知りたくなりますよね。この本は、その要求にこたえてくれるものです。
 福島県いわき市のスパリゾートハワイアンで、毎日昼夜2回のステージを彩るダンシングチーム。フラガールを養成するのは常盤音楽舞踏学院。そして、この学院は昭和40年の設立から50周年を迎えた。
 常盤炭鉱では1トンの石炭を掘るたびに40トンもの温泉が湧き出ていた。この温泉を掘るだけで、年に何億円ものお金がかかった。そこで、温泉を利用したレジャー施設を思いついた。すごい逆転の発想です。
1期生はがんばった。普通なら3年かかるものを、3ヶ月でやり切った。本当に、よく耐えた。
昭和41年1月に、常盤ハワイアンセンターが開業した。
 私が大学に入る前の年ですから、まだ、私は高校3年生です。
オープン直後のステージには、連日、大勢の客がつめかけた。
 昭和44年(1969年)に43人もいたダンサーが、どんどん減っていき、昭和51年には30人を割り、昭和55年には20人を下まわってしまい、ついに昭和63年末には12人にまで減ってしまった。史上最少の危機を迎えた。入ってくる子が少ないのに、辞める子が多かった。やっと一人前になったころに、「寿退社」していく。
 学生時代にアルバイトを経験している子は長続きした。ダンサーの給料は一般のOLに比べたら高給だから、これだけの給料は、ほかではもらえないことが分かっているので、頑張ろうと思うからだ。
 ソロダンサーは、いわばダンシングチームの「顔」。一番大事なのは「華」。その子がステージに立つと、周りがパーッと明るくなるような雰囲気をもっていて、群衆で踊っていても、その子だけは浮き上がって見える。そんな子でなければ、ソロはつとまらない。私生活が乱れているような子、きちんとした言葉づかいができないような子は、ソロはできない。
 うむむ、なるほど、ソロになるのは厳しいものなんですね・・・。
 400人のダンサーのうち、ソロになれたのは、わずか63人。踊りの技術だけでなく、日ごろの人間性やチームをまとめるリーダー的な素養までもが選考の対象となる。
 2006年(平成18年)映画『フラガール』が公開され、観客125万人、興行収入150億円という大ヒットを記録した。そして、第30回日本アカデミー賞で最優秀作品賞などを受賞した。
 いやあ、本当にいい映画でした。かつての炭住街がCDで再現されていましたが、本当になつかしい光景でした。
 福岡県内にも、筑豊と筑後には炭住街がありふれていましたが、残念ながら今はまったくありません。もったいないことをしました。
映画『フラガール』の最後に蒼井優の踊るのがタヒチダンス「タネイムア」だ。人の汗しぶきに圧倒されます。もし、この映画をみていないという人がいたら、今すぐDVDを借りるか買うかして、みてみて下さい。今夜は、芸術に浸って、ぐっすり眠れますよ。
(2015年1月刊。2500円+税)

手のひらから広がる未来

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                               (霧山昴)
著者  荒 美有紀 、 出版  朝日新聞出版
 私の娘も、大学院生としてパリに留学中に突然、弱視になり、今は盲学校で鍼灸師の勉強をしています。世の中には、いきなり信じられない病魔に襲われることがあるのです。
 この本の著者は、大学生の時、突然耳が聞こえなくなり、また視力を失ってしまったのでした。いやはや、大変な事ですよね。耳も目も不自由だなんて、想像も出来ません。それでも、大変な苦難をついに乗り越えていくのです。読んでいて、人間って、すごいと思いました。そして、彼女を支える人たちがたくさんいるのに救われます。一人娘を支えた両親の苦労は、いかばかりだったでしょうか・・・。
 ヘレン・ケラーになった女子大生というサブ・タイトルがついています。今では著者に彼氏もいて、明るく前向きに生きていますが、そこにいたるまでの苦しみと悩みが、本人によって語られています。ついついホロリとさせられました。難病の名前は、神経繊維腫症Ⅱ型(NF2)。聞いたこともありません。
身体にできた傷を治す分泌液は人間の誰もがもっている。ところが、この病気になると、傷が治ったあとも分泌が止まらない。そのため、身体中のどこかに腫瘍ができて、いろいろな神経を圧迫する。
 はじめ、難聴となり、19歳のときに右手がマヒし、22歳で耳が聞こえなくなり、やがて目も見えなくなった。目と耳の両方に障害をもつ人を「盲ろう」という。東大教授でもある福島智(さとし)氏も盲ろうだ。著者はそのうえ、腰にも障害が出て、車いす利用者になった。
 著者は、16歳までは視力も聴力も問題がなかった。だから、今でも、色や草花の形や人の声、ピアノなどの音色が容易に想像できる。
 盲ろう者にとって、人間の最低限の要求である、安心と安全感が日常生活にない。日常生活そのものがサバイバルなのだ。ごはんを食べるのも、毎日がヤミナベ(闇鍋)状態。
 最初に耳の不調を感じたのは、高校1年生の夏のこと。それで、3ヶ月に1度は、中国へ行き、中日友好病院の国際医療部で治療を受けた。
 著者は、明治学院大学文学部のフランス文学科に合格した。
 ところが、よく聞こえない。そして視界がどんどん白くなっていく・・・。
 福島智教授は、5時間も著者に向かって話をしてくれた。もちろん指点字での会話。
死なない。めげない。引きこもらない。転んでも叩きのめされても起き上がろう。しっかり前を向いて歩いていこうということ。命ある限り、生きよう。
 著者のような盲ろう者は、日本全国に1万5000人いると推計されている。しかし、派遣事業の利用登録をしている盲ろう者は1000人もいない。
著者は指点字を1週間で習得したというのです。すごいですね。そして、周囲の人たちもそれを学び、著者との交流を深めていったとのこと。本当に心温まる話です。
 つらい大変な日々も多いことでしょうが、これからも、めげず、くじけず、前を向いて生きていってくださいね。こんないい本を読むと、心が洗われる思いがします。あなたもぜひご一読ください。
(2015年3月刊。1200円+税)

ラスト・ワン

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著者  金子 達仁 、 出版  日本実業出版社
 義足アスリートとして有名な中西麻耶のすさまじいまでの半生を描いた本です。
 珍しいほどに自己主張の強い若い日本人女性のようです。アメリカでは問題なく受けいれられても、日本では大変です。やっかみ、ねたみ・・・、いろんな障害が目の前に大きな壁として立ちはだかるのです。
 若い女性が労災事故にあって、右足を切断してしまうのですから、大変な衝撃だったと思います。
右足切断といっても、骨折の痛みほどは感じない。骨が折れたことを脳に伝える神経もなくなっているから。あるのは、皮膚を切った傷の痛みだけ。
 このとき、中西麻耶は真っ赤なブラジャー、下は父親のトランクスをはいていた。これをはいているのを見られたら、絶対に死んじゃう。そっちでパニックになりそうだった。
 右足を切断したら、そこがバーンと腫れる。
 浮腫と呼ばれる症状がおさまるまでには2年ほどかかる。患者は、包帯で強くしばることによって、できるだけ元の太さに戻そうとする。太くなろうとする治癒能力と、細くしようとする人為的な力のせめぎあいの決着がつくまで、足は一日のうちでもサイズが変わってしまう。
 義足をはきだすと、包帯とは比較にならないほどの大きな力がぎゅっとかかるので、より細くなるスピードが高まる。だから、あっという間に、サイズが変わる。それでも追いつかなくて、新しい義足をつくらざるをえない。その繰り返しだった。
 障害者陸上の世界に入ってみると、想像していたよりも、はるかにお金がかかる。遠征の費用、義足、生活費・・・。渡航費や滞在費が全額支給されるパラリンピックと違い、世界選手権の場合、すべての経費は選手の自己負担だ。出場するためには60万円が必要だった。
 中西麻耶はヌードカレンダーをつくった。それも障害の部所までさらけ出したもの。定価は1200円。ところが、なんと9000部を売り切った。
最後のページに、それまでの話とはまったく違ったことが書かれていますので、驚きましたが、私は、それよりも何よりも、障害者陸上競技の世界でのきびしい試練に中西麻耶が耐え抜いていったところに心を打たれました。
 競技用のカーボンファイバーで出来た義足って、130万円ほどもするんです。高いですよね。
 私としては、中西麻耶がこれからも元気に活躍することを願うばかりです。
(2014年12月刊。1500円+税)

続・自閉症の僕が跳びはねる理由

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著者  東田 直樹 、 出版  エスコアール出版部
 自閉症の本人が語っています。目が開かされる思いです。
 どんな言葉が、いつ出るのか、自分でも分からない。昔おぼえた絵本の一節、繰り返し聞いたコマーシャル、記憶の中で印象に残っている単語などが、勝手に口から飛び出てくる。
 話を途中で止めるのも大変。どうにかなりそうなくらい、せっぱつまった感じで話している。言葉は、自分の意思ではおさまらない。言葉は、なかなかコントロールできない。
いつもと違い状況で会うと、その人が誰なのか、認識できない。記憶で一番はっきりしているのは場所だから。違う場所で会うと、その人だと分からないのは、背景が違うので、大きなヒントがなくなるから。
 話そうとすると頭が真っ白になってしまい、言葉が出てこない。話せない人は、みんなが思っている以上に、繊細だ。
 気温にあった服装の調節、ジャンケンもうまくできない。手にもっている物など、すぐに何でも口に入れてしまう。汚い物ときれいな物の区別が、分かりにくいのも理由の一つ。
 時間は、本当につかみきれない。時間の流れを記憶しにくいので、時間そのものが苦痛だ。自閉症の人の反復行動は、自分なりの「きり」がつかなければ、終わりにはならない。自分で納得できなければ、終われない。
自分が納得した仕事については、教えられたことをしっかりやり遂げることができる。
 自閉症者は、光や砂、水が好きだ。光を見れば心が躍るし、砂を触れば心が落ち着き、水を浴びれば生きていることを実感する。
 カラオケが大好きな自閉症の高校生でもあります。大勢の人の前で講演している写真があります。人前で声は思うように出ないとのことですので、どうやって講演しているのでしょうか。
 すぐそばに母親がついています。著者の手を握って、パニックにならないようにしている感じです。
 NHKテレビでも放映されたそうですが、とても貴重な体験記だと思います。これからも元気に過ごしてほしいと心から願います。
(2014年12月刊。1600円+税)

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