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カテゴリー: 人間

寅さんの人生語録(改)

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 山田 洋次、朝間 義隆 、 出版  PHP文庫
映画『男はつらいよ50、お帰り寅さん』をみました。元気一杯の寅さんに再び映画館の大スクリーンで会うことが出来て、思わず涙があふれてきました。
初めて寅さんに会ったのは1969年夏、大学3年のときのことです。その後、司法試験の勉強の合い間にも頭を休めに新宿までみに行きました。そして、結婚して、子どもたちが一緒に行けるようになると、正月休みの恒例でした。
寅さんが映画のなかで語ったセリフを紹介した本です。人生って、いったい何なのか、よくよく考え抜かれた珠玉の言葉が並んでいます。さすが山田洋次監督です。単なる喜劇映画ではないことを改めて実感させてくれます。
といっても、残念ながら私の周囲の20代くらいの若い人には映画館はもちろんのこと、テレビでも寅さんの映画を一度もみたことがないという人ばかりなので、とても残念です。
寅さんが隣のタコ社長の営む印刷工場に働く若者たちに「労働者諸君」と呼びかけ、笑いが起きます。このセリフは山田洋次監督の脚本にはなかった。撮影現場で、渥美清がふと口にしたアドリブである。
森川さん(おいちゃん)が「馬鹿だね」も同じくアドリブが脚本にとり入れられた。
御前様(笠智衆)が、寅さんの後姿を眺めながら「困った」と熊本なまりでつぶやくのもアドリブ。名優は、脚本家が及びもつかないような素敵なセリフを現場で吐くものだ・・・。
寅さんのタンカバイの文句も、渥美清が少年時代に実際に大道で商売をしている香具師(やし)から聞いていたのを思い出してもらってセリフにしたもの。
「ほら、いい女がいたとするだろう。なあ?男がそれを見て、ああ、いい女だなあ、この女を俺は、大事にしてえーそう思うだろう、それが愛っていうもんじゃねえか」(『柴又より愛をこめて』)
「秀才よ、法律の勉強してるの」
「へーえ、悪いことしよってのか?」(『寅次郎恋愛塾』)
「大学へ行くのは何のためかな。何のために勉強すんかな」
「ほら、人間、長いあいだ生きてりゃ色んなことにぶつかるだろう、な。そんなときに、俺みたいに勉強してない奴は、この振ったサイコロで出た目で決めるとか、そのときの気分で決めるよりしょうがないんだ、な。ところが、勉強した奴は、自分の頭でキチンと筋道を立てて、はて、こういう時はどうしたらいいかなと考えることができるんだ。だから、みんな大学へ行くんじゃないか、だろう?」(『寅次郎サラダ記念日』)
「人間は、何のために生きてんのかな」
「うーん、何て言うかな、ほら、ああ、生まれて来てよかったなって思うことが何べんかあるじゃない、ねえ。そのために人間、生きてんじゃないのか」(『寅次郎物語』)
50話もある、本当にいい映画シリーズをありがとうございます。
(2019年12月刊。740円+税)

免疫力を強くする

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  宮坂 昌之 、 出版  講談社ブルーバックス
 病原体の強さと免疫の強さはシーソー関係にあり、病原体の力よりも免疫系の力が勝れば、感染症は起こらない。人間のからだには感染症になるのを防ぐために二つのしくみがある。
一つは自然免疫機構、もう一つは獲得免疫機構。
風邪には抗菌薬(抗生物質)は効かない。風邪はウイルスで起きるもので、抗菌薬はウイルスには効かない。抗菌薬は、その名前のとおり細菌に対する薬。風邪とは、感染によって上気道の炎症が起きる病気のこと。かぜ症候群の9割はウイルス感染によるもの。
細菌と真菌とウイルスはそれぞれ違うもの。細菌は1個の細胞からできている単細胞生物。真菌(カビ)は、核のまわりに角膜という膜をもち、遺伝情報であるDNAは核の中に存在する。
ウイルスは、生命の最小単位とされる細胞をもたず、タンパク質の殻と核酸からなる粒子。ウイルスは自分でエネルギーをつくれないし、自分一人では増殖できない。
インフルエンザに関して、マスク着用の予防効果はほとんどない(きわめて低い)。これは網目のサイズがインフルエンザウイルスの100倍も大きいから。マスクによって他人からもらうのは防げないが、他人に風邪をうつしにくくなるだけのこと。
インフルエンザにかかったかなと心配して医療機関に行くのは考えもの。かえって、そこで感染する可能性がある。インフルエンザを治す特効薬は今のところない。
ワクチンとは、病原体あるいは細菌毒素の力を弱めたり、なくしたりした、人工的につくり出された製剤のこと。ワクチンの9割は、海外の大きな製薬会社が作っている。というのは、10~15年かけて、1000億円もの開発費用がかかるものだから。
日本の毎年のインフルエンザによる死亡は200人ほど。ところが、今、アメリカでは1万2000人もの死者が出ているそうです。なのに、日本ではなぜか、ほとんど報道されていません。これも怖い話です。
インフルエンザにかかったかなと思ったときには医療機関には行かず、よく水分をとり、よく休むこと。免疫力全体を正確に測定するのは、現状では困難。
いま自信をもって言える免疫力増強法は、ワクチン接種だけ。血液循環やリンパ循環を良くしてやれば、その分、免疫力は高まる。ストレスがかからないかたちで、血流とリンパ流をよくするのが免疫力を高める。たとえば、ウォーキング。また、ぬるいお風呂に入って、からだをゆっくり動かす。過剰なストレスは免疫力全般を低下させる。
ストレスは健康に悪いと思いすぎる人は、そうでない人に比べて短命である。ストレスは自分の味方だと思えるくらいの図太さが大切。適度なストレスは、免疫系を刺激して免疫反応を強める可能性が強い。そして、実は免疫力は高ければ高いほどよいというものでもない。
ほどほどが一番なのですよね…。
(2019年12月刊。1100円+税)

レバノンから来た能楽師の妻

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 梅若 マドレーヌ 、 出版  岩波新書
能楽師は梅若猶彦。その妻はなんとレバノン人です。いったい、この二人はどこで出会ったのでしょうか。そして、能楽師とはいかなる職業なのか。さらに、二人のあいだの子どもは、どんなふうに育っていくのでしょうか・・・。
レバノンというと、私には古くから内戦をずっとやっている国というイメージしかありません。
レバノンの起源は紀元前5000年から6000年前にさかのぼる。「人種のるつぼ」として、最古はフェニキア人、エジプト人、ペルシア人、そしてローマ人、十字軍、オスマン帝国など・・・。なので、レバノン国内には今も18をこえる宗教・宗派が存在する。レバノンは、大統領はキリスト教マロン派、首相はイスラム教スンニ派、国会議員はイスラム教シーア派に人物が就任すると定められている。
二人が出会ったのは神戸の高校。インターナショナルスクールです。背が高くて、どことなく威厳を漂わせた猶彦は、とてもミステリアスだった。彼のなかには、私がどうしても立ち入れない部分がありそれは今も変わらない。芸術家というのは一筋縄ではいかない性格をしている。
彼女はレバノンに帰国したあとイギリスの大学でコンピューター・サイエンスを学びます。そのあと再びレバノンに戻ったあと戦火を逃れて日本にやってきたのでした。そして、猶彦と再会したのです。
結婚したあと、能楽師の妻として初めて能楽堂に行くと、猶彦は、「ここでは、私から三歩下がって歩くように」申し渡すのでした。耳を疑う言葉です。
能の振付を詳しく記録した秘伝書「型附(かたづけ)」を猶彦は保有している。型附を定めることによって、伝統を固定化し、そこからの逸脱を禁じた。型附は父から子に承継されるものであって、一般の生徒や弟子に公開されることはない。この指南書のおかげで、梅若一族の者は能の型にかかわる圧倒的な量の情報に触れることができ、それによって他よりも抜きんでることが可能となる。なーるほど、そんな仕組みになっているのですね・・・。
能の上演には多額の経費がかかるので、公演を主催しても赤字になることも多く、大した収入にはならない。能楽師の多くは自活を強いられている。
猶彦は、毎日、最低2時間は、立ったまま瞑想する。この瞑想によって、能の構え、身体、姿勢、身体の内側の動きを把握しようとする。
「瞑想とは、無への投資だ。無心になるのは難しいが、それこそが能の本質なのだ」
猶彦は体型の維持、そして健康保持に心を砕いている。
猶彦の胸に心拍計をつけて計測した。演技が最高潮に達したとき、ほとんど動いていないにもかかわらず、1分間に240に達した。ふだんは60から70。全速力で疾走するときの心拍数を上回っている。これは、能楽師に求められる精神集中の強度を証明するものだ。
公演が近づくと、猶彦は精神統一をしなければならないので、集中するために一人になりたがる。大きな公演の数週間前から、猶彦が必要とするだけ彼女は距離を置くようにしている。
なーるほど、能楽師の妻とは疲れる存在なのですね・・・。
能では、型附と寸分たがわずに演じることが前提とされている。無駄のない所作のひとつひとつが見る者の心に訴え、魅了できることが理想。そのため、いかなる過ちも許されない。完璧さが求められる。
能楽師は200曲もの古典的演目をまるで「辞書のように」覚えなければならない。
能の世界に「引退」は」なく、体力が続く限り演じ続ける。
いやはや能楽師の妻たるもの大変な苦労があるのですね。しかし、彼女は自分を「根っからの闘士」と自称しています。たくましいのです。ですから、二人の子どもたちも苦労しながらもたくましく育ったのでした。一読に値する新書です。
(2019年12月刊。780円+税)

余力ゼロで生きてます。

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 水野 美紀 、 出版  朝日新聞出版
43歳での出産の前後と育児の辛くて楽しい日々が赤裸々に描かれていて、すごいよね、女性は・・・と驚嘆しつつ、最後まで面白く一気に読み通しました。
妊娠したら、コーヒーも紅茶もダメ、大好きな辛いものも、好きなお酒も飲めない。代わりにたんぽぽコーヒー(まるで戦前のヨーロッパの話です)、そして、デザートはスイカ・・・。これはこれは大変なことですね。1日じゃありませんからね・・・。
人間の脳は、辛い記憶を忘れる機能をもっている。忘れられるから、生きていける。
私も、これは本当にそう思います。年齢(とし)をとったから忘れるのではなくて、忘れるのは、忘れられるのは、実は、とてもいいことなんだ、今ではそう思うようにしています。
出産したあとの母体は、全治1ヶ月の大ケガをしたようなもの・・・。うひゃあ、そ、そうだったんですか・・・。それは知りませんでした。失礼しました。
お産が命がけのものだと身をもって知った。こんな痛い思いは二度といやだと思った。ところが、1年たったら、あのトラウマレベルの痛みの記憶は薄れ、若かったら、もう1人産みたかったなあ・・・、なんて思っている。
保育園に通うようになって、次々に鼻水状態になっていく。治りかけてはうつされて・・・というループにふりまわされる。ところが、医師は、こうして抵抗力が養われて、強くなっていくのだという。弁護士である私も、医師ではありませんが、まったく同感です。無菌培養ではひ弱い身体のままだと思います。たくさんの雑菌にふれてこそ、鍛えられる。そのように私も思います。
育児に比べたら、仕事なんてラクなもの。専業主婦の方が絶対に大変だ。どんなに可愛い我が子でも、1人で不安をかかえながら、毎日、睡眠不足で逃げ場もなく向きあっていたら、可愛いものも可愛いと思える余裕すらなくなってしまう。
子どもも泣き出したものの、何で泣いているのか自分でも分からなくなっていることが多い。そんなときには、くすぐって笑わせるのも効果的な対処法だ。
子どもが泣いて、原因が分からないときは、次の3つを疑ってみるとよい。
①自分でやりたかった、で大泣き。
②秩序(いつものようになっている)が乱れた、で大泣き。
③イヤイヤ期からくる大泣き。
そして、「ママ手伝っていい?」と問いかけてみる。
かわいらしいイラストがまた格別に素敵で、思わずクスッと笑ってしまいます。
さすがは、女優だけでなく、作家・演出家というだけあって、軽くすいすいと読ませます。
(2019年12月刊。1300円+税)

ルヴァンとパンとぼく

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 甲田 幹夫 、 出版  平凡社
フランスパンのなかでもカンパーニュは独特ですよね。ずっしり重たくて、いかにも固い。そして、かむほどに味わいがあります。バゲットもいいですけど、カンパーニュは別格です。
四半世紀も前の家族旅行でパリのプチホテル(ホテル・サンジャック)に泊まったとき、朝食に出てきたフランスパンの美味しさには、子どもたちをふくめて全員がうなりました。ほどよい塩かげんと固さで、すっかりとりこになってしまいました。パンとカフェオレかホットココアのみの朝食なのですが、あまりの相性の良さに誰からも文句は出ませんでした。
東京は渋谷で、ずっとパン屋を営んでいる著者によるパンづくりの話です。
ルヴァンとは、フランス語で種(たね)のこと。一日は、この種のご機嫌うかがいから始まる。種がルヴァンの真ん中にある。店では誰より種がエライ。
日本の小麦を使い、自分たちで育てた種で焼くパン。それがルヴァンの軸。
種は毎日使うから、使い切ってしまわないように数日おきに培養する。
自宅培養の種の面白さは、多様性とその調和にある。
ルヴァンは国産小麦にこだわる。そして「地粉(じごな)」を使う。ライ麦も国産だ。今は栃木産。種が完成するのには10日から2週間かかる。
いかにも手づくりの店の本当に手づくりパンの店です。大きなパンを量り売りもして、売り残さないようにする工夫もしているとのこと。あまりもうかる商売ではないと思いますが、ともかく35年以上も続いているのですから、たいしたものです。ぜひ一度この店のフランスパン、それもカンパーニュを食べてみたいものです。
(2019年11月刊。1800円+税)

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