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カテゴリー: 人間

アレルギーの科学

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 森田英明・足立剛也 、 出版 講談社ブルーバックス新書

 この10年来、花粉症に悩まされています。毎年、2月中旬から5月連休明けまでのことです。目が痛痒くなり、鼻水が止まらず、鼻詰まりで夜の眠りが苦しみとなります。

 花粉などのアレルゲンが鼻の粘膜に侵入すると、鼻粘膜局所に存在するマスト細胞が活性化され、マスト細胞内に存在する顆粒が放出される。この中のヒスタミンという化学物質が感覚神経を刺激して、くしゃみを誘発して、外敵を物理的に排除する。

 このヒスタミンは、同じく活性化したマスト細胞から産生される生理活性物質のロイコトリエンとともに、血管透過性の亢進(こうしん)や血管拡張を誘導して鼻汁の分泌を促し、鼻汁と一緒に外敵を追い出すことを容易にする。

 中国の砂漠地帯から飛来してくる黄砂の大きさは4マイクロメートルほど、花粉は10~100マイクロメートルなので、黄砂のほうがずっと小さい。この粒子の表面に汚染物質が付着する可能性がある。

 子どもが土や草、動物など、多様な自然環境に触れることによって、多種多様な微生物に曝露される。これが、免疫系にとって重要な「トレーニング刺激」になり、アレルギー疾患の有病率をおし下げる。

 北海道と沖縄にはスギの樹木が少ないため、スギ花粉症の人は極端に少ない。

リラックスすると、花粉症の症状はひどくなる。それは副交感神経が優位になるため。逆に運動して、交感神経が優位だと鼻症状は軽くなる。アレルギー反応の場が水分で膨張すると、鼻では下鼻甲介がふくらむのでかえって空気の通り道が狭くなるため、鼻づまりになる。

子どもたちに花粉症が増加している。今や、国民の約半数が何かしらアレルギー性鼻炎となっている。こどもたちの親にアレルギー性鼻炎が多くなっているため、アレルギー体質が受け継がれている。

花粉症の発症には、車の排気ガス、黄砂などによる大気汚染も関係していると言われている。

鉛が鼻の粘膜に沈着することによって鼻の症状を悪化させている。

 花粉症の薬物療法がいろいろ紹介されていますが、私は薬を飲みたくありませんので、何も飲んでいません。ひたすら耐えています。

 例年、5月のゴールデンウィークが過ぎるとおさまるので、それまでの辛抱です。

帰宅したら洗眼するのが良い。ただし、洗眼も過ぎてはいけない。目の乾燥は防ぐ必要がある。

今でも年に50~80人ほどが、アナフィラキシーが原因で死亡している。再発防止のためには、原因の特定が大切。食物アレルギーの原因として、鶏卵やナッツ類もあげられる。

加齢により免疫の調節機構が低下し、自然免疫と獲得免疫のバランスが崩れやすくなる。長年にわたって蓄積されてきた化学物質、アレルゲン、ストレスなどが「臨界点」をこえたとき、アレルギーが発症する。

 アレルギーについて、少し知見を広めることができました。それにしても花粉症の広がりはただごとではありません。トランプは否定していますが、地球の温暖化がすすみ、化学物質万能という風潮のなかでの増大だろうと私は考えています。

(2025年12月刊。1320円)

「心の不調」の脳科学

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 加藤 忠史 、 出版 講談社ブルーバックス新書

 交感神経は、緊急時に対応するアクセル。副交感神経は休息時に対応するブレーキの役割をする。

完璧主義者や、物事を白か黒かに決めつけて判断する人、自己評価が低い人は、心や身体の不調に陥りやすい傾向がある。

 統合失調症と双極症は、遺伝的相関がとくに高い。

統合失調症の患者には肥満の人が多い。これは、薬の副作用で肥満になるケースが多いことを示している。統合失調症や双極症で肥満の人たちは、本来は、やせ傾向の体質をもっている可能がある。

 1930年代、アメリカの小児科病院で院内感染が広がった。そこで、赤ちゃんを一人ひとり隔離して、親に面会させず、医師や看護師もあまり接触しないようにした。すると、隔離箱に入れられた赤ちゃんは、十分な栄養は摂られていても、体重がどんどん減少して発熱が続き、入院前よりやせて死ぬ寸前の危険な状態になった。そのため、親が家に連れて帰ると、とたんに回復して元気になった。赤ちゃんを孤独にしていたのが良くなかったと医師が気がついて、赤ちゃんを抱いたり遊んだりしてあげると、その死亡率は大きく減少した。そうなんですよね。人間は一人ぼっちでは生きていけないのです。

社会的に隔離された養育環境で育つと、心筋梗塞や呼吸器の疾患、糖尿病、高度の肥満になる確率が高まった。また、うつや自殺企業など、メンタルヘルスにも大きな問題をかかえ、死亡リスクが高まる。

 虐待された子どもの大半は、虐待を繰り返さなない。自分の子への虐待を繰り返すのは半分しかいない。小児期の逆境体験が心に与える影響は大きい。それでも、取返しのつかないほどではない。

子育てに必須のCMPOAは、孤立を感じて仲間を求める行動を起こす脳領域でもある。

 うつ病や双極症では、多くの場合、何らかの症状が小児期からあらわれ、成長とともにゆっくりと本格的な症状に進行して、思春期に入るころにうつ病や双極症と診断される。

 うつ病の遺伝要因をもつ子どもは、ネガティブな表情に対して脳が強く反応する一方で、ポジティブな表情に対する反応が相対的に弱い傾向がある。

脳の機能には、意識的に変えることのできる余地がたくさんある。

 ギャンブル依存症は、人間性や意思の弱さが原因でギャンブルがやめられないのではなく、脳の働き方が変わってしまう精神疾患。つまり、病気なのです。ギャンブル症や物質依存の人は、報酬に対して、報酬系があまり活発化しない。

 ネット依存の大きな問題点は、患者の大半が中・高校生から大学生までの思春期の人たちだということ。

 うつ病を引きおこす主な原因の一つは、脳内炎症ではないか……。脳内炎症が続くと、やがてタウというタンパク質が蓄積して、神経細胞の機能が低下したり、細胞死が起きたりする恐れがある。タウの蓄積は、アルツハイマー病の患者の脳内で起きている。

 レム睡眠は、「浅い眠り」と言われることがあるが、間違い。ノンレム睡眠よりも深い眠り。

眠り始めた最初の3時間に成長ホルモンがたくさん出る。成長ホルモンがたくさん分泌される条件は、夜10時に眠ることではなく、眠りの最初の3時間で2回ほど訪れるノンレム睡眠N3で非常に深い眠りをしっかりとること。

 ノンレム睡眠の非常に深い眠りのときにストレスホルモンの分泌量が低下し、ストレス反応がリセットされることで身体が回復し、免疫機能も活性化する。ノンレム睡眠の深い眠りは、記憶を定着させて長期間忘れないようにするためにも重要なこと。

 レム睡眠のときの血流量が、覚醒時やノンレム睡眠のときよりも2倍に上昇する。レム睡眠はとても特殊な脳の状態で、活発になった血流に乗って、神経細胞にたくさん酸素や栄養が運ばれ、高廃物が一気に回収される。

 コーヒーのカフェインは、レム睡眠による大脳皮質のリフレッシュ効果を防げる作用をしている可能性がある。レム睡眠には、クールダウン効果があるのかもしれない。

 レム睡眠の短さは、認知症と死亡率の高さと関連している。レム睡眠は、脳の発達や老化にも関係している可能性がある。

睡眠の役割は、不良品タンパク質が増えないように全身の活動を止め、タンパク質の合成量を低下させることにある。

 ストレスをためないこと、定期的にストレスを発散すること。これが私の健康法の一つです。

(2026年1月刊。1320円)

すごい人体、やばい人体

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 カラン・ラジャン 、 出版 河出書房新社

 人間は、身体の内部で薬をつくっていると聞いて、私はひっくり返りそうになるほど驚いたことがあります。すごい力を人体はもっているわけです。無意識のうちに人体はやっているわけなので、意議ある身としては、それを妨害せず、むしろ手助けするようにしたいと考えています。

 人は眼で情報を集めて、脳で物を見ている。そうなんですね、眼が見ているというのは不正確なんです。そして、物には色がついていないというのも不思議です。赤いリンゴを見ているとき、そのリンゴが赤いのではなく、リンゴから反射された光の波長にもとづいて電気信号やデータポイントのパターンを形成し、赤い色を知覚している。脳が赤いリンゴの反射する光の波長を、その物体の周りにある他の波長と比較している。見ているのは信号を翻訳したもの。

 糖尿病により血液中の酸素が慢性的に減少すると、網膜は供給量を増やそうと必死に血管を増殖させようとする。血管が網膜の前にあるため、血管の増加は視力をさらに悪化させる。

 ヒトの脳には10億個の神経細胞がある。各神経細胞が他の1000個の神経細胞と接続しているため、1兆個以上の接続ポイントがあることになる。これは、1兆データポイント分の記憶容量があることを意味する。

 ヒトの記憶は、ほぼ作り話、フィクションだ。記憶を呼び起こすことは、本質的に伝言ゲームだ。

脳には、痛みの受容体がない。

ヒトを除く、あらゆる哺乳類は、身体の大きさにかかわらず、一生涯に刻む平均の振動回数は5億回と、ほぼ同じ。これをルブナーの法則という。ヒトにあてはまらないのは、医・科学の迫害によって、振動回数をのばすことができるようになったから。

 肝臓は、脂肪を分解してエネルギーを取り出すと同時に、タンパク質、ホルモン、切り傷からの出血を止める凝固因子などを生成する。肝臓が果たしている機能は少なくとも500はある。これを機械で代替するのは不可能。肝臓の再生能力は驚異的で、70%を誰かに提供しても、わずか2~3ヶ月で正常に戻る。

 適度なストレスは、ヒトにとって良いもの。ストレスは体液の循環を促進し、心拍数を増やし、血液循環を効率化する。

 三交代勤務の人は、さまざまな種類のがんや代謝疾患、精神健康の問題を抱えている。そして心血管疾患のリスクも著しく高くなる。先日、変則三交代勤務の人と話していたら、身体がなかなか慣れないと、こぼしていました。この本によると、それはわずかなお金をもらうのとひき換えに健康を損なっていることになります。

夜10時を過ぎたら、子どもも大人も寝床(布団)に入って眠ったほうがいいのです。ちなみに私は今、夜10時半に寝て、朝は6時前に起きます。もう朝は明るくなっています……。

(2025年9月刊。2860円)

アニータの夫

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 坂本 泰紀 、 出版 柏書房

 2001年、青森県住宅供給公社の経理担当職員が14億円もの巨額を横領していたこと、少なくとも8億円をチリ人の女性(アニータ)に送金していた事件が発覚し、大変なスキャンダルとなった。

横領していた男性は懲役14年となったが、満期出所し、今は生活保護を受け、世間に隠れて生活している。他方、チリに住むアニータは子ども9人をかかえ、有名人として健在。この本は、その横領犯の男性と出所後に何回も取材、面談した成果をまとめています。

私の第一の疑問は、なんでそんな金額の横領が可能だったのか、ということ。それは、この本を読んで判明しました。要するに、住宅供給公社というのは利益を上げているのに、決算上は利益を100万円以下にするようになっていた。なので、公社には隠し金が100億円も積み上がっていた。これをいろんな名目の「引当金」としてプールしていた。

 この財源の振り替えを職員が1人で担当していたので、横領するのは簡単なこと。アニータと知りあう前から横領していた。そのお金は、夜の街での遊興に費消していた。

この職員は東京の大学を出ていたが、いわゆるプロパーなので、60歳定年で課長になれたらいいほう。理事長も事務も部長も、みな天下り。実務はしないし、知識もないのに高給取り。そして、何年かしたら転出していく。そのバカらしさと相まって横領を重ねていった。弁解になりませんが、その気持ちを理解することは出来ますね。

 事件が発覚したあと、県知事は公社の解散を命じて、解散したが、その時点でも公社には数十億円以上の資産があったのでした。驚くべきことです。

隠し財産だから、誰にも分からないという自信があった。発覚したのは、2001年10月に仙台国税局が調査に入ったとき、男性が逃亡したことから。

 第二の疑問は、アニータは受けとった8億円(11億円かも……)を何に使ったのか、本当に残っていないのか……ということ。アニータは、チリで豪邸を建て、病院を買収し、一族郎党に気前良く大金をばらまいていて、どうやら本当にお金は残っていないようです。アニータはチリで芸能活動をしていて、インスタグラムのフォロワー数は80万。

アニータは、実子8人、養子1人のシングルマザー。子ども8人のうち6人は、父親が全部違う。日本人男性とのあいだの子はいない。ところが、なぜか日本人男性の妻のまま、今日に至っている。

 アニータが建てた豪邸は青森県住宅供給公社が差押して、競売代金7300万円を回収した。ほかにレストランや病院にも投資して運営していたというが、そこからは回収できていない。

 アニータは、チリで、賛否両論を巻き起こしつつも、力強く、今を生きている。アニータは、取材するなら2~3000ドルを要求する。結局、著者はアニータ本人の取材に失敗。

 第三の疑問は、アニータは巨額横領の共犯では……、というもの。しかし、アニータは、億万長者と結婚したと信じていたと、真っ向から否定する。

男性は取材に答えて言う。アニータを寂しい人間、悲しい人間、貧しい人間だと間違って理解した。実際は、寂しくもなかったし、悲しくもなかった。弱い者を救いたいと思っていた。でも、アニータは本当は強い人間だった。

自分が得たものは、汚れた、汚れきった醜(みにく)い歴史。後悔しか残らない。汚れた歴史と後悔だけが残った。

 アニータは、チリに行くたびに姿形(すがたかたち)が変わっていった。姿形の変化より、驚くのが心の変化だった。

 ともかく、読むと腹の立つばかりの本でした。人間って、こんなにもバカになれるものなんですね……。

汗水たらし稼いだお金じゃないから、深みがない。心のないお金なので、まったくお金が違う。こればかりは、まったく同感でした。

 弁護士50年やって、タワーマンションを買えるほど、お金を貯めることは出来ませんでした(貯めようと思ったことは一度もありませんが……)。それでも、自分の信念を大きく曲げずに生きて弁護士を続けてこられたことに感謝するばかりです。

(2026年1月刊。1870円)

「間(ま)」の極意

カテゴリー:人間

(霧山昴)

著者 太鼓持 あらい 、 出版 角川ワンテーマ新書

 太鼓持という職業の人は落語の世界でしか知りませんが、それを仕事としていた人の語りは、さすがに、なるほどそうなのかと思わせる内容でした。

どうして「間」が空くことが怖いのか。自信がないから。余裕がないから。「間」をうまくつかむには、メリハリが大事。

 太鼓持ちは、予想に反するような対応をすることで期待に応える。なので、芸もわざとはずしてやったりもする。

ドキドキ感をなくしてしまう、慣れてしまうのは怖いこと。ドキドキして怖いのは当たり前のこと。むしろ、それは謙虚でいることの証拠。

 お座敷で人を楽しませるというのは、人の気持ちを明るくし、なごませる。だから、基本的に自分も裏のない、純粋な、いい人間であろうとする。同時に、人のいやな側面をあまり見なくてすむ。

他人(ひと)の話を聞くときに何が大切かというと、その人が何を言おうとしているのか、そこに思いを馳(は)せて、きちんと聞いてやること。ひとの話のなかには、その人の希望とかお願いの気持ちが何らかの形で込められているもの。

 十一屋さんというのは、土。つまり、泥くさい、野暮な客。若松さまとは、世間知らずのおめでたい人。めかいちさんとは、助平のこと。箒(ほうき)とは、浮気者。七夕さんとは、一年に一度しか来ないのに、よく来ていると吹聴している客。

 座敷でやたらと女将や仲居さんにいばりちらす人がいる。よほど、人間としてのスケールが小さい人。弁護士である私に対して威張りちらす人がたまにいます。びっくりしますが、こちらは独立自営業者ですので、早々にお引取り願います。上に立つ人の多くは意外に腰が低いものです。

 太鼓持ちとして、下手に出ること、謙虚になって接することは、自分を卑下することではない。むしろプライドがあるからこそ、できるもの。とっさのつくり話も、他愛のないウソも、相手に対して誠意ある態度で、まじめに真剣にやる。これが太鼓持ち。

太鼓持ちという職業は絶滅寸前。戦前の東京には3万数千人いたのに、今や東京に4人、関西には著者一人のみ。この「今」というのは、25年前のことです。もう絶滅してしまったのかもしれません。

 著者は私と同じ団塊世代です。面白い本(新書)でした。

(2001年11月刊。571円+税)

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