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カテゴリー: ヨーロッパ

ウィーンびいきのウィーン暮らし

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 服部 豊子 、 出版  ブロンズ新社
私もウィーンには一度だけ行ったことがあります。いかにも古都らしいたたずまいの町で、音楽好きの人なら、ぜひ一度は行ってみたいと思うところだと実感しました。
ウィーンは、古代ローマ人が1世紀の初めから500年間も支配した。その後は、東方の騎馬民族アヴァ―ル人やハンガリーのマジャール人に占領されたり、フランケン王国に属したりしたあと、10世紀から13世紀までパーペンベルグ王朝が治めた。10世紀末にオーストリアの名で国家が成した。その後は大帝国となったものの、第二次大戦後の1918年にハプスブルグ王朝が終了すると、オーストリアは小国となり、第二次大戦中はナチスの支配下に組み込まれた。
ウィーンは、周辺の数多い国々から人々が集まって来て成り立った町なので、さまざまな個性がその個性を保ちながら融合し、ウィーン気質をつくっていった。
昔、ウィーンでは、料理人はチェコ人、馭者(ぎょしゃ)はハンガリー人、土木労働者はイタリア人と言われていた。19世紀末のウィーンの10人に1人はユダヤ人だった。
多くのウィーン人は音楽や演劇をたいそう好む。
ウィーンではオペラ舞踏会のほかに舞踏会がたくさんあるので、ウィーンはダンスが上手で、まさに「ウィーンは踊る」だ。
モーツァルト、シューベルト、ヨハン・シュトラウス・・・、みなウィーンで活躍した。
ベートヴェンもシューベルトもウィーンの中央墓地に眠っている。
オーストリアでは白ワインが90%を占めている。軽く新鮮な香りが特徴で、わずかに酸味のある辛口。
ウィーンのシェーンブルン宮殿は1805年と1809年にナポレオンに占領された。この本には、いまいましくも・・・と書かれている。このシェーンブルン宮殿はマリア・テレジアの好みで、特徴ある褐色がかった黄色に塗られている。
ヨハン・シュトラウスは親子二代にわたって19世紀の100年間、音楽(ワルツ)をかなでた。このワルツ熱は、保守反動の官僚制を固守していたメッテルニッヒにとって、人々の政治に対する関心をそらすために好都合なものであった。
なーるほど、そういう面もあるのですね・・・。
父シュトラウスは、ラデツキー将軍とその兵士にささげた「ラデツキー行進曲」を作曲し、息子シュトラウスは、1848年の三月革命のとき勇敢に戦う革命軍に感激して「革命マーチ」を作曲した。
ベートヴェンはナポレオンを尊敬していたので、「第三番」「英雄」を捧げた。しかし、ナポレオンが皇帝になったことを知ると、痛く失望し、楽譜の表紙に書いていたナポレオンの名を強く擦り消したために、紙に穴が開いてしまった。
19世紀の目ざましい経済発展を担ったことで富を得たユダヤ人たちは、法を尊重し、道徳的かつ知的で、貴族文化をよく吸収していた。合理的な文化社会を築くことによって、社会は民主的秩序が整えられていくものと考えていた。しかし、底辺の層は資本主義経済を握っていたユダヤ人に対する嫉妬や反感から、反ユダヤ的キリスト教社会主義などが広まっていった。反ユダヤ的、汎ドイツ主義が出現していったのだ。
このあたりが、日本人にはもうひとつぴんとこないところです。
香り高い文化と音楽の町・ウィーンを堪能できる本でした。人間ドッグでこもったホテルで読んだ本です。
(2003年7月刊。2000円+税)

「マルクス&エンゲルス」(1巻)

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 野口 美代子、丸川 楠美 、 出版  高文研
いまアメリカでは、大学生をふくむ若者たちが社会主義に惹かれているそうです。そう言えば、民主党の有力な大統領候補であるサンダース議員は民主的社会主義者と自称していますし、若きオカシオ・コルテス議員も同じ潮流でしたよね・・・。
これはマンガ本です。私は映画「マルクス・エンゲルス」もみていますが、まったく映画の雰囲気と同じだと思いました。
第1巻は、マルクス・エンゲルスの幼年時代のエピソードに始まります。
マルクスもエンゲルスも、それなりに豊かな家に生まれ育ち、そして成績も優秀でした。
エンゲルスはベルリンでヘーゲル哲学を学んだ。そこで、神が人間をつくったのではない。人間が神をつくったのだという文章に出くわした。
エンゲルスは工場経営者の息子でもあり、その工場で働く労働者の状況も調べて本にまとめた。
いやあ、映画といい、このマンガといい、よくぞ当時のヨーロッパの雰囲気を伝えてくれます。
私は大学生になってから、必死でマルクス、エンゲルスの本を読みました。そのなかの一つがエンゲルスの『イギリスにおける労働者階級の状態』であり、マルクスの『経哲草稿』を読んだのです。
この本のあとがきにも、映画『マルクス・エンゲルス』をみて感動して発奮したと書かれています。マルクス・エンゲルスの古典に導かれる手引書としてたくさんの若者に読まれてほしいと思いました。
(2020年1月刊。650円+税)

スコットランド王国史話

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 森 護 、 出版  大修館書店
私はイギリスに行ったことがありません。ヒースロー空港に立ち寄ったことはありますが、空港の外に出る機会はありませんでした。大英国書館に入って、マルクスが座って勉強していたという場所にも行きたいとは思うのですが・・・。
そして、スコットランドというとスコッチ・ウィスキーというイメージしかありません。
いえ、メアリー女王がイングランドのエリザベス女王に反逆したとして処刑(断頭)されたことは映画にもなって知っていました。それくらいの知識です。
この本でスコットランド王国の歴史を、概略ですが知ることができました。スコットランド王国では、王という存在は徳川幕府の将軍ほどには安泰でなかったようなのです。驚きました。
スコットランドには、ケルト系のピクト人が大陸から移住してきていた。ピクト族は、中央ヨーロッパをルーツとすると言われている。そして、ローマ軍が紀元43年から5世紀初めまでブリタニア島に駐留して支配していた。しかし、ピクト族の居住するブリテン島北部まで支配することはできなかった。
スコットランドの支配層は、タニストリーという王位継承方式をとった。つまり、王家一族のなかから、力量があり、国王にふさわしい人物を、国王の在位中に次王として選んでおいて、王位継承の日に備えておくというもの。優れた国王を実現するのが狙いだ。
ところが、野心満々の人物が選ばれなかったら、その不満が爆発する心配があり、現にそうなっていった。長子継承の制度に変えようとする試みも途中であったが、それもまた、簡単にはいかなかった。この制度では、叔父、従兄弟、甥というように、直系による継承でないため、自然に在位期間が短くなる。そのうえ、継承に不満をもつ者による国王殺害が加わって、さらに在位期間が短くなった。
14世紀初め、スコットランド王国はイングランド軍に占領されていた。スコットランド内部の抵抗するリーダーたちは、それぞれの利害と思惑がからんで、協調も統一もない状況だった。
そして、14世紀半ば、イングランドがフランスとの百年戦争にのめり込んでいるときも、スコットランドは完全な独立を勝ちとることが出来なかった。
百年戦争のとき、フランスでは戦闘によって田畑を荒らすのはお構いなしだった。ところが、イギリスでは、イングランドでもスコットランドでも、農民や市民を困らせるような戦闘はしないという美風が固く守られていた。ばら戦争は30年ものあいだ続いたが、イングランドの民生には、ほとんど実害を与えなかった。イングランドにおける内戦は、互いに相手の町や建物などを破壊せず、一般民衆を殺戮することもなかった。
これって、信じられないことですよね・・・。
スコットランドのメアリー女王は、フランス王妃であり、イングランド女王でもあるという可能性があった。そして、本人は、終生、イングランド女王になる道を確信していた。
メアリー女王は、スコットランド王国から追放され、イングランドに逃げ込み、エリザベス女王の保護を求めた。ところが、メアリーは、自分にイングランド王位の正当な継承権のあることを主張しただけでなく、エリザベスを廃位に追い込む陰謀に何回も関係し、ついに反逆罪で処刑された。44歳だった。
波乱に満ちたスコットランド王国の歴史を駆け足でたどることのできる本でした。これも、正月の人間ドッグのとき滞貸一掃として読んだ本の一つです。
(1998年12月刊。2400円+税)

テロリストの誕生

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 国末 憲人 、 出版  草思社
フランスでイスラム過激派による大量殺人・テロ事件が起きたことは記憶にも新しいところです。朝日新聞ヨーロッパ総局長をつとめる著者がテロリストの詳細な実情を伝えてくれる貴重な本です。本文500頁の大部な本ですが、詳細かつ圧倒的迫力がありました。
テロリストたちはヨーロッパに生まれ育っていて、大部分が二世である。テロリストになるまで、ごくフツーのヨーロッパ市民だった。
クアシ兄弟が育ったところは暴力に覆われた場所だった。貧乏な人々を政府が放置した結果、彼らの怒りや恨みを増幅させた。兄が12歳、弟が10歳のとき、娼婦だった母親は大量の睡眠薬で自殺し、兄弟は孤児となった。
人は、もともとテロリストとして生まれるわけではなく、なにか唯一の衝撃的な啓示をもとに突然にテロリストに変貌するわけでもない。多くの人は、宗教とは無縁の世俗的な環境からイスラム主義者、ジハード主義者へと段階を踏みつつ、長い時間をかけて最終的にテロリストに行き着いている。
フランスの人口6000万人のうち、イスラム教徒は6~7%の300~500万人とみられている。ところが、フランスの刑務所のなかでは半分がイスラム教徒である。
著者が訪問したフルリ・メロジス刑務所は、3000人もの収容能力を有するヨーロッパ最大規模で、ここに働く1200人の看守の65%をインターン生が担っている。刑務所の内部にはケータイやビデオ、大麻が出回っていて、受刑者と訪問者が面会室で性交することもある。
刑務所の内部同士で、また外部との連絡をとるのは決して難しくはない。
フランスの刑務所では管理が杜撰なため、脱獄は意外に頻繁に起きている。
犯罪からテロへの移行の場所として大きな役割を果たしているのが刑務所だ。過激思想やジハード主義は、孤独と不安にさいなまれている受刑者に手っとり早い指針を与えてくれる。
テロリスト79人のうち57%は刑務所に入っていたことがあり、このうち31%は収監中に過激化した。
サラフィー主義者とジハード主義者は、しばしばカミーズ(ゆったりと身体を覆い尽くす白衣)をまとい、ひげをはやしている。
サラフィー主義は、一般的に暴力を認めない。これに対して、ジハード主義は、暴力行使も辞さない態度をとる。
いま、ヨーロッパのイスラム過激派は、犯罪集団か定職をもたない人々が支えている。アラブ系とユダヤ系とが共存してきた地区で育ちながら、「敵はユダヤ人」と思うようになっていった。
テロリストたちは、なぜユダヤ人にそれほどこだわるのか・・・。
イスラエルがいつも圧倒的な力を見せつけているパレスチナ紛争の影響から、フランスに暮らすイスラム教徒の相当数がユダヤ人に対して反感を抱いているのはたしかだ。
テロリストをとり巻く環境は、アルカイダ時代から大きく変化した。今ではユーチューブやツイッター、フェイスブック、ワッツアップなどという新技術を駆使して情報を交換しあっている。
ジハード主義の男たちが外で仕事をしたり、人と会ったりしているあいだに、女たちは家で本を読む。その結果、女たちのほうが宗教や理論に詳しくなり、しっかりとしたイデオロギーをi抱く。そして、妻が夫を「殉教」に送り出すと、「イスラム国」は素晴らしい住居も保障してくれる。「殉教者の妻」は、ジハード主義者のブルジョア的地位が約束され、天国にも行ける。つまり精神的利益だけでなく、物質的な利益も受けるのだ。ジハード主義の女性にとって、家族の命が奪われることは、悲しむべきことではなく、むしろ喜びである。
ええっ、本当にそう思っている女性がいるのでしょうか・・・、私には、とても信じられません。
パリで起きた大量殺人のテロ事件(2015年11月14日)では、テロリストは10人。そして、自爆、レストランやバーでの銃撃、劇場への立てこもりという複数の手法を組み合わせている。大勢が実行にかかわっていて、きわめて周到で組織てきな犯行だった。
テロリストになった若者の6割以上が移民2世。移民1世や3世は、ほとんどいない。また、キリスト教家庭からの改宗者が全体の25%というように多い。
「イスラム国」がふりまく英雄のイメージにひかれ、イスラム教社会の代表者であるかのように戦うことで英雄として殉教できる。生きることに関心をもたなくなり、死ぬことばかり考える。
大変考えさせられることの多い本でした。
(2019年10月刊。2900円+税)

戦場のコックたち

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 深緑 野分 、 出版  創元推理文庫
ノルマンディー上陸作戦に参加したアメリカ陸軍のパラシュート歩兵連隊を舞台とする戦争物語です。著者は、まだ若い(36歳)日本人なのに、ノルマンディー上陸作戦をめぐる作戦過程が実によく描写されています。たいしたものです。実は、前の『ベルリンは晴れているか』も同じように細部まで迫真の描写でしたが、私には、いささか違和感がありました。本書の方は、すっと感情移入できたのですが、この両者の違いがどこから来るのか、よく説明できません。
ノルマンディー上陸作戦といっても、主人公は海から攻める部隊ではなく、パラシュート部隊ですので、空からフランスに降下してドイツ軍と戦うのです。
そして、主人公は最前線で機関銃を構えるのではなく、後方で管理部の下で調理するコックなのです。配給品が消えてなくなる謎ときをしたり、失敗に終わったマーケットガーデン作戦に参加して惨々な目にあったりします。
その描写が実にうまいのです。まるで従軍していたかのように話が展開していきます。
そして、ドイツ軍の最後の反撃、アルデンヌの戦いに巻き込まれていくのでした。
さらに、ユダヤ人を強制収容していた絶滅収容所にも出くわすのです。
ノルマンディー上陸作戦に参加したアメリカの若い兵士の気分をよくつかんでいるなと思いながら、500頁をこす大部な文庫本に没頭したのでした。
(2019年8月刊。980円+税)

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