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人生の科学

カテゴリー:人間

著者   デイヴィッド・ブルックス   、 出版   早川書房
 人間の意識と無意識との関係を明らかにした面白い本です。
人間が幸福になるうえでは無意識が重要な役割を果たす。人間の日々の行動は、無意識の世界で生じる愛情や嫌悪などの感情によって、かなりの部分が決められてしまう。 
人の感情の90%は、言葉以外の要素によって伝わる。話すときの態度、体の動きなども大切な要素だ。
 無意識は、決して心の中の暗闇の部分、未開の部分などではない。恐怖や痛みを隠しておく場所でもない。人と人がつながる場所、心と心がつながる場所である。無意識には、長い時間をかけて知恵が蓄積される。
 男性が美しいと感じる女性は、肌が美しく、唇がふっくらとしている。髪が長く、艶がある。左右の対称性が高く、口と顎、鼻と顎の間が離れていない。
 女性が男性を見るときに主として注目するのは、目である。とくに瞳の大きい男性には性的な魅力を感じる。また、大事なのは、左右の均整がとれていることである。
 女性は男性ほど、視覚によって性的欲望を喚起されることがない。女性一人で子どもを育てるのはまず不可能なので、授精だけでなく、その後も継続的に協力してくれるような男性を選ばざるをえない。
男性は金持ちであればあるほど、付き合う女性が若くなる傾向がある。また、女性は外見が美しいほど、付き合う男性の収入が多いという傾向がある。男性の収入の多寡は、配偶者が美しいかどうかで分かることが多い。うひゃーっ、そんなことまで分かるのですか・・・・。
 意思決定は、理性の仕事ではなく、実は感情の仕事なのだ。意思決定は、私たちの知らないところでなされ、私たちの意識には後で知らされる。
 感情がなくなると、人間は愚かな人生を歩むことになってしまう。極端な場合、彼らは反社会的な人間になってしまう。他人の心の痛みを推しはかることもできないから、平気で粗暴な振るまいをする。
 私たちが自分の気持ちを自覚するのは、情報処理がすべて完了したあとである。理性は感情があって初めて機能できるもの。むしろ感情に依存しているといってもいい。
 感情は、物事の自分にとっての価値を決める役割を果たす。理性はただ、感情によって高い価値を与えられたものを選択するだけだ。
 脳の指示は初めから一つに統一されているわけではなく、同時に複数の指示が出され、それが競合する。そして、競争に勝った指示に身体は従うことになる。
 人間は絶えず迷い、揺れ動く存在である。人間を人間たらしめているのは、実は無意識ではないか。無意識が洗練され、高度な能力を持ったことで、人間は人間になったのだ。
 無意識の思考は天然のもので、自由闊達だ。それに対し、意識的な思考は、一歩ずつしか前へ進めないし、いくつかのごく限られた事実や、限られた原理・法則に頼る傾向にある。無意識の思考は、枠にしばられることなく、連想によって自由に大きく広がっていく。
 幸運な子は、母親がその時々の気分を敏感に察知してくれる。抱き上げてほしいときは抱きあげてくれるし、下ろしてほしいときは下ろしてくれる。刺激がほしいときには、刺激を与えてくれ、そっとしてほしいときは、そっとしておいてくれる。そういうときを過ごすなかで、子どもたちは自分が「他者と対話する存在」であることを学んでいく。この世界は、絶え間ない他者との対話で成り立っていることを学ぶのだ。
 生まれて間もなく接した人たちの関係が良好なものでないときには、子どもは他者を極端に恐れるようになる。そして内にこもるか、極端に攻撃的になるのかのどちらかになってしまう。     
無意識は、意識に比べ複雑な問題の解決が得意である。選択肢や可変要素がさほど多くない問題なら、意識はうまく解決できる。だが、選択肢も可変要素も多数になってしまうような問題は、無意識の方がうまく解決できる。また、意識は構成要素が明確に分かるような問題ならうまく対処できるが、そうでない問題への対処は難しい。構造が曖昧な問題に関しては、無意識の方がうまく対処できる。
 人間と人間の一生について、さらに深く知ることができる本でした。
(2012年2月刊。2300円+税)

「父・金正日と私」

カテゴリー:朝鮮・韓国

著者   五味 洋治 、 出版   文芸春秋
 先日亡くなった金正日の長男である金正男にインタビューした本です。かなりホンネが伝わってくると思いながら、興味深く読みすすめました。
金正男はディズニーで遊ぼうとして偽のパスポートが発覚して、制送還されて日本で有名になりました。日本には5回来たことがあるそうです。新橋の第一ホテルに泊まり、新橋駅ガード下のおでん屋で飲食したこともあるといいます。
金正男はヨーロッパ(スイスなど)に留学して、「完全な資本主義青年」になったため、金正日から警戒されたと本人が語っています。さもありなん、ですね。
 金正日は、子どもたちが国際的な見解をもつことを希望しながらも、金正男以外の子どもの留学期間を短縮し、留学先で友人と自由に交際できないよう厳格に統制したといいます。なるほど、それもありうるでしょうね。独裁者は孤独でしかありえないのです。
 金正恩が権力を承継したことについて、金正男は、「2年ほど後継教育を受けただけの若者が、どうやって37年間続いてきた絶対権力を受け継いでいけるのか疑問だ」としています。
金正恩は単なる象徴となり、これまでのパワーエリートが実権を握るだろうと見通している。
 正男は「三代世襲」に反対しています。そして、実は世襲については金正日も反対していたことがあると言います。ところが、北朝鮮の内部的な特殊事情から、父の金正日は「三代世襲」せざるをえなかったとみているのです。これもまた、さも、ありなんです。
権力世襲は、物笑いの対象になるし、社会主義の理念にも符合しないと正男は断言する。いまの北朝鮮の経済実情は、とても経済強国に到達したとは言えない。住民を、もう少しよく食べられる生活をさせる政治にしてほしい。こう金正男は著者に語ったとのことです。
 正男は、フランス語、英語のほかロシア語が出来る。中国語や日本語も少しは話せる。
北朝鮮の内情を少しばかり肉声で知ることができました。
(2012年2月刊。1400円+税)

現代美術キュレータという仕事

カテゴリー:社会

著者   難波 祐子 、 出版   青弓社
 いま、パリにいる娘がキュレーターを目ざしていますので、親として少しは勉強しておこうと思って読みました。
日本でキュレーターになるのは、なかなか難しいことを再認識させられました。職業として自立できるかどうかはともかくとして、美術館や博物館に足繁く通うことは人生を豊かなものにしてくれることは間違いありません。
 数ヶ月パリに留学しただけで美術館で働くキュレーターになれるほど現実は甘くないのだけは確実だ。
 それはそうだと思います。何事によらず、何年かの下積みの努力が求められるものですよね。
 キュレーターの定義としては、展覧会の企画をおこなう人、そして展覧会を通してなんらかの新しい提案、ものの見方、価値観を創り出していく人。
 1951年に定められた博物館法に学芸員を定義している。学芸員は博物館資料の収集、保管、展示および調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる。つまり、学芸員は、展覧会の企画展示や資料調査だけでなく、作品保存、収集保管、さらにはその他の関連事業という、なんとも曖昧な定義の事業も含めた多岐にわたる仕事をこなさなければならない。
 日本の美術館学芸員の守備範囲は、海外のキュレーターよりもかなり幅広い。
現在、日本全国で年間1万人が大学の単位修得によって学芸員の資格を得ている。しかし、すぐに現場で求められる能力をもった学芸員となることは、ほぼ不可能である。
 キュレーターの仕事のイメージがおぼろげながらつかめる本でした。娘よ、がんばれ。初志貫徹を心から望んでいます。
(2011年10月刊。2800円+税)

3.11と憲法

カテゴリー:司法

著者   森 秀樹・白藤 博行ほか 、 出版   日本評論社
 3.11を契機に、改憲派は、「このような緊急事態・非常事態に対応できない日本国憲法は改正しなければならない」と主張しはじめています。こんな火事場泥棒のような主張がサンケイ新聞の社説(3月22日)にあらわれていて驚くばかりです。
 3.11のあと、福島県民の気持ちは複雑に揺れ動いている。
 放射能の危険については、もう聞きたくないという人々がいる。いつまでも放射能の危険性を口にする人は、神経質な人、うとましい人となっている。それも、政府が大丈夫だと言っているからだ。子どもの疎開についても、もうそんなことは言ってくれるなと耳をふさいでしまう人もいる。ここらあたりは本当に悩ましい現実ですよね。
大災害の発生を奇貨として非常事態規定の欠如をあげつらい、憲法改正を声高に主張する国会議員がいる。彼らは国民の権利を制限することを狙っている。
 「自衛隊は軍隊ではない」という建前(政府解釈)は、結果的に「国民を守る」という面をより前に押し出している。自衛隊では国民に銃を向ける治安出動訓練はほとんどなくなり、災害への日常的態勢が強化されている。
 ところが、「軍」の本質は国家を守ることにあり、個々の国民を守ることではない。自衛隊は、「軍」となるのか、「軍隊ではない」という方向にすすむのか、今、大きな岐路に立たされているように私も思います。
 原発をめぐる裁判について、原発差止を認容する判決を書いたことのある元裁判官の次のような指摘は貴重です。
裁判所が判断するのは、その原発において過酷事態が発生する具体的危険があるか否かであって、原発の存置いかんという政策の相当性について判断するわけではない。差止判決は、十分な安全対策をとらないで原発を運転することを禁止しているのであって、およそその原発を運転することを禁止しているのではない。まるで、裁判官が一国の重要な政策を決するかのような言い方をして裁判官に不必要な精神的負担を与えるべきではない。なーるほど、そうなんですか。でも、ある程度は言わざるをえませんよね、どうしても・・・。
 憲法学の学者を中心とした論稿で、大変勉強になりました。
(2012年3月刊。1800円+税)

世界サイバー戦争

カテゴリー:アメリカ

著者   リチャード・クラーク、ロバート・ネイク 、 出版   徳間書店
 サイバー兵士が、損害や混乱をもたらす目的で、国家が別の国家のコンピューターもしくはコンピューター・ネットワークに侵入する行為が、サイバー戦争である。
 著者はアメリカの安全保障、テロ対策国家調整官などを歴任しています。この本を読んで、もっとも怖いと思ったのは、「敵」国家のコンピューター・ネットワークのすべてを破壊してしまったときには、最前線にいる司令官は孤立し、上官との通信ができず、また生き残った後任の存在を知らずに自分ひとりで決断せざるをえなくなり、それは、えてして戦い続けることを選択しがちだということです。
 つまり、情報を断たれた第一線の現場司令官は上部の停戦命令を知ることなく、戦争続行指令を出し続けるだろうということです。これは、現代世界では最悪の破局を招きかねません。これって、とても恐ろしいことですよね。
 サイバー戦争に関して、5つの教訓がまとめられています。
第一に、サイバー戦争は現実である。第二に、サイバー戦争は光速で展開する。第三に、サイバー戦争は全地球規模で発生する。第四に、サイバー戦争は戦場をとびこえる。第五に、サイバー戦争はすでに始まっている。
 ちなみに、北朝鮮の国内には、アメリカと韓国のサイバー戦士が攻撃するような目標がほとんど存在していない。
 サイバー戦争は、ある種の優位性をアメリカに与える一方、他のどの国よりも深刻な危機にアメリカを陥れる。
 アメリカの情報機関の高官によると、中国はサイバー空間におけるアメリカの最大の脅威ではない。ロシアのほうが絶対に上だ。そして、高度の技能をもつサイバー戦闘部隊は、イスラエルにもフランスにも存在する。
 サイバー犯罪者は、インターネット攻撃の経路をとして利用し、標的の情報を入手したあと、標的にダメージを与える。
 このように、インターネットにたよる国家は「敵」の国家から、そのシステムをスパイさせるだけでなく、破壊されてしまう危険があるのです。
 私のようにインターネットに頼らない生活を送る平凡な市民にとっては何でもありませんが、国家にとっては何でもありませんが、国家にとっては存立の危機につながるものがサイバー攻撃・戦争なのです。
(2011年3月刊。1700円+税)

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