(霧山昴)
著者 ジャン・ピエール・フィリュ 、 出版 河出書房新社
イスラエルのガザ侵攻が止まりません。イスラエルのネタニヤフ首相はトランプ大統領から「おまえは狂っている」と面罵されたそうですが、まさに戦争狂 というほかありません。
ところがイスラエル国民の8割がガザ侵攻を支持しているといいます。ハマスの攻撃を恐れて、根絶してほしいと願うからのようです。そこには暴力の応酬、連鎖しかありません。
イスラエル軍を現地で指揮する将官は、「人間の顔をした動物どもを、それにふさわしく処遇しなければならない。おまえらが地獄を望んだのだ。地獄を見せてやろう」 と高言します。ハマスと関係しているかどうかに関係なく、ガザの住民全員に「地獄」を味わせようというのです。これは(本当に)ユダヤ教徒なのでしょうか。宗教を信じながら、こんなことを言うなんて、そんな宗教を私は信じる気になりません。
ガザ地区に安全な場所は一つも存在しない。ガザ地区は、「天井のない世界最大の監獄」。
ガザ人口の85%がガザ内部で強制退去させられた。ガザ住民210万人が罠の中に囲い込まれた。
イスラエルによるガザ戦争を、アメリカは実質的に無条件で支援している。
ガザの地は、実は、何千年にわたって豊かな樹木と穏やかな気候で評判のオアシスだった。
ガザ地区の地下水は地中海に廃棄される汚水によって汚染されている。ただでさえ稀少な水の水質汚染と、イスラエルによる水処理の妨害が、あわさって、感染症が災害級の広がりをみせている。
イスラエル政府は、ジャーナリストを含めイスラエル人らに対して「敵地」であるガザへの立ち入りを禁止した。そのため、イスラエルの国民はガザの悲惨な状況をまったく知ることがない。
ガザの犠牲者は二度殺されている。一度目はイスラエルの戦争機械によって、 二度目は、犠牲者の激しい苦しみと甚大な喪失がイスラエルのプロパガンダによって否定されることによって…。
ガザでは、死はいつ訪れるか分からない。死は家族のなかに好き勝手に飛び込み、 年長の者より先に一番若い者を連れ去っていく。死は怪病のような化け物へと姿を変えた。
死者の肖像画は姿を消した。瓦礫の下に埋もれたままの人は何千名にものぼり、あらゆる年齢層の行方不明者となっている。かつて死には、然るべき時と場所が割りあてられていた。
平均して1日あたり100人が殺害されているガザ地区では、サバイバー症候群が 深刻な後遺症となっている。
ガザでは、子どもと女性の死者が恐ろしく多い。1つのクラスの子ども全員が、2年間にわたり毎日殺害され続けているのに等しい。
ガザには1万9千人の孤児がいると国連は推計している。なんとおそろしい数字でしょうか…。身体の震えが止まりません。
イスラエル軍の投下した爆弾の10%~15%が まだ爆発していない。回収されていない不発弾は、大量の時限爆弾となっている。
ガザの人々は、自分たちが世界から見捨てられているのを知っている。ヨーロッパ諸国に対しても期待していない。しかし、国連の支援と存在に人々は感謝している。
著者はフランス人の学者です。人道支援目的で、ガザの一部に立ち入った(当時の)レポートでもあります。ガザの実情は日本にもほとんど知らされていません。イスラエルの国民に対しても、ハマスの繰り返しの残虐さが強調されるだけで、いかに悲惨な状況にあるのか、まったく報道されていないのです。
暴力には暴力を、という暴力の連鎖を直ちに断ち切る必要がある。この本を読んで、強く確信しました。
(2026年4月刊。2860円)


