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マンガのあなた、SFのわたし

カテゴリー:社会

著者   萩尾 望都 、 出版   河出書房新社
 同世代で、同郷の出身者としてなじみのある著者ですので、つい手にとって読んでみました。
 著者は、こんど目出たく叙勲されました。お互い、それだけ年齢(とし)をくってしまったというわけです。うれしいような、悲しいような、でもそれが現実です。
 幼いころからマンガを描き続け、親とりわけ母親とは相当の葛藤があったようです。前にも書きましたが、著者はますます、私もよく知る母親そっくりです。その似ていることは、びっくりするほどです。
 でも、手塚治虫と対談しているときの著者の顔写真はまだあどけない少女の面影がたっぷり残っています。そう言えば、わが家にも彼女が少女時代に来たときの写真があったような気がします。と思って探してみましたが、ありませんでした。私の勘違いのようです。
『11人いる』という作品は何回か読み返しましたが、その発想の斬新さには驚かされます。まさしくSF超大作です。
 パリに行ったことがなくてもパリの下町の雰囲気を出した絵が描けるというのは、さすがはプロのマンガ家です。『百億の昼と千年の夜』の想像力のすごさにも圧倒されました。
 そして『残酷な神が支配する』なんて、どうしてこんな物語を発想できるのか、不思議でなりませんでした。
この本に出てくる著者の言葉で次のフレーズが強烈な印象を残しました。
 手塚治虫の『新撰組』を読んですごいショックを受けて、ガーンと頭を殴られたみたいになって、一週間ボーッとしていた。それで、自分もマンガを描いて誰かを一週間ぐらいボーッとさせたいと思った。
 すごいですね。それほど書かれている内容が胸に迫ってくるものがあったということです。私も、いつかは、そんな物語を書いてみたいものだと思ったことでした。
(2012年3月刊。1400円+税)

憲法が教えてくれたこと

カテゴリー:司法

著者   伊藤 真 、 出版   幻冬舎ルネッサンス
 みずみずしい感覚で憲法の条文を読み直すことのできる画期的なケンポーの本です。著者は司法試験受験界では名高いカリスマ講師です。ところが、情熱をかけているのは受験指導だけではありません。日本国憲法を本当に国民生活のなかに根づかせたいという気持ちで、毎日がんばっているのです。すごいですね。私も、憲法を日々の暮らしのなかに根づかせ活かしたいという同じ願いから、日弁連の委員会で一緒に活動させていただいています。
 実は、この本は著者から贈呈を受けた3冊のうちの1冊なのです。まっ先に読んだのが、この本です。なんといっても、サブタイトルに魅かれました。
 それは、「その女子高生の日々が輝きだした理由」とあるからです。
 そして、読み終わった直後に著者に会ったので、女子高生に「密着取材」をしないとかけないと思いますが・・・、と尋ねたのでした。すると、著者は照れ隠しの笑いのなかで女子高生に「取材」したことを認めたのです。
 女子高生は、なんと走るのが好きで、高校駅伝に出場するのが夢だったのでした。そして、その女子高生の父親は弁護士なのです。ところが、父親の弁護士の陰は薄く、むしろ今ではリタイアした祖父の影響力のほうが強いんです。
それにしても、県立高校の陸上部に入った主人公の女子高生を取り巻くストーリー展開のなかで、憲法前文や条文が自然に組み込まれ、その意義が解説されていく手法は見事なものです。
 こんなかたちで、すーっと胸に落ちるような憲法の話を私も若い人たちにしたいものだと思いました。著者のますますのご活躍を心から祈っています。
(2012年4月刊。1200円+税)

地球を活かす

カテゴリー:社会

著者   伊藤  千尋  、 出版   シネ・フロント社
 市民が創る自然エネルギーというサブ・タイトルのついた、楽しくて、明るい展望の開ける本です。
 原発をなんとか再稼動させようという財界と民主・自民両党は、原発なくすのは、「自殺行為」だなどと国民を脅しています。決してそんなことはありません。
 世界60カ国を新聞記者として見分してきた著者は、たとえば地熱発電所を例にとって次のように紹介しています。
 アイスランドやコスタリカでは地熱発電がやられている。ところが、その技術は日本のもの。そして、実は日本でも大分に地熱発電所がある。このように、日本には技術があり、条件もある。あとは政府の方針だけ。ななのに、日本政府は原発にあくまで固執し、地熱発電所に目を向けようとしない。
 アイスランドに世界最大の露天風呂がある。なんとサッカー場より広い5000平方メートルもの広大さ。地熱発電所の余熱利用でつくられたもの。
 日本だって、このアイデアは活用できるはず。本当に、そのとおりだと思いました。なにしろ、地熱発電所ってまったく無公害発電そのものなのですから・・・・。
 日本できちんと地熱発電を開発したら2000万キロワット、つまり原発20基分の発電がまかなえる。
ドイツは3.11のあと早々に脱原発を決めた。そして、自然エネルギーを活用している。この自然エネルギーの分野で新たに生み出された雇用は37万人にのぼった。
 むひょう、だったら、日本でも早速とり入れたらいいですよね。財界と大企業のもうけは原発とちがって少なくなるかもしれませんが、そんなことはどうでもいいことですよね。
 オーストリアは1999年、憲法に原発をつくらない、つくっても使わないという条文を新しく盛り込んだ。原発をつくってしまったけれど、国民投票して原発可動に反対する人が50.5%出たからだ。すごいですよね。日本だったら、恐らく、せっかくつくった原発だからひとまず使ってみよう。そして具合が悪ければ止めようということになったことでしょう。ところが、スイスでは、つくったけれど、ここはキッパリ使うのをやめたというのです。
 イタリアでも、国民投票をやって原発再開反対が95%となって、脱原発が決まった。
 著者とは面識ありませんが、大学では私の一学年下だったようです。先日、講演会で話を聞きましたが、2時間にわたって、立ったまま立て板に水のたとえのとおり爽やかな弁舌で圧倒されました。思わず若いね、あなたは・・・とうなってしまいました。私も負けずにがんばろうと思います。
(2011年12月刊。1000円+税)

ショージとタカオ

カテゴリー:司法

著者  井手 洋子  、 出版  文芸春秋
 
 布川事件で被告人とされた桜井昌司(ショージ)と杉山卓男(タカオ)の両氏について、仮釈放以来、ずっと映像をとり続け、ついに映画にまでした監督が書いた本です。
 私は、残念ながら映画はみていませんが、このお二人の話は直接聞いたことがあります。実は、二人とも私とまったく同世代なのです。でも、私が大学に入って東京で生活を始めた年の10月に逮捕され、それ以来、29年のながきにわたって獄中にいたのでした。そして、ついに1996年(平成8年)仮釈放されました。ときにタカオは50歳、ショージは49歳でした。女子高生のルーズソックスがブームだったころです。
そんなわけで、このお二人は見かけこそ中年のおじさんなのですが、その心は若者のままなのです。私がお二人の話を聞いたときも、見かけは私と同じでも、その心持ちはずいぶん若い気がしました。それはともかく二人コンビで何か悪いことをしたわけでもないのに、運命のいたずらで事件は二人の「共犯による犯行」とされてしまい、それぞれ「自白」して、相手を「まき込み」、それがずっとお互いのわだかまりの元になっていたのでした。
そして、そんな二人の歩みをずっと映像にとっていたというのですから偉いですよね。だけどそのとき、この監督(この本の著者です)はどうやってメシを食べていたのか(収入を得ていたのか)、いささか疑問も感じました。配偶者の稼ぎに頼っていたということでしょうか・・・・?
ショージは、刑務所の独房のなかで、毎日、腕立て伏せを100回、腹筋を50回していた。部厚い広辞苑を鉄アレイ代わりにつかって、腕を振る運動もしていた。
1987年7月に無期懲役が確定して、千葉刑務所に暮らすようになってからのことです。偉いですね。さすがですね。
そして、ショージは刑務所のなかで靴を縫う仕事で法務大臣賞をもらったのでした。逮捕される前は定職についていなかったショージは、この際、しっかり働いて誰にも負けない、日本一の靴の作り手になることを心の中で誓っていた。
ショージもタカオも長い刑務所生活のなかで心の支えになっていたのは手紙だという。たまにある面会ではない。
支援者からの手紙に写真を同封するのは一切ダメだというのを、「保護者」が写っているのはOKだということになった。
タカオは六法全書を入手し、舎房のなかで、日々研究した。
ちょっぴりぐれかかった20歳前後の若者2人を警察が目をつけ強盗殺人の犯人に仕立てあげ、「自白」させた事件です。そして、それを40年以上もかかって再審無罪にしたというのです。もちろん二人がもっとも大変だったと思いますが、それを支えた周囲の人たちもすごいですよね。そして、日の目を見る保障がないなかで映像をとりはじめたというのも、すごいです。
   無実の人が「自白」するなんて簡単なことだという実例です。ぜひ映画を見てみたいものです。
(2012年4月刊。1200円+税)

フィンランドに学ぶべきは「学力」なのか!

カテゴリー:社会

著者  佐藤 隆、 出版  かもがわブックレット
 フィンランドは「学力世界一」として評判になっています。この本では、「学力」とは何なのか、それ自体を問い直してみる必要があると強調しています。
 教育の目的が、「学力向上」の一点に焦点化されるという事態は、果たして正しいことなのか?
メディアはこういう。「今の日本の子どもの学力は落ちている。だから『たたき直して』昔のように学力を高めるのだ。そうしないと日本は心配だ」
全国一斉学力テストは、学校を今以上に文部省の思いどおりに動くものに変えるためのもの。学校同士が競い合うような構造をつくりたいという狙いである。
 日本の子どもは、ふだんの授業では扱われないような問題やあまり考えたことのない問題には戸惑ってしまう。あるいは、分かっていても自信がもてない。まちがったら恥ずかしいという感覚をもっている。
 今の日本社会は、政治や企業の世界で嘘やごまかしがまかり通る社会になっている。
 ところが、フィンランドでは、汚職や公約違反が少なくない。大人が慎ましく誠実に生きることを大切なことだと考え、それを実行している社会で育つ子どもは、いつのまにか同じ価値観を身につけていくだろう。反対に、日本のように自分の利益のためであれば何をしてもよいのだという政治を見せつけられている子どもは、安心して育つことができない。
 本当にそうですよね。マニフェストだとか言って当選したら、そんなものは知らんと放り出す政権与党と政治家を見せつけられたら、誰だって大人というか人間を信じられなくなります。まさに、教育問題とは大人の問題ですね。
 フィンランドでは、どの教室も静かで落ち着いている。教師も子どもも、ゆったり話をする。手をあげた子どもは自分の順番が来るまで、静かに待つ。クラスのサイズは小さく、多くても20名ほど。待っていたら、ちゃんと自分の話を聞いてもらえる。
フィンランドでは、どんな教科書をつかって、そんな方法で授業するのか、すべて個々の教師にまかされている。
 信頼されるということは、何にもましてやる気にさせてくれること。ところが、フィンランドでも、学校の独自色や暖かな励ましの雰囲気が薄れようとしている。それでもフィンランドの教師には、たっぷりの休養と権利としての研修、そして安定的な身分の保障が十分になされている。だからこそ教師は教育の自由と責任の自覚のもとで子どもや保護者と対話しながら、誰もが納得できる教育的な判断を下すことができる。
日本がフィンランドに学ぶべきものが見えてきた思いがしました。私たち日本人の大人の責任が大きいことを痛感します。教師を叩いて日本の国がよくなるはずはありません。わずか60頁の薄いブックレットですが、しっかり考える材料がきちんと盛り込まれています。価値ある600円でした。
(2009年11月刊。600円+税)

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