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みんな悩んで、教師になる!

カテゴリー:社会

著者   佐藤 博・山崎 隆夫 、 出版   かもがわ出版
 教育という仕事の喜びややりがいを奪うものが、今日の社会と学校にあふれ、教師たちを追いつめているのではないか。教師を生きることの困難は、若い教師たちだけの問題ではない。
 公立学校教師の病気休職者は、2009年度に8500人、その6割の5400人が精神性疾患による休職。この神経疾患による休職者は、1993年ころから2.5倍へと急増している。そして病気休職者全体の増加分のほとんどが、「精神性疾患による」休職者となっている。
ベテラン教師であっても生きづらい日々を重ねながら命を削るようにして毎日を送っている。私のよく知る同世代の教師も定年前に退職してしまいました。教師には喜びもあるけれど、無用かつ大変なストレスがかかっているのです。
 初任者研修が、助けあうものではなくなっている。お互いに足をひっぱりあい、批判しあうものになっている。自分の学級がいかにうまくいっているのかアピールする人がいて、自分が指導主事や教育委員会にいかに目立つことができるかを誇示する場になっている。
 管理職や指導教官による「不当な圧力」ともいえる「指導」があり、「対応のしかた」がある。これが新任教師を苦しめ、教師という仕事から夢を奪い、教師を続けることをためらわせている。そして、保護者からの「クレーム」の問題もある。
もっとも強く若い教師を苦しめているのは、失敗や試行錯誤を含めた一人ひとりの教師の、瑞々(みずみず)しい個性的な実践を暖かく見つめる視点がないこと、それらが支えられていないこと。あるいは、不十分ではあっても、さまざまな困難に打ち勝ちながら、子どもと友に成長していく教師への「しなやか」で「ゆるやか」で「人間的な」まなざしが、教育の現場や社会に欠けていること。
人間的完成を呼び覚まし励ましてくれるような会話の流れる関係や言葉が、職員室の中心にあったら、どれだけ若い教師を大きく励ましてくれることだろうか。
教師と子どもを競争で追い立て、支配し、学校を人間が育ち生きる場にしていない今日の状況を変えることがいま切実に求められている。
 いま、国家が全力をあげて教師を蔑んでいる。国が蔑んでいるものを国民が信用するはずがない。だから、うまくいくものもうまくいかない。そして、それをどんどん責め立てて追いつめていく。だから、誰がやってもうまくいかないようなシステムにされてしまっている。この構造そのものが、教師の直面する困難の基本にある。教師はいま、上・下・横・内から責め立てられている、上は教育委員会、校長、副校、主幹。下は肝心の子ども自身からの反抗で、なかなか言うことを聞いてもらえず、さまざまな問題行動が起こり、秩序が乱れて収まらない。そのため、今度は横から、つまり保護者から、いろいろな批判や苦情を言われる。信頼されない。連絡ノートにびっしり要求を書いてくる。「先生、辞めたら」とまで言われる。ついには職員室の内側まで競争にさらされ、同僚からも指導力を問われたり、非難されたり、陰口を言われたりする。
 教師を大いに励まし、横の連携を強めてもらってこそ、子どもたちは安心して教師と一緒に生活できるし、学びあいができます。今の日本の教育は、本当に心配な状況にありますよね。
(2012年3月刊。1500円+税)

ウイルスと地球生命

カテゴリー:生物

著者   山内 一也 、 出版   岩波新書
 2000年、ウイルスが人間の胎児を守っていることが明らかにされた。それまで、病気の原因とだけ見られていたウイルスが、実は、人間の存続に重要な役割を果たしていることが示された。ええっ、ウイルスって役に立つものだったんですか・・・。
 ヒトゲノムの9%は人内在性レトロウイルス、34%がレトロトランスポゾン、3%がVNAトランスポゾンだということが判明した(2003年)。
トランスポゾンとは、生物の間を自由に移動できる、いわば「動く遺伝子」であり、その大部分を占めるレトロトランスポゾンは数千万年前に感染したレトロウイルスの祖先の断片とみなされている。われわれ人類のもっている遺伝子情報の半分はウイルスに関連したものになる。ということは、ウイルスは、単に病気に原因というだけの存在ではありえないということを示している。
 ウイルスは30億年前には存在している。これに対して最古の猿人は700万年前、ホモ・サピエンスが出現したのは20万年前にすぎない。
人類(女性)は、妊娠すると、それまで眠っていた人内在性レトロウイルスが活性化されて大量に増えてくる。そして、この内在性レトロウイルスのエンベロープ・たんぱく質が胎盤を形成するのに重要な役割を果たしていることが実証された。
ウイルスは、細胞外では単なる物質と言える。しかし、細胞の中では、自主性をもった生物として振る舞う存在である。そして、無生物との間には、常識的なはっきりした線を引くのは難しい。
生物とウイルスとの大きな違いは、細胞の有無と増殖様式。ウイルスには細胞は存在しない。生物は、二分裂で増殖する。しかし、ウイルスは部品組み立て方式である。
 エイズの原因であるウイルス(HIV)には、二つのタイプがある。そして、全世界に広がったのは1型のHIVであり、20世紀のはじめに西アフリカでチンパンジーのウイルスにひとりの人間が感染して、それが人間のあいだに広がった。2型のHIVは、アフリカ産サルであるスーティマンガベイのウイルスに人間が20世紀半ばに感染したもの。これは西アフリカの中だけで広がっている。
 子孫を残すために共生するウイルスが貢献している側面は、哺乳類よりはるか以前に地球上に出現した昆虫に既に見られる。
 海に存在するウイルスを推算すると、少なくとも海水1ミリリットル中に、深海で100万個、沿岸だと1億個のウイルスが存在する。海洋全体では、10の31乗個のウイルスが存在する。ウイルスは、海洋の至るところで、さまざまなプランクトンに感染することで、地球規模の炭素循環に多大な影響を与えている。
 深海底から採取した堆積物に、1平方メートルあたり28兆個のウイルスが存在していた。また、ウイルスの活動は、地表の温度上昇を防ぐ雲の性瀬にも影響を及ぼしている。ウイルスは、硫化物の循環を介して地球の気候変動にも関係している可能性がある。
 人間の腸内には100兆個もの最近がすみついているが、ウイルスはそれを上まわる数で共生している。それが腸内細菌とどのような相互作用をしているのか、まだ未知の領域である。
ウイルスって、人間にとって有害なだけの存在かと思っていました。実は違っているんですね。ほんとうに、世の中って、知らないことだらけですよね。
(2012年3月刊。2800円+税)
 土曜日に、先日うけたフランス語検定試験(1級)の結果通知のハガキが届きました。61点でした。初めて5割を超えることができました。信じられない成績です。もちろん合格基準点は82点ですから、あと20点以上も上回らなければいけません。それにしても、続けていると少しずつ良くなるのが、うれしいものです。
 フランス語の授業のとき、原発はすぐなくすべきだと言ったら、みんなが電力不足が心配だからと反論してきました。そんなのウソだ、政府と電力会社にだまされてはいけないと言い返せず、悔しい思いをしました。まだまだです。

花晒し

カテゴリー:日本史(江戸)

著者   北 重人 、 出版   文芸春秋
 私と同世代の作家です。惜しくも3年前に亡くなっています。なかなか、じっくり読ませる時代小説です。いずれも短篇なのですが、話はずっと続いていきます。
 女がひとり、深川で生きていくにはね、暗くなっちゃあいけないんだ。気持ちが落ち込んでいても、明るく振る舞うんだよ。暗い気分で、暗い素振りじゃあ、ますます沈んでしまう。自分もそうだけど、周りのみんなの気が沈み、人が離れっちまう。辛いときこそ、明るく振る舞うんだ。そうすれば、人がよくしてくれる。いいかい。覚えておくんだ。けどね、明るいだけじゃ駄目だ。気張って意気地も見せないとね。大事なのは、明るさと意気地さ。そうすれば、あんたなら大丈夫だ。しっかりと生きていける。
なーるほどですね。いい言葉ですね。
 娘をたぶらかしてなぶりものにする悪徳武士(サムライ)に小気味よく復讐する話があります。胸のつかえがおります。そして、芝居がかった噂によって近所の稲荷に参詣人をたくさん集めて景気を盛り上げる話があります。
 実際、江戸の人々は神社やお寺に物見高く大勢参集していたようです。娯楽の少ないとき、人々の好奇心を満たす対象だったのでしょうね。
 そして、人が集まるところには店が立ち並ぶのです。稲荷鮨がどんどん売れるのでした。しっとりとした江戸情緒をたっぷり味わえる時代小説です。
(2012年4月刊。1500円+税)

朝の霧

カテゴリー:日本史(戦国)

著者   山本 一力 、 出版   文芸春秋
 いつも、うまい時代小説を書く著者が、いつもの江戸時代ではなく、少しさかのぼって戦国時代を舞台として書きました。
 四国は長宗我部元親が覇者になろうとしていたころを舞台とした時代小説です。
 戦国時代は武田信玄のように、実父を早々に追放して若くして実権を握った武将がいました。兄弟間の殺し合いはありふれていました。おとなしく従っているように見せかけて、実は敵に内通しているという武将はいくらでもいたのです。そこには信義よりも力の世界があったのです。
 長宗我部元親と競争していた武将・波川玄蕃は長宗我部の配下に入って、めきめきと頭角をあらわします。あまりに活躍し目立つと主のほうは面白くありません。いつ自らの地位が脅かされないとも限らないからです。下剋上の世の中なので、従であっても力あるものが上に立つ主(あるじ)を打倒する心配が常にありました。
 とうとう長宗我部は、この波川玄蕃を切り捨てることを決意します。実妹の夫であっても、自らの地位の安泰の方が大切ですから・・・。
 いつものことながら、しっぽり読ませてくれる本でした。
(2012年2月刊。1500円+税)

核兵器と日米関係

カテゴリー:社会

著者   黒崎 輝 、 出版   有志舎
 日本の「非核」政策なるものの実質を追及した本です。主として1960年から1976年までの日米関係が対象となっています。
 非核三原則が「国是」として広く国民から支持され、日本の核武装を論じることは長くタブー視されてきた。ところが、このところそのタブーも過去のものとなった感がある。核武装すべきだと公言する国会議員が出てきたのです。そして、マスコミがそのままたれ流しします。
 北朝鮮の核兵器とミサイルの脅威に対抗するためには、日本も核兵器を持つべきだという声もかまびすしい。しかし、日本が核武装するかどうかを決めるとき、アメリカの意向は無視できないという認識が広く存在する。
 日本政府が「非核三原則」を掲げる一方、日米安全保障条約を日本の安全保障・防衛政策基軸と位置づけ、核の脅威に対してはアメリカが提供する核抑止力、いわゆる「核の傘」に日本の安全を依存してきたという厳然たる事実(認識?)がある。
 日本は1970年2月にNPTに署名し、1976年6月に同条約を批准した。これによって、日本は非核兵器政策を一方的に宣言するだけでなく、核兵器を製造・保有しない義務を国際社会に対して負うことになった。中国は1964年10月に最初の原爆実験を成功させた。これは日本の宇宙開発関係者にとって大きな衝撃だった。
1961年10月の国連総会において日本は西側諸国として唯一、核兵器使用禁止決議に賛成した。これは唯一の事例である。この決議は核兵器の使用は、国連憲章に反し、人類に対する犯罪であると宣言している。
1966年2月、日本政府は統一見解を発表した。
 「現在の国際情勢のもとにおいて米国の持っている核報復力が全面戦争の発生を抑止する極めて大きい要素をなしている。日本も、このような一般的な意味における核のカサの下にあることを否定することはできない」
 米国の核抑止力への依存政策は、日米安保条約により日本の安全を確保するという政府見解によって覆い隠され続けてきた。
 佐藤栄作首相が非核三原則を表明したのは1967年末のこと。
佐藤栄作首相は、当初、国会で非核の三原則を表明するつもりはなかった。当初の演説原稿には、「持ち込みも許さない」という言葉は入っていなかった。ところが、非核三原則の表明は、予想以上に大反響を呼び、やがて事態は佐藤の思いもよらない展開となった。
 1971年に起きた二度のニクソン・ショックは、日本の指導者たちを驚かし、米国に対して不信感を増強する原因となった。日本政府内では、米国離れの自立志向まで芽生えていた。
日本政府の「非核三原則」なるものが、いかに内実のないインチキのものであったかが明らかにされています。ところが、日本国民がそれを圧倒的に支持している以上、そこから日本政府は大きくはずれることも出来なかったのです。世の中の弁証法的帰結ということでしょうか。
250頁に歴史の内実がぎっしり詰まっていて、理解するのは容易ではありませんでした。
(2006年3月刊。4800円+税)

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