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戦後史の正体

カテゴリー:日本史

著者   孫崎 享 、 出版   創元社  
 戦後日本を、アメリカとの関係で、自主を志向するか、追随を志向するかで区分してみた面白い本です。それにしても、かの岸信介が、ここでは自主志向に分類されているのには正直いって驚きました。
 1960年の日米安保条約改定反対闘争にも新たな解釈がなされています。
 アンポ反対、キシを倒せ。これが当時のデモの叫びでした。そのキシがアメリカべったりというより、アメリカから自立を図ろうとしていたなんて、本当でしょうか・・・。
 多くの政治家が「対米追随」と「自主」のあいだで苦悩し、ときに「自主」を選択した。そして、「自主」を選択した政治家や官僚は排斥された。重光葵(まもる)、芦田均、鳩山一郎、石橋湛山、田中角栄、細川護熙、鳩山由紀夫。そして、竹下登と福田康夫も、このグループに入る。
うひゃひゃ、こんな人たちが「自主」だったなんて・・・。
日本のなかで、もっともアメリカの圧力に弱い立場にいるのが首相なのだ。アメリカから嫌われているというだけで、外交官僚は重要ポストからはずされてしまう。
アメリカの意を体して政治家と官僚をもっとも多くの排斥したのが吉田茂である。吉田首相の役割は、アメリカからの要求にすべて従うことにあった。吉田茂は、GHQのウィロビー部長のもとに裏庭からこっそり通って、組閣を相談し、次期首相の人選までした。吉田茂が占領軍と対等に渡り合ったというイメージは、単なる神話にすぎず、真実ではない。
 「対米追随」路線のシンボルが吉田茂であり、吉田茂は「自主」路線のシンボルである重光葵を当然のように追放した。吉田茂は、自分の意向にそわない人物を徹底的にパージ(追放)していった。外務省は、「Y項パージ」(吉田茂による追放)と呼んだ。
 吉田茂は、大変な役者だった。日本国民に対しては、非常に偉そうな態度をとったし、アメリカに対しては互角にやりあっているかのようなポーズをとった。実際はどうだったのか?
日本がアメリカの保護国であるという状況は、占領時代につくられ、現在まで続いている。それは実にみごとな間接政治が行われている。間接政治においては、政策の決定権はアメリカが持っている。
 日本は敗戦後、大変な経済困難な状況だった。そのなかで6年間で5000億円、国家予算の2~3割をアメリカ軍の経費に充てていた。
 吉田茂はアメリカの言うとおりにし、アメリカに減額を求めた石橋湛山は追放されてしまった。アメリカは石橋湛山がアメリカ占領軍に対して日本の立場を堂々と主張する、自主線路のシンボルになりそうな危険性を察知して、石橋を追放することにした。
東京地検特捜部の前身は隠匿退蔵物資事件捜査部。つまり、敗戦直後に旧日本軍関係者が隠した「お宝」を摘発し、GHQに差し出すことだった。
アメリカが独裁者を切るときには、よく人権問題に関するNGOなどの活動を活発化させ、これに財政支援を与えて民衆をデモに向かわせ、政権を転覆させるという手段を使う。2011年のアラブの春、エジプトとチュニジアの独裁者を倒したときも、同じパターンだった。韓国の朴大統領暗殺事件も、その流れでとらえることができる。
岸信介は、1960年に新安保条約の締結を強行した。そして、CIAからの多額の資金援助も受けている。ところが、岸は対米国自立路線を模索していた。岸は駐留アメリカ軍の最大限の撤退をアメリカに求めた。
 1960年代のはじめまでにCIAから日本の政党と政治家に提供された資金は毎年200万ドルから1000万ドル(2億円から10億円)だった。この巨額の資金の受けとり手の中心は岸信介だった。そして、岸首相は中国との貿易の拡大にもがんばった。
ところが、CIAは岸を首相からおろして、池田に帰ることにした。日本の財界人がその意を受けて、岸おろしに動いた。
 そうなんですか・・・。池田勇人の登場はアメリカの意向だったとは、私にとってまったく予想外の話でした。
どんな時代でも、日本が中国問題で、一歩でもアメリカの先に行くのは、アメリカ大統領が警戒するレベルの大問題になる。
 ニクソン大統領の訪中を事前に日本へ通告しなかったのは、佐藤首相への報復だった。少しでもアメリカの言いなりにならない日本の首相はアメリカから報復された。
 田中角栄がアメリカから切られたのは、日中国交正常化をアメリカに先立って実現したから。キッシンジャーは、日ごろ、常にバカにしていた日本人にしてやられたことにものすごく怒った。
小泉純一郎は、歴代のどの首相よりもアメリカ追随の姿勢を鮮明に打ち出した。
アメリカの対日政策は、あくまでもアメリカの利益のためのもの。そして、アメリカの対日政策は、アメリカの環境の変化によって大きく変わる。
 アメリカは自分の利益にもとづいて、日本にさまざまなことを要求してくる。そのとき、日本は、どんなに難しくても、日本の譲れない国益については、きちんと主張し、アメリカの理解を得る必要がある。
 この本では、TPPもアメリカのためのものであって、日本のためにはならないことが明言されています。私も同じ考えです。
 戦後の日本史をもう一度とらえ直してみる必要があると痛感しました。あなたに一読を強くおすすめします。
(2012年9月刊。1500円+税)

公教育の無償性を実現する

カテゴリー:社会

著者   世取山洋介・福祉国家構想研究会 、 出版   大月書店  
 1990年代中葉から推進された新自由主義改革により引き起こされた深刻な社会の危機に対処するため、福祉国家型対抗構想が求められている。政府は、子どもの人間としての成長発達に必要な現物給付を行い、かつ、現物給付をすべて公費でまかない、それを無償とすべきだ。このことが本書で主張されています。そんなことが本当に可能なのか、必要なのか、それをさまざまな角度からアプローチしています。
 大阪の橋下「教育改革」は、一方で、公立学校全体の規範を縮小しつつ、他方で「成長を支える基盤となる人材」「国際競争を勝ち抜くハイエンド人材」という二つの人材像を揚げ、後者の育成を目的として府立学校のなかから10校を「進学校指導重点校」に指定し、1億5000万円の追加的予算措置を行っている。
 ここでは、エリート人材とノンエリート人材を明確に区別し、「選択と集中」による予算配分によってエリート人材の育成をはかるという政策を実現しようとしている。
 大阪では、「学習者本位の教育への転換」と「競争原理」が実際のところ同義である。つまり、選択の機会の拡大と競争原理が教育の「質」を向上させるという論理である。
 2003年の東京を皮切りに、多くの都道府県で高校学区が撤廃もしくは拡大されている。現在、47都道府県のうち23都県が全国全県一学区制を導入している。かつて全国でみられた高校中学区制は兵庫と福岡に残るだけとなっている。
高校通学区域の拡大は、都市部の進学校や人気校への生徒の集中と競争の激化を生み出し、僻地などの周辺にある高校の生徒減と「適正規模」以下校の統廃合を導き出している。
 新自由主義教育改革とは、英米の教育改革をモデルとした国家が決定したスタンダードの達成率にもとづく、学校間・自治体間の競争の国家による組織を内容とし、エリートと非エリートの早期選別を目的として、徹底的な国家統制の試みと定義することができる。
 2006年度から、教職員給与のうち、国が負担する比率が2分の1から3分の1へ引き下げられた。教育公務員においては、労基法や給与法の適用除外があり、時間外勤務手当はしないという特殊な取り扱いだった。その代わり、偉給月額4%の「教職調整額」が支払われていた。
 東京では、1級が助教諭・講師、2級が教諭、3級が主任教諭、4級が主幹教諭、5級が副校長・教頭、6級が統括校長・校長となっている。
 この制度によって生涯給与額が745万円、1271万円、1439万円と差がつくようになっている。こんなに明確なさを見せつけられると、悲しいですよね・・・。2級の教諭が8割を占めるのに、主任・主幹教諭の導入によって一般の教諭の給与は引き下げられたのです。
 1970年代前半までに高校が社会標準化し、その費用も80年代以降、高額化し、90年代には専修学校をふくめた中等後教育への現役進学率が50%をこえ、2011年には70%にまで上昇した。ところが、高校以降の子どもの養育費と教育費は私費負担に任されたままになっている。
 学校外の補助学習が多くの子どもの必要とされている状況は異常だ。これが「子どもの貧困」の重要な要因となっている。公立中学生の通塾率は、7割になっている。
 国が教育機関へ公財政支出する額のGDPに対する比率は、OECD加盟国31ヶ国のうちで日本は31位、最低である。教員給与を除くと、学校運営費の80%が父母の私費負担に日本は依存している。これは異常である。
 公立の小中高校で30人以下学級と授業料・学修費を完全に無償化するために必要なのは、あわせて3兆3700億円。そして、私学助成のためには1兆2000億円の増額が必要になる。それを実現しても、OECD加盟国の平均にやっと届くくらいの金額でしかない。
 この3兆3700億円は港や新幹線のような不要不急の大型公共工事につかうよりも、よほど生きる「投資」(お金のつかいみち)だと思います。
 500頁近い大作で、少々むずかしい本でしたが、一日で必死に読み通しました。
(2012年8月刊。2900円+税)

植物はすごい

カテゴリー:生物

著者   田中 修 、 出版   中公新書  
 これは、とても面白い本でした。そうか、植物って、こんなにすごい力をもっているのか、人間も植物の力で生きているのが、よくよく分かりました。
 野菜も果実も、みんなみんなすごい力をもっていることを知り、なんだか、ついついうれしくなってきました。本当に、世の中は知らないことだらけです。
 キャベツの種は、1粒が5ミリグラム。4ヵ月後の1玉のキャベツは1200グラム。つまり、4ヵ月で24万倍にも成長する。これは、わずか1000円のお金が4ヵ月後に2億4000万円になったというのと同じこと。ふえーっ、このたとえには腰を抜かしそうになってしまいました。
植物は、水と二酸化炭素からブドウ糖をつくるが、そのとき光エネルギーを使う。そして、ブドウ糖のなかに光エネルギーを取り込み、蓄える。人間は、摂取したブドウ糖をからだの中で分解する。その途上で、ブドウ糖の中に蓄えられていたエネルギーが放出される。ブドウ糖から得たエネルギーは、人間が歩いたり走ったりするためのエネルギーに使われる。
 ブドウ糖は、蓄えていたすべてのエネルギーが取り出されてしまうと、原料であったものと水と二酸化炭素にもどって、人間の身体から出ていく。
植物はエネルギーの源となるブドウ糖やデンプンを自分でつくっているから、何も食べなくても生きていける。
植物は、人間と違って、自分でアミノ酸をつくることができる。だから、植物は肉を食べる必要がない。人間は、タンパク質を食べて、それを消化してアミノ酸を取り出す。そのうえ、アミノ酸を並べ直して、自分に必要なタンパク質をつくっている。
 植物は、肉を食べなくても、肉の成分であるアミノ酸をつくり出すことができる。植物がアミノ酸をつくるためには窒素が必要。そこで、根から養分として窒素を地中から取り込む。
 植物は、このほか、成長のため、健康のため、必要な脂肪やビタミンもつくり出すことができる。だから、何も食べてなくても植物はすくすく成長することができる。
 こう言われてみると、じっと動かない植物って、実はすごい能力をもっているんだと感動していますよね。まったく人間なんてかないませんね。足元にも及びませんよ。
 植物は、すごい生産能力で、あらゆる植物の食糧をつくり出している。しかも、植物は動物に実を食べてもらうことによって、タネをまき散らしている。動物を利用しているわけだ。
 うひゃあ、食べられることによって、うまく利用しているというわけなんですか・・・。
 植物は、タネができあがると、強い子どもが育つように、子どもたちを遠い新天地に放り出す。動物に食べられることによって、広い範囲にまき散らしてもらうことは、植物にとって大切なこと。
渋柿の渋さのからくりも解明されています。渋さのもとはタンニン。タンニンが果肉や果汁に溶け込んでいると、渋柿になる。しかし、そのタンニンが不溶性の状態になると、タンニンが柿のなかにあっても口の中にタンニンが溶け出して来ないので、渋みを感じることはない。決してタンニンがなくなったのではなく、タンニンが不溶性になったため、隠されていた甘みが目立つようになっただけ。タンニンを不溶性にするには、カキの実の呼吸を止めればいい。そのため、渋柿を湯につける。湯に浸かると呼吸が出来なくなり、アセトアルデヒドができる。そうすると、渋みが抜ける。甘柿のなかにある胡麻のような黒い斑点はタンニンが不溶性になってできたもの。
辛みという味はなく、辛いというのは、舌が痛いと感じること。
アジサイの葉っぱには、青酸を含んだ物質をもっているので、人間に有毒。うへーっ、知りませんでした・・・。
 コアラの食べるユーカリの葉には、青酸が含まれている。コアラは、ユーカリの葉っぱを食べても、青酸を無毒にするしくみを持っている。ところが、実はコアラ自身にこの毒を無毒化する力があるわけではない。コアラの腸のなかに青酸を無毒にする細菌を住まわせている。そして、生まれたばかりの赤ちゃんコアラの腸内には、この細菌がいない。さあ、どうするか・・・。
 なんと、子どもコアラが生まれると、食い初めに、親コアラは子コアラに自分の糞を食べさせる。生まれたばかりのコアラは、食い初めで親に糞を食べるばかりでなく、親の肛門のあたりを激しくなめる。こうやって、自分の腸に青酸を無毒化する細菌を住まわせ、子どもコアラはユーカリを食べられるようになる。この仕組みによって、コアラは、大切な腸内細菌を親から子どもへ伝えている。な、なんと、すごい仕組みですよね、これって・・・。
 スイセンは、ヒガンバナの仲間なので、同じくリコリンという有毒な物質を含んでいる。
ソテツは根に根粒菌を住まわせており、この菌はソテツから栄養をもらう代わりに空気中の窒素を吸収して窒素肥料に変えてソテツに供給する。そのおかげで、ソテツは痩せた土地でも生育できる。ソテツのタネにはサイカシンという有毒物質がふくまれている。
 ジャガイモの根や緑色の部分には、ソラニンという有毒な物質が含まれているので、きちんと取り除かなければならない。煮ても焼いても、その毒性は消えない。
 モロヘイヤの葉っぱは食べられるし、健康に良い。だけど花やタネにはストロフェチジンという有毒物質が含まれている。
 植物は太陽光線を浴びている。有毒な紫外線を受けているのに、元気なのはなぜか?
紫外線は有毒な活性酸素を発生させる。活性酸素はからだの老化を促し、多くの病気の原因となる。そこで、植物はビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質をつくり出し、活性酸素の害を消すという仕組みを発達させた。
そして、花が美しくキレイに装う理由も紫外線対策の一つである。それは、アントシアニンとカロテン。花びら野色を出すもと(素)になる物質なので、色素と呼ばれる。アントシアニンとカロテンは、花びらを美しくキレイに装う二大色素だ。植物は、これらの色素で色を装い、花の中で生まれてくる子どもを守っている。つまり、二大色素は、紫外線の害に対する二大防御物質なのだ。
 アントシアニンは、容易に色が変わる性質がある。酸性の液に反応して濃い赤紫色になり、アルカリ性が強くなるにつれて青色から緑色そして黄色へと変色していく。
 カロテンは、赤や橙、黄色の色素で、あざやかさが特徴。カロチンはドイツ語よみ。
 マリーゴールドの花には、多くのカロテンが含まれている。橙色のように赤みを帯びているのは、アントシアニンを含むため。
 花々が花びらを美しくきれいに装うのは、紫外線に当たって生み出される有害な活性酸素を消去するため。植物の生き残り戦略の一つ。紫外線や強い花という有害なものが多ければ多いほど、植物は色あざやかに魅力的になる。逆境に抗して植物は美しくなる。
冬の寒さを通り越したダイコンやハクサイ、キャベツは甘い。糖分が増して甘みが増している。なぜか?
 冬の寒さに凍らない工夫として、糖分を増やしている。水の中に糖が溶け込めば、溶け込むほど、その液の凍る温度は低くなる。食用部が地中にあるダイコンやニンジンでも、果実までも同じ仕組みで、冬の寒さをしのいでいる。冬の寒さにさらされると甘みが増える。
 イチゴにもバナナにもタネがある。ええーっ、ウソでしょ・・・。イチゴの表面のツブツブの中にタネが入っている。そのタネからイチゴの実を大きく肥大させるオーキシンが出て、イチゴの実を大きくしている。だから、ツブツブを取り除いてしまうと、イチゴの実は大きくならない。バナナにもタネのあるものが沖縄などに残っている。タネのなごりは、中心部に小さな黒色の点々となっているもの。
 植物の不思議を改めて実感しました。わが庭も、もう一度、見直してみようと思いました。
(2012年7月刊。840円+税)

子育て教育を宗谷に学ぶ

カテゴリー:社会

著者    坂本 光男 、 出版   大月書店  
 8月初めに北海道・稚内に教育事情の視察に行ってきました。そのあとで、この本を読み、そうだよね、教育は学校と教師に任せていいということではなくて、家族ぐるみ、地域ぐるみで取り組むべきものだよね。改めてそう思ったことでした。
 この本は今から20年も前に出版されていますけれど、その意義は今も決して小さくなってはいません。著者は、宗谷教組の支部長から、「9月いっぱい講師にきてほしい」と要請されました。ええっ、1ヶ月間の講師って、すごいですよね。
宗谷地区の管内全域で、教師と親そして子どもたちを対象とした教育講演会が、文字どおり地域ぐるみで大盛況のうちに成功していきました。その模様が本書で紹介されています。感動に心がふるえます。
 たとえば、全校の子どもが35人、全戸数が88軒しかない地区における夜の講演会の参加者が、なんと102人でした。これはすごいことですね。教師への日頃のあつい信頼がないと、こんなこと出来ませんよね。
 宗谷には昭和53年(1978年)11月に成立した合意書があります。校長会、教頭会、教育委員会そして宗谷教組の四者が調印したものです。そこには、憲法と教育基本法の方針にもとづき、学問の自由と教育の自主性を尊重し保障することを基本として教育を進めていくことが明記されています。
そのうえで、学校運営の基本について、「なによりも子どもの教育を中心におき、校長を中心にすべての教職員の民主的協議と協力関係のもとに民主的に運営される」こととされています。
さらに、職員会議の実践的あり方についても、次のように定められています。
 「職員会議は、教育の目的を実現するために、学校運営の中心的組織として、その民主的運営と協議を基本に、校長を中心にすべての教職員の意志統一の場である。
 校長は、協議結果を尊重し、教職員の自主性・自発性が発揮されるよう努力し、教職員の合意が得られず、校長の責任で決定する場合でも、実践的検証による再協議を保障しあう」
 すごいですね、まさにこのとおりではないでしょうか。
 ところが、最近の橋下「教育改革」そして文科省の方針はそうではありません。校長がすべてを決定し、教師はその決定にひたすら従うだけの存在、しかも相互連帯ではなく、相対評価で優劣をつけられ、最下位ランクが続くと免職処分がありうるような仕組みになっています。これでは教師の自主性・自発性は発揮する余地がありません。それは、子どもたちの自主性・自発性を殺すことに直結します。
 著者は、先生たちが自由に意見を述べあい、校長がそれをリードしつつまとめていけば、学校の教育は必ず良くなると強調していますが、文部省と橋下はそれを許しません。
 第一に、子どもたちを人間として大事にする。第二に、大人たちの取り組みに民主主義のイロハを貫く。この二つが大切だと著者は強調しています。まったくそのとおりではないでしょうか。20年も前の、わずか200頁の薄い本でしたが、読んで胸の熱くなる思いのする本でした。
(1990年10月刊。1300円+税)

ルポ・出所者の現実

カテゴリー:司法

著者    斉藤 充功 、 出版    平凡社新書 
 悪いことした奴は刑務所に入れておけ。
 これが多くの人の素朴な思いでしょう。では、どんな人が「悪いこと」をしているのか、その「悪いこと」って何なのか、入れておかれる刑務所ってどんなところなのか、世間の人はあまりにも知らなすぎるように思います。
 もちろん、私だって刑務所生活を十分に知っているとは言えません。それでも、刑務所も拘置所も何回となくなかに入って見学しましたし、収容された体験者から話を聞き、さらに体験談をいくつも読んでいますので、少しばかりは分かっているつもりなのです(つもりだけではありますが・・・)。
 統計によれば、再犯率は1999年以降、30%台で推移していたが、2008年には40%をこえた。とりわけ窃盗と覚醒剤の再犯率は50%をこえている。窃盗がもっとも再犯率が高く、その動機は「生活の困窮が」7割を占めている。
栃木県大田原市にある黒羽(くろばね)刑務所は関東圏最大級の初犯刑務所。
 黒羽刑務所は独居房が1000を超える。日本で一番独居の多い刑務所。独居房でテレビを見られるのは2時間のみ。雑居房だと、8時間も見られる。そして、雑居房では本や雑誌のまわし読みもできる。
 刑務所の収容者一人にかかる費用は年46万円。全国に7万人の受刑者がいるので年間経費は321億円になる。
刑務所の世界では、服役することを「アカ落ち」という。刑務所に垢を落としにいく」という意味のようだ。
収容者同士のトラブルの原因になるのは「ペラ」。ペラとは、しゃべり屋のこと。つまり、口の軽い人間のこと。また、「空気屋」と呼ばれる仕掛人もいる。悪口を言って、ケンカするように仕向ける人のこと。
オヤジのズケをよくする。オヤジとは担当職員、ズケとは面倒みのこと。
 高松刑務所では700人の受刑者で年間3億1000万円の売り上げがある。全国の刑務所で、受刑者の生活費として180億円がかかっている。そして、受刑者が稼ぎ出したのは157億円。つまり、受刑者は、生活費の8割以上を自前で稼ぎ出している。決してムダメシを食べているのではない。作業報奨金は、月に1人平均4200円ほどでしかない。
 1989年には1万人いなかった65歳以上の検挙数が2008年には、その5倍強の4万9000人近くにまで増えた。高齢受刑者の犯罪の特徴は窃盗が50.6%と多いが、そのほとんどが無銭飲食や万引きなどの軽微な犯罪である。老人受刑者は全受刑者の3%(2092人)となった。そこで、広島、高松、大分の刑務所には高齢受刑者専用棟がある。老人介護専門職が必要とされているのも当然ですね。
2008年の外国人検挙数は23,202人で、とりわけ凶悪化した侵入盗が増えている。外国人の受刑者は1,502人(2009年)。受刑者の出身地は、中国、ブラジル、イラン、韓国、朝鮮、ベトナム、フィリピン、台湾となっている。
 美称社会復帰促進センターは刑務所だが、国の職員123人に対して、民間職員が220人いて、男子500人、女子500人のスーパー受刑者をみている。
 刑務所の体験者は次のように語る。刑務所は犯罪学校と言われるが、まさしくそのとおり。初犯刑務所も、戦果のオンパレード。話は成功談ばかりで、失敗の話を聞くことがない。
 出所してきた人が、社会で自立するのは決して容易なことではない。本人の自覚や攻勢意欲だけでは解決できない問題点があまりに多い。仮出所者がやる気を出して本気で更生する。その気持ちに火をつけてやるのが地域社会の人々だ。しかし、現実は、なかなか、それがうまくいかない。
 この現実は、弁護士だけでなく多くの人が知っておくべきものだと思います。
(2010年11月刊。740円+税)

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