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家族難民

カテゴリー:社会

著者  山田 昌弘 、 出版  朝日新聞出版
 法律的には家族であっても、真の意味で家族とは呼べない状態を、家族難民という。
 家族難民の多くを占めるのは、配偶者がいないと言う意味のシングル。日本の少子高齢化の原因のひとつは、そもそも結婚しない人が増えていることがもっとも大きな原因となっている。未婚者のなかで恋人がいる人の数も減っている。
 中高生の性的関心が大幅に低下している。
シングルの分類、34歳までを若年シグナル、35~64歳を中年シングル、65歳以上を高齢シングルと呼ぶ。
 ペットを飼うシングルが増えている。シングルにとって、ペットは心の支えになってくれる家族の一員。
シングルが量的に増え、かつ、質的にも孤立化を深めていく現象を、シングル化と呼ぶ。
 残念ながら、シングル化は決して他人事(ひとごと)ではない。自分や家族がシングルになって、社会から疎外されていく可能性は誰にも否定できない。
 年間、3万2000人が孤立死している。
 2010年、50歳の男性の生涯未婚率は20%、女性は10%。これから25年後、年間150万人の死者に対する男女平均15%だと、20万人以上の人が孤立死を迎える可能性がある。昔のイエ(家)制度の下で、シングルの生活を保障できたのは、イエ制度の基盤が「家業」にあったから。家族は家業で従業員の役目も果たしていた。その家業後も親と同居する未婚者をパラサイト・シングルと呼んだ。世界のなかで日本で特徴的に見られる存在だった。
 ところが、今、欧米でも、同様の現象が起きつつある。
 日本のパラサイト・シングルは非正規雇用が増大するなかで、不本意ながら、やむをえない選択になってきた。そしてt、パラサイト・シングルのなかに格差が出てきた。
未婚者の4割は、非正規雇用者や失業者である。
 なぜ、日本の若者が欧米の若者のようにデモしたり、暴動を起こしたりしないのか。
 それは、日本の若手シングルの多くが親と同居して、経済的、心理的なサポートを受けているから。つまり、親が社会保障機能を果たすことで、子どもを貧困や精神的な孤立から救っている。
 現代のあり方に対して、いつも鋭い問題提起をしている著者の指摘に目を開かされます。
(2014年1月刊。1600円+税)

秘密保護法は、すぐ廃止へ!

カテゴリー:社会

著者  仁比 聡平 、 出版  日本機関誌出版センター
 昨年(2013年)12月、特定秘密保護法が自民・公明両党による強行採決で成立してしまいました。このとき、最後まで反対してがんばった福岡選出の仁比聡平議員(弁護士)の奮闘ぶりがブックレットになりました。早速よんでみましたので、報告します。
 憤りのあまり、血管が切れそうだ。これは、単なるたとえ話ではなく、実体験になった・・・。
 夜の11時前に法案が強行採決され、その他の採決もあって、国会は土曜日の午前1時ころまで続いた。
 そんな深夜国会なんて、本当に異常ですよね。これは、法案が異常だから、そんな異例の時間になるのです。でも、マスコミは、ことの本質をよくよく国民に伝えてくれません。民放はもちろん、NHKにだって権力べったりなので、何が問題なのか、明確には伝えてくれなかったのでした。
 仁比議員は、参議院の本会議で堂々たる反対討論をぶちあげました。民主党議員は、いったん退場し、再び議場に戻ってきたのです。
国民の、この法案への強い怒りは無責任は棄権を許さなかった。
 仁比議員は、あとで両手の親指の付け根が黒ずんで青染み担っているのに気がついた。怒りのあまり、自民党議員(理事)の席をバーンと叩いて出来たものだった。
 秘密というのは、権力を握っているほうが指定すれば、何でも秘密になるし、捜査機関が必要と思えば、逮捕・勾留することになる。捜索・差押、そして密室での取調べへとすすんでいく。
 さらに、この処罰の対象には、国会議員もふくまれている。三権分立とか、国権の最高機関たる国会とは、とても言えなくなる事態が生まれる。
 元気いっぱいの弁護士であり、参議院議員である仁比聡平氏には、これからも国政の舞台で大いに活躍してほしいと思います。
 それにしても、すばやく70頁ほどのブックレットに仕立て上げたのは見事です。引き続き広報活動にも力を入れてください。
(2014年3月刊。476円+税)

アメリカは日本の消費税を許さない

カテゴリー:社会

著者  岩本 沙弓 、 出版  文春新書
 アメリカは消費税を採用していない。ええっ、そうなのか・・・。驚きました。
間接税と直接税の比率が1対9とされているアメリカでは、税収のほとんどを法人税や所得税などの直接税に依存している。日本やヨーロッパなどは、税収の3割ほどを間接に依存している。
付加価値税には還付金が伴うのは当然のこと。だから、輸出品には還付金(リベート)がある。消費税には輸出企業への還付金がある。だから、日本の大企業で輸出に大きく依存しているところは消費税を歓迎しているわけです。だって、自分は、もらえる一方なのですから・・・。
消費税を導入しても、政府の歳入はいっこうに増えていない。しかし、輸出企業への還付金だけは確実に増えている。果たして、これが税制として中立なのか、大いに疑問である・・・。
アメリカは、消費税・付加価値に反対するスタンスをいまもって貫いている。日本の消費税の引き下げ、あるいは凍結は、アメリカのメリットになると同時に、輸入価格が抑制できる点で、あるいは租税負担を少なくするという点で、日本国民の救済にも大いに役立つ。
国内の一部の強者を優遇して、同盟国と敵対し、自国民を窮乏させるのか。日本の大企業が苦境に立たされているのであれば別だが、年々増え続ける内部留保をみても、あるいは破格の利益をあげている状況に照らしても、国内の強者には少しガマンをしてもらったうえで、同盟国との関係改善そして自国民の経済安定を望む方が健全ではないのか・・・。
 この4月1日から消費税率がついに8%にアップしました。私をふくめて、ほとんどの国民には大打撃です。ごく一部の大企業と、スーパーリッチ層には、かえって好都合なのでしょうが、こんな不公平な税制は許せません。
 それにしても、消費税増税が福祉のため、なんていう嘘を堂々と大宣伝する政府公報と、それをそのまま垂れ流すNHKは許せませんね。
(2014年1月刊。750円+税)
 チューリップが終わり、ジャーマンアイリスとクレマチスが華麗な花を咲かせています。梅の実もたくさんなっていますので、この連休中に収穫します。ジャガイモの芽かきをしてやりましたが、失敗かもしれません。アスパラガスはまた伸びはじめています。いよいよ明日から風薫る五月です。

天皇と日本国憲法

カテゴリー:社会

著者  なかにし 礼 、 出版  毎日新聞社
 私よりひとまわり年長の著者は中国の黒龍江省(旧満州)牡丹江市に生まれ、戦後、いのちからがら引き揚げてきた体験の持ち主です。ですから、筋金入りの反戦・平和主義者であることは言うまでもありません。作詞家として活躍してきましたが、『赤い月』などの著書もたくさんあります。
 「サンデー毎日」に連載していた読み物を加筆・修正した本です。とても読みやすく、ついうんうん、そうだよなと納得しながら読みすすめました。
 昭和天皇は、平和憲法の制定を、国民とともに深くよろこんだ。
安倍首相を初めとする改憲派の言う「国際貢献」の国際とは、アメリカ一国のこと。集団的自衛権の名のもとにアメリカ軍の支配下に入り、地球のあちこちで戦争に参加し、人を殺し、殺されたい。つまり、戦争がしたいのだ。これは、ますますの隷属化であり、属国化だ。
 白洲次郎は、「新憲法のプリンシパル(原則)は実に立派である。マッカーサーが考えたのか、幣原総理が発明したのかは別として、戦争放棄の条項などは、その圧巻である。押しつけられようが、そうでなかろうが、いいものはいいと率直に受け入れるべきではないだろうか」と語った。
 本当に、そのとおりですよね。アメリカのオリバー・ストーン監督はこう言った。
 「この世には戦争をしたがっている人間どもがいる。それは、アメリカ軍部と軍産複合体である。
 戦争は、あこぎな商売であり、莫大な利益を生みだす。そして、その利益に浴して生きる者たちの欲望を永続的に満たすためには、終わりなき戦争状態が望ましい。
 そのために必要なら、なんでもする。ソ連の脅威を過剰にあおって冷戦状態を演出し、そういう政策に異を唱えそうな人間には、すべて「アカ」のレッテルを貼って抹殺する。
 重要なことは、休みなく戦争を続けること、莫大な消費であり、アメリカ帝国の努力拡大である」
 すっきり、分かりやすい短編からなる、現行憲法の大切さを考えさせる本です。
(2014年3月刊。1500円+税)

物語ること、生きること

カテゴリー:人間

著者  上橋 菜穂子 、 出版  講談社
 「獣の奏者」、「守り人」シリーズの著者に長時間のインタビューをして出来あがった本です。モノカキ志向の私にとって、すごく刺激的な本でした。やはり想像力というのが大切なのです。そして、それは、幼いころの原体験がどれほど豊かなものであるかにもよると思いました。
 プロの作家は、お決まりの方程式を、いかに外すかを必死で考えている。
私にとっての当面の課題は、このお決まりの方程式をいかにして身につけ、展開していくのか、ということにあります。そして、さらに、本当の課題は、次にあるというわけです。
著者が幼稚園児のころ、白昼、おばあちゃんと一緒に歩いていたとき、「私、死ぬにが、こわい」と言った。おばあちゃんは、それに対して、こう答えた。
 「大丈夫、大丈夫。死んでも、必ず生まれ変わるから」
 おばあちゃんにそう言われると、そうか、大丈夫なんだ、死んでも、また、おかあさんの子どもになって、生まれてくればいいんだ。幼かった私は、そう思うことで、突然おそって来た死の恐怖から救われた。
 幼稚園のころエピソードをこんなに鮮明に覚えているのにまずは驚かされました。そして、この問答って、いいな、と思いました。やっぱり、人生における先輩は必要なんですよね。
 著者は、オーストラリアに渡って、アボリジニ(先住民)の人々に入って体験調査(フィールドワーク)をします。そこで得た体験が、著者の視野をぐーんと広げ、また深めたようです。
 物語を書きたいなら、ともかく、最初から最後まで書き終えること。はじめは起承転結を見つけるのさえ大変なこと。しかし、プロの作家は、そこにありきたりじゃない、自分だけの道筋を必ず見つけ出す。
 朝書いて、夜に書きはじめるとき、また読み直して、直す。そうやって、書いたところを繰り返し直していく。すると、そこから、また新しい根が出てくる。
 そうすると、あるとき、登場人物が何かを言ったのがきっかけで、次の展開が開けたりする。その物語を生きている人間たちが、その物語のあるべき姿を生み出していって、頭のなかで最初に想定してた形ではないところに連れていってくれる。
 私も似たような体験をしています。書きはじめると、自然に登場人物が動き出してしまうのです。止まりません。こう書いてくれよ、こんな流れにしてくれという感じで、それは止まらないのです。これって、本当に不思議な感覚でした。そんな思いで、私も、いま再び20歳代の気持ちに立ち戻って小説を書いてみたいという気分になっています。それにしても、この著者の多作ぶりには圧倒されてしまいました。
(2013年10月刊。1000円+税)

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