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人の命は腸が9割

カテゴリー:人間

著者  藤田 紘一郎 、 出版  ワニブックス新書
 寄生虫博士として高名な著者が腸内細菌の大切さを説明しています。とても納得できる本ですので、私も早速、納豆食を取り入れることにしました。
不老長寿の実現には免疫力を高めることが不可欠。それには腸内細菌の助けが欠かせない。身のまわりの菌の排除は、これに逆行する行為だ。
 免疫力は、身近な病原体と戦うごとに鍛えられ、強化される。細菌やウイルスが怖いと言って平時からむやみに排除してしまっていると、免疫機能は鍛えられる機会を失い、弱体化してしまう。
 善玉菌優性の腸をつくるには、悪玉菌の助けが必要。赤ちゃんには、とにかく多くの菌と触れあわせること。赤ちゃんが舐めたがるものは、なんでも舐めさせること。ただし、化学物質や薬剤、食品添加物は避ける。
 度を超した清潔志向は、自分や家族の身体を病原菌に弱くする危険性を高める。
 日本人の腸には、日本の発酵食品が最適。植物性乳酸菌は、動物性乳酸菌よりも胃酸に強く、生きて腸まで届きやすい。
免疫の7割は腸で築かれる。残り3割の免疫がつくられるのは、心。免疫を向上させる笑いは楽しく笑うこと、大声で笑うと、いっそう効果的。
 善玉菌優性の腸を保つことができていれば、肉も卵も命を縮める原因にはならない。腸の働きが悪くなると、消化吸収能力が低下するだけでなく、腸内バランスが乱れて、免疫力も低下する。
 人間の腸は、食物からビタミン類を合成する能力をもたない。人間の代わりに合成作業しているのが腸内細菌。
 人間の精神活動に大きく関与しているセロトニンは、その前駆体が腸でつくられる。そのうちの9割がセロトニンとなって腸にとどまり、残りの1割が脳や他臓器へ送り出される。脳にあるセロトニンは、全体量のわずか2%にすぎない。
 腸内細菌の活動が活発だと、セロトニンの分泌量が増え、大便の量も多くなる。
 大便は基本的に体に悪いものではない。問題なのは、大便が長いあいだ腸内にとどまり続けること。大腸に滞留することによって腐敗がすすみ、善玉菌が毒素を発生させるようになることが問題なのだ。
 大変勉強になりました。腸内細菌ってこんなに存在価値があるのですね・・・。
(2014年3月刊。800円+税)

黒田官兵衛

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

著者  渡辺 大門 、 出版  講談社現代新書
 黒田氏は、播磨国(姫路周辺)の一土豪だった。何かの契機で小寺氏と結びつき、その配下におさまった。そして、自らの貴種性をアピールするために、佐々木黒田氏や赤松氏の支族とするに至ったのではないか・・・。
 小寺氏が赤松氏の有力な支族というのは誤りで、小寺氏は「年寄」だった。この「年寄」とは、赤松氏一族ではない有力な氏族で構成される重臣、奉行人という地位にあった人々の呼称。
 官兵衛の叔父にあたる休夢は、秀吉の御伽衆(おとぎしゅう)として登用された。
 御伽衆とは①咄(はなし)がうまいこと、②咄に適応する体験や技術を有することが条件だった。その目的は、主人を楽しませることだった。
 休夢は茶道だけではなく、和歌や連歌にも通じていた。
黒田家にしたがった播磨出身土豪層は、姫路を中心として勢力基盤を築いた土豪層だった。「黒田二十四騎」と称された土豪たちは、黒田家の発展とともに重臣に取り立てられた。
 黒田氏は現在の西播磨基盤をもった土豪であり、土地集積を行いながら発展を遂げていった。その間、黒田氏は周辺の土豪層を従え、やがて小寺氏の配下に加わった。
 官兵衛には、三人の弟と三人の妹がいた。そして、兄弟たちは、仲違いすることなく、一致団結して黒田家を守り立てていった。
 官兵衛が村重によって幽閉され、かえって黒田家中は一致団結した。官兵衛の幽閉生活は一年にも及んだ。
 官兵衛の主家である小寺氏は秀吉に対して、最終的には逃亡した。その子孫は、のちに福岡藩主となった黒田長政に仕えた。
 官兵衛は死ぬ直前、家臣たちを枕元に呼び出しては悪態をついた。ののしられた家臣たちは、身に覚えがなく、ただ困惑するだけだった。たまりかねて、息子の長政が理由を問うと、官兵衛は、次のように答えた。
 家臣にひどい仕打ちをすることによって自分が疎まれ、一刻も早く長政の時代が到来することを願ったのだ。
 つまり、死にのぞんだ官兵衛は、あえて嫌われ役を演じてみせたのでした。
 なかなか実証的な本だと感嘆しました。
(2013年9月刊。800円+税)

トロイアの真実

カテゴリー:ヨーロッパ

著者  大村 幸弘 、 出版  山川出版社
 シュリーマンがトロイアの遺跡を発掘したというのが定説になっています。
 この本は、その定説はきわめて疑わしいことを、豊富な写真と自らの現地での調査(発掘)体験を通じて明らかにしています。私は、なるほどと思いました。
 『イリアス』は、前8世紀に活躍したホメロスが連綿と語り伝えられてきた叙事詩をまとめあげたもの。トロイアの待ちが陥落するまでの50日間も描かれている。
 19世紀に生きたシュリーマンが、トロイアの遺跡を発掘した話は有名です。
 著者は、1972年にトルコのアンカラ大学に留学し、それから43年間もアナトリア高原で考古学の発掘調査と遺跡踏査をおこなってきた。
 そして、アナトリアの発掘調査をおこなえばおこなうほど、シュリーマンが発掘したヒサルルック遺跡が本当にトロイアなのか、疑問に思えてきた。
 遺跡の写真がありますから、現地に行ってなくても、それなりに理解できます。
考古学とは、自分で追いつめないとだめだ。それも、自分の手で。それができないのであれば、発掘現場なんかに立っている意味はない。
 シュリーマンの掘り方は、素人そのものだった。シュリーマンがトロイアとしたヒサルルックについて、その決定的な証拠は何一つない。
 シュリーマンは、発掘を間違ったため、トロイアを探し出すことが出来なかった。
 シュリーマンは、発掘において、遺跡がどこで出土したか詳細に記述していなかった。
 スケッチすることに重点を置いていた。シュリーマンは、層序(地層の重なり)については、まったく無知だった。
 ヒサルルックとは、「城塞」という意味だ。
 シュリーマンは200人の労働者を3ヵ月のあいだ雇用した。その労賃だけで4800万円かかる。その他の運送費用などを含めると6000万円は使っていた。
 シュリーマンは、ヒサルルックをトロイアだとする仮説を最終的には証明できなかった。
 外国での遺跡の発掘調査が、いかに難しいことかも伝わってくる本でした。
(2014年3月刊。2500円+税)

ドイツは過去とどう向きあってきたか

カテゴリー:ヨーロッパ

著者  熊谷 徹 、 出版  高文研
 今の日本では、戦前の日本が海外へ侵略戦争を仕掛けたこと、数多くの残虐な行為をしたことを直視し、なるべきありのまま後世に伝えようとすると、それは「自虐史観」だ、日本人の誇りを持てなくなるから止めろという声がかまびすしく湧きあがってきます。なにしろ、政府が音頭をとって、有力マスコミを使うものですから、声高な潮流になるのも当然です。しかし、ドイツでは、少なくとも政府はそういう態度ではありません。
 ブラント元首相は、若者に歴史を語り継ぐ意義を、次のように語った。
 若者も歴史の大きな流れのなかに生きているのだから、過去に起きたことが気分を重くするようなものであっても、それを伝えることは重要だ。ドイツは戦前、周辺諸国に大きな被害をもたらした。したがって、今後のドイツ政策が国益だけでなく、道徳をも重視することをはっきり示す必要がある。自国の歴史について、批判的に取り組めば取り組むほど、周辺諸国との間に深い信頼関係を築くことができる。
 本当にそうなんですよね。「自虐史観」だという人は、日本は悪いことなんかしていないと開き直るばかりです。そんな反省のない態度では、外国から信用されるはずがありません。
 西ベルリンでもっともにぎやかな地区の広場には、「我々が決して忘れてはならない恐怖の場所」として、アウシュヴィッツ、トレブリンカ、マイダネクなどの強制収容所の名前を記した警告番が立てられている。
ドイツの小学生が学ぶ教科書には、ナチスがドイツを支配していた時代に関する記述が細かく、子どもには残酷すぎるのではないかと思われるほど、生々しい写真や証言が載せられている。
 そして、高校の歴史の授業は、暗記ではなく、討論を中心としてすすめられる。
 ドイツでは、ナチス式敬礼を行うことは禁じられ、アウシュヴィッツを否定すると法律違反になる。最高5年の禁錮刑に処せられる可能性がある。
 このところ、ドイツでもヒトラーを信奉する極右が若者のなかに増えているという逆流現象もあるようですが、先ほど紹介した政府の取り組みは日本でも実践すべきものだと思います。そのためには、まずは安倍首相の引退を急ぐ必要があるのでしょうね・・・。
(2007年4月刊。1400円+税)

十代のきみたちへ

カテゴリー:司法

著者  日野原 重明 、 出版  冨山房インターナショナル
 ぜひ読んでほしい憲法の本です。
 102歳になる現役の医師が、憲法を、日本国憲法の意義をやさしい言葉で、平明にとき明かしています。もちろん、読み手を十代の読者として、です。
 著者の日常は、百歳をこえた人間にしては、けた外れに忙しく、時間がひどく足りないという思いで、毎日を過ごしている。
 なぜ、医師なのに憲法に興味をもったのか?
 それは、「いのちを守る」という医師の仕事に、日本の憲法が深い関係を持っていると思ったから。憲法は国民のいのちを守るはたらきをしている。ふつうの法律は、人々や守るべきルールを定めている。憲法は、政治家や役人が、つまり日本のえらい人たちが守るべきことを決めている。これが、ふつうの法律と憲法とが大きく違うところ。
 著者は102歳まで生きてきたが、まだまだ毎日が勉強の連続。人間は死ぬまで勉強が続く。この点については、65歳になる私も、まったく同感です。法律論も、社会の現実も、本当に知らないことだらけです。
 ふつうの法律は、ルールとそれを破ったことについての罰則が書かれている。しかし、憲法には、罰則はない。
 日本国憲法は、「戦争をしない」「軍隊は持たない」と明記しているので、自衛隊は戦争の手伝いはできても、アメリカ軍と一緒になって戦うことはできない。それが不満な人たちが、憲法を改正しようと言っている。
 そのとおりです。要するに、日本が昔のように海外に出かけていって戦争しようという人が憲法改正を唱えているのです。そして、その人たちは確信犯ですから、口あたりのいいコトバで善良な人々をごまかして、賛同者に仕立てあげます。そんな人たちが、海外の軍隊に攻められてきたとき、丸腰でどうするんだとヒステリックに叫ぶのです。まるで、集団ヒステリーです。そこには、完全な思考停止があります。そんな近親増悪のような状況にならないようにするのが、政治であり、外交ではありませんか・・・。
 気をつけなければいけないのは、「自衛のための戦争」というのは、いくらでも広く考えることができるということ。
 これまで、世界の歴史において無数の戦争があったが、その多くはもっともらしい理由ではじめられている。
 集団的自衛権にしても、線引きがむずしくて、戦争の原因になりかねない。人類の歴史のなかで、争いが物事を解決した例はない。
 世の中に、本当の「いますぐ」はない。せっかちになりがちな気持ちを落ち着かせ、待っていれば、必ず話し合いの糸口はつかめるものなのだ。
 102歳の医師が、こんなにも平明な言葉で、しかも十代の読者を意識して憲法を語るなんて、本当に驚き、かつ尊敬というより畏敬の念で一杯です。100頁ほどの本です。ぜひ、あなたも手にとってお読みください。
(2014年5月刊。1100円+税)

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