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中尉

カテゴリー:日本史(戦後)

                                 (霧山昴)
著者  古処 誠二 、 出版  角川書店
 戦後生まれ、いま40代半ばの著者がビルマ戦線の日本兵を描いています。
 白骨街道とも呼ばれるほど無惨に敗退した日本軍の敗残兵の様子を、その生き残りの一人が体験談を書いたと思える迫真の描写に、思わず引き込まれてしまいます。
 戦争の愚かさを、しみじみと実感させてくれる本です。
いま、日本では好戦的な安倍首相の下で、「挙国一致」体制をつくって、戦前のように「戦争する国・ニッポン」へ逆戻りさせようという動きが強まっています。とんでもないことです。
戦前のような美しい国・ニッポンを取り戻せという人がいます。しかし、現実には、美しいどころではなく、戦前には汚らしい、腐敗した日本があったのです。軍部独裁。暴虐の限りを尽くした知恵のない軍部によって、東南アジアへ侵略していき、大勢の罪なき人々を殺傷し、あげく日本列島は焦土と化しました。そんな状況に逆戻りさせられてはたまりません。
日本の若者が意味もなく殺され、路端やジャングルの中で白骨化していくなんて、それが「美しい」なんて絶対に言ってほしくありません。
 戦争は最大の人権侵害です。弁護士会はいま、全国で、安倍内閣が戦争する国に変えようとするのに反対し、安倍内閣のもとでの道徳教育の押しつけなど、戦争推進体制づくりに抗して立ちあがっています。
 それにしても、作家の想像力のスゴさには脱帽です。モノカキ志向の私にとって、もうひとまわり精進しなくてはいけないと思わせる戦争小説でした。
(2014年11月刊。1800円+税)

税金を払わない巨大企業

カテゴリー:社会

                                (霧山昴)
著者  富岡 幸雄 、 出版  文春新書
 大企業がもうかっているというのは間違いありません。その従業員の賃金も上がっているようです。問題は、それが社会全般にきちんと還元されているか、ということです。
 誰だって、大企業は、もうかっているだけ税金もちゃんと国に治めていると思いますよね。ところが、この本によると、それが全然ちがうというのです。驚きました。呆れてしまいます。
日本を代表する世界的な大企業は日本国へ税金を納めていない。
 ソフトバンク。あの孫さんの超大企業は、800億円近い純利益を上げているのに、納税額はわずかに500万円。うひゃあ・・・。ケタがいくつも違いますよね。
 では、柳井さんのユニクロは?
 純利益が750億円で納税額は50億円。少しはましです。でも、本当に、そんなことでいいのでしょうか・・・。読めば読むほど、腹の立つ本です。血圧が高い人は読まないほうがいいかもしれません。この本を読んで。プチッと脳血管がキレてしまっても、決して私の責任ではありません・・・。
 三井住友フィナンシャルグループは、1500億円近い利益を上げているのに、税金は、わずか300万円しか納めていない。300万円といったら、小さな小さな零細企業レベルの納税額でしかありません。
 みずほフィナンシャルグループも2400億円の純益に対して2億円ほどの納税額。同じく三菱UFJフィナンシャルグループも900億円近い純益に対して51億円ほどの納税額でしかありません。
 あまりにも低すぎます。「政商」をかかえているということで有名なオリックスも、1700億円という純利益に対して、納税額は、わずか210億円。やめられませんよね。超大企業にとって、日本は天国そのものです。
 日本の法人税は高い、いや高すぎるから下げろと経団連や一部のエコノミストが声高く主張しています。
 実のところ、日本の法人税率は35%で、ドイツの30%、フランスの33%、アメリカの40%に比べて、そんなに高いわけではない。
 日本の法人税の現状はまるでタックス・ヘイブン(租税回避地)と言うしかない。
 日本の法人税は高い、高すぎると言っている超大企業のすべが、実は、驚くほど軽い税金しか納めていない。信じられませんね。超大企業というのは、世の中に貧しく、苦しんでいる人がいることなんて忘れ、切り捨ててしまっているのです。
 企業グループ内の各企業が、株式を保有しあえば、各企業の利益による配当金を、グループなの企業で、ほとんど支払わずに内部留保することも可能になる。
 日本の富裕層の税金は世界一安い。
 5000万ドル(49億円)以上の純資産をもつ超大金持ちが、日本に2885人もいる。すごーい、ですよね・・・。安倍内閣は、消費税を10%に必ずすると断言しています。これでは、私たち庶民の経済状況を直撃し、苦しめます。
 日本のヒドイ経済格差を強めている安倍政権は、本当に血も涙もない、あこぎな政治をすすめています。怒り、そして、それを支える事実と論理を身につけてくれる本でもあります。
(2015年2月刊。700円+税)
 ゴールデンウィークは、どこにも出かけず、庭の手入れにいそしみました。今は、キョーブ、ハナショーブが花盛りです。ところどころにジャーマンアイリスも咲いています。ライトブルーだけでなく、黄・茶色そして純白の花もあり、心が惹きつけられます。5月の庭は、色とりどりで心も楽しく軽やかになります。
 2月に植えたジャガイモの苗が大きくなってきました。6月が楽しみです。
 庭のアスパラガスをとって口にすると、香りもよく、春を実感します。ウグイスの声が元気に響きわたります。カササギの巣は完成しましたが、産卵にはまだ至らないようです。二羽で、ときどき巡回しています。

ベルリンに一人死す

カテゴリー:ヨーロッパ

                                (霧山昴)
著者  ハンス・ファラダ 、 出版  みすず書房
 ナチスドイツに抵抗したドイツの大学生たちは、白バラ・グループと呼ばれました。大学の内外でナチスへの抵抗を呼びかけたビラをまいたのです。ところが、そのビラを読んで決起した学生・市民はほとんどいませんでした。そして、大学生の兄妹は死刑となってギロチン台で処刑されてしまいました。
 戦後になって、その行為は高く評価されたわけですが、残念ながら、同時代のドイツ人を立ち上がらせることは出来ませんでした。
 この本の主人公は、一人息子をドイツ兵として戦死させてしまった中年の夫婦です。夫は、まだ現役の労働者でした。ヒトラーを批判し、反戦を呼びかけるハガキをベルリンの町のあちこちに置いていったのです。
 ところが、そのハガキを手にした人は、恐怖のあまりほとんどが警察へすぐに届け出てしまいます。その限りでは、反戦ハガキは何の効果もありませんでした。しかし、本当に効果がなかったのかどうかは、本書のような存在が証明していることになります。
 この小説のモデルとなった実在の人物は1940年から2年にわたって、公共の建物にナチスへの抵抗を呼びかける文章をハガキに書いてベルリンの町のあちこちに置いていった。
 ベルリン中からハガキが発見されたため、ゲシュタポ(ナチスの秘密警察)は、大がかりな地下組織の存在を疑っていた。実際には、夫婦二人だけの「犯行」だった。1942年に逮捕され、形だけの裁判で死刑判決を受け、1943年にギロチンで処刑された。
 あらゆる意味で平凡な一般市民の中に、こんな絶望的とも言える勇気をもった人々がいたことに驚かされる。
 でも、よく考えてみれば、ベルリン市内には戦後までユダヤ人を隠して守り抜いた人々が少なからずいたのです。守った人々も、普通の一般市民だったのです。
 ハガキを書いて町のあちこちに置いていたオットーは、政治的信条のためではなく、「まっとうな人間」でいるためにハガキを書いたのだ。本書に登場する人物のうち、ナチスへの抵抗を試みるのは、ほとんど全員が確固たる政治的信条をもたない平凡な人物ばかり。彼らは、ただ単に「まっとうな人間」でありたいという願いから、ナチスに抵抗し、迫害を受ける。その抵抗が何の役に立ったのかと問われたとき、オットーは次のように答えた。
 「自分のためになります。死の瞬間まで、自分はまっとうな人間として行動したのだと感じることができますからね。そして、ドイツ国民の役にも立ちます。聖書に書かれているとおり、正しき者ゆえに救われるだろうからです」
 この本は、1946年に出版されています。まさに終戦直後に書かれたのです。平凡なドイツ市民、はじめはヒトラー・ナチスを賛美していた夫婦がヒトラー批判のハガキを書いて町じゅうにばらまくようになるのです。その心理的変遷を行き詰まるタッチで描き出しています。
 600頁もの分厚い本です。そのうえ上下2段組です。戦時下のドイツ、首都ベルリンの行き詰まる市民生活が丹念に再現されていて、読ませます。
(2014年10月刊。780円+税)
 次のような詩があるそうです。
 批判ばかりされた子どもは、非難することを覚える
 殴られて大きくなった子どもは、力に頼ることを覚える
 笑いものにされた子どもは、もの言わずにいることを覚える
 皮肉にさらされた子どもは、醜い良心の持ち主となる
 しかし、激励を受けた子どもは、自信を覚える
 寛容に出会った子どもは、忍耐を覚える
 賞賛を受けた子どもは、評価することを覚える
 フェアプレーを経験した子どもは、公正を覚える
 友情を知る子どもは、親切を覚える
 安心を経験した子どもは、信頼を覚える
 かわいがられ抱きしめられた子どもは、世界中の愛情を感じることを覚える
 これはスウェーデンの中学校の教科書に載っているそうです。ドロシーロー・ノルトの「子ども」という詩です。長瀬文雄氏が紹介していました。弁護士生活40年以上となった私の実感にもぴったりあいます。やはり、人間同士も国同士も信頼しあうことが大切です。安倍政権のようなあちこちに「敵」をつくり、武力によって「敵」を抑えこもうというのではいけません。

10代の憲法な毎日

カテゴリー:司法

                               (霧山昴)
著者  伊藤 真 、 出版  岩波ジュニア新書
 憲法改正のための国民投票は18歳からできるようになります。
 これは当然のことでもあります。なぜなら、徴兵制になるかどうかはともかくとして、日本人が戦場へ駆り出されるとき、その主力の兵士は20歳以上ではなく、18歳以上であることは間違いありません。
 アフリカの戦場では10代の兵士が珍しくなく、14歳にして部隊の司令官だ人間がいるというのです。恐ろしい現実です。
ということは、10代に憲法とは何なのかを知ってもらう必要があります。この本は、そんな思いで書かれていますので、とても分かりやすい内容になっています。さすが、だと感嘆しました。10代ですから、はじまりは学校生活の不満を問題とします。
集団や社会のために個人が犠牲になる社会であってはならない。
 高校生の疑問に対して著者が答えていくのですが、実に明快な答えです。
 人権というのは、元々は、人間として正しいということ、だから、権利を主張するときには、なぜその権利は正しいのかについて、みんなに分かってもらうことが大切になる。
 住民投票とか、直接民主主義には、変な誘導がなされたり、世論操作の危険性がある。
ドイツでは、ヒトラーが演説の巧みさなどから国民の圧倒的な支持を集め、圧倒的な支持を集め、ナチ党の独裁を許し、ユダヤ人の大量虐殺などの暴走につながった。だから、何でも住民投票で決められたらいいということにはならない。
 今こそ、大いに憲法について語りましょうと伊藤弁護士は若い人に呼びかけています。私も、まったく同感です。憲法は古い、死んだものではありません。きわめて新しい内容をもっているのです。ぜひ10代のあなたに読んでほしい新書です。
(2014年11月刊。840円+税)

ふくおか古墳日和

カテゴリー:日本史(古代史)

(霧山昴)
著者  吉村 靖徳 、 出版  海鳥社
 福岡県内に、こんなにたくさんの古墳があるなんて、ちっとも知りませんでした。
 県内各地の古墳が素晴らしい写真とともに紹介されています。今度の日曜日、いい天気だったら出かけてみようかな、そう思わせるだけある、青空の下の古墳たちです。
 八女古墳群に現存している岩戸山古墳は、筑紫君(つくしのきみ)の磐井(いわい)が埋葬されている古墳とされています。阿蘇山の噴火でできた凝灰(ぎょうかい)岩を丸彫りした人物や武具がたくさん見つかっているのです。
 6世紀半ばに大和朝廷の派遣した朝廷軍の磐井は敗れたのですが、そのとき根絶やしされたのではなく、その後も、筑紫君は八女丘陵に大規模な前方後円墳を築き続けた。
 武装石人、武人埴輪、力士壁画、力士埴輪などが残されているのにも、心が惹かれます。八女には巫女(みこ)埴輪もあります。
 春夏秋冬、四季の風情とともに古墳が写真で紹介されています。
 いま、九州は西のはてにある。昔は、関西よりも表玄関として文化発祥の地だった。そのことを実感させてくれる写真集でもあります。
 ぜひ、一度手にとって眺めてみてください。
(2012年12月刊。1800円+税)

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