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東アジア共同体と沖縄の未来

カテゴリー:社会

著者  東アジア共同体研究所 、 出版  花伝社
 今日、世界の生産物、モノの取引の7割はアジアの諸国を通じて行われている。
 今や中国などのアジア諸国は、かつての安価で大量の労働力による「世界の工場」から、分厚い中間層による「世界の市場」へと変貌している。
 かつてはアメリカやヨーロッパ諸国が、世界の生産と貿易と市場の中心だった。しかし、今、その中心がアジアへと移動し続けている。物流の担い手は、いまでは巨大コンテナ船だが、そのコンテナ船に積まれて運ばれる物流の3分の2は、アジアの港湾を中心に運送され、荷揚げされ、消費地へと運ばれている。しかも、アジアの港湾で荷揚げされる物流の半分、世界総量の40%は、アジア域内同士の交易が占めている。
 このように、物流の中心は今や欧米世界からアジア世界へと転移している。
 1980年の港湾ランキングで上位に港湾のうちアジアの港はわずか4港しかなかった。
 今では(2012年)、上位に主要港湾のうちロッテルダムが10位に入っているだけで、ドバイ含めると、11港すべてが広域アジアに属している。
 ところが、日本はトップの東京湾が世界24位、神戸が49位で日本の港は衰退している。
 中国の漁民に変装した特殊部隊が島に上陸するとか、架空の話をふくませて、脅威をあおる。ほら北朝鮮が強いぞ、ほら中国は怖いぞ、尖閣が危ないぞ、だからアメリカ軍の基地はそのままでいいし、自衛隊の増強が必要なんだと言っている。
 自民党は今までの反共イデオロギーの代替物として、これをフルに活用し、親米と反米の矛盾を露呈せずに体面を保ってきた。かつて、ソ連軍が北海道に攻めてくると言って置かれていた海上自衛隊がやることなくなって、その失業対策として西南諸島対策の必要性が言われているだけのこと。
 今の天皇は、きわめて強い思いを沖縄に寄せ、しばしば沖縄を訪れ、そのたびに、「沖縄県民の苦労を日本人全体でわかちあわなければならない」という談話を発表している。
 そして、琉歌を独学で学んで詠んで、毎年、発表している。琉歌を読むヤマトンチューというのは、聞いたことがない。
 今の天皇は一昨年(2013年)12月23日の80歳の誕生日を迎えたときのコトバのうち、NHKは大事なところをわざと隠して報道した。
 天皇は何と言ったか・・・。
 「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を守るべき大切なものとして日本国憲法をつくり、さまざまな改革を行って今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ改善していくために、当時のわが国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています」
 いまの安倍政権が平和を、そして民主主義を壊す可能性があるという危機感から出てきた言葉である。だからこそ、NHKは、「平和と民主主義を守るべき大切なものとして日本国憲法をつくった」という部分をカットして、そこは報道しなかった。
 これは本当にひどい話です。安倍・籾井ラインのなせる悪行もきわまれりと思います。
 味わい深い、価値のあるブックレットです。
(2014年10月刊。800円+税)
  庭仕事をしていると、近所の奥さんが、昨日、そこにタヌキがいましたよ、と話しかけてきました。やっぱり先日、庭の生ゴミをほじくり返した犯人はタヌキだったのです・・・。
 いつものようにジョウビタキが、すぐそばまでやって来て、私に挨拶します。掘り返した土のなかにいたミミズを放り投げると、おいしそうに食べていました。かといって、私がエサを与えるのを期待して近づいてきているとは思えません。
 ジョウビタキは縄張りがあると紹介されています。縄張りのなかで土を起こしているのを監視しているのかもしれません。
 ずい分と日が長くなりました。今では夕方6時まで庭仕事が出来ます。

イチョウ、奇跡の2億年史

カテゴリー:生物

著者  ピータークレイン 、 出版  河出書房新社
 日本中どこにでも見かけるイチョウですが、実は絶滅寸前にまでなった樹木だといいます。2億年も生きていたのに絶滅寸前になったとは・・・。そして、中国に細々と生き残っていたイチョウが日本に渡来してきて、そこからヨーロッパに行き、現在のように世界中に再び拡散して根付いているというのです。不思議な長命の木なのですね。・・・。
 種子植物のうち、花粉管のなかで精子を形成するのはイチョウとソテツしかない。イチョウは古い生殖様式をそのまま残した驚異の植物である。
イチョウは、かつて北半球の全域で見られたが、気候変動のために中国南部の山間地を除いて絶滅してしまった。そして、800年前ころに韓国や日本に広まった。寺院の庭などに植えられた。そして、17世紀後半に、日本でヨーロッパ人が見出すと、わずか数十年でヨーロッパ中にひろまり、やがて全世界に迫出していった。イチョウは大気汚染にも害虫にも病気にも強い木だからである。
 イチョウは、植物としてはかなりの変わり者で、現生する近緑種が存在しない。
イチョウの葉は、他の木の葉と比べると頑丈で、そう簡単には腐食しない。
 イチョウの巨木に何枚の葉があるか、それを数えたアメリカ人がいる。それによると、10万枚近かった。巨木には30万枚から50万枚。もっと古い巨木だと100万枚になるかもしれない。
イチョウは、雄の個体と雌の個体とが別々に存在している。一本のイチョウの雄木からでる花粉粒の量は驚くほど多い。1本の木が1年でつくり出す花粉の生産量は1兆個にもなる。その花粉粒が雄木で発生中の胚珠にたどり着く確率を考えると、それくらいは必要になるのだ。
 イチョウは、冬のかなりの低温や夏のかなりの高温をとりあえず短期間なら耐え抜くことができる。シカゴは冬にマイナス33度C、夏に42度Cにまでなるが、そこでもイチョウは平気で育つ。
 現在、イチョウは世界中で見ることができるが、それは基本的にヒトが植えたもの。
イチョウは、世界中に飢えられている街路樹の代表だ。イチョウには健康増進効果があるとされている。
イチョウの精子を発見したのは、平瀬作五郎という日本人であり、明治29年(1896年)のことだった。同年に、ソテツの精子も発見されている。
黄変した見事な街路樹は、たしかに日本全国にありますよね。昔みた東大本郷のイチョウ並木も壮観でした。イチョウのことがよく分かる本です。
(2014年9月刊。3500円+税)

弁護士ドットコム

カテゴリー:司法

著者  元榮 太一郎 、 出版  日系BP社
 今や日の出の勢いとも言うべき弁護士ドットコムについて、創業者である弁護士が苦労話を語った本です。
月間の訪問者は660万人。登録する弁護士は7000人、これは日本の弁護士の5人に1人にあたる。サイトに寄せられる法律相談や問い合わせは月に1万500件。
モバイル有料会員は、毎月、純増1000人というペースで増え、1年で1万人を突破した。2014年には4万人をこえた。
 登録する弁護士は、2010年6月に200人、2011年6月に3000人、2012年4月に4000人をこえた。FAXのほか電話によるアプローチをはじめると、2013年5月に6000人、2014年8月に7000人となった。
 弁護士向けの有料サービスを2013年8月にスタートした。有料会員はサービス内容によって、月2万円、3万円、5万円のプランがある。有料会員は、1年しないうちに900人をこえた。
 2014年に入ってから、赤字が長く続いた弁護士ドットコムは、採算がとれるようになった。月商ベースで前年同月比2倍の売上高となった。
 弁護士ドットコムを運営する主体となっている法律事務所は、今や弁護士28人、事務所スタッフをふくめると120人という大所帯である。
 2014年12月、弁護士ドットコムは東京証券取引所マザーズ市場に上場した。
 著者は1975年生まれなので、現在40歳(まだかな?)。弁護士になってから3年間は、東京の四大事務所の一つ、アンダーソン・毛利法律事務所に在籍した。
 しかし、退職してベンチャー企業を目ざしたのです。やはり、若さですね。
 私の法律事務所でも、一人だけ弁護士ドットコムに加入しています。それなりの反応はあるようです。
 社会がインターネットを活用している社会環境のなかで、いち早くそれを弁護士業界に生かした点で、著者には先見の明があったというべきなのでしょうね。といっても、私自身はネットを依然として見るだけなのです・・・。
(2015年1月刊。1400円+税)

風雪のペン

カテゴリー:日本史(明治)

著者  吉橋 通夫 、 出版  新日本出版社
 秩父困民党の「暴徒」の娘として両親を亡くして孤児となった主人公・フキは7歳のとき、伯父から旅籠の飯炊きに売られた。13歳になったら飯盛女として客をとらされる身だ。先輩の女の子が死んだとき、旅芝居一座に隠まわれた旅籠を逃げ出すことができた。そして、人の親切から、東京の新聞社の女中として住み込んで働くようになった。
明治時代に幸徳秋水の「萬(よろず)」朝報」や「平民新聞」などがあるのは知っていましたが、他にも非戦論で頑張っていた新聞があったようです。
 フキは、その新聞で女中として働くうちに、校正を担当し、ついには女性向けの柔らかい記事を書くようになったのでした。
 そして、やがて日清戦争がはじまります。非戦論を唱える新聞社は存立が危なくなります。さらに、日露戦争になると、ますます政府による言論統制が強まります。
明治時代と現代日本では、もちろん大きく時代状況は異なります。それでも、権力者が情報を統制しようとする点では、まったく同じです。そして、国民を熱狂させて戦争へ駆り立てようとする点も、共通しています。今の安倍政権も同じ手法です。中国や北朝鮮、韓国の「脅威」をやたらとあおりたてて軍事拡張の必要性を強調しています。今度の軍事予算は5兆円を超えてしまいそうです。福祉を削って軍事予算は増大させています。そして、戦争を招こうとしています。怖いことです。やめてほしいです。そして、そのためにNHKをはじめとしてマスコミ統制をますます強めています。NHKの籾井会長のいつもながらの低劣な発言には唖然とさせられます。まるで表現の自由への配慮がありません。 
 主人公のフキは、ついに記事の書き手になり、編集責任者にまでなります。なにしろ、男性記者が招集されて兵隊として戦争に駆り立てられていくからです。
戦争へ、戦争へ・・・。勇ましいことを言うばかりの政治家がいて、それで儲かる軍需産業がいて、その下で無意味に殺される兵士がいます。また、多くの遺族が泣いています。そんな戦争の悲惨さを伝えるのが新聞ではないのか・・・。
新春の西日本新聞の中村哲医師のアフガニスタンでの奮戦記に、私は身体が震えるほどの思いをしました。戦車ではなく、ショベルカーこそが求められているのです。
 あまり本の紹介はできませんでしたが、明治時代にも、戦うジャーナリストがいたことを知らせてくれる、元気の出る小説でした。
(2014年12月刊。2300円+税)

私記・白鳥事件

カテゴリー:日本史(戦後)

著者  大石 進 、 出版  日本評論社
 白鳥事件と言えば、弁護士にとって再審の門を大きく開いた最高裁判決として有名です。というか、再審についてすこしでも関心をもつ人なら知らないはずがありません。私にとっては、白鳥事件とは網走刑務所に入れられて無罪を訴えていた村上国治氏であり、松川事件と並ぶ日本の冤罪事件でした。 
 村上国治氏は、その生前、私も元気な姿を何回も遠くから見たことがあります。出獄後は日本国民救援会の副会長として活躍していました。人の良さそうなおじいちゃんでした。
 白鳥事件が起きたのは、1952年1月21日の夜7時40分ころ。札幌市中央区南六条西16丁目の路上で、自転車に乗って走行中の白鳥一雄警部(札幌市警の警備課長)が、同じく自転車に乗った男によって射殺された。
この白鳥警部を射殺した犯人は、日本共産党の中核自衛隊員であり、それを命じたのは、日本共産党札幌市委員会の責任者である村上国治だった。このとき、村上国治は若冠28歳である。
 白鳥事件は、権力のデッチアゲではない。冤罪事件ではないのである。日本共産党は、白鳥事件の主犯格の3人と、幇助犯をふくめて事件を深く知る周辺の7人の合計10人を中国に密出国させた。
 7人のほうは、197年から順次、日本に帰国してきた。主犯格の3人は中国にとどまったままだった。
実は、この本の著者も日本共産党の中核自衛隊に誘われて、入隊していたのでした。1954年の初夏のころです。群馬県の山村で巡回映画を上映してまわったというのです。
16ミリ映写機と映画フィルムをもって妙義山中に点在する部落をまわって毎夜、上映会を開き、子どもたちに喜ばれた。1955年、六全協のあと、晩夏に武器を廃棄した。
 このように中核自衛隊にかかわっていた著者が、白鳥事件に関心をもつようなったのは必然のことですね・・・。
 「白鳥事件を、三鷹事件や松川事件と同列に論ずるわけにはいかない。この事件を冤罪と思っている人は北大には一人もいない」。これは1955年の北大生の言葉だった。
 岡林辰雄弁護士の言葉。「村上国治の無罪、共謀共同正犯の不成立は主張できるかもしれないが、彼の部下の誰かが白鳥を射殺したという事実は消えない。村上には組織の責任者として思い政治的責任がある。もし、実行犯が逮捕されて、重刑を課され、村上が無罪とされたら、村上は生きていない」
 岡林は、村上を英雄としてではなく、罪人として認識していた。岡林は、「幌美峠で発見されたという銃弾は、まぎれもなく偽造証拠だが、あの場所で彼(白鳥)の指示のもと、党員による射撃演習が行われたことは疑いのない事実だ」、そう語った。
 このように、弁護士は、いつの時代でも、表と裏との、合法と非合法の接点にいることを運命づけられる。
 著者は、射殺の実行犯は佐藤博だと断定しています。そして、佐藤博も村上国治も軍隊経験者なのです。人を殺すことを使命とする組織にいて、その訓練を受けてきた人間でした。
 この時期にとられた軍事方針は、日本革命のためというより、外圧によるものだった。日本共産党の「武闘」は、ソ連と中国共産党、すなわち事実上のコシンテルンに対する「見せかけ」、ないしアリバイづくりに過ぎなかった。派手なだけで、朝鮮半島の戦局に対する影響皆無の火炎瓶投擲でお茶を濁していた。
おそらく、学生・失業者・民族組織に根をもたない朝鮮人、元国際分派などが消耗品として軍事に投入されたのだろう。
「手記」と銘うってあるように、著者の実体験をふまえて白鳥事件の真相に迫った本です。
 いかなる組織も自らの誤りを率直に認めることは至難のことです。しかも、自分がやったわけではない先輩たちの誤りを自己批判するなんて、考えただけでも気が遠くなります。
 それでも、歴史の闇は明らかにしなければならないのではないか。この本を読みながら、そのように私は思いました。いかがでしょうか・・・・。
 (2014年11月刊。2000円+税)

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