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FIFA、腐敗の全内幕

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者  アンドリュー・ジェニングス 、 出版  文芸春秋
  71歳の調査報道記者が世界サッカーを統括する国際サッカー連盟(FIFA)を食い物にする、汚いヤミ取引の内幕を暴露しています。
  スイス警察がFIFAの最高幹部7人を逮捕した。その容疑は、1億5000万ドルの横領。
  著者のジェニングスは、1980年代には汚職警察、タイの麻薬取引そして、イタリアのマフィアを調べ上げた。そして、ここ15年は、国際サッカー連盟(FIFA)に焦点を絞っていた。
  FIFAをマフィアと呼ぶのは冗談ではない。FIFAを牛耳るブラッター会長のグループは、組織犯罪シンジケートを共通する要素をすべてそなえている。強くて冷酷なリーダー、序列、メンバーに対する厳しい掟、権力と金という目標、入り組んだ違法で不道徳な活動内容。
ブラッター会長は6つのサッカー連盟を支配している。
ブラッター会長は、ワールドカップが稼ぎ出す何十億ドルもの大金を背景に、巨大な権力を握っている。その権力をつかって209の国と地域を買収する。そして、相手は彼が権力の座を確保できるように喜んで投票する。潤滑油となっているのは、ほとんど無審査の「開発育成交付金」であり、現金で売られる莫大な数のワールドカップ・チケットだ。
  チケットは闇マーケットに流れ、表に出ない無税の利益になる。ブラッターが見返りに求めるのは、投票場での忠誠と会議での沈黙だけ。
  連盟や協会の多くの代表にとって、ブラッター会長は自分たちのお金で買うことのできる最高の会長だ。そんなブラッターを交代させる手はない。ブラッターよ。永遠なれ!
  こんな巨大な国際組織の中で反対意見はめったに聞こえてこない。FIFAは本質的に反民主主義の組織なのである。
  FIFAは2010年に2018年と2022年の開催地を同時投票で決定した。大会の開催地を一度に2回分決めたことは、かつてないこと。10年先のスポンサー権やテレビ放送権の価値を正確に予測することは誰もできないのに・・・。
  ブラッター会長の世界では、「沈黙の掟」を破ることこそ、組織犯罪で最大の罪である。
  この「掟」を破った理事は永久追放される。
ブラッター会長は、役員会の内容をすべて規則によって「極秘」とした。それによって、FIFAのお金を自由に使える。最高級のホテルで贅沢三昧をし、チャーター機で王様のような旅をした。給料、ボーナス、必要経費、車、住宅手当など、あらゆる項目で、自分と家族そして愛人のためにFIFAからお金を絞りとった。
  ブラッター会長は、ほかの役員の同意を要せず、自由に小切手を切ることができた。
  そして、FIFAのお金を、どんな相手にも渡せた。FIFAの規約では、ブラッター会長は、世界のいかなる国の法律の制約も受けないと定められている。
  この本を読むと、サッカー試合って、まるで汚物まみれにしか見えなくなります。スポーツによって健全な精神が養われ、育つどころではありません。早くなんとかしてほしいものです。
(2015年10月刊。1600円+税)

ゴリラ(第2版)

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  山極 寿一 、 出版  東京大学出版会
  初版の「ゴリラ」も読んでいますが、10年ぶりの第2版です。
  著者は、現在、京都大学総長です。アフリカのゴリラ研究の第一人者です。今から40年も前のことに始まります。著者が初めてアフリカの地を踏んだのは、1978年7月のこと。
  ゴリラのメスは、まれにしか交尾をしないし、繁殖には時間がかかる。258日間という長い妊婦期間を経て出産すると、その後、3年間の授乳期間は発情しない。
  マウンテンゴリラは、特殊化した葉食者とみなされた。
  葉食者が果実食者と比べて集団重量あたりの遊動域が狭くてすむのは、葉が果実に比べて大量に、そしてどこにでも得られる性質ももっているから。そして、仲間が増えても、食物が不足することがない。
  父系の会社は、アフリカにすむチンパンジーとボノボなどに知られている。
  類人猿の社会構造は大変多様だ。テナガザルはペア、オランウータンは単独生活、ゴリラは単雄複雌の集団、チンパンジーとボノボは複雄複雌の集団をつくって暮らしている。
  ところが、どれも思春期にメスが母親のもとを離れるという性質をもっている。
  メスが血縁どうしで結束する社会からは、メスが集団間を移籍する社会は生まれない。
  チンパンジーとゴリラの社会はメスの移入を許さない。ゴリラのメスは、一緒に遊動するオスがいれば、メスの仲間がいなくても生きていける。これが母系社会と違うところ。
  母系社会のメスにとって、ともに遊動生活を送るメスの仲間がいることが生存するうえで不可欠。それも血縁のメスであることが望ましい。
  ゴリラのメスは、みずから積極的に移籍している。およそ8歳のころのこと。移籍先で子どもが生まれないと、再移籍することが多い。
  幼児のころから顔見知りの親子や兄弟の間柄にあるオスたちは、ひとつの集団にメスとともに共存できる。
  単独オスは、音を立てずに距離をおいてついて歩くので、気づかれない。メスだけに自分の姿を見せて誘う。若いオスが離脱するときには、まず親集団とつかず離れずして自分の遊動域を拡大していく。オスのほうがメスより集団に未練を残しながら、ゆっくりと去っていく。
  ゴリラは、ニホンザルと違って、力の劣る相手に自分の採食場を譲ることがある。そして、食物を譲るときにも、必ず地面や膝の上に落としから相手にとらせる。口や手で渡すことはしない。ゴリラは相手と直接かかわるのを避け、なるべく接触しないようにして対等につきあおうとする傾向が強い。
  こんなゴリラの生活習慣って、本当に人間とよく似ていますよね。そのゴリラが、アフリカで絶滅の心配があるといいます。森林がなくなり、戦争し、人間が病気をもち込むからです。みんな、私たちにはね返ってきます。
 ゴリラ、チンパンジー、サル。本当に面白いですね。観察するのは大変だと思いますが、ぜひ引き続きたくさんレポートしてほしいものです。
(2015年8月刊2900円+税)

小泉今日子・書評集

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 小泉今日子  、 出版  中央公論新社
  歌手であり、女優としても有名な著者の10年分の書評が本になりました。
  キョンキョンというそうですが、テレビを見ない私には、どんな女性なのか全然知りません。
  「あまちゃん」に母親役で出演していたそうですね。
  でも、この書評はよく出来ていると感嘆しました。文章が生きています。思わず手にとって書評で紹介されている本を読んでみたいと思わせます。そして、著者の息づかいとともに著者の日常生活の一端が伝わってきます。そして、それによって著者を身近に感じることが出来て、親しみを感じるのです。
  紹介されている97冊のうち、私が読んだと思った本は9冊しかありませんでした。
  私は毎年500冊以上の本を読んでいますので、10年間だと5000冊になります。そして、10年以上にわたって1日1冊の書評を書いていますが、それでもわずか1割しか本が重ならないのですね。これは、ホント不思議な気がしました。でも、読書傾向が異なると、そうなるのでしょうね。
  私は、知りたいから読むという感じが強いのです。何を知りたいのかというと、世の中の仕組み、そして人間なのです。まだまだ探求の旅は続きます。
  本を一冊読み終えると心の中の森がむくむくと豊かになるような感覚がある。その森をもっと豊かにしたくて、知らない言葉や漢字を辞書で調べてノートに書き移した。
  本を読めば勉強になるし、頭の中のことではあるけれど、どこにでも行くことができる。未来でも過去でも、ここにはない世界にでも。ただ文字が並んでいるだけなのに、不思議だなって思う。
  同じ日本語を使っているのに、作家ごとに全然違う世界がつくられているというのもすごいこと。
  家から一歩もでなくても、宇宙でもどこにでも行ける。そして、本を読みながら、自分のこと、誰かのことを考える。それが自分にとって大事だった。
  小説はタイムマシーンだ。ページをめくれば、どこにでも、どの時代にも旅することができる。とても贅沢で、かけがえのない時間が、そこにある。
  本は、心を豊かにしてくれます。そして、そんな本を紹介してくれる書評の本です。
  私も、この書評コーナーを2001年から始めました。
(2015年11月刊。1400円+税)

江戸の経済事件簿

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者  赤坂 治績 、 出版  集英社新書
 2百数十年におよぶ江戸時代を経済の観点でふり返っています。
 江戸時代を通じて、元禄時代は、衣類がもっとも華やかな時期だった。今、着物と言われている衣服が完成したのも、この時期で、当時は小袖(こそで)と言った。
 木綿は、江戸時代のごく初期に庶民の着物の素材となった。木綿の生産地として、とくに有名だったのが、伊勢・松坂。木綿の確保が容易だった伊勢商人が江戸に進出し、次第に多数を占めるようになった。染めていない白木綿は武士と庶民に共通する肌着として使われ、染めた縞木綿は庶民の上着として使われた。
 秀吉時代の南蛮貿易の主要な輸入品は、中国・朝鮮の生糸と絹織物だった。
18世紀前半の享保(将軍・吉宗)期までは、大坂を中心とする上方が日本経済の中心地だった。歌舞伎など、芸能の興行には課税されなかった。芸能人は「河原者」と呼ばれて差別されていて、人間扱いしなかった者から税金をとるわけにはいかなかった。
 18世紀(1720年ころ)、芝居が大ヒットし、役者は年間1000両の給金と夏休みをもらった。そこから「千両役者」という言葉が生まれた。
 落語のほうは、料金は安く、下層庶民の娯楽だった。
井原西鶴は「日本永代蔵」で自らの創意工夫で銀玉百貫目を貯めた人を分限と呼び、千貫目を貯めた人を長者というとしている。
 江戸時代初期は、衣料革命の時代だった。庶民も木綿の着物を着るようになった時期に、越後屋は呉服店を開店した。越後屋は、売掛けのリスク分と、店員が外へ出かけなくてもよくなった分、商品の値段を下げることができた。
 江戸時代は、庶民が派手な色の着物を着ることが禁止されていた。そのため、茶色、ネズミ色、あい(藍)色系統の色など、地味な色を使いながら、微妙に色調を変えて、さまざまないバリエーションの色の着物を編み出した。
 これを知れば、江戸の時代を暗黒の200年とみることなんて許されませんよね・・・。
(2015年9月刊。740円+税)

「刑務所」で盲導犬を育てる

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  大塚敦子 、 出版  岩波ジュニア新書
  とても素晴らしい取り組みだと思いました。「刑務所」で収容者が盲導犬を育てるというのです。
  子犬が産まれてから盲導犬になるまで2年もかかる。子犬は生後2ヶ月までは母犬のそばで兄弟と一緒に育つ。そして、その後の10か月間を「パーピーウォーカー」と呼ばれるボランティア家庭に預けられ、人の愛情をりっぱに受けて育つ。1歳になると、盲導犬訓練センターに送られ、6ヶ月から1年ほど、プロの訓練士による本格的な訓練を受ける。そして、次に視覚障害者との共同訓練をして、2歳で盲導犬デビューをする。と言っても、実際に盲導犬になるのは3~4割ほど。
  パピーウォーカーのものとで育つ10ヶ月間は、盲導犬になるための「社会化」をする非常に重要な時期。「社会化」とは、人間や人間の暮らす環境に慣らし、人間社会で生きていける犬に育てるということ。
  盲導犬になるためには、愛情を注いでくれる人のもとで、規則正しい生活リズムを身につけ、人混みや駅、電車や車、雨や雪など、さまざまな状況を経験し、人間社会に暮らすためのルールを学ぶ必要がある。何より肝心なのは、その過程で人間に対する信頼を築くこと、人間のために働くのが楽しいと思えるような犬を育てることが、パピーウォーカーのもっとも重要な仕事だ。
  島根あさひ社会復帰促進センターは、日本で4番目の「PFI刑務所」。ほかには山口県の美称、兵庫県の播磨、栃木県の喜連川にある。PFI刑務所は民営刑務所ではない。民間の資金とノウハウを活用して、施設の建設、維持管理・運営をおこなう刑務所。公権力の行使は国の責任。民間は、受刑者の給食、清掃、警備、受付などを担当する。
  日本の刑務所の収容者は2万3千人ほど。男性のほうは定員オーバーの過剰収容状態は解消された。男性は2007年(H19)より減少傾向にある。ところが、女性の収容者は増え続けていて、20年前の3倍にもなっている。
  PFI刑務所では、全員が職業訓練を受けられる。
  国が負担する受刑者1人当たりの費用は、年間250~300万円。
  刑務所で盲導犬を育てるという試みは、アメリカで始まり、成功したといいます。
  犬を訓練するうちに、人間への不信や怒りに満ちていた受刑者たちが、再び人間を信じる心を取り戻していった。人を傷つけただけでなく、みずからも深く傷ついた受刑者たちが、命あるものをケアし、誰かの役に立つ経験をすることで、自分自身を肯定し、他人をも尊重できるようになっていった。
  心温まる本です。犬派の私には涙がこぼれそうなほど、うれしい本でもありました。
(2015年2月刊。840円+税)

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