法律相談センター検索 弁護士検索

ひいばあちゃんは中国にお墓をつくった

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者  飯島 春光 、 出版  かもがわ出版
 「中国では日本人と言われ、日本では中国人と言われる」
「自分は、いったいどこの国の人間なのか、、、」
中国残留日本人が、日本に帰ってきてからの苦労をあらわす言葉です。誤った国策によって中国へ送り出され、心ならずも中国に残ってしまった人たちが少しずつ日本へ帰ってきました。しかし、日本政府は冷遇します。日本の社会だって決して温かく迎え入れたわけではありません。
いま、ヨーロッパではシリア難民の受け入れが大問題となっています。この大量のシリア難民を生み出したのは、果てしない内戦に原因があります。そして、そこには、軍事大国アメリカの政策が大きく影響しています。結局、「抑止力」とか言って、武力一辺倒では、何事も解決することは出来ず、むしろ社会を解体してしまい、国際的な問題を生み出すのです。日本の好戦的な「抑止力」論者は、この現実をしっかり受け止めるべきではないでしょうか、、、。
日本が無理矢理につくった「満州国」に、日本全国から27万人もの満州移民(満蒙開拓団)が送り込まれた。
 「開拓」といっても、それは、現地にいた中国人農民を追い出したあとに入植しただけのこと。つまり、典型的な植民地である。
「五族協和」とは、日本を中心として、漢・満州・蒙古・朝鮮の民族が融和した理想の国家。そこに「王道落土」を築くのだと日本の少年たちは教育されていた。「昭和の防人(さきもり)「昭和の白虎隊(全員、死んでしまいましたよね、、、」と大宣伝され、大きな希望と使命感をもって満蒙青少年義勇軍に志願した。 
 しかし、中国現地の人からすれば、一般の開拓団も青少年義勇軍も、先祖代々の土地を奪って居座る侵略者でしかない。そのことを義勇軍のメンバーである少年たちは、誰ひとり知らなかった。
 中国(満州)の富山県では、80%以上の土地が開拓団に取り上げられた。中国農民は、その地に居続け、中国人の地主のもとで働いていたのが、日本人のもとで働くようになった。日本では貧しかった農民も、満州では豊かになり、中国人をいじめたり、欺いたりした。
ここには、日本人の典型的な悪いところがあらわれていますね、、、。弱いものには、あくまで強く。強いものには、どこまでもへいこら服従して逆らわないという弱点です。
 それでも、安保法制法案反対に立ち上がったFYMやシールズなどの日本人の若者たちの行動を見ていると、日本にも、まだ救いがあるような、光明を持てる思いをしたような気がします。
(2015年8月刊。1600円+税)

勁草

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  黒川博行 、 出版  徳間書店
 「オレオレ詐欺」、「振り込め詐欺」、最近は、特殊被害詐欺として一般化されています。振り込めではなく、現金を授受したり、郵パックで現金を送らせる手口が主流になっているからです。
 この本は、その欺す側の内情を暴いています。警察の捜査能力の上を行くような悪賢さです。しかし、悪は滅びるものなのです。欺しとった大金をめぐって仲間割れが起こり、犯罪の連鎖を止めることができません。
 タイトルからは本の内容を予測できません。表紙裏の解説によると、人のしぶとさ、したたかさを表したとのことです。この本を読むと、欺す側のしたたかさを描いたのかな、と思えます。
 老人を騙してお金をとる。そこに罪悪感はないのか?
 まったくない。これはゲームだ。いまの日本で何百万、何千万円とお金を貯めこんでいる老人は勝ち組であり、勝ち組からお金を掠(かす)めとるのは、ある意味で正当な権利だ。
 プロの詐欺グループがいて、そのグループを束ねる「番頭」がいる。番頭はグループが稼いだお金を金主に上納し、金主はケツ持ちのヤクザに守り料を渡す。何段階ものピラミッドになった複雑な系図は、下っ端にはまるで分らない。
 振り込ませた金融機関から現金を引き出すのか、出し子。被害者に接触してお金を受けとるのか、受け子。掛け子を管理しているのが、番頭。出し子と受け子がお金を持って逃走するのを防止するための見張り。出し子と受け子をスカウトするのが、リクルーター。
 闇の携帯電話や架空口座を売るのが、道具屋。多重債務者や株取引経験者、大手企業退職者といった名簿を売るのが、名簿屋。
 つかった携帯電は一回きりの使い捨て。5万円以上で売買される。
 特殊詐欺の検挙率は、きわめて低い。9か月の認知件数8500件、被害総額338億円というのに対して、検挙率は20%未満。それも、検挙されるのはATMやお金の受け渡し現場にあらわれる出し子と受け子が大半。騙し役の掛け子や掛け子をまとめている番頭に捜査の手が及ぶことはほとんどない。
 振り込め詐欺は激減した。それはATMの送金限度額が1回10万円になったことによる。
受け子になっているのは、多重債務者、ネットカフェ住民、ホームレス、生活保護受給者などの社会的弱者。
ある統計によると、7割の老人が非通知であっても電話をとる。老人は寂しいのだ。
 騙しのターゲットを標的(マト)と言い、金持ちの標的を金的(キンテキ)と言う。
 名簿屋は、証券会社員や介護施設の職員などに成りすまして、マト(金的)の下見をする。家族構成やら資産状況を聞き出しておくのだ。つまり、特殊詐欺は、その前に、資産調査に知らないうちに応じている人が被害にあっているのです。その根は深いわけです。
 これをひとつの名簿にまとめてグループに提供する。それは譲渡ではなく、成功報酬を10%とする歩合制だ。
 特殊詐欺は、このようにきわめて高度に分業体制が確立していますので、なかなか金主の摘発までたどり着けないようになっています。この本は、その仕組み、カラクリを実に手際よく、分りやすく目の前で展開していきます。
 現代日本社会の病癖を端的に示した本でもあると思いました。
 欺された奴が悪い、自己責任だと、もし、あなたが考えていたのなら、それが間違いだったことを思い至らせる本だと思います。ぜひ、ご一読ください。
(2015年6月刊。1800円+税)

安倍首相の「歴史観」を問う

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  保阪 正康 、 出版  講談社
 安倍首相の国会における答弁は本当に国民をバカにしています。野党の質問に対してまともに答えようとしません。聞いていて、気が滅入ってしまいます。そのくせ、汚い野次を飛ばすのです。安倍首相をはじめ、政権与党の政治家って、どうして、こんなにウソを平気でつけるのかと呆れてしまいます。
 ところが、安倍首相は学校での子どもたちへの道徳教育には異常なほど熱心です。
 自らは国会で堂々と、平気でウソをつきながら、学校では子どもたちに、大人を敬い、国を愛して行動せよという倫理を押しつけようとするのですから、この日本がおかしくなるのは必至です。
 安倍首相は、相手方の質問に真正面から答えるのではなく、相手の言葉尻をとらえて開き直り、その一方で、「問題を整理すると」とか、「一般に」と言って、論議そのものを避けているのが特徴だ。相手に丁寧に説明しようとする姿勢がまったくない。
 安倍法制法案の国会審議のとき、安倍首相は二つの論理で答弁していった。その一つは、「国民の生命と財産を守るのが首相である私の役目」、もうひとつが、「国家の安全を揺るがす事態か否かは首相の判断」。この二つは、いずれも「私が中心」という発想である。首相が中心になることにより、行政府の責任者が統帥権を自在にふるうことが出来るといった錯誤がここにある。
 安倍首相の答弁は、戦前の日本の軍事指導者たちの体質と類似している。軍服を着たと想像して安倍首相を見たとき、「わが軍は・・・」という言い方は決しておかしくないし、正直な言辞である。
安倍首相が強行した集団的自衛権とは何か。つまりは、日本人が兵隊として戦場へ行くということ。そのとき、戦って死ぬのは誰か。安倍首相とその仲間たちの息子が戦場に行くことはない。そういうシステムをつくりあげる。戦争政策を決める最上位の軍事指導者の子弟は死なない。徴兵制の例外をいくつもつくるからだ。
  戦前の日本では皇族を最前線に行かせることは許されなかった。それを認めると、自分たちの子弟まで前線に行かなければならなくなるから・・・。
  なんということでしょう。そんなシステムがあったのですね・・・。
戦前の日本には、軍事があって政治がある。つまり、政治など、まったくなかった。だから、死ぬまで戦うことになった。軍事を政治の上にのせてはいけない。軍事を先行して戦争を行ってはならない。
旧軍人は、日本人だから天皇のために生命を捨てるのは当たり前だと高言していた。ところが、表向き正論を言いながら、裏ではひどく腐敗したことを平然としていた。昔も今も、軍人とは、汚いことを平気でするものなのですね、、、。
  安倍政権の危険なウソを野放しにして垂れ流し、その危険さを見破ろうとしない大マスコミが存在するなかで、著者は大いに頑張っています。軍事に詳しいだけに、黙っていられないという心境なのでしょうね・・・。
(2015年7月刊。1600円+税)

作家という病

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  校條 剛 、 出版  講談社現代新書
 21人もの作家の業(ごう)を編集者の立場で赤裸々に暴いた本です。作家という存在のすさまじさの一端を知ることができました。モノカキを自称し、毎日毎日、こうやって書いている私ですが、とても「作家」にはなれそうもないと思ってしまいました。
 ちなみに著者の名前は「めんじょう」と読みます。同じ団塊世代ですが、私よりも少し年下になります。
作家であるということは、ある恍惚感をともなう。
 作家であり続けるために、自然と、自らに常人の感覚から外れた習慣や義務を課することになる。この作家という職業がもたらした特殊な習慣や傾向、それを「作家という病」と名づける。
 渡辺淳一は「鈍感力」と言った。それは、無神経で単なる鈍感というものではない。苦しいこと、辛いこと、失敗することにあっても、そのまま崩れず、明るく進んでいく力のこと。すごいですね。見習いたい、身につけたい力です。
 「いい人」と評価されるだけの作家だったら、恐らく読者に面白い小説を提供することは出来ない。作家には、必ず奇妙な癖と呼べるような資質を内に秘めているものだ。
作家は、他人の目をきにする必要のない普段の生活では想像の世界に常時入り浸っている。
 モノを書く、とくに小説を書くということは、とてつもなく心身の集中を要求される。
 井上ひさしは、単に謙虚で優しい人柄ではなかった。この作家の心の底には確固たる自信と完璧性への激しい要求が横たわっていた。仕事に取り組むときには、世間の常識や気兼ねを一蹴りしてしまう激しさが水面下から姿を現す。
 井上ひさしには、常識より優先すべき信条がある。完全な作品を提供しなければならないという掟である。その固い決意は誰にも動かすことができない。
 妥協というこの二文字は、井上ひさしがもっとも嫌だった言葉だ。井上ひさしは締め切りに遅れても昂然たる態度をとる。コトバは「すいません」だが・・・。
 いやはや、なんという非情かつ、非常識な世界なのでしょうか・・・。心やさしき私などは、ついつい恐れをなして尻込みするばかりです。と言ながら、私は目下、小説を書きつづっています。
 乞う、ご期待です。
(2015年7月刊。880円+税)

恐竜は滅んでいない

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  小林快次 、 出版  角川新書
 とっくに絶滅したはずの恐竜が、今も私たちの身のまわりに存在しているなんて言われたら、びっくりしますよね。アベ首相のようなウソを言う。と、叫びたいところですが、実は、こちらはウソではないのです。
 今も生き続けている恐竜とは何か・・・。それは鳥なのです。
 私の庭には、朝からいろんな小鳥がやってきます。大きいのは、カラス、カササギです。春には、うぐいすも鳴いてくれます。
恐竜の定義は・・・。
 「トリケラトプスと鳥類(イエスズメ)のもっとも近い共通祖先から生まれた子孫すべて」
 これじゃあ、まるで、何のことを言っているのか、さっぱり分りませんよね・・・。
 恐竜の化石から、恐竜の羽毛の色が知られるようになった。それは、古代イカの化石を調べるとき、イカスミの研究をしていた大学院生が技術を応用して分かったこと。
始祖鳥には、竜骨突起がない。また、肩の関節も、現在の鳥のようには動かせない構造だ。これでは飛ぶのは不可能だ。
  ティラノザウルスの化骨を調べると、痛風を患っていた形跡がある。
戦国時代に日本にいたルイス・フロイスは、日本に痛風がないことを驚いている。明治になって日本の痛風患者が増えはじめ、10年前に87万人の患者がいて、今や500万人もの予備軍がいる。
 福井県には有名な恐竜博物館がありますので、ぜひ一度いってみようと思います。
 九州には、天草にあるそうですが、まだ行けていません。
(2015年7月刊。900円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.