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民事裁判実務の留意点

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 圓道 至剛 、 出版  新日本法規
ひところ福岡地裁で裁判官だった著者(弁護士任官でした。今また弁護士に戻っています)による若手弁護士のためのハウツー本です。裁判官だった経験も生かして、とても実践的な本です。
ちなみに、著者の名前は、「まるみち むねたか」と読むそうです。なかなか読めない名前ですね。
この本には、100頁もの書式サンプルまでついていますので、その点からいっても、すぐに今日から参考にできる本です。
証人尋問心得という書面があります。この本では5頁にもわたる詳細な心得です。
「証言中はメモを見ながら答えることはできません。裁判官のほうを見て、回答して下さい。裁判官は、供述内容と同じくらい、供述態度を見ています。正面を見て、堂々と答えて下さい」
反対尋問については、「想定外の質問もあり得ます。よく考えたうえで、端的に答えて下さい。言葉尻をとらえられる恐れがありますので、できるだけコンパクトに答えて下さい。意図的に挑発してくることも考えられますが、決して熱くならないで下さい。常に冷静さを保ち、淡々と答えるようにして下さい。どうしても回答に困ったら、ちらっと私のほうに目をやって下さい。何らかの異議を出すなどの方法により、適宜、助け船を出すようにします」
うーん、どうでしょうか。私は、「そんなときには『分からない』と答えていいのです」とアドバイスしています。もちろん、異議を出すべきだと判断したら、立ち上がって異議を述べることもあります。
事前の証人との打合せは、私ももちろんしていますが、この本では証人テストを3回するとしています(事案が比較的単純な場合には1、2回ですが・・・)。
3回目の証人テストは、前日ないし当日午前中に行うといいます。しかし、私は、依頼者や証人に対して、「前日は記録など読み返すことなく、ぐっすり眠っておいてください」といつもアドバイスしています。前日読んで、「どう書いていたかな、ここは何と言うべきかな」などと考えて、一瞬の間があいてしますのが裁判官から変に勘繰られたりして良くないからです。
この本にも、尋問事項の丸暗記はまずいとしています。つまり、記憶にもとづいて自分の言葉で答えるというのが一番大切なことです。
裁判所に対して、マイナンバーの提供はすべきでないと断言しています。まったく同感です。
和解を成立させる形式として、受諾和解(法264条)、裁定和解(法265条)そして、「17条決定」(調停に代わる決定)がある。
私は裁定和解なるものがあることを知りませんでした。この本では、あまり使われていないということなので、少しだけ安心しました。
反対尋問では深追いしないことが肝要。敵に塩を送ってやるような有害無益な結果になりかねない、からです。
控訴権の濫用だと思えるようなら、控訴答弁書において制裁金の納付を命じるよう裁判に求めることが出きるそうです。私は、そんな条文があること自体を知りませんでした。これは申立権はないものの、裁判所の職権発動を促す目的です。
大変勉強になりました。著者のひき続きのご活躍を心より祈念します。
(2016年7月刊。4200円+税)

ニワトリ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 アンドリュー・ロウラー 、 出版  合同出版
ニワトリが必要とする土地、水、投入エネルギーは、豚や牛よりも少ない。900グラムの飼料で450グラムの肉をつくり出す。これより効率のいいのは養殖サケのみ。
ニワトリは万能生物だ。さまざまな品種をつくり出すことが出来、雑多な餌を食べ、各地の気候に適応し、狭い土地でも飼うことができる。ニワトリに必要なのは保護する小屋だけで、台所の残飯や庭のゴミで生きのびられる。エサにも人手にもお金がかからなかった。
鶏肉は豚肉や牛肉より風味を付けやすいので、ファーストフードにぴったり。
2012年、アメリカのタイソン社の売上高は3000億ドルをこえ、週間生産量は60の工場で4000万羽を突破した。ブロイラー・ビジネスはアメリカの内外で活況を呈している。
少なくとも4000年前にニワトリは家畜化されていた。インドとパキスタンで骨と文字情報が発見されている。はじめ、ニワトリは食料としてではなく、魔術的な力に対する信仰の対象だった。人々は肉や卵を食べていなかった。農業が出現してから、人々は次第にニワトリを食料として利用しはじめた。
アメリカ人は、世界平均の4倍の量の鶏肉を食べている。
ニワトリは、人間とニワトリの顔を思い出して、以前の経験にもとづいて、その相手に対応することができる。好きなメンドリを見かけたオンドリは、精子の生産量が急に増加する。これって、どうやって計測したんでしょうかね・・・。
ニワトリは地球上に200億羽以上、生息しているが、バチカン市国と南極大陸にはいない。南極では、ペンギンを病気から守るため、生きたニワトリも生の鶏肉も輸入を禁じられている。
ニワトリは、鳥と人間のあいだを循環し続ける病気に対するワクチンの主な供給源となっている。
ニワトリの原生種は、ミャンマーのセキショクヤケイ。ニワトリは、東南アジアに起源があり、そこからアジアの他の地域へ、さらに世界中へと広がっていった。
私が小学生のころ、わが家でも狭い庭に小屋をつくってニワトリを飼っていました。ニワトリのエサにする野草を野原に採りに行き、また、貝殻をつぶして食べさせていました。そして、父がニワトリの首をちょん切って、腹を割いているのをそばで見ていました。卵の生成過程に見とれたことを覚えています。
弁護士になってから、鶏肉生産工場で働く依頼者から、生きたニワトリを殺すことに耐えられないという話を聞いて、なるほど、生きたものを毎日、毎日、殺生するのは辛いものだろうと思いました。そうは言っても、鶏皮は昔も今も私の好きな焼鳥です。
ニワトリをいろんな角度で紹介している本です。
(2016年11月刊。2400円+税)

平安京はいらなかった

カテゴリー:日本史(平安)

(霧山昴)
著者 桃崎 有一郎 、 出版  古川弘文館
泣くよウグイス、平安京。
794年、桓武天皇がつくった平安京。それは、今の京都の前身。さぞかし当初から華やかな都だったかと思うと、実は、そうでもなかったようなのです。
平安京は、はじめから無用の長物であり、その欠点は時がたつにつれ目立つばかりだった。ええっ、ま、まさか・・・。それが、本当なんです。
官人の位階が高いほど、邸宅の面積が広く、邸宅の面する街路規模は大きく(広く)、北(大内裏)に近く、中心線(朱雀大路)に近いという傾向がある。
つまり、天皇との身分的な距離(位階)と京中における天皇との物理的な距離は比例しており、大内裏を中心とする身分的な同心円が京に描かれていた。
正式な届出手続をして許可されない限り、五位以上の人が京外に出ることは犯罪だった。つまり、京に住むのは貴族にとって義務だった。
当時の平安京の人口は、10万人から12万人ほど。
平安京にとって、美観こそ生活に優先する存在意義だった。
朱雀大路は、牧場として使えるほど、広大な空閑地だった。朱雀大路には、荒廃を取り締まる警備員がいなかった。そこには、牛馬や盗賊が自由に出入りできていた。土でつくられた垣(築地)は容易に破壊できたから。
朱雀大路の街路の幅は82メートルもあった。なぜ、そんなに広い大路だったのか・・・。
朱雀大路は、普段は人が立ち入らないし、生活道路でもない。しかし、特別なときに、特別の人が入る、生活以外の目的でつかわれる道路だった。
朱雀大路の使途は、主に外交の場だった。通常時に住居者が出入りできない朱雀大路は、そもそも「舞台」としてつくられていた。国威を背負って仰々しく仕立てられた外国使節の行列が、その何倍も立派な(と朝廷が信じる)朱雀大路を北上し、天皇に掲見する。
そんな外交の「舞台」だった。また、外国使節だけでなく、神への捧げ物が通る重要な通路としても、朱雀大路は機能した。山車は、異国風を好み、それを重視する。それが日本の伝統文化なのだ。
うへーっ、そうなんですか・・・。
古代末期以降、洛中・洛外の「洛」は京都を意味した。そして、洛中には、実は平安京の半分しか含まれていない。白河法皇は、左京と白河しか自分の治める都市とは考えておらず、右京には関心がなかった。そのため、右京は衰退し、軽視・無視された。左京とは、まったく対照的だった。
平安京と京都の由来を考え直させてくれる、鋭い問題提起がなされている本です。
(2016年12月刊。1800円+税)

幻の料亭・日本橋「百川」

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 小泉 武夫 、 出版  新潮社
江戸時代の高級料亭としては「八百善(やおぜん)」が有名ですが、日本橋にあった料亭「百川(ももかわ)」も、それに続いていました。
なにしろ、お値段が高い。最低でも1万6700円はしました。その上は2万5000円、最高は3万3400円です。「八百善」は、さらに高額です。
江戸番付三大料亭は、「八百善」のほか、深川の「平清(ひらせい)」、檜物町の「嶋村」。「百川」は、それらに次第に肩を並べるようになっていった。
江戸時代の一流の料理屋は、食事の前に、まず風呂に入っていたのだそうです。汗を流して、さっぱりした気分で美味しい料理をいただいたのですね。今でも合宿したときなどには、宴会の前に一風呂あびることがありますが、それと同じです。
「百川」には、当代きっての文人墨客が頻繁に出入りしていた。その中心的存在は大田南畝。
「百川」は真夏に「霰(あられ)酒」を供した。極上の酒に氷を砕き入れたもの。冷蔵庫のない江戸時代なのに、真夏にオンザロックで酒を飲んでいた。山に氷室を備えていた。
「百川」の厨房は、カマドの火力が強く、煙突は高くして煙は強制的に外へ吐き出すようにしていた。常に新鮮な水が井戸から汲み上げられていた。
江戸っ子は、魚は白身を食べていた。マグロは下魚として敬遠された。
日本橋の魚河岸に隣接して、幕府のつかう魚を確保するための「活鯛(いけだい)屋敷」が設けられていた。「肴役所」(さかなやくしょ)とも呼ばれた。
幕末のペリー来航のとき、「百川」が活躍したのだそうです。初めて知りました。1853年7月のことです。ペリー58歳。「百川」の主人・茂左衛門は72歳。このとき、幕府はペリー一行をもてなすため、アメリカ側300人、接待する日本側200人の合計500人分の料理を「百川」に請け負わせた。
これはすごいですね。冷蔵庫のない時代の500人の宴会料理って、いったい、どうやってつくって、また運んだのでしょうか。
一人前3両、つまり30万円、500人分だと1億5000万円の大饗宴です。
ところが、魚主体で、微妙な味わいを誇る日本料理は、ペリー側を満足させるものではなかったようです。肉や乳製品に食べ慣れている口には、きっと物足りなかったのでしょう。
ただ、デザートのカステラは好評だったとのこと。
ところが、この「百川」は明治になったとたんに姿を消してしまうのです。不思議です。
そんな「百川」の粋を尽くした料理を味わった江戸の人々は幸せでした。さすがに料理の大家が発掘した話ですから、味わい深い内容の本になっています。
(2016年10月刊。1300円+税)

ようこそアラブへ

カテゴリー:アラブ

(霧山昴)
著者 ハムダ なおこ 、 出版  国書刊行会
アラブ首長国連邦(UAE)にすむ日本人女性によるレポートです。大変面白く、一気に読みあげました。なるほど、国が違うと、こんなにも考え方や、習慣が異なるのですね。改めて、よくよく考えさせられました。
もちろん、みんな違って、みんないい、という金子みすずの言葉のとおりなのですが、それを実感し行動するには、自覚的な努力が必要なのだと思います。
著者はUAEの男性と結婚し、UAEで5人の子どもの子育てをしました。ですから、UAEの学校生活の様子も語られるのですが、その試験の厳重さは、日本をはるかに上回っています。
UAEの人口は900万人。ところが、UAEの国民はその1割強の96万人。外国人が圧倒的多数を占めている。
UAEの国と国民に見習いたいことは、人を見る眼と寛容さ。
旅人は3日間は無条件に親切にされる。そして、そのあいだに人間を見抜かれる。
UAEの人が、人間を見る眼は非常に怜悧(れいり)。外部の人間を簡単に信用するようでは、一族を破滅に導いてしまうという厳しい自然・社会環境を生き抜いてきた人々である。
イスラムの国では、コーラン(クルアーン)朗誦を省略する儀式(儀典)はありえない。
そして、朗誦のあと、それにあわせた詩が詠まれる。
商店で買い物するとき、女性は決して店内に入らない。
アラブの人々には素晴らしい能力がある。即応能力であり、即戦力である。どんな状況になっても慌てないし騒がない。流動的な状況を見きわめて、すばやく適切な行動をとる。
アラブでは、出来る人間がやる。神様は担げる人間にしか荷を背負わせない。荷を担げる人間は、担げない人間よりよほど幸福だ。
アラブでは、貸しや借りをその場で清算しようとする人はいない。自分の貸しが、将来、自分に、家族に、部族に、いつかどこかで違った形でも戻ってくると考える。
預言者マホメット(ムハンマド)は、世界でもっとも大切にしなければならないのは母親だと説いた。二番目も、三番目も母親で、四番目にやっと父親が出てくる。アラブ・イスラーム世界で母親をないがしろにする人間は、世間からも社会からも、まったく尊敬されない。
イスラームでもっとも立派な人間とされているのは、自分の家族に優しい人。
イスラームでは出家を禁止している。家族とともに生きて、宗教上の義務をつとめることとされている。
UAEでは、自国民については、幼稚園から大学まで、教育は無償。
アラブ世界では、高校の卒業成績はとても重要で、一生涯、履歴書にのせるほど重視される。公立高校の期末試験は国が問題をつくって厳重な管理・監督の下で試験が実施される。採点も三人が担当し、インチキが出来ないシステムである。
アラブ世界では、高校を卒業したり、病気が治ったり、子どもが生まれたとき、資格をとったときには、周囲の人々へ当人がお祝いを出す。もらうのではない。自分の幸運に感謝して、周りの人々も幸福のおすそ分けをする。
アラブ世界に生きる誇り高き人々の生きざまの一端を知ることのできる、興味深い本でした。ぜひ、あなたもご一読ください。
(2016年12月刊。1800円+税)

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