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沖ノ島

カテゴリー:日本史(古代史)

(霧山昴)
著者 藤原 新也 、 出版  小学館
海の正倉院とも呼ばれる沖ノ島の写真集です。
8万点に及ぶ宝物があるそうですから、宝島とも呼ばれるというのは当然です。
女人禁制なのですが、この島自体は、田心姫(たごりひめ)という女神そのもの。むしろ女性上位だといいます。
男は、島に上陸する前に素裸になって海中に入って、身を清めなければいけません。歴史作家の安部龍太郎が海中で禊(みそぎ)をしている情景も紹介されています。
沖ノ島での祭祀を司(つかさ)どっていたのは宗像(むなかた)一族。古事記にも登場する豪族でしたが、秀吉の九州征伐の直前に宗像氏貞が病没し、後継ぎがいなかったので、宗像家は断絶した。
昭和29年から同41年までの学術調査によって、島内から10万点もの宝物が採集され、8万点が国宝に指定された。
写真で紹介されていますが、純金製の指輪や金銅製龍頭など、最高級工芸品と呼べるものが本当にたくさんあります。見事なものです。
ササン朝ペルシア製のカットガラス椀片は、明らかにシルクロードの交易品です。
島内には、たくさんの巨岩があちこちにありますが、ともかく人間は神職以外にはいないわけですので、まったく荒らされずに今日に至っています。
ところが、自然天然のまま林に埋もれてしまっているわけではありません。道があり、人の踏み歩く渡り石があるのです。そして、この渡り石は、大勢の人の足によって踏み荒らされていないので、青々と苔むしているのです。私も、これには驚きました。人の手が入っていながら、人が踏み荒らしてはいない自然状態があるのです。
いかにも神様がそこに存在し、生活しているのかのような沖ノ島を活写した価値ある写真集です。
(2017年4月刊。1200円+税)

殿様の通信簿

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 磯田 道史 、 出版  新潮文庫
「土芥(どかい)冠讎(こうしゅう)記」という元禄期の本があるそうです。
著者は、この本のなかから、現代に生きる私たちに、江戸時代の殿様の生々(なまなま)しい生活の実情を教えてくれます。この本は、隠密(おんみつ)の探索の結果にもつづいて、幕府高官が書いたもののようです。殿様が家来をゴミのように扱えば、家来は殿様を仇(かたき)のようにみる、という意味の言葉です。
水戸黄門とも呼ばれた徳川光圀の素行調査もされている。
それによると、とても品行(ひんこう)方正(ほうせい)とは言えない。江戸時代の大名のなかでも、光圀はズバ抜けて好奇心の強い人物だった。現実の光圀は、諸国漫遊こそしなかったが、その存在は、当時の人々にとって、衝撃的だった。家康の孫という高貴な人物が、好奇心にかられて、色街に出没する。その噂だけでも、当時の人々の心は十分に浮き立った。浅野内匠頭(たくみのかみ)は、無類の「女好き」であり、さらには、「ひき込もり」行動がみられた。そして、地元の家老の仕置も、心もとない。若年の主君が色にふけるのをいさめないほどの「不忠の臣」だから、おぼつかない。
前田利家は、体が大きく、身長も高く、180センチもあった。
江戸時代は270年も続いた。人間の一世代を30年前後とすると、約10世代になる。
江戸時代は250の藩があり、それぞれ一つの大名がいた。だから、少くなくとも250人の大名がいた。
江戸城では、大名の席順は、石高ではなく、官位で決まる。そのため、「官位」は、大名の最大の関心事になっている。
この本を読むと、殿様は決して気楽な稼業とは言えなかったようです。
(2017年6月刊。520円+税)

ウニがすごい、バッタもすごい

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 本川 達雄 、 出版  中公新書
生物の生きていく仕組みを解明すると、大自然の奥深さをまざまざと実感させられます。
サンゴは動物。ただし、体内に大量の植物を共生させていて、藻類との共生が、サンゴ礁をつくり出している。
サンゴは、食べて出てくる排泄物も、呼吸で出てくる二酸化炭素も褐虫藻がもらってくれるため、排出物の処理は気にしなくていい。褐虫藻が光合成する際に排出した酸素を、サンゴは細胞内で直接もらい受けることができている。
結局、サンゴは、褐虫藻と共生しているおかげで、食う心配がほぼなくなり、トイレの心配もなく、人口呼吸器を体内に備えたようなものだから、無理に息をする必要もない。
昆虫は、体の部分ごとに、必要に応じてクチクラの硬さを調節している。
昆虫の大きな特徴は飛べること。昆虫の羽は厚さ0.1ミリほど。羽を生やして飛べるおかげで、昆虫は餌を探すにも敵から逃れるにも、また、子孫を広くばらまくうえでも、きわめて有利になった。
同じ距離を行くのに必要なエネルギーは、飛行のほうが歩行より少なくてすむ。飛ぶことはエネルギーの節約になる。昆虫は、飛べたことから、被子植物との共進化可能にし、食物供給源を確保でき、かつ種類の増大につながった。
多くの飛ぶ昆虫は、幼虫時代は植物の葉を食べ、成虫は蜜や樹液を吸う。
ナメクジは、カタツムリが殻を失ったもの。ナメクジは、昼は地中という土で守られ、かつ湿り気のある環境に身をひそめ、夜になって湿り気の多い地表近くで活動するため、殻がなくても問題がないのだろう。
ナマコは、自分のまわりの砂を触手でごそっとつかんでは口に押し込む。つまり、砂を食べている。しかし、砂は鉱物なので、栄養にはならない。ナマコが食べて栄養にしているのは、砂粒の間に入っている有機物や砂粒の表面に生えているバイオフィルム。
ナマコは、じっと動かないため、摂取エネルギーの量が極端に少なくてもすむので、砂でも生活できる。ということは、ナマコは砂の上に住んでいるから、食べものの上にいることになる。砂はほかの動物たちは見向きもしないので、競争相手はおらず食べ放題。広大なお菓子の家をナマコが独占しているようなものだと言える。
ナマコは動くといっても砂を食べる場所を少し動くくらいなので筋肉は少なくてすむ。身体の大部分は身を守る皮ばかり。皮を食べても栄養にはならないので、ナマコを狙う捕食者は減っていき、ますますナマコは安全になる。食う心配がなく、食われる心配ない。これは天国のような生活だ・・・。
ナマコは、半分にすれば、二匹になる。
ヒトデは、自腕一本から残りの腕すべてを再生するのがいる。
ウニは、殻を割って内臓を取り除いても、殻の破片が数日間は、もそもそとはいまわっている。これって、不思議ですよね・・・。
さまざまな生物の生きる実態と仕組みを平易に解き明かす貴重な新書です。
(2017年4月刊。840円+税)

超一極集中社会・アメリカの暴走

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 小林 由美 、 出版  新潮社
今の社会は、人々の格差が大きくなる一方です。これが絶望と社会不信を生み出しています。ある高校で、国政選挙で投票に行くかどうかを生徒にたずねたところ、忙しい、分からない、興味がないということで、誰も積極的に投票所に行くとは答えなかったそうです。ええっ、ウソでしょう、と思わず叫びたくなりました。
私はすべての選挙で棄権したことは一度もないことが自慢の一つです。選びたい人がいないときには、×印を書いて無効票を投じることにしています。
世界のビリオネア(1000億円以上の純資産をもつ人)が世界中に1810人いて、その人たちの有する純資産は、合計650兆円にもなる。日本のGDPは500兆円なので、日本の全国民が1年間働いて生み出した総所得を上回る額の純資産を2000人ほどの人々がもっていることになる。日本のビリオネアは27人。これは、世界で17位。
日本はGDPではアメリカ、中国に次いで、世界第3位だ。
アメリカでは、1980年代以降、上位0.1%の所得は増え続け、それ以下の世帯では、所得がほとんど増えていない。
アメリカのエリート大学に入る門は、ますます狭くなっている。エリート大学に入るためには、家族ぐるみの長年の努力が求められる。これは、ユダヤ系と中国系の家庭で顕著だ。
エリート大学に入るには、成績がトップクラスだというだけではなく、スポーツが得意なうえ、課外活動で得意なものがあったり、積極的なリーダーシップを発揮したという実績が求められる。だから、親は子どもが3歳か4歳のときから家庭教師をつけたり、クラブに参加させたりしている。年間300万円以上の授業料を支払って幼稚園から私立学校に通わせるのは、教師や教育内容・同級生そして家族の質に加えて、同窓会活動が活発なため、生徒の進学にも大いに役立つから。
大学4年間の教育費が30万ドル(3000万円)かかる。労働していたら得べかりし給料による所得をあわせると、大学4年間のコストを取り戻すためには10年以上かかる計算だ。アメリカでは、大学に進学する人の60%以上が学生ローンを借りていて、4300万人をこす。
アメリカの経常収支が改善したのは、石油の輸入が量・金額ともに大きく減ったことが最大の理由。
アメリカの上場企業の総数は1996年のピークに8090社だったのが、2015年に4381社と、ほぼ半減した。アメリカでの企業集中は異常に進んでいる。そして、巨大企業が、さらに巨大化している。
アメリカの医療システムは全体として救いがたい泥沼。請求書を受けとるまで、いくらの費用がかかるのか見当がつかない。とんでもない請求書が来ても払う以外に選択肢はない。病院は医療産業のなかで、もっとも立場が強いので、その価格付けは一方的。泥沼に陥らないためには、とにかく健康を維持して近寄らないようにするのが一番。あとは、たたかい、交渉する覚悟でのぞむしかない。
アメリカ国民は、富の集中や金権政治にうんざりしている。
アメリカの権力者もお金も、東海岸と西海岸を飛行機で往復するだけで、その空路の下にある大陸中央部は完全に無視され、馬鹿にされている。
絶望の先に行きのびるために・・・、とありますが、明るい未来はあまり見えてきません。ビッグデータを活用したらいいともありますが、私には無縁な話でしかありません。
アメリカの現状分析の一つとして読んでみました。
(2017年3月刊。1500円+税)

女性と労働

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 日本弁護士連合会 、 出版  旬報社
2015年10月に千葉の幕張で開かれた日弁連人権擁護大会のシンポジウムの報告書を要約・加筆して出来あがった本です。
シンポジウム実行委員会はオランダへ現地調査をしたようで、巻末資料として、その報告書がのっています。アムステルダム市はセックスワーカーの権利保護に乗り出しているというのが、私には目新しい話でした。写真で見たことしかなく、現地に行ったこともありませんが、アムステルダムには「飾り窓」で有名な地域があります。そこで働くセックスワーカーは全市5000人から8000人のうち、2000人。今は東欧出身の女性が多い。顧客は年間20万人に近く、アムステルダム在住者は3分の1以下で、半分以上が独身、5人のうち2人はパートナーがいると推測されている。
アムステルダム市の売春政策は①合法的な売春をノーマル化する、②非合法の売春を察知する、③ワーカーのエンパワーメントとケア、④予防という4つの目的がある。ライセンスがなくても、自宅で週に何回か売春することは合法扱いされている。そして、18歳以下の子どもがセックスワーカーになるのは禁止されている。
では、日本はどうなっているか。売買春はもちろん法で禁止されているが、現実には、女性が性的サービスをしている性産業の営業所数は2万2千ケ所ほどあり、1ケ所平均20人として、40万人以上の女性が働いている。ここは、他の職業とは比較にならないほど生命・身体に危害を及ぼすリスクの高い特殊な労働である。
学費が高く、奨学金が貸与制のために、大学生(女性)が性産業で働くケースが多いことは前から指摘されている。
それにしても日本の「人づくり」政策は根本的に間違っていますよね。大学の入学金が国立大学で82万円、私立大学で132万円するなんて、信じられません。
私のときは月1000円でした。ヨーロッパでは学資はタダどころか、学生に生活補助しています。これこそまさしく「人づくり」ですし、「国づくり」です。大型ハコモノづくりとかムダな軍事予算を削って、人材養成にこそ国はお金をつかうべきです。
女性が働きながら子育てしようとするときに直面するのが保育園の確保です。この本によると、保育士の資格をもちながら働いていない潜在保育士が60万人もいるとのこと。もったいない話です。それほど、保育現場の労働環境は劣悪なのです。
そして、教員にも非正規が年々増えている。2005年にして、3%だったのが、2011年には16%になった。
看護師は9割以上が女性で、深刻な過重労働が横行している。
では、日弁連はどうしたらよいと考えているのか・・・。この本では、いろいろ、たくさん問題提起されていますので、かえって要点、ポイントが分かりにくくなっている気がしました。
もっと、男も女も、個性ある人間として社会が大切にしていることを実感させてくれる世の中にしたいものです。そのための貴重な現状告発と問題提起の本です。
委員長の中村和雄先生、よくぞ本にまとめられました。お疲れさまです。
(2017年4月刊。2000円+税)

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