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他人をバカにしたがる男たち

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 河合 薫 、 出版  日経プレミア新書
自戒をこめて謹んで読んだ新書です。
日本企業に「ジジイの壁」は不滅だ。ジジイは肩書きや属性で人を見る。自分より上なのか、下なのか、で判断する。
自分の知っていることがすべてと信じ込んでいるので、どこの馬の骨か分からない人をバカにする。相手への敬意もへったくれもない。
ジジイとは、自分の保身のためだけを考えている人のこと。組織内で権力をもち、その権力を組織のためではなく、自分のために使う。会社のため、キミのためというウソを自分のためにつき、自己の正当化に長けている。
だから、50代でもジジイではない男性はいるし、女性や若い人の中にもジジイはいる。
社内的に残念な人ほど、社外では偉そうにふるまう。それは自尊心を守るため。
日本のサラリーマン社会は、見て見ないふり症候群の輩(やから)であふれている。人を見下したり、バカにしたり、攻撃する行為の裏側には、他者から評価されたい、認められたいという自己愛が存在している。
次の3つの条件を満たす人が会社では出世する。一に、失敗もしないけれど、成功もしない。二に、よく動くけど、勝手には動かない。三は、下には意見するけど、上には意見しない。
イギリスでの調査によると、階層の最下段にいる公務員は、トップにいる人々と比べて死亡率が4倍も高い。トップが長生きするのは、彼らは裁量権をもっているから。責任感や几帳面さはマイナスに作用する。
日本では管理職の自殺率が5年で7割も増加した。管理職の自殺率は1980年から2005年の25年内で271%も増えた。
かつての日本企業の強みは、従業員が私は会社から大切にされていると思える関係性があったことによる。ところが、それが薄れている。多くの企業が危機に直面しているのは、成果主義とか人件費切り捨て策で非正規ばかりに頼ってしまう企業体質からなのだと思います。
それにしても、つい昔の自慢話をしてしまうというのは要注意なんですよね。本人としては自分の経験を教訓として伝えたいという気持ちがあるのですが・・・。難しいところです。
(2017年8月刊。850円+税)

武士道の精神史

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 笠谷 和比古 、 出版  ちくま新書
頭がクラクラッとするほど面白い本です。ええっ、そうだったの・・・、と何回も心の中で叫んでしまいました。
武士道って、簡単に死ねばいいっていうものじゃないんです。必要なら主君にタテつかなければいけないし、みんなで主君を座敷牢に閉じ込めないといけないのです。その仕返しを恐れて何もしないというのは許されないのが武士道。
庶民にまで武士道は広まり、仇討ちが広まったのは江戸中期以降で、庶民までも実践していたというのです。
さらに、鹿児島での幕末の薩英戦争はイギリス艦隊の大勝利とばかり思っていましたが、違うというのです。鹿児島市街はなるほど焼け野原になったけれど、その前にイギリス艦隊は旗艦の艦長が薩軍の新式大砲の砲撃で戦死させられ、慌てて鹿児島湾から逃げ出したというのです。それは、フランス製のペキサンス砲のこと。着弾したら炸裂する強力な大砲を薩摩藩は備えていました。
230頁あまりの新書ですが、私にとっては驚きの連続というほかない内容でした。
一生懸命は、本当は一所懸命。一つの所のために命を懸けてがんばるという意味。一つの所とは「所領」のこと。父祖が命を懸けて獲得してきた所領は、命を懸けても守り抜くという意味。
『甲陽軍艦』の武士道は、戦場における勇猛果敢な振る舞い、槍働きの巧妙、卑怯未練なことなく出処進退を見事に貫くこと。そして、君主に対する忠誠。
『可笑記』では、命を惜しまないことばかりが有能な侍ではないと明言している。むしろ、人間としての「徳義」こそが重要であり、それを磨き、極着することが武士の心得だ。
『葉隠』には、ただ黙って主君に従うことが忠義ではないとしている。むしろ、即座に諫言を呈する気概と能力のある者こそが真の侍なのだ。つまり、主君に対する忠義にもグレードがある。初級とは別に高いレベルでの忠義というものがある。
『葉隠』の武士道は死ぬことが目的でもないし、死が武士の究極のありようでもない。いかにすれば、武士として理想的な「生」が得られるかが追究されている。
『葉隠』のもう一つ重要なテーマが「自由」ということ。「死の武士道」どころか、「自由の武士道」なのである。
次は米沢藩の藩主だった上杉鷹山の言葉です。
「国家人民の為に立たる君にして、君のために立たる人民には無之(これなく)候(そうろう)」
これって、まるでアメリカの人権宣言みたいですよね、たしかに・・・。
最後に、徳川時代の日本人の体格が紹介されています。徳川時代の成人男性の平均身長は150センチほど。いまの小学5年生の平均身長と同じくらい。武士はやせて貧相な人ばかりで、栄養のいい商人のほうは顔も体もふっくらしていた。
徳川綱吉は身長120センチほどで、強い劣等感が専制政治に走ったとみられている。
八代将軍の吉宗は身長180センチ。母が百姓の娘だったからではないか、というのです。いやはや、本当に世の中は知らないことだらけですね・・・。
この本を読むと、それを実感して、胸がワクワクしてきます。あなたも、どうぞご一読ください。
(2017年5月刊。800円+税)

にっぽんスズメしぐさ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 中野 さとる 、 出版  カンゼン
夕方になると、駅前の街路樹でスズメの集団がかまびすしいですよね。大勢のスズメたちが、あっちうろうろ、こっちうろうろして、鳴きかわしています。いったいぜんたい、何を話しているのでしょうか・・・。私は、ぜひぜひ、その会話の中味を知りたいです。
この本は、日本のスズメの生態を写真で紹介するシリーズ第二作。
スズメは、3月、桜の花が咲くころ、メスは卵を産みはじめる。産んだ卵をすぐに温めるのではなく、すべての卵を産み終えてから抱卵をはじめる。これは産卵順で成長に差が出ないように、卵のかえるタイミングをそろえるため。卵のほうも、温められてから成長スイッチが入るようになっている。
抱卵して2週間ほどでヒナが誕生する。そして、親は毎日せっせとエサを運ぶ。1日300回、2週間で4200回、親はエサをヒナに運ぶ。そして、ヒナのフンを外へ放り出して、巣の中を清潔にたもつ。
巣だってしばらくの間も、エサをとるのが苦手な幼鳥は親鳥がエサを与えて、ケアする。
その後、親は次の子育てに入り、8月から9月にかけて2回、多いときには3回も子育てする。そんなにヒナの子育てしたら、スズメが爆発的に増えるはず。ところが、現実には、そんなにスズメは増えていない。なぜか・・・。
野生のスズメの平均寿命は1年3ヶ月。自然のなかでは仔スズメは、ほとんどが生きのびれない。生き残った、ほんの一部が子孫を担うことで命がつながっている。
カラスやツミがスズメのヒナを襲う。
亡くなった作家の半村良は、スズメが大好きで、庭に来る100羽のスズメの全部に名前をつけて個体識別していた。
山の中で道に迷ったらスズメを探したらよい。なぜか・・・。日本のスズメは、人の暮らしの周囲にしかいないので、山の中でスズメに会ったら、人家が近くにあることを意味しているからだ・・・。
スズメは、水浴びと砂浴びの両方をやる。そして、不思議なことに水浴びのほうが先。そのあと砂浴びをする。
スズメの生態をよくとらえた写真集です。
(2017年5月刊。1400円+税)

日本再生は生産性向上しかない

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 デービッド・アトキンソン 、 出版  飛鳥新社
著者の提言には思わず首を傾けてしまうものが多々あります。たとえば、日本にはヨーロッパの大富豪が泊まるような超高級ホテルがない。1泊なんと500万円とか600万円という部屋をもつホテルがないのを著者は問題にしているのです。ええっ、これ以上、日本を超格差社会にしようというのかいな・・・、そう思ってしまいました。
またカジノ主体のIRについても、著者は積極的に導入せよと断言しています。カジノとパチンコを比べるのは、懐石料理の店と牛丼の立喰い店を比較するようなもので、サービスも客層も全然ちがうのだから、比較すること自体が間違いだとします。
著者は、海外のチョー大金持ちをもっと日本に来させるようにすべきだ、それが日本の観光立国につながるというのです。本当でしょうか・・・。日本国内に沖縄の米軍基地のような治外法権の地域をつくるだけのような気がしてなりません。
著者の指摘に納得できない内容ばかりなら、このコーナーで私は紹介しません。実は、なるほど、そうだよね、という点がいくつもあるので、こうやって紹介したいのです。
著者の会社は、文化財保護に関わっていますが、そこで大切なことは、安定的な技術の伝承だというのです。そのときの修理も大事だけど、30年後、50年後の修理も大事なので、ベテラン職員は頼もしいけれど、長く見てくれる若い職人が来てくれると、それもうれしいと言います。なるほど、そういうことなんですね・・・。
日本に来た外国人が日本食をみな好むとは限らないという指摘も、なるほどと思いました。日本人だって、いつも和食を食べているわけではありません。
和食は、みな同じような味だし、満腹できないというのです。
高級な寿司店で、マグロとサーモンだけをひたすら食べている外国人の例も紹介されています。日本人の私からすると信じられない話ですが、そこはやはり食習慣の違いなのでしょうね。
著者は、日本人の心の狭さが目立っているとも指摘しています。これって、ヘイトスピーチの横行に端的にあらわれていますよね。経済状況が悪くなると、心が貧しく、狭くなるのでしょう。これも、例の「アベノミクス」なるものの「成果」(結果)です。貧すれば、鈍す、なのです。
日本は、かつては笑顔の国だったのに、今では、すっかり「暗い印象の国」になってしまったという指摘には、私も正直いって、ドキリとしてしまいました。
日本人は、「日本はすべてにおいて世界のトップ」という思い込みがあるため、日本に欠けているところがあることを認めようとしない。実績を伴っていない、現実認識が欠けている。
これは本当に耳の痛い指摘です。日本が世界で一番だなんて、ネトウヨの世界でしょうね。やはり、謙虚に反省すべきです。どこかの国の首相のようね、うわべだけのポーズではなくて・・・。
(2017年6月刊。1296円+税)

商売は地域とともに

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 NPO法人神田学会 、 出版  東京堂出版
神田百年企業の足跡、というサブタイトルのついた本です。
私は神田の古本屋街を年に何回かは歩いています。送られてくる古書のカタログも楽しみの一つです。
そんな神田には創業100年をこす社会や商店がいくつもあるというのです。どんな会社なのか、100年も生き残れる秘訣は何なのか、それを知りたくて読んでみました。
冒頭に、世界最古企業ベスト10が紹介されていて、あっと驚きます。なんとなんと、ベスト10のうち7社までが日本の起業であり、トップからベスト6位まで全部が日本の企業なのです。これって、信じられますか・・・。トップ(1位)は、あの社寺建築の奈良の金鋼組です。2、3、4位は、旅館なのです。2位は山梨の西山温泉慶雲館。ギネスが認定する世界最古の旅館だそうです。3位は兵庫県城崎温泉の「古まん」という旅館、4位は、石川県粟津温泉の法師旅館です。す、すごいですね。そんな古い、古い、伝統ある旅館が連綿と生き続けているとは・・・。
ものづくりの企業が日本には多いから老舗企業が多いとのこと。サービスを売る商業組織では、中世にまでさかのぼるのはまず存在しない。
神田は、日本橋に次いで老舗が多い。創業100年をこえる老舗が神田には170軒もある。もっとも古いのは慶長元年(1596年)創業の酒店、豊島屋本店。白酒の製造販売で有名なこの店は関ヶ原の戦い(1600年)より前の創業なのです。つまりは、江戸時代より前からということになります。そして、宇津救命丸も慶長2年(1597年)です。はじめは、下野(しもつけ)の国でしたが、江戸に出てきて、神田の地に根をおろしました。
現在の神田は「住むまち」ではなくなりつつある。その象徴が浴場の減少。今は3店のみ。理容室、美容室、クリーニング店も神田から少なくなりつつある。
神田っ子の特徴は、見栄とやせ我慢。なるほど、江戸っ子ですね・・・。
神田に中華料理店が多いのは、中国から日本へやって来た留学生が多かったことによる。明治37年には日本への留学生は1000人をこえ、明治後期には5万人もの留学生が日本にいた。
揚子江菜館の五目涼拌麺(ごもくひやしそば)が写真つきで紹介されています。ぜひ食べてみたいです。ぬきすし総本店の笹巻鮨は美味しそうですね。いちど食べてみましょう。
神田の古書街には160軒以上の古書店があり、世界最大。そこで売られている本は1千万冊だといいます。
ちなみに、私の東京の定宿の一つは山の上ホテルです。すぐ近くのイタリアン・レストランが美味しくて、最近の行きつけの店です。
神田の歴史の一端を知ることが出来ました。
(2017年5月刊。2800円+税)

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