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脳の本質

カテゴリー:人間・脳

(霧山昴)
著者 乾 敏郎・門脇 加江子 、 出版 中公新書
 いつ、どこで、何をという情報は、頭頂葉や側頭葉に記憶されていて、海馬にはない。海馬が担うのは、各エピソードを構成している情報をまとめ、出来事の順序を記憶しておき、それらを再生する働き。
 海馬は、ある時間や空間に自己投影する機能を司る。未来の自分を想像し、未来の出来事を予測するという機能も海馬にはある。海馬が損傷すると、新たに体験したことを長期記憶に保持することは出来ない。
 昔の記憶は海馬に存在するのではない。記憶は海馬が単独で担うのではなく、海馬と大脳新皮質の相互作用による。
 海馬には時系列を処理する機能も備わっている。海馬は、昔の体験の回想や、新しいイメージの創造に貢献している。
ヒトは、1秒間に3~4回、眼を動かして異なる対象や異なる場所を見ている。このとき、わずか数十ミリ秒(0.01秒単位)の速さで、その視点間を移動する(視線を稼動させる)。決して見たい場所を通り過ぎることはない。とてつもなく高速で、かつ精度の高い運動なのだ。
 他者の行為を自己の運動に照らしあわせて理解している。
 学習とは、視覚と聴覚、運動と感覚といったような、別々であった二者の事象がシナプス結合でつながること。
 好奇心は、報酬とは異なり、目新しく、不確実で、複雑で、曖昧(あいまい)なものを探求しようとする欲求だ。それなら、私も大いにあります。好奇心とは、随伴性の知識をもたない新規な対象に対して働く。
 自己意識は、自己主体感、自己所有感、自己存在感という三つの感覚から構成される。
 脳の最重要課題は、生命の維持。ヒトは感覚を通じて世界を推論しているのであり、それを直接知ることは出来ない。
 ヒトが知覚している世界は、現実の世界ではなく、予測された世界である。ヒトは、自分がつくり上げた「世界に対するモデル」にもとづいて予測する。脳は予測するための推論エンジンである。
 脳の話は何回読んでも面白く、まさしく好奇心がかきたてられます。
(2024年11月刊。1100円)

雪夢往来

カテゴリー:日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 木内 昇 、 出版 新潮社
 江戸時代、雪深い越後の国に住む鈴木牧之(ぼくし)は郷土のことを江戸の人々に知ってもらおうと、郷土の風景、民話そして雪深い冬の景色を書きつづった。書き上げたからには書物として売り出さなくてはいけない。そこで、江戸の書き物問屋にあたり、作家に頼った。
 本書で出てくるのは、山東京伝、十返舎一九そして滝沢馬琴と、今も高名な作家たち。そんな作家たちは、果たして越後の無名の民(たみ)が書いたものに注目し、それを書物として世に出してくれるだろうか…。
 鈴木牧之の書いた『北越雪譜』は今なお語り継がれる高名な書物です。ところが、刊行されるまで、なんとなんと40年もかかってしまったのでした。これでは刊行するまで著者が生きていたというのが不思議なほどです。私も先日、30年ぶりに亡父の歩みを本にまとめ直しました。30年前は自費出版でしたが、今回は出版社から刊行することが出来ました。やはり、うれしいものです。
 書本(かきほん)にして江戸で配ればそれで十分だったのに、山東京伝に送ったことから、話が大きくなり、板本(はんぽん)という、思ってもみなかった夢が手の届くところに立ち現れた。迷走は、おそらくそこから始まった。
夢というのは、一度見てしまうと、そこから逃れられぬものかもしれぬ。必ず板本にしなければならない。妄念に取りつかれて、ここまで来てしまった。いつしか、書く楽しさや良いものを書きたいという純粋な衝動から大きく逸(そ)れて、ただただ己(おのれ)の筆力を証したい。みなに認めさせたい、名を上げたい、という欲心で、ここまで走ってきた。いやあ、よく分かりますね、この気落ち。田舎(地方都市)に住んでいながらモノカキと称して東京の出版社から本として刊行するというのは、みなに認めてもらいたい、あわよくばモノカキとして名声を得たいという欲心からのことです。間違いありません。
 「雪中の洪水の話、熊捕(くまとり)の話、雪の中で、飛ぶ虫の話、雪崩(なだれ)に巻き込まれた人の話…。気がつけば、ずい分と多くの綺談(きだん)を書いたものにございます。この地のことを書いておるとき、私は心くつろいでおりました」
 天保8年の秋、『北越雪譜』初編3巻が板行された。初めこそ、さして話題にもならなかったが、雪深い国の慣習や綺談は江戸の者に驚きをもって迎え入れられ、ふた月も経(た)つと、摺(す)るのが間に合わぬほどの評判となった。『北越雪譜』二編は初編同様、大きな評判をとり、鈴木牧之の名は江戸のみならず、広く知れ渡ることになった。越後塩沢の名士として村の者にも崇(あが)められ、わざわざ遠方から彼を訪ねてくる者まであった。
皐月(さつき)の、心地よい風が抜ける日の暮れ時に、鈴木牧之は静かに人生を終(しま)った。
一番最初に山東京伝の伝手(つて)で、二代目の蔦重(つたじゅう)のところで刊行しようとすると、50両がかかると言われたので、さすがの鈴木牧之も二の足を踏んだのでした。
 そうなんです。モノカキを自称するくらいで無名そのものが出版社から本を刊行しようとすると、現実には頭金を求められるのです。私も当然、毎回、負担しています。印税収入なんて、残念ながら夢のまた夢なのです。それでも、1回だけ福岡の本屋の店頭で私の本(「税務署なんか怖くない」)が並べられているのを見たときは小さな胸が震えるほど感激しました。
(2024年12月刊。2200円)

ユマニチュード入門

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ、本田美和子 、 出版 医学書院
 認知症ケアの新しい技法として注目を集めているものを紹介した本です。
 イラストがついていますので、とても分かりやすく、スラスラと読めました。10年前に発刊された本ですが、決して古くはなっていないと思います。
 人間は物事に関する概念を有し、ユーモアをもち、笑い、服を着ている。また化粧をして、家族や社会と交流するなどの社会性と理性をもっている。これが人間であることの特性、つまり人間らしさ。これらの特性を欠いてしまえば、私たちは他の動物との差がなくなってしまう。
 人間の、動物の部分である基本的欲求に関してのみケアを行う人は「人間を専門とする獣医」でしかない。
ユマニチュードは、強制ケアをゼロにすることを目指す。
 ユマニチュードは精神論ではない。ユマニチュードは、自分も他者も「人間という種に属する存在である」という特性を互いに認識しあうための、一連のケアの哲学と技法。
 人間は、他者によって認められることが、人間の尊厳の源である。人間の尊厳を取り戻すためには、見る、話す、触れる、立つことへの援助が必要。
 見る。…水平に目を合わせることで「平等」を、正面から見ることで「正直・信頼」を、顔を近づけることで「優しさ・親密さ」を、見つめる時間を長くとることで「友情・愛情」を示すメッセージとなる。
 「見る」には、0.5秒以上のアイコンタクトが必要。目が合ったら2秒以内に話しかける。
 話す。…声のトーンは、あくまで優しく、歌うように、穏やかに…。常に話しかける。前向きな言葉で話しかける。
 触れる。…広い面積で、ゆっくりと、優しく。
 立つ。…骨に荷重をかけることで、骨粗しょう症を防ぐ。立位のための筋肉を使うことで筋力の低下を防ぐ。40秒立っていられたら、立位でケアができる。
 出会いから別れまで、5つのステップを踏む。①出会いの準備、②ケアの準備、③知覚の連結、④感情の固定、⑤再会の約束。
本人が嫌がったときは、絶対に引く。
 やや大げさに表現するのは効果的。
とても実践的な、認知症の人に対するケアの仕方が満載でした。でも、これって認知症の人だけに有効というのではなく、弁護士の前にいる、相談に来た人に対しても使える技法だと思います。
(2014年8月刊。2200円)

労働者の権利と労働法における現代的課題

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 井上幸夫・鴨田哲郎・小島周一 、 出版 旬報社
 堂々、570頁もの分厚さのハードカバーの本です。敬愛する徳住賢治弁護士の喜寿を祈念して発刊されました。冒頭に戦後の、今日に至るまでの労使紛争、労働争議の状況が徳住弁護士によって簡単にまとめられています。
 かつては日本でもストライキがしきりに起きていました。今や現代日本ではほとんど死語になってしまったストライキですが、労働争議が年に1万件を超していたのです。そして多くの争議団があり、集まって東京争議団としてまとまって闘い、大きな成果を上げていました。
東京争議団は、「勝利するための4つの基本」を定めた。第一に争議組合と争議団の団結の強化、第二に職場からの闘いの強化、第三に産業別、地域の仲間との団結と共闘の強化、第四に法廷闘争の強化。
 そして、勝つためには三つの必要条件がある。第一に要求を具体的に明確にする、第二に、情勢分析を明確にする、第三に闘う相手を明確にする。
戦後労働運動は、組合の団結力にもとづいて裁判闘争において重要な判例法理を確立させた。解雇権濫用法理。整理解雇法理、有期雇用雇止法理、安全配慮義務の法理、採用内定の法理。
 集団的労使紛争において労働弁護士は大いに闘い、重要な成果を勝ちとった。
 1975年の電業社事件では、組合員460人が賞与仮払仮処分を申請し、総額1億4千万円をこす仮処分決定を得た。
 職場では、「ころび屋」「当たり屋」の管理職が登場し、「刑事事件」が頻発した。これに対して労働者と労働弁護士は果敢に闘って、ついに裁判所に次々と無罪判決を出させた。
北平音響事件(1979年10月)では、申請人70人について整理解雇を無効とさせ、賃金総額500万円の仮払いの仮処分決定を得た。
 ところが、1975年11月の国鉄等の8日間のスト権ストが敗北すると、その後は公共部門のストは打てなくなってしまった。
 このスト権ストのとき、私は鎌倉・大船に住んでいて、川崎の職場まで京浜急行に乗って、いつもより2時間以上も余計にかけて出勤しました。裁判期日はみんな延期されたと思いますから、要するに様子をみながら事務所に出ただけのことです。
 1970年代の後半から、職場での組合活動を敵視し、抑圧する反対労組的な判決が続出するようになった。リボンを胸に着けて働くのは職務専念義務に反するなど、驚くべき反動的な判決が相次いだ。たかがスローガンを書いたリボンを胸につけたくらいで、それが職務専念義務に反するだなんて、そのバカバカしさに思わず笑ってしまいます。
1990年からバブルが崩壊して、日本経済は大変な状況になった。
 1993年1月、パイオニアの管理職35人が事実上の指名解雇された。それまで大手企業の管理職や正社員のリストラはなかったので、多くの国民が大きな衝撃を受けた。
 このころ、労働裁判が急増した。1990年に1000件だったのが、1995年に2300件、2000年には2700件、2005年には3000件と激増した。そして2006年から労働審判制度が始まると、2020年には7800件となった。
 ところが、労働争議のほうは、1974年の1万件超がピークで、1989年に1800件、2022年に270件と激減した。ピークの4分の1でしかない。
1990年以降は、個別労使紛争しかない状況にある。1989年、総評と同盟が解散し、連合が誕生した。
 ちなみに、労働裁判は、ヨーロッパでは今も相変わらず多い。ドイツ40万件、フランス17万件、イギリス10万件。これに対して1万件ほどでしかない日本は、あまりにも少ない。
 徳住弁護士は、団結力を基軸とする労働組合活動の再生が重要な課題になっていることを最後に強調しています。まことにもっとも、そのとおりだと私も思います。個別的な労使関係のなかで、労働者の権利意識を基軸として取り組みの強化が必要なことは、もちろんです。
 鵜飼良昭弁護士が「労働審判制度の誕生」という論稿を寄せています。鵜飼弁護士こそ労働審判制度の産みの親の一人です。というのも、司法制度改革審議会の意見書(2001年6月12日)にもとづき、その具体化のため、内閣に労働検討会が設置されましたが、座長の菅野和夫教授のもとで、鵜飼弁護士は、労働側の委員として、毎回の検討会を積極的にリードしていったのです。私は、このとき、担当の日弁連副会長として傍聴していました。鵜飼弁護士は、ともかく毎回、発言しました。どんなに消極論が出てきても、決してへこたれず、なんとか議論が前向きに進むように、あくまで粘るのです。毎回、その姿を身近に眺め、ひたすら感服しながら見守っていました。傍聴している私は拍手も野次を飛ばすことも出来ませんでした。
 このとき、裁判官委員は当初はきわめて消極的でした。そんな必要はないとか、素人が入ってもうまくいくわけがないという姿勢です。裁判官って、どうしてこんなに過剰なまでに自信満々なのか、私には不思議でなりませんでした。当時、東京地裁の労働部にいた山口幸雄判事(今は福岡で弁護士)は、途中で、方針変更したようです。もちろん、個人の判断とは考えられません。裁判所は消極論から、成立を妨げないというように方針転換したのです。
 そして、3回の審理で終わらせるという労働審判制度が始まったのでした。
司法制度改革は失敗だったと単純に決めつける人が、当時も今もいますが、私は、そのようなオールオアナッシングで物事を見ても何の意味もないと考えています。裁判員制度と労働審判制度は、司法改革がなかったら決して誕生しなかったことでしょう。これらを全否定してしまうのは許されません。
 「東京地裁労働部における最近の不当な判断について」を棗(なつめ)一郎弁護士が描いています。これまでの労働部の判決に反して、常識的な判断では考えられないような判決が次々に出ているようです。労働者や労働組合に対する偏見や思い込みに今の裁判官はとらわれているのではないかと指摘されています。深刻な事態です。ストライキのない日本で起きている悪循環の一つだと思います。
川人博弁護士が「過労死110番」の取り組みを紹介しています。宝塚歌劇団では、結局、大きな成果を上げています。それにしても華やかな舞台の裏に、前近代的な労使慣行が続いていたのは本当に残念なことでした。同じく、過労死問題では松丸正弁護士も論稿を寄せています。
 川人・松丸両弁護士は私と同じ世代で、徳住弁護士を含めて大学生時代から知己のある関係です。
 最後に徳住弁護士の人柄を少しだけ紹介します。熊本県八代市の生まれですので、福岡県に生まれ育った私とは同じ九州人です。そして、大学も弁護士も徳住弁護士は私より1学年・1期だけ上になります。
 徳住弁護士は日本労働弁護団の幹事長のあと会長もつとめています。東大ではロースクールの教授として労働法を教えました。
 熊本出身なのにスキー好きで、苗場に別荘までもっているそうです。うらやましい限りです。
 徳住弁護士は発想が柔軟で、アイデアマン。誰に対しても分け隔てなく接する人。その言葉のひとつひとつが生き生きとしていて、真剣な表情とにこやかな表情の切り替わりが印象的。ウィングの広さ、対応の柔軟さ。労働弁護士という言葉では語れない多面体の弁護士なので、まさしく快人二十面相!こんな人物紹介に思わず、ほほ笑んでしまいました。
 最後に、こんな分厚い本なのに、ないものねだりをあえてすれば、アメリカでは最近バイデン政権のときからストライキが増えていて、労働運送が活性化している面もあると聞きました。そんな日米労働事情の対比を通して、日本での労働運動を再び高揚させるための提言があれば良かったと思いました。
このような貴重な本をありがたくも贈呈していただき、ありがとうございました。徳住先生の今後ひき続きのご活躍を心より祈念します。
(2025年3月刊。7700円)

ウクライナはなぜ戦い続けるのか

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 高世 仁 、 出版 旬報社
 日本の主要な企業メディアは紛争地・危険地帯の取材から遠のいている。日本政府の渡航自粛要請を抵抗なく受け入れてしまっている。
 私も、これって、それでいいのか、本当に疑問です。とはいうものの、生来、臆病な私は戦地取材なんてとてもとても出来ません。でも、メディア全部が怖いから行かないというのではダメなんじゃないの…、そう思わずにはおれません。
ジャーナリストは、危険地であっても、然るべき注意と準備をして直接に取材する努力をすべきだ。まことに、そのとおりだと私も思います。
 著者は2023年10月に日本を発ってウクライナに向かいました。空路でウクライナには入れません。隣国のポーランドから陸路、バスでウクライナに入りました。日米の高官もヨーロッパの高官も、みな列車でウクライナに入っていますよね。
 ウクライナの上空はロシアが握っているようです。そして、今やドローンが怖いのです。
ウクライナの人々はロシアとの戦争は2022年2月に始まったのではなく、すでに10年も続いていると考えている。うひゃあ、そうだったのですか…。2014年2月、「マイダン革命」から始まっているというのです。
ウクライナが1991年に独立したときは、世界第3位の核兵器配備国だった。ええっ、そ、そうだったんですか…。そして、独立するとき、1996年までに全部の核兵器をロシアに引き渡した。
ここから、核兵器をもたないからウクライナはロシアから攻められたという説が生まれ、だから日本だって核武装すべきだという、とんでもなく危ない声が上がるのです。でも、果たして、そうでしょうか。もし核兵器をウクライナが持っていたとしても、ロシアは侵攻してきたと私は思います。だって、核兵器は使ったら終わりなのです。使えるはずはないし、使わないと思ってロシアは攻めたと思うからです。
それはともかく、ウクライナはきわめて弱体化した戦力しかなかった。それで、軍事大国のロシアが攻め込んだら、たちまちウクライナ全土がロシアに占領され、戦争は一気に終了するだろう。そのように予測されていました。でも、現実には、ウクライナは3年たっても、なんとかもちこたえて、戦争が続いているのです。
 戦場で取材するときは、スマホの電源は切っておかないと危ない。ドローンで位置を察知されて、攻撃されてしまう危険がある。実際、兵舎で1人の兵士が禁止されているケータイを使ったことから、ミサイル攻撃されてしまって、兵士たちが全滅してしまったということが起きている。
 ロシア軍は先頭を刑務所の受刑者から成る部隊を行かせる。前線に6ヶ月いて無事だったら、自由の身になれるという契約なのです。もちろん簡単には自由の身になんかなれません。むしろ半数が前線に着いて2週間以内に死亡しているそうです。いやはや、とんでもなく高い死亡率ですよね…。
 ウクライナの兵士は休暇がなく、常に戦いのさなかにある。なので疲れてしまっている。
 ロシアが制空権を握っているうえ、ウクライナには兵器と弾薬が不足している。
 今のウクライナには、国内に安全という場所は存在しない。
ウクライナはロシア領内をミサイル攻撃するのは、ヨーロッパ各国から禁じられている。しかし、自前で生産したドローンによってロシア国内の石油関連施設を攻撃している。
実は、日本もウクライナに対して軍事支援をしている。三菱重工が生産したパトリオット・ミサイルをアメリカに輸出して、ウクライナにまわされている。
ウクライナ戦争は、「史上初のドローン戦争」と呼ばれている。ウクライナ軍で一番普及している偵察用ドローンは1機825万円。自爆ドローンもある。1機数万円という安い民生用ドローンを転用してつくることができる。
 ロシアもドローンを大量生産している。自爆ドローンを1年で100万機も製造するという。
 そして、実戦にもAi技術が使われている。
日本のウクライナ支援は、財政支援額では世界で4番目。86億ドル、1兆3千億円も支援しているそうです。これまた知りませんでした。国会で審議した結果なのでしょうか…。
ウクライナでは、空襲警報が1日平均53回もある。防空シェルターは、キーウだけで5千ヶ所あり、全国に6万ヶ所以上ある。それでも、市民は日常生活を過ごしている。コンサートが開かれ、動物園だって開いている。
 これまでに亡くなったウクライナ軍の兵士は7万人(アメリカ政府の推計。ウクライナ政府によると3万1千人)。
 ウクライナでも兵役忌避は増えている。
ウクライナの人々がロシアと戦っているのは、アイデンティティを守るため。いやあ、日本人の私にはよく分かりませんが、きっとそうなのでしょうね。
 日本人のなかに戦死者をこれ以上出さないため、ウクライナはロシアに降伏すべきだという人がいます。私は、それには賛同できません。でも、とりあえず戦闘行為を中止するという停戦を一刻も早くしてほしいです。朝鮮戦争の「休戦」と同じです。停戦したうえで、延々と話し合いを続けたらいいと思うのです。ともかく、ミサイルやドローンまた、地雷を使っての殺し合いだけは直ちにやめてほしいです。
(2024年12月刊。1870円)

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