法律相談センター検索 弁護士検索

デジタル化する新興国

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 伊東 亜聖 、 出版 中公新書
相変わらずガラケーですし、1日に1回も使えばいいほうの私ですが、さすがにメール(FB)は読んでいます。といっても、送信するのは秘書の仕事です。とてもあんなに速くは送信できません。ブラインドタッチなんて、考えただけでもうんざりです。私なんかにできるはずがありません。IT化には、うしろからボチボチついていくしかありません。
かつて多くの新興国が、固定電話を経ずに携帯電話に移行したように、いま銀行口座をとびこえてモバイル決済の利用が広がっている。
デジタル経済は巨大な価値を生み出した。2019年の夏時点(コロナ禍より前)で、世界企業価値乱金付上位10社のうち7社がIT企業。GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)にマイクロソフトを加えたアメリカ企業5社と、中国のアリババとテンセントの2社。コロナ禍のなかで、巨大IT企業への資金の集中の傾向はさらに強まっている。
ネットワーク端末は、2003年に5億台だったのが2010年に世界人口より多い125億台となり、2020年には500億台に達すると予測された。世界のインターネットユーザーは、7年間に16.6億人も増えている。このうち9割近い14.7億人はOECD諸国ではない。
中国は2010年に、日本の経済規模をこえて世界第2位の経済大国となった。このことは、世界経済に大きな構造変動をもたらした。
アフリカでは、銀行口座はもたないけれど、ケータイをもつ人々が通信会社の口座内にお金を預ける形で、モバイル・マネーが広がっている。
インドのデジタル化の中心を担うのは、生体人証のIDの発行と決済プラットフォームの構築。2019年12月時点で12億5千万人が登録ずみで、成人の95%がアダールIDを保有している。貧困層への補助金の直接給付の必要性、つまり中抜きされず、確実に補助金を本人に届けるためのものになっている。
アメリカの雇用のうち5割近く(47%)の人が、今後10年から20年のうちに自動化されるリスクがあるというレポートが発表され、注目された。これに対して、自動化されるリスクの高い職種は全体の9%にとどまるという報告もある。
また、技術革新によって、職が自動化される一方、新たにつくり出される職種や部門もある。たとえば、コンテンツをつくり出すクリエイターとしての能力。また、「ラスト・ワンマイル人材」も必要。
プラットフォーム企業は中立公正な立場に立つ存在ではなく、あくまでも市場競争を戦うプレイヤーである。
デジタル化の進展は、選挙活動にも影響している。トランプ陣営は、FBが保有する膨大な個人データを活用して、激戦州におけるトランプへの投票を「説得可能」な有権者1350万人を特定した。そのうえで、個々人の性格や信条に応じた宣伝をして、トランプへの投票を説得しようとした。
このように、過去には考えられなかった精度の個人情報を用いた介入が今では実行可能になっている。いやはや、本当に恐ろしい時代・世の中になってしまいました。だから私は、マイナンバーなんて嫌なのです。私がどんな存在であるのか、私以上に誰かが知っているなんて、想像しただけでも寒気がします。とは言いつつ、ネット社会には適応しないと生きていけないというのも現実です。困ってしまいます。
(2020年10月刊。820円+税)

白い土地

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 三浦 英之 、 出版 集英社
あの3.11福島第一原発の事故から10年がたちました。もちろん、原発復旧工事は今も続いています。100年も200年もかかる仕事なのに、大変残念なことに多くの日本人が忘れてしまったかのようです。先日も大きな地震がありましたが、原発の怖さを多くのマスコミはスルーしていました。心配です。
その健忘症は裁判所のなかにもひろがっていて、ときに原発の危険性を自覚した裁判官がいるものの、大多数の裁判官は政府に育従するばかりで、決して自分の頭で考えようとはしません。目先の仕事に埋没してしまっているのです。
「白地」(しろじ)とは、帰還困難区域の中でも、特定復興再生拠点区域以外のエリアを指す。白地図に落とし込んだとき、そこには避難指示解除の予定日や感染の開始日が何も記されていない。つまり、「白地」とは、将来的にも住民の居住の見通しがまったく立っていない310平方キロメートルのエリアのこと。
福島県相馬市は全国有数の「馬の町」。ここは夏のはじめに開かれる祭礼「相馬野馬追(のまおい)」の町として名高い。市内で飼育されている馬は216頭。農耕用ではなく、「野馬追」のための馬であり、一般家庭で飼育されている。
福島県立相馬農業高校には馬術部がある。馬術は人ではなく、馬が戦う競技。馬術は減点競技。馬が障害のバーを一つ落とすと減点4。2度も障害を跳ぶのを止めると「失権」してしまう。
全国大会に相馬農業高校も出場した。首都圏の有名私立高校の馬術部員の多くは、英語科で、「夢は外交官」という高校生たち…。ここでは相馬農業高校は上位入賞はかなわなかった。
著者は朝日新聞の現役記者なのに、2017年秋から、なんと浪江町で新聞配達を始めた。浪江町で、たった一人で新聞配達している青年(34歳)とともに…。
浪江町は帰還した住民を490人と公表していたが、おそらく「虚偽」。そして、新聞を購読しているのは百数十人。実際には昼間だけ町内の畑や役所で働き、夜や週末には近隣市の「自宅」に帰ってしまう人々が少なくないのだ。
著者は新聞配達を半年間も続けた。それから、朝日新聞の全国面で15回にわたって「新聞舗の春」として連載した。すごいですね。とてもマネできません。浪江町長だった馬場有氏の取材の話もすごいです。
馬場町長は、ガンの闘病中で、自分の死が間近だと悟っていて、著者の取材に応じた。
東京電力(東電)は、原発事故によって避難を強いられた近隣の10市町村に一律2000万円の見舞金を贈った。しかし、浪江町は受け取りを拒否した。馬場町長は、人口2万1000人の浪江町では町民1人あたり1000円弱にしかならない。「一律」は「公平」ではない。
馬場町長は、自民党公認の県議として当選を重ねた「自民党」の政治家。
その馬場町長は、東電に対して紛争解決センターに慰謝料の見直しを求めて自治体が住民の代理人となって申立した。町民2万1千人の7割にあたる1万5千人が申立人になった。そして、紛争解決センターは、1人につき月10万円に5万円をプラスする和解案を提示したが、東電が拒否した。そこで、ADRは打ち切られ、町民109人が東電相手に裁判にふみきった。
馬場町長は、69歳で、現職町長のまま亡くなった。
3.11が決して終わった話ではないこと、「アンダーコントロール」なんて大嘘だということを実感させてくれる秀逸なルポタージュです。
(2020年10月刊。1800円+税)

ドナウ川の類人猿

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 マデレーン・ベーメ 、 出版 青土社
人類の起源はアフリカ。このアフリカ単一起源説を絶対的真理だと思ってきた私ですが、この本は、いやはや、そんなことはないとヨーロッパ各地で発見された化石をもとに指摘しています。
サルの化石では、歯はとくに役に立つ。類人猿とサルばかりか、類人猿と人類の違いも区別できる。犬歯の根をみると、絶滅種あるいは現生の類人猿のものは長くて大きい。オスのヒエラルキー(順位)争いで、犬歯は相手を威圧する武器となる。
類人猿とヒトで臼歯の形が違うのは、咀嚼の内容が違うことによる。食生活の違いにより、類人猿はヒト属とは異なる歯の形を発達させた。
いくつかのサルや大部分の類人猿は、短時間なら二足で立つ姿勢をとれるが、恒常的に直立姿勢を保てるのは人間しかいない。
人間は、長距離を移動するのは二足で歩く以外の方法はない。人間にとって四つん這いで進むのは大変だ。直立歩行は、歩行足と並行して、おそらく600万年以上前に進化していたのではないだろうか…。
ヨーロッパで発見された、猿人と推測される化石の年代が、ヨーロッパでサバンナ風景が生じた年代と合致するということは、人類の起源がアフリカにあるという説と明らかに矛盾する。
最古の原人の化石は260~190万年前のもので、アフリカにはほんの少数の骨があるにすぎない。アフリカ単一起源説は、数十年間にわたって疑問視されてこなかった。しかし、地中海地域やアジアなど、アフリカ東部以外の地域で発見された道具によって、アフリカ単一起源説は大きく揺らいでいる。
最古の原人と石器文化について、氷河期初期にあたる260万年前にさかのぼる証拠が発見されている。人類の起源はアフリカだけにあるのではなく、アジアとヨーロッパも人類進化の主要な地域なのだ。
アフリカ北部のサハラ砂漠に、かつては湖もあった。湖岸には、新石器時代の農民や牧畜民の営む畑や牧草地があった。降雨量は、現在のドイツとほぼ同じだった。
ヒトが単純な二足歩行するのと、走る、駆けると、どう違うのか…。速く移動するのには、走るほうが、振り子のような歩行よりエネルギー効率がいい…。
ヒトの胸部は長距離走に最適な生体構造をもつ。ヒトは直立歩行なので、胸部は歩行に関与せず、そのため呼吸頻度と歩調の密接なつながりはない。なので、ペースをスムーズに変えることができる。
火の使用は、200万年前、人類の進化にとって中心的な役割を果たした。200万年という長い年月に、アジア、ヨーロッパ、アフリカの非常に異なる環境に定住できたのも、火の使用あってのことではないか…。
心理言語学者たちによると、言語の前段階は、100万年以上前にすでに生じていたかもしれないという。人類進化史において初めて航海したと考えられているプーレス人はすでに基礎的な言語能力をもっていた可能性がある。
アフリカ以外の地域に住む人々はネアンデルタール人のゲノムの3%、デニソワ人のゲノムの9%を保持している。これが現在の通説だ。だったら、これらの初期ヒト属は果たして絶滅したといえるものだろうか…。彼らは、今の我々と混じり、我々の中に今も生きているのではないだろうか…。
アフリカ単一起源説に信頼していた身からすると、大変ショックな本でした。
(2020年11月刊。2200円+税)

地球科学入門

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 平 朝彦、JAMSTEC 、 出版 講談社
今から50年前ころは、ウェゲナーの大陸移動説はインチキ科学とバカにされていました。やがて、プレートテクトニクスという、地球内部が動いているので大陸も移動するという学説が登場し、みるみるうちに有力になっていきました。これが門外漢の私の認識です。
ところが、今では、地球はずっとずっと揺れ動いていて、ちっとも固定していないというのが定説です。
地球史において大陸は、離合集散を繰り返し、最新の地球学的研究からは5億年から8億年周期で超大陸が形成されると考えられている。
地球の歴史って、30億年でしたか…。もう何回も大きく変わっているということなんですよね。
アフリカにある大地溝帯で人類は誕生したようです。いったいなぜなのでしょうか…。ルーシーが有名ですよね。
日本列島で地震が絶えないのは、南海トラフ、駿河トラフそして相模トラフなどは太平洋側にあるからです。なので、いつ強烈な大地震が起きるか分かりません。不思議なことに深海にも生物がたくさん生存しているのですよね。いったい水圧はどうやってはねのけているのでしょうか。
深海では光合成はできないため、化学合成に頼っている。いったい、どうやって…。
雲仙大山が噴火し、火砕流が発生して死者43人という大惨事を起こしたのは1991年6月3日のこと。もう30年にもなるのですね。そして、この雲仙火山は、江戸時代の1792年にも噴火して、眉山が山体崩壊して対岸の熊本にまで被害をもたらした。「島原大変、肥後迷惑」として知られている。
阿蘇火山では9万年前に巨大噴火があり、火砕流は九州北部から山口県にまで達した。このときの火山灰は北海道にまで広がっている。
大観峰に立つと、その巨大噴火のスケールの大きさをしのぶことができます。
カラー図解なので、まったくの素人にもよく分かる入門書です。
(2020年11月刊。2500円+税)

やとのいえ

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 八尾 慶次 、 出版 偕成社
多摩ニュータウンをモデルとして、大都市近郊のひなびた農村地帯が都市化の波にさらされて変貌していく様子を美事な風景画で再現しています。
「やとのいえ」という「やと」は、なだらかな丘と谷があるなかで、浅い谷のことをいいます。
もちろん人々は農業を営んでいました。家は草(茅)ぶきです。村の人がみんなで共同作業します。燃料になる炭も自分たちでつくります。人々は農閑期に大きな目籠(めかご)をつくり、大八車(だいはちぐるま)に乗せて町まで売りに行きます。
大八車は私も見たことはありません。リヤカーなら身近にありましたが…。どうやら大八車のほうが車輪が大きいようです。どちらも二輪車ですよね、きっと…。
戦争中も、遠くの町が空襲にあって赤い空が燃えているのを遠くに眺めるだけですみました。いえ、兵隊にとられて戦場に行った若者はいたのです。戦後、平和になって、村祭りがにぎやかにおこなわれ、子どもたちも歓声をあげていました。
戦後は、ベビーブームとなり、若者も子どももたくさんいて村には活気がありました。
十六羅漢さんのある家に花嫁さんが迎えられました。お祝いに集まった人々は、みな黒紋付きです。一瞬、お葬式なのかと錯覚してしまいました。
ところが、1967年(昭和42年)ころから開発の波が押し寄せてきます。村人に札束攻勢がかけられました。遠くの丘にブルドーザーが入って、たちまち丘陵地帯がなだらかな平地となっていきます。開発途中で遺跡の発掘調査もありましたが、それがすむと、たちまちブルドーザー、ショベルカー、そしてダンプカーが走りまわるのです。
ついに1981年(昭和56年)ころには、大きな広い通りに面して巨大なアパート群が次々につくられていきます。もう、かつてここが緑あふれる田園地帯だったことを偲ばせるものは何ひとつありません。いえ、十六羅漢だけは幸い残されました。
ともかくすばらしい。こまやかな描写の絵に人々の昔、そして現在の生活が見事によみがえっていて、驚嘆してしまいました。都市化の波によって失われたものが大きいことを改めて痛感させられます。
(2020年8月刊。1800円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.