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後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ペーター・ヴォールレーベン 、 出版 ハヤカワ・ノンフィクション文庫
イヌは叱られると悲しい表情をする。そして、メンドリの気を引くため、オンドリは平然と嘘をつく。ええっ、ホ、ホントなの…。
オンドリはおいしそうなものを見つけると特別な抑揚をつけてクックッと鳴きはじめる。すると、メンドリがすぐに聞きつけてやってくる。ところが、オスがその鳴き声で何もないのにやって来たメンドリに交尾を迫って成功することがある。しかし、メンドリだって、何回も騙されるわけではない。
カササギは一生涯にわたるオスとメスはつがいを守る。それでも、つがいのメスが侵入者のメスを激しく追い立てていても、オスはつがいのメスに見られていないと思えば、新しいメスに熱心に言い寄る。ふえっ、カササギのオスって、ヒトのオトコと同じなんですね…。
ヨーロッパアカヤマアリは、数匹の女王アリがいて、最大で100万匹の働きアリによって世話されている。社会階層の一番下は、翅(ハネ)のあるオス。オスは女王アリと交尾するために巣から飛び立ち、そのあと死んでいく。オスは長生きが許されていないのです。働きアリは最長6年生き、女王アリの寿命は最長なんと25年。
ワタリガラスは、80以上の異なる鳴き声を使い分ける。だから、これはカラス言葉だ。ワタリガラスは親子間だけでなく、友人とのあいだでも生涯にわたる関係をはぐくむ。
ブタに名前をつけ、エサを与えるときに名前を呼ぶと、呼ばれたブタだけがエサの入った容器へ突進していく。
馬にとって楽しくうれしいのは、うまくできたときにほめられ、なでてもらえること。間違ったことして叱られると、バツが悪そうに顔をそむけ、あくびをしたりする。きまり悪いそぶりをしているのだ。馬も恥ずかしがる…。
カラスは一緒にいたら仲間が自分を助けてくれなかったら、そのことを覚えていて、そのあとは、その仲間とはともに作業しようとはしなかった。
人間であれ、他の動物であれ、恐れを感じないものは生きのびることができない。
ウサギは、オスとメスとが、それぞれ厳格な序列にしたがって生きている。指導的な役割を果たしているオスとメスは、より攻撃的ではあるが、ストレスは少なめだ。抑圧されているものは、次の攻撃を常に恐れながら生きている。大人のウサギの寿命は平均して2年半。ところがウサギ界の上流階級にいると、7年ほど生きのびる。いちばん下位のウサギは性成熟したあと数週間で死んでしまう。これはストレスが多いか少ないかが決定的だということを示している。うひゃあ、すごい違いですね…。
動物が認知症になってしまえば、肉食獣の手頃な獲物になってしまう。
なーるほど、病気になったら、即、死に至るというわけです。
著者の飼っていたヤギはおだやかな死を自分で迎えたのですが、それは、死んだ動物の姿勢で分かるのだそうです。そのヤギは、くつろいだ態勢で腹ばいになり、力の抜けた脚がその下に折りたたまれていました。これはリラックスして眠るときの姿勢なのです。
いやあ、動物の話は、いつ読んでも面白いですよね。
ドイツで人気の職業のひとつに「森林官」があるそうです。森を管理する専門家のことです。日本にこんな職業があるのでしょうか。もし、あったとしても人気の職業ではありませんよね。いえ、決してけなしているつもりはありません。
ドイツの小・中学校の女の子の憧れの動物ナンバーワンは馬なんだそうです。えっ、ええっ、これも日本とは大違いですよね。大学に馬術部はありますが、馬に乗るって、金持ちの子女のやることっていうイメージです。
(2021年7月刊。税込990円)

謎解き、鳥獣戯画

カテゴリー:日本史(平安)

(霧山昴)
著者 芸術新潮編集部 、 出版 新潮社
日本のマンガの元祖といってもよいのでしょうか…。ウサギや猿そしてカメたちが水遊びしたり、弓矢で競争したり、相撲をとったり、まことに愛敬たっぷりのマンガチックな絵巻物です。
甲乙丙丁の4巻からなる絵巻物の全長は、なんと44メートル超。甲乙巻は平安時代の末期、丙巻は鎌倉初期、丁巻はそれより少しあと…。もちろん異論もある。
色がなく、詞書(ことばがき)、つまりキャプション(説明文)がない。
京都市の北西にある高山寺(こうさんじ)に伝わった。
誰が、いったい何のために描いたのか、その注文主は誰なのか…。
すべて謎のままです。定説はない。
絵巻なので、紙をノリで何枚も(甲巻だけで23枚)、貼り継いでつくった。横長の料紙(りょうし)に描かれている。紙の継ぎ目の部分には「高山寺」の印が押されていて、絵が抜きとられたり、散逸してしまうのを防ぐ意図があった。
甲巻には擬人化された動物が登場する。2巻にはそれがない。しかし、カップルや親子は登場する。ニワトリの親子の絵を見ると、著者の表現力は、さすがです。
先に人物戯画が描かれ、その裏面に花押が入れられていた。その後、別の誰かが、花押にはかまうことなく動物戯画を描き加えた。
「鳥獣戯画」というのは近代以降の名称。中世では、ほとんど知られていなかった。現状の4巻構成になったのは、江戸時代初めの東福門院による修理のときのことだろう。
これを描いた絵師は宗教界と宮廷社会の両方の画事(がじ)に接しうる立場に属する人であって、しかも仏教側に属する人だろう。
コロナ禍がなければ、すぐにも飛んでいって、実物を見たい、じっくり鑑賞したいです。でも、現実には、私のすむ町ではまだワクチン接種のお知らせ自体がやってきていません。どうしたらよいのかも分からず、困って毎日を過ごしています。早く旅行に出かけたいものです。
(2021年3月刊。税込2200円)

東大寺の考古学

カテゴリー:日本史(奈良)

(霧山昴)
著者 鶴見 泰寿 、 出版 吉川弘文館
奈良といえば大仏。東大寺大仏は正式には廬舎那仏(るしゃなぶつ)といい、東大寺金堂(こんどう)の本尊。聖武天皇が建立を発願し、天平勝宝4(752)年、4月9日に開眼供養がおこなわれた。
海外の大仏は石窟仏で、日本の大仏が鋳造なのは、とても珍しい。
大仏の鋳造方法。まず、土を突き固めて御座となる土壇を築き、その上に木材を組み立てて、骨体とする。この骨体を粘土で覆って原型となる塑像をつくる。鋳型づくり→鋳造という作業を下から上へ、8回くり返しながら頭部まで鋳継いで仏体を鋳造していく。大仏の銅の厚みは意外と薄く、わずか4センチか5センチほど。
大仏鋳造作業では、鋳造→盛り土→上段の鋳造という作業が繰り返されるので、8段目の頭部鋳造時には、大仏は完全に土の山に覆われている。
大仏の材料は、銅と錫(すず)、鉛の合金。銅の産地は山口県美祢(みね)市にある中登(なかのぼり)銅山。
この本の著者が紹介していませんので、読んでいないようですが、帚木蓬生の『国銅』(上・下)(新潮社、2003年)において、この銅山からとった銅で大仏をつくる職人の苦労が小説として語られています。
鋳造作業が終了すると、今度は逆に、頭部から下へ順に盛り土を崩し、鋳型をはずしていく。溶銅が流れ込まなかったところなどは鋳掛けという作業で修正していき、欠損部分を補ったら、荒れた表面をヤスリやタガネで切削して整え、表面を砥石で研いて平滑にする。
金メッキはアマルガム法でおこなう。金を水銀に溶かし、金属の表面に塗布したあと、炭火で熱して水銀を蒸発させて、金だけを表面に定着させる。金1万436両、水銀5万8610両つかったとのこと。
このころ、金は、陸奥国で黄金がとれたという朗報が届いて、金不足が解消された。
開眼供養のころ、実は、まだ全体の一部しか出来あがってはいなかった。
早くコロナ禍がおさまって、東大寺の大仏さまを、また拝みたいものです。
(2021年3月刊。税込1870円)

台湾海峡1949

カテゴリー:中国

(霧山昴)
著者 龍  應台、 出版 白水社
中国に進攻していた日本軍が敗戦したあと、蒋介石の国民党軍と中共の解放軍とのあいだで国共内戦が始まり、ついに腐敗した指導部をかかえた国民党軍は敗退して、中国本土から台湾へ渡ります。でも、台湾にも中国人はいたわけですから、そんな国府軍をみんなが喜んで迎え入れたわけではありません。
そこを武力で抑えつけて、矛盾・衝突が起きました。台湾にとって、1949年というのは、そんな大変な時代の始まりでもあったのです。
この本は、小説のような、ノンフィクションのようなもので、歴史が行きつ戻りつしながら、中国と台湾の歴史が語られます。
国共内戦のもとで、教師が高校生の集団を引率して戦火を逃れてさまよう状況も紹介されます。タイトルは忘れてしまいましたが、そんな本を読み、このコーナーでも紹介したと思います。
そのころ、高校教師は生徒との人間的結びつきが強く、父母も教師と一緒ならいいだろうと考えていたのでした。なにしろ、逃亡先でも、信じられないことに、ずっと授業していたというのですから、驚嘆します。
国府軍も中共軍も兵士を補充するため、村の若者たちを軍にむりやりでも組み込んだ。そのなかには、6歳の少年までいた。彼らは写真を撮られるときだって、決して笑顔を示さなかった。
「軍隊では、笑ってはいけないんだ…」
日本軍が「敵」軍の捕虜を大量殺害していたころの証拠文書が残されている。
捕虜は、一人のこらず、殲(せん)滅してしまい、その痕跡が残らないようにせよという帝国陸軍の指針をふまえていた。
いやあ、ひどい証拠ですね。捕虜を残すことがなかったのです。そして、日本軍の蛮行は、内地に無事に帰ってきてから、ほとんどの人が沈黙を守り、日本社会には広く知られることはありませんでした。教科書の書き換えが横行しているのは、ここに根拠があります。
(2021年7月刊。税込3300円)

武器としての労働法

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 佐々木 亮 、 出版 KADOKAWA
会社に人生を振り回されないため、労働問題の有力弁護士が教える「泣き寝入りしない」ための対処法。キャッチコピーは、法律を味方にすれば、自由もお金も手に入る。
私が弁護士になった1977年代半ばは労働組合に存在感がありました。総評(ソーヒョー)と言えば、「泣く子も黙る」という形容詞がついていたほどです。もっとも実際に泣いている子が黙ったとはとても思えませんが…。
そのころ東京に住んでいましたが、国電(JRではありません)がストで停まったり、ノロノロ運転するのをよく体験しました。フランスに旅行したとき(もう10年も行っていません)、地下鉄もフランス国鉄も、よくストライキで運休しているのにぶつかり、困りましたが、ああ、フランスでは労働組合が生きているんだねと実感させられました。
日本にもレンゴー(連合)という奇妙な団体があります。どうやら政府と一体化したいらしく、共産党を敵視する変な組織です。とても労働者の権利を擁護してたたかっているとは思えません。その端的な例が、非正規労働者の組織化に取り組んでいないことです。
この本は、労働法で定められた労働者の権利を守ってたたかう弁護士による実践的なアドバイスを紹介しています。いつまでも労働弁護士でありたいと願っている私も、初心に帰って、また間違ったアドバイスをしないように読んでみました。
正社員とか正規社員というのは法律用語にはない。
正社員であることの3要件は、第1に雇用契約に期間の定めがないこと、第2にフルタイムで働いていること、第3に直接雇用であること。
有期雇用の社員を契約社員と呼ぶことが多い。しかし、契約に期間の定めがない「契約社員」は無期雇用なので、更新というものがない。「フルタイムパート社員」というのはありえない。「アルバイト」は法律用語ではない。
「派遣社員」は、現に働いている会社の社員ではない。労働に対する賃金は実際に就業している派遣先会社からではなく、派遣元会社から支払われる。
私が弁護士になってからずっとずっと、労働者派遣事業は違法だと主張していました。ところが、今では、それが合法化され、まったくあたりまえの状況になっています。これは、労働者を使い捨てするものです。こんな企業風土で、日本が世界的な競争に勝てるととても思えません。
フリーランスで働く人は、雇用契約を結んでの働き方と比べて弱い立場にある。
外資系企業であっても、日本で働く限りは、日本の労働法が適用される。
「転籍出向しろ」という命令は「退職しろ」というのと同じなので、退職を業務命令できないように、転籍趣向しろという業務命令はできない。なので、拒否できる。拒否によって不利益を蒙ることはないはず。
派遣先企業は、簡単に派遣切りはできない。
派遣先企業は、派遣会社に休業手当相当額以上を賠償する必要がある。派遣先企業は、派遣社員に新しい就業先を見つける必要がある。
派遣社員として採用されたとき、業務委託契約を結ばされたら、それは偽装請負にあたって、違法になる。
派遣は雇用契約なので、残業手当の未払いは違法となる。
派遣社員に対して、派遣先企業への就職を禁じるのは違法。
派遣先企業に、採用・不採用を決める権限はない。なので、派遣社員の事前面接は禁止されている。履歴書の提出を求めることもできない。
整理解雇の4条件とは…。一に人員削減の必要性。二に、解雇を回避する努力。その三は、人選の合理性。そして第4は、労働者へきちんと説明できたのか…。
東京の若手の労働弁護士によるスッキリ分かりやすい解説文です。ぜひ、あなたも、ご一読ください。
(2021年3月刊。税込1650円)

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