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弁護士いらず

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著者:三浦和義、出版社:太田出版
 ロス疑惑で世間をひところ大いに騒がせ、しかし、予想と「期待」を裏切って無罪判決を見事に勝ち取った三浦和義氏が書いた本人訴訟をすすめる本です。内容はすごく真面目で、好感がもてます。
 三浦氏は「ロス疑惑」の報道について、本人訴訟と代理人をたてた訴訟をあわせて500件以上もマスコミ相手の裁判をやったそうです。そして、そのうち470件あまりの本人訴訟で、8割の勝訴率というから、偉いものです。東京拘置所に13年あまり勾留されていたあいだに100冊もの専門書を買って勉強して訴状を書き、準備書面でマスコミ報道が名誉毀損にあたることを主張して立証していきました。マスコミがありとあらゆるデマ報道をしていたのを見過ごせないと三浦氏は立ちあがったのです。三浦氏が報道被害者だったことは、この本を読むとよく分かります。8割の勝訴率をふまえて、三浦氏は裁判所はおおむね公平で信頼できるとしています。三浦氏は、勝訴判決や和解金によって合計して1億数千万円(2億円弱)を得たそうです
が、コピー代1500万円、印紙・切手代500万円ほか、支払った弁護士費用とあわせて保険金返還訴訟で負けた判決で強制執行を受けて、今は無一文だということです。
 拘置所のなかでは月に3冊しか本を読めないという規則を、三浦氏が粘り強く抗議して月6冊に変えさせたというのには驚きました。たったそれだけを変えさせるまでに4ヶ月もかかっています。
 拘置所在監中の被告人が民事訴訟の法廷に出頭できるものか疑問に思っていましたが、本人尋問の多くは裁判所の法廷で実施されたようです。拘置所で尋問するという裁判所の決定に対して、三浦氏は異議申立をし、さらに忌避申立までしています。これまた、たいしたものです。
 裁判における主張は、理路整然と、終始一貫していることが大切だ、姑息な手段や立証は避けるべきで、堂々とした主張・姿を保つことが大切だという三浦氏の教えには弁護士としても大いに共感しました。弁護士が読んでも参考になる本です。

林檎の礼拝堂

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著者:田窪恭治、出版社:集英社
 ノルマンディー(フランス)にある荒れ果てた小さな礼拝堂を、私と同年輩の日本人画家が再生させていく過程が活写されています。40歳のとき、男の子3人をふくめて家族とともにフランスの片田舎に移り住み、10年かかって礼拝堂、そして壁画を完成させたというのですから、感嘆するばかりです。そして、その礼拝堂が実に見事なのです。採光のため屋根をガラス瓦にしたり、ライトアップの工夫など、神々しいばかりの礼拝堂に生まれ変わっていく有り様が写真で刻明に紹介されています。写真を眺めるだけでも心を洗ってくれる気がします。ぜひ一度、フランス現地に行ってみたいと思わせる本でした。シードル(カルバドス)の美味しい地方です。

帝国

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著者:アントニオ・ネグリ、出版社:以文社
 本文のみで510頁もある大著です。恒例の人間ドッグ(1泊)に持ち込んだ4冊のうちの1冊です。さすがに読みごたえがあるというか、歯ごたえがありすぎて、大半がよく分からなかったというのが正直なところです。でも、いくつか、なるほどと思えるところがありました。これは決して負け惜しみではありません。
 この本で著者2人が主張したいことは、アメリカ(合衆国)もまた中心とはなりえない。帝国主義は終わった。今後、いかなる国家も、近代のヨーロッパ諸国がかつてそうであったようなあり方で世界の指導者となることはない。グローバリゼーションへの抵抗とローカル性の防衛という「左翼的」戦略は間違っていて、有害である。むしろ、帝国のなかへグローバルに分け入り、それらの流れのもつ複雑性のすべてに向きあう必要がある。
 タキトウスが「彼らは殺戮を行い、それを平和と呼ぶ」と言ったそうです。アメリカのイラク戦争を見て、けだし明言だと思いました。大いに考えさせられる、ズシリと重たい本です。

しぶといモノ作り

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著者:山根一眞、出版社:小学館
 「週刊ポスト」に連載中の「メタルカラーの時代」を本にしたものです。日本のモノ作りの現場を掘りおこしています。著者も団塊の世代ですが、モノ作りの現場で意外に団塊世代ががんばっているのを知って、同世代としてうれしくなってしまいました。
 この本を読んで一番ショックだったのは、技能五輪国際大会で日本の成績がいまひとつで、韓国に完全に負けているということです。これでは、日本の将来は明るくありません。韓国は金メダルを20個もとっているのに、日本はたった4個でしかありません。デンソー工業技術短大の学生が金メダルをとった話が紹介されていますが、もっともっと優秀な技術者を確保することが必要だと思いました。
 それにしても、ニュートリノの話は理解を超えてしまいます。なにしろ、人間の身体の1平方センチあたり、太陽から来たニュートリノが1秒あたり660億個入ってきて、全部突き抜けていく。身体のなかで何かに衝突するのは一生の間に1粒しかない。なんだか気の遠くなるような話です。でも、いったい、その衝突した1粒はどうなってしまうんでしょうね?
 世の中には、コツコツ真面目に努力している人がこんなにも多いことを知ると、なんだか安心してしまいます。田中耕一さんのようにノーベル賞をもらうまでには至らないにしても、すごい人はたくさんいるんですね・・・。

雪国の自然と暮らし

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著者:市川健夫、出版社:小峰書店
 長野県と新潟県にまたがる日本有数の豪雪地帯、秋山郷の暮らしを紹介した本です。昔は、冬になると積雪3メートルに埋もれ、陸の孤島でした。今では、冬でも除雪がすすんでいますが、それでも急病人が出るとヘリコプターが出動します。
 『半日村』という絵本を子どもに読んでやったことがあります。秋山郷は、高い山で囲まれているために、日が当たる時間は平野の半分ほどしかありません。まさに半日村です。
 日頃、私たちは「○○をかてとして」と言うことがあります。あの「かて」とは糧飯(かてめし)のことです。米やアワのほか、ダイコンやカブをまぜて炊いたご飯のことです。昔の日本の主食でした。お米だけのご飯は、お祭りの日だけに食べる特別食で、御飯(ごはん)と丁寧な言葉で呼ばれ、ふだんの「めし」は糧飯のことです。
 雪の多い新潟や富山でチューリップ栽培が盛んな理由も説明されています。積雪が地表を寒さから守ってくれるので、球根を浅く植えることができるのです。春に雪が消えると、浅く植えられた球根は太陽の熱をより多く受けるので、大きく成長できる。こういうわけです。そうは言っても、暖かい九州で生まれ育った私にとっては、「半日村」とか、寒い冬に閉じこめられるなんて、とても耐えられそうにありません。

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