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海峡の光

カテゴリー:未分類

著者:辻 仁成、出版社:新潮文庫
 刑務所を舞台とした一風変わった小説です。いま、私は毎週のように刑務所通いをしています。そこは山の奥の方にあります。下界から3度は気温も低いそうで、なかは凍えるほど寒いとのことです。
 刑務所はいまどこも満杯です。ここにも高齢化現象が現れているというのです。なんだか寂しくなります。面会のとき、奥の方から、「オイッチニ」の大きなかけ声が聞こえてきました。収容者が工場から帰ってくるときには一列に並べさせ、大きなかけ声とあわせて軍隊式の行進をさせられるのです。これは昔から日本の刑務所でやっていたのかと思うと、そうでもなく、30年ほど前からのことにすぎないそうです。がんじがらめの規則のなかで生活するうちに、社会での自由な生活への適応力を喪ってしまう人もいるということです。
 刑務所の職員に対して、「あんたたちも大変だね。一生、ここから出られないんだから・・・」と言ったというセリフが出てきます。本当に看守の気苦労は並大抵のものではないと思います。なにしろ定年までずっと何十年と続くのですから・・・。
 刑務所のなかで拳銃が密造されていたことが発覚したのは20年以上も前のことだったと思います。そのとき、刑務所から出てきたばかりの人に実情をきいたことがありました。そりゃ、ありえますよ。わたしなんかも房内でタバコを隠れて吸ってましたしね・・・、という答えだったので、ア然とした記憶があります。
 偽善者をキーワードとした小説でもあります。

オランダの教育

カテゴリー:未分類

著者:リヒトレルズ直子、出版社:平凡社
 オランダの小学校は校区制がない。歩いて買い物に行けるほどの距離のところに3つや4つの小学校があるのがあたり前で、自転車通学可能な範囲を含めると10校前後の小学校があって、そのなかから選ぶことになる。小学校は全校生徒が平均250人。1学年せいぜい2クラス。
 先生も校長先生も本人の希望か学校の理事会が決議しない限り異動しない。学校の教職員は安定性が高く、いわば校長先生を代表とする一つのコミュニティのようなもの。教師は威厳のある権威的な存在ではなく、子どもの自主的な学習を補佐する友好的な大人だとみられている。
 オランダの義務教育は5歳からだが、たいてい4歳から小学校に通いはじめる。小学校低学年のあいだは、父親か母親が学校に送り迎えするのが普通。
 オランダの小学校には宿題がない。午後3時ころに学校から帰ると自由時間を楽しめる。高校も大学も、入学試験がない。学校に課外活動はなく、塾もない。
 日本でも「ゆとり教育」と言う前に、学校で教師も生徒も、もっと伸び伸びと過ごせる社会環境をつくりだすべきだと痛感しました。学力が世界レベルで低下したことを嘆くより前に・・・。

民営化される戦争

カテゴリー:未分類

著者:本山美彦、出版社:ナカニシヤ出版
 いまアメリカは海外での軍事行動について民間会社を活用している。Private Military Companies(PMC)という。PMC全体で年間100億ドルの売上がある。最大のPMCは元将校を1万2000人もかかえている。彼らは、軍人恩給として退職時の50%が支給されるうえに、現役の軍人であったころの給与の2〜10倍ももらう。ペンタゴンがPMCに支払う金額は年間250億ドル。これは10年前の2倍。PMCの従業員は戦地での戦闘行為にも加わっている。
 したがって、これらの民間会社につとめる社員が殺害されるケースが増えている。しかし、民間人の殺害が増加する反面、制服の軍人の殺害が減っていることから、戦争したくないという心理的な壁を薄くしている。戦争行為をPMCが代行してくれるおかげで正規の軍隊や彼らを統括する上級閣僚たちが、血を流す兵士の惨状を見て厭戦気分に陥る可能性が小さくなっている。そこで、限定的な局地戦にはPMCが多く送りこまれる。制服の大部隊を投入しなくてもよいからだ。しかも、5000万ドル以下のPMCとの契約額ならペンタゴンは議会に報告する義務もない。
 戦場に参加する民間会社が忠誠を誓う相手は軍ではなく、株主である。彼らはカネだけで働くかつての悪名高い傭兵たちと同じ行動をとる。
 PMCのなかでは、ハリバートン(チェイニー副大統領の関係する会社)の子会社であるKBRが断トツの存在。ほかにディンコープ、ビンネル、MPRI、AOCOMガバメント・サービスなどがある。
 イラクの罪なき市民を大虐殺しながら、アメリカの企業が巨大な利益をあげているなんて、許せない。しかし、それも長続きはしないだろう。とはいっても、それまでに莫大な犠牲者が出るのを、私たち日本人は座視して見守るだけであってよいのだろうか・・・。

キャッシュカードがあぶない

カテゴリー:未分類

著者:柳田邦男、出版社:文芸春秋
 この本を読むと、つくづく銀行にお金を預けておくのが心配になってしまいます。カードの不正使用で虎の子の貯金を全部おろされてしまっても、銀行も警察もそ知らぬ顔をしてとりあってくれず、被害の回復はきわめて難しいというのが日本の現実です。
 超小型デジカメをATMの真上にセットしておいてモニターする。銀行のATMに通じる電話線に盗聴器をつけて傍受する。カード照会機CATの近くで電磁波をキャッチする。このような最先端の技術で暗証番号が盗まれている。
 銀行のカウンターごしに脅迫して行員からお金を奪ったとしたら、たちまち銀行強盗事件として警察は動き出す。しかし、ATMを通じて預金が奪われたときには、警察も銀行も必死の訴えを聞き流すだけ。銀行は弁償しようともしない。
 スキミングマシンは、秋葉原などで安く買える磁気読みとりヘッド、アンプ、メモリ、電池の4つをそろえたら簡単につくれる。窃盗団がつかっているのは、タバコの箱半分ほどの大きさ。
 アメリカには「50ドル・ルール」というのがある。本人が負担するのは上限が50ドル。イギリスにも50ポンド・ルールがあり、ヨーロッパには150ユーロ・ルールがある。そして、銀行は保険でまかなってもらえる。
 日本の銀行がいかに消費者の犠牲の上にあぐらをかいているか、それを知り、あらためて寒々とした思いがしました。そんな銀行の救済のために政府は何兆円も税金を惜しみなく投入するのです。ところが、国民の被害には知らぬ顔の半兵衛を決めこみます。ひどい話ですよね・・・。

永遠の子ども

カテゴリー:未分類

著者:フィリップ・フォレスト、出版社:集英社
 4歳の娘が小児ガンにかかったとき、父親はどうなるか、いや、どうするだろうか・・・。小児ガンは、先進国では子どもの死因として、事故に続く第2位を占めている。
 脱毛は病気の印、死の定めの印である。髪の毛とともに、小さな女の子は名前も性別も失い、小児ガン患者と呼ばれるものになる。
 小説は、時間の森への切り込みである。小説は真実ではない。しかし、真実なしには存在しない。小説はぼくたちに手を差しのべ、目のくらむ一点の近くまで導く。
 死の悲しみは語らずにいられない。人は言葉を探す。なぜなら、言葉は、死者に対して考えられる唯一の施しだから。ぼくたちの娘の死んだ長い年は、ぼくの人生でもっとも美しい一年だった。
 ええっ、こんなに言い切れるなんて、すごいと私は思いました。
 病院の世界がもっとも恐れる伝染病は、絶望である。死者はまず、名前を持つ権利を失う。
 文学の評論を自分の仕事だとしていた著者が娘の死を体験し、小説を書きました。透明感あふれる文体です。訳者から贈呈されて読みました。フランス語を長く勉強していてめぐり会えた本です。日本語としてよくこなれた読みやすい訳文だと感心しました。

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