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グラーグ

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著者:アン・アプルボーム、出版社:白水社
 ソ連集中収容所の歴史というサブタイトルのついた分厚い本(本文2段組み、650頁)です。主としてスターリンの恐怖政治のときに大「発展」を遂げた収容所ですが、スタートはレーニンの時代です。レーニンは、1918年夏に、貴族や商人などの革命の敵を信頼できない分子として集中収容所にぶちこむよう求めた。
 1929年、スターリンは、ソ連の工業化促進と人跡まれなソ連極北地帯の天然資源開発の両方に強制労働を利用することにした。
 第二次大戦期と1940年代を通じて収容所は拡大しつづけ、1950年代はじめに最大規模に達した。収容所はソビエト経済で中心的役割を演じるようになった。収容所は全国の産金額の3分の1、石炭と木材の産出額の大半を占め、その他のほとんどあらゆる産品を大量に生産していた。ソ連の収容所複合体は476ヶ所が確認されているが、それらは数千の個別収容所から構成されていた。
 収容所の囚人総数はざっと200万人。この大量弾圧システムを1800万人が通過した。このほか600万人が先祖伝来の地を追われ、カザフの砂漠やシベリアの森林に流刑された。
 スターリンの政治的後継者は、収容所が後進性と投資構造のひずみの元凶であることをよく知っていたので、スターリンが死んで数日したら解体が始まった。ゴルバチョフもグラーグ囚人の孫であり、1987年にソ連の政治囚収容所全体の解体に着手した。
 1941年から42年にかけての冬にグラーグ住民の4分の1が餓死した。同じころ、ドイツ軍に封鎖されたレニングラード市民100万人も餓死したと推定されている。
 ソ連における敵は、ナチス・ドイツのユダヤ人の定義よりずっと融通自在だった。死が絶対的に確定している囚人のカテゴリーはひとつもなかった。
 グラーグのおもな目的は経済的効果にあった。全体として死体量産をめざして故意に組織されたものではなかった。1939年から、経済効果がモスクワの最大の関心事となった。囚人は機械の歯車のように収容所の生産に組みこまれた。
 収容所内で、囚人は移動の自由が全部奪われたわけではなかった。監獄との相違点のひとつとして、作業と就寝の以外の時間に大多数の囚人はバラック内外を勝手に歩き回ることができた。そして、作業時間以外の時間をどうすごすかも、一定の制限内で自分で決めることができた。
 ただし、移動の自由は、たやすく無秩序に転化しかねなかった。パンは収容所では神聖化され、それをめぐって特別の不文律ができていた。パンを盗むのは極悪非道な許しがたい行為と見なされ、死刑だった。
 収容所で政治囚とされた数十万人の大多数は異論派でもなく、秘密礼拝をした聖職者でも、党のお偉方でもなかった。彼らは大量逮捕の網にかかった庶民であり、なんらかの確乎とした政治的見解をもっていたわけでもなかった。
 工場で働いて、10分の遅刻を2回くり返して5年間の収容所入り。パン10個を盗んで10年間の収容所入り。こんな人々が刑事囚だった。
 収容所の維持費は、囚人労働から得られた利潤をはるかに上まわっていた。1952年に国はグラーグに23億ルーブルを補助金として支出した。これは国家予算の16%だった。つまり、経済効果を狙ったはずの収容所は、とても非経済的だった。
 いかにも非人道的なソ連の収容所です。だけど、いまアメリカに囚人が200万人いて、刑務所産業が栄えているといいます。また、キューバにあるアメリカのグアンタナモ刑務所にはテロリストという口実で何年も正規の裁判を受けていない「囚人」が何百人もいるようです。
 ソ連はひどい、ひどかった。しかし、民主国家アメリカも同じようなことをいま現にしているのです。私には、こちらも黙って見逃せないのです。いえ、日本だって・・・。日本でも、ついに刑務所の民営化が始まりました。囚人が大量にうまれ、多すぎて「民間活力」を導入せざるをえないというのです。いつのまにかアメリカと同じ狂っている社会に日本もなってきました。小泉改革がそれに拍車をかけているのに、多くの日本人が「信念を貫く」という見せかけに惑わされて小泉に拍手しています。困ったことです。

MBAが会社をほろぼす

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著者:H・ミンツバーグ、出版社:日経BP社
 MBAは間違っているという内容の衝撃的な本ですが、なるほどと思いました。ダメな会社ほど、ビジネススクール出身者が目立つのはなぜだろう、という問いかけがあり、それはMBAが時代遅れの経営技術だからです、という答えがオビに書かれています。
 MBAをフルに活用した会社に、あの有名なインチキ会社エンロンがあります。エンロンは、1990年代、毎年250人の新卒MBAを採用し、大勢のMBA卒業生をかかえていた。エンロンは、ナルシスト型のリーダーをもっていた。このナルシストたちは、恐るべきマネージャーであり、他人の意見に耳を傾けず、実際以上に大きな手柄を主張する傾向がある。エンロンは人材重視の発想をもっていながら失敗してしまったのではなく、人材重視の発想をもっていたからこそ失敗した。人材神話は、人間が組織を賢くするという前提に立っている。実際は、その正反対だ。
 MBA卒業生がCEOになって、その企業はどうなったか。惨憺たる成績を見せたというしかない。19人のうち10人は会社が破産したり、更迭されたり、企業合併が失敗に終わったりしている。あと4人にも問題がある。すなわち、ハーバードMBAのもっとも優秀な卒業生とみられていた19人のうち、失敗しなかったと思われるのは、わずか5人のみ。MBAは、大勢の不適切な人材にあまりに大きな優位を与えている。マネージャーの評価は、仕事で決まるべきだ。
 ビジネスの世界で成功をおさめているMBA卒業生は、ビジネススクールで植えつけられた歪んだビジネス観を克服したからこそ成功できたのだ。
 MBA卒業生は、頭が良すぎるし、せっかちすぎるし、自信満々すぎる。独善的すぎるし、現実からあまりに遊離しすぎている。白馬に乗ってさっそうとやってくるヒーロー型マネージャーの多くは、ブラックホールのように企業の業績をのみ込んでしまう。
 アメリカでは、この10年間に100万人ほどのMBA卒業生が経済界に送り出されている。しかし、MBAプログラムは、間違った人間を間違った方法で訓練し、間違った結果を生んでいる。MBAの失敗の最大の原因は、学生の経験を活用できていないことにある。マネジメント経験のない人にマネジメントを教えるのは、ほかの人間に会ったことのない人に倫理学を教えるようなものだ。このたとえは、門外漢の私にもよく分かります。
 マネジメントは実践であり、専門技術ではない。時期尚早だと、正しい人物までも正しくなくなる。ビジネススクール卒業生は頭がいいし知識も豊富だが、物事の全体を見ることができない。複数の学問領域にまたがる問題になると対処することができない。
 ケースメソッドはロースクールでは有用だけど、ビジネススクールでは違う。MBA卒業生の際だった特徴は、傲慢であること。今日では、尊大な人間こそ、ビジネスの世界で出世できる。なるほど、そうですよね。日本でいうとホリエモン、村上、そしてオリックスの宮内がすぐに連想できます。
 能力なき自信は傲慢さを生む。MBA卒業生の名だたる傲慢さは、弱さのあらわれかもしれない。私も、そうかもしれないと思います。私は、この本を読んで、アメリカのMBA礼賛をきっぱり捨てました。むしろ、日本企業のOJTの方がよいという著者の意見に全面的に賛成します。

見えない貌

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著者:夏樹静子、出版社:光文社
 著者の5年ぶりの推理小説です。ハードカバーの600頁近い大作を読み終えて、ふーっと一息をついたとき、最後の頁の謝辞に目が留まりました。当会の船木誠一郎弁護士の名前が一番にあげられていました。私も弁護士会の役員になる前に、刑事弁護の課題について教えてもらったことがあります。船木弁護士は一時間ほどかけて懇切丁寧にさまざまな問題点を分かりやすく解説してくれました。今も感謝しています。この場を借りて、改めてお礼を申し上げます。
 推理小説ですから、あら筋などを紹介することはできません。ぜひ、あなたも手に取ってお読みくださいというしかありません。
 ただ、携帯電話とメールの利用についてだけ少し紹介します。出会い系サイトという言葉は、最近あまり聞きませんが、実際には大流行しているようです。名前はもちろんのこと、性別・年齢・職業なども隠し、また偽って誰かになりすましてメル友を求め、交流します。しかし、そのうち、どうしても会いたくなってしまいます。
 メール上では、人は自分と別個のネット人格を持つ。いや、別人格になりたくて、人はメル友をつくるのかもしれない。別人格から紡ぎ出されるメールは、とかくオーバーな表現になり、現実から浮遊して、声も表情も伴わない言葉だけが独り歩きしていく。
 最近の統計によると、女性のほうも、平均して10回のメールのやりとりをしたら、そろそろ会ってもいいだろうという気になる。この世界では、女性は待ちのスタンス、男が仕掛けていく。
 携帯メールの履歴(ログ)は取り出しに2ヶ月ほどかかるという。私も刑事事件で警察が関係する携帯電話とメールをすべて割り出して一本に時系列でまとめた解析表を見たことがあります。犯罪捜査のためですから当然のことでしょうが、携帯電話にはプライバシー保護なんて、ないのも同然なんだと、つくづく思ったことでした。

人体、失敗の進化史

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著者:遠藤秀紀、出版社:光文社新書
 人間の身体は失敗の連続だ、なんて言われると、かなりの違和感があります。むしろ、ありあわせの材料で、よくもこれだけ進化したものだと私なんぞは感心してしまいます。
 耳の歴史というと、設計変更の最たるもの、勘違いの中の勘違い、まったくその場しのぎで進化しているとさえいえる。耳小骨は爬虫類の頭のパーツ、それも顎の一部なのだ。
 初期の哺乳類は、上顎側にあった方形骨からキヌタ骨を、下顎の後端についていた関節骨からツチ骨をつくり上げてしまった。進化とは、かくも予測外のことを平気でやってのける。しかも、その結果は大成功で、できあがった耳は聴覚装置として2億年以上も支えている。
 オーストラリアにすむハリモグラは哺乳類にもかかわらず、卵をうむ。そして孵化した赤ん坊は、原始的な乳腺にかぶりついて育つ。この乳腺は、汗を分泌していた汗腺を改造したもの。
 ヒトの背骨は、まっすぐにはほど遠い。横から見ると、大きくS字を描くのが特徴である。このS字は、ヒトの重心の位置を決めるうえで、大切な役割を果たしている。
 ヒトは、まっすぐ立ったので、咽頭が重力の方向へ落ちこみ、咽頭の周辺領域に空洞がつくられた。この空洞をつかうと、筋肉の微妙な動きをもとに空気を震わせ、微細な声をつくりあげることができる。つまり、重力が90度傾いてくれたおかげで、言語を操るときに必須のヒト特有の発声装置をつくり出すことができた。声を出すために必要な音響機器が、直立二足歩行の副産物として生み出された。
 言語の中枢は左の脳に局在する。ヒトの脳は左側の方が右より大きい。右手をコントロールする左側の大脳の方が早く発達し、結果的に左が大きくなった。
 ヒトの身体がいかに精巧にできているか、その部品のつくりかたがよく分かる面白い本です。

巨大投資銀行(上)

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著者:黒木 亮、出版社:ダイヤモンド社
 案件としては、1件あたり最低100万ドル(2億5000万円)は儲かるものを追ってほしい。細かいビジネスはモルガン・スペンサーのビジネスではない。
 小説のはじめのころに出てくる上司の言葉です。なんという世界でしょうか・・・。一人あたり年間純利益で100万ドル上げていれば、何とかクビがつながる。200万ドルだと安泰。ええーっ・・・。
 自分、そして秘書。2人のアナリストの給与、直接経費、間接経費など一切合切を含めると、年間コストは100万ドルかかる・・・。うーん、なんという金額でしょう、まったく想像を絶します。
 朝起きると、顔を洗い朝食をとりながら、今日一日、どんなことをして、どんな展開になるか、すべて、予想する。すると、全身にアドレナリンが流れ、だんだん興奮してくる。その興奮状態で会社に行って、仕事に取りかかる。これがインベストメント・バンクで生き残る道だ。うひゃー、という叫び声を、ついあげてしまいました。私も、朝のうちに今日一日のスケジュールを予想し、頭のうちに自分のとるべき言動を予習します。それでも、ここまでは・・・。
 これは、年収5000万円の世界です。とてつもない金額が一瞬のうちに世界中を駆けめぐり、そこで、丁々発止の取引をしている人々の話です。私は、とてもこんな生活をしたいとは思いません。神経がすり減ってしまうだけ。お金の本当のありがたみも、まったく分からなくなってしまうとしか思えません。そして、ちょっとでも勘の鈍った人間は、たちまちお払い箱になるのでしょう。それでも、やめたときに大金が手元に残っていればいいのでしょうが・・・。あぶく銭になって消えているのではありませんか。
 いえ、それより心配なのは、精神状態がまともであるかどうか、です。余計な心配だと言われるかもしれませんが、私にはそれが一番の心配です。
 スイスの金融機関が日本の富裕層をターゲットとした活動を展開しているそうです。ターゲットにする富裕層とは、資産2億円以上。しかし、実際に狙うのは10億円以上で、なかでも核になるのは50億円以上の層だといいます。信じられない金額です。日本でも超リッチ層がアメリカ並みに生まれているのですね。
 いったい、どれくらいリッチ層がいるのでしょうか。最近の新聞によると、純資産額が1兆円から5億円までの富裕層は81万世帯。これは、前年比33%増。5億円以上のスーパーリッチ層は5万2千世帯で、前年比21%増。5000万円から1億円までの準リッチ層は280万世帯いるといいます。やはり、日本もアメリカ並みの格差社会になってしまったようです。「美しい国」どころか、アメリカのように怖くて醜い国になりつつあります。小泉内閣の5年間で、日本はすっかり変わってしまいました。でも、私はめげずに人々の心が通いあう社会をめざしたいと思います。

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