法律相談センター検索 弁護士検索

ルビコン

カテゴリー:未分類

著者:トム・ホランド、出版社:中央公論新社
 賽(さい)は投げられた。
 一か八か、運を天に任せる気になって、ようやくカエサルは軍団兵に全身命令を下した。
 有名なルビコン川は、幅は狭いし、取り立てて特徴もなく、今では正確な場所すら分からない。しかし、このルビコンは正真正銘の境界線だ。これを越えたカエサルは、昔から守られてきたローマの自由を葬り、その残骸の上に君主制を打ち立てた。これは自由と専制、混乱と秩序、共和制と貴族制、ルビコン川を境にすべてが逆転した。このことは、ローマ帝国が滅びてからも、ローマの跡を継ぐ者たちの頭からは、いつまでたっても離れることはなかった。
 カエサルは、紀元前100年7月13日に生まれた。
 ローマ人は、生まれながらにして市民になるのではない。父親には、新生児の要不要を決め、要らない息子や娘(こちらの方が多かった)を捨ててこいと命じる権利があった。生まれたばかりのカエサルは、まずお乳をもらう前に、父親に高く持ち上げられて、この男の子は自分の子であり、ゆえにローマ人だと周りの者に示してもらった。生まれた9日目は、名前を付ける日だ。ほうきで家から悪霊を追い払い、飛んでいく鳥の様子で男の子の未来を占う。
 ローマは「赤ん坊」にあたる言葉がない。子どもを鍛え始めるのに、早すぎることはないというのが、ローマ人の常識だった。新生児は大人の体型になるよう包帯でぎゅうぎゅうに縛られ、赤ん坊らしさは力づくで矯正された。一歳の誕生日を迎えられるのは、三人に二人で、その後、思春期まで生きられるのは、その半分にも満たなかった。
 娘は、嫁いで家を出た後も父親が後見人をつとめたし、息子の方も、何歳になろうと、たとえ政務官に何度当選しようと、父親の保護下から離れることは絶対になかった。ローマの父親ほど、家長と呼ぶにふさわしい父親もいない。
 ローマでは、誰もが法律に強い関心を寄せていた。市民は、法律制度のおかげで自分たちは市民として生活でき、権利が保障されているのだと、きちんと分かっていた。
 男子は幼いころから、戦争へ行くため身体を鍛えるのと同じように、弁護士を開業できるよう一心不乱に頭も鍛えた。大人の社会では、弁護士業は、元老院議員が軍人以外に威厳を傷つけられずに行える唯一の職業だと考えられていた。法律は政治活動とは切っても切れないものであり、知らされないではすまされないもの。
 ローマには、現代の検察にあたる公的機関がなかった。起訴はすべて個人でおこなわなければならない。だから、個人的恨みを法廷に持ち込むのも朝飯前だ。被告が重大犯罪で有罪と認められたら、表向きは死刑が宣告されることになっていた。しかし、実際には、ローマには警察組織も刑務所制度もなかったので、死刑判決を受けた者は、こっそり国外に亡命することができた。身の回りの資産を没収される前に国外に持ち出せば、亡命先で裕福に暮らすことさえ可能だった。ただ、政治生命は完全に絶たれる。犯罪者は市民権を剥奪されるだけでなく、再びイタリアに一歩足を踏み入れるようなものなら、だれに殺されても文句は言えなかった。
 裁判では、どんな卑劣な策略も、どれほど悪質な暴露話もとことん非道な中傷も、勝つためなら平気だった。裁判は、選挙をもしのぐ、生死をかけた戦いだった。
 裁判はスリル満点の観戦スポーツだった。だれでも自由に傍聴できる。目の肥えた法廷ファンは、いつでも、たくさんのなかから見たい裁判を選ぶことができた。弁論家にとっては、傍聴人の入り具合が自分への評価のバロメーターになった。
 ローマ人の常識では、法律を研究するのは、弁論家の才能のない人間のすること。巧みな話術こそ、法廷での才能を測る本当の物差しだった。群衆や傍聴人を相手に、その心をつかみ、笑いや涙を誘い、お決まりのジョークでどっと沸かせたかと思えば、一同をジーンと感動させる。ときには説得し、ときにはアッと驚かせ、世の中の見方を変えさせる。こういうことができてこそ、一流の法廷弁護人と言える。だから、ローマでは、原告と俳優をどちらも同じ「アクトル」という言葉で表していた。
 ブルータス、おまえもか。
 シーザー(カエサル)の言葉は有名ですが、当時の法廷弁論術についての紹介は大変面白いものがあります。日本でも、いよいよ裁判員制度が始まります。フツーの市民から成る裁判員に対して、どれだけ分かりやすい言葉で話しかけ、理解してもらうことができるか、弁護士も検察官も、本当の力量が問われる世の中になりつつあります。

和を継ぐものたち

カテゴリー:未分類

著者:小松成美、出版社:小学館
 この国にはまだ、あなたの知らない仕事がある。オビにそう書かれていますが、実際そのとおりでした。うむむ、すごーい。つい何度もうなってしまいました。
 香道というのがあるそうです。初めて知りました。一定の作法にもとづいて香木を焚(た)き、その香りを鑑定するのが香道です。香りを楽しむことを、聞くと表現します。まさしく風雅の道です。室町時代、足利義政のころ香宴の指導的役割をつとめ、香道の始祖といわれる三條西(さんじょうにし)実隆(さねたか)からはじまり、今も23代公彦(きんよし)が香道にいそしんでいるのです。
 香りをゲーム形式で楽しんでいるのは、恐らく日本だけ。ヨーロッパの香水とくらべると、日本の香木の香りは香水ほど強くないので、鼻のなかに前の匂いがずっと残ることはない。香りが強烈でないから、繰りかえし繰り返し、長いあいだ楽しむことができる・微(かす)かな匂いだからこそ、今まで続くことができた。公家が愉(たの)しんだ練香のつくり方は、代々名家の秘伝だった。練香は、練り固めたあとに壺にいれて10日ほど土の中に寝かせてからでないと使えない。だから、すぐに薫物あわせなどの遊びはできない。
 楊貴妃は、自分のつくり方で練香をつくり、それを飲んでいた。そうすると、身体の中からいい香りがしてくる。うへーっ、本当でしょうか。今そんなものを商品として売りに出したら、爆発的に売れるんじゃないでしょうか。
 香木は、樹液が固まるとき、空気中にある細菌と結びついて樹脂ができ、それが沈着して固まったもの。やがて木が朽ちて倒れて土の中に埋まると、木の部分が腐ってなくなるが、樹脂の部分は残る。それを現地の人が探し出すというのが昔からの採取法だった。
 和ローソクをつくり続けている人がいます。昔ながらのハゼの木の実から絞ってつくる製法です。和ローソクは、仏教伝来にともない中国から入ってきた。奈良時代には和ローソクがあった。本体はハゼの木の実を絞ったものを原料とし、灯芯はイグサ科の灯芯草をつかう。畳表用のイグサとは別のもの。
 一本のローソクを完成させるのに、5日から一週間かかる。和ローソクは原料が植物なので、溶けたときの香りが自然で心地いい。洋ローソクはパラフィンなどの石油をつかうので、仏壇などのススがべったりしているが、和ローソクだと簡単に洗浄できる。
 流鏑馬(やぶさめ)をはじめ、日本古来の弓馬道(きゅうばどう)を伝える武田流。日本古来の馬術は西洋の馬術とまったく異なる。乗り方も、鞍鐙(くらあぶみ)も全然違う。西洋馬術では、なるべく馬に負担をかけず、馬の操作をしやすくしてある。それで障害を飛んだり芸をしたり、そういうことに適した鞍の構造になっている。
 日本馬術のポイントは鐙。鞍ではなく、鐙に重きをおく。鐙をきちっと踏み、上体を立ち透かすという乗り方は、日本だけの発想。たとえば戦闘では、槍や弓をもったら手を離して鐙と脚だけで馬を操作する。それができるからこそ槍や弓を使いこなせる。日本の鞍や鐙は、そのために機能的かつ合理的なつくりになっている。
 ところが、明治になって西洋一辺倒になった結果、日露戦争では、ロシアのコザック騎兵に敗れてしまった。黒澤明監督の「七人の侍」「影武者」には、この武田流の馬術が正しくとり入れられている。ひゃあ、そうだったんですかー・・・。
 流鏑馬は難しいのでは、という問いかけに対する答えは次のようなものです。
 座禅を組むと、いわゆる無我の境地が訪れるというけれど、それが馬上で起こる。的が異様にゆっくりと近づいてきて、なんでこんなに大きい的なんだろう。これならどこを射っても当たるんじゃないかと思える。また、弓を構えると的まで白い線が伸びて、矢を離すと、その線のとおりに進んで的に当たる。
 ホントにこの世はまだまだ知らないことだらけですね。

戦争大統領

カテゴリー:未分類

著者:ジェームズ・ライゼン、出版社:毎日新聞社
 コンドリーザ・ライスはブッシュ大統領と親密な結ぶつきはあるが、重要な案件を実行する能力や権限に欠けていた。外交政策を立案したのは、副大統領府や国防長官官房など、ふつうでは考えられない部署で、それもごく少数のスタッフによって行われた。
 ホワイトハウスでは政策が議論されないのが、あたりまえになっていた。ブッシュ大統領の上級補佐官が正式な会議を開いてイラク侵攻の是非を議論したことは一度もなかった。きちんと機能する管理機構が欠けていることが、ブッシュ政権の外交政策の大きな特徴になっている。そのため、ろくに検討もされずに過激な決定が実施されてきた。
 ええーっ、ウソでしょ。そう叫びたくなる記述です。
 ブッシュ大統領は、FBIや国防総省を除外して、CIAにアルカイダ幹部の処理を一任した。FBIでなく、CIAを第一の担当部局にしたのは、法執行機関を中心にテロと戦うというクリントン時代のやり方を一変させるためだった。アルカイダは法執行機関が対処する問題ではなく、国家安全保障に対する脅威であるというのがブッシュの判断だった。だから、アルカイダ幹部をアメリカに連行して公判にかけるというやり方はしない。
 大人数の捕虜を拘禁する収容所を運営した経験のないCIAが、手荒な手段を用いてもよいというゴーサインをもらうと、それまではジュネーブ条約を遵守することで定評のあったアメリカ軍もルールを変えた。CIAの収容所が、ひそかに世界各地に建設された。一ヶ所はアフガニスタンにあるが、もう一ヶ所は厳重秘となっている。タイやポーランド、ルーマニアなどにも収容所がある。CIAは、被収容者の身許を明らかにしていない。
 NSAは、ターゲットとするアメリカ人ほとんどすべての電子メールを傍受する能力を備えている。インターネットの知られざる本質のひとつは、インフラをアメリカが独占していることで、世界中の電子メールのトラフィックの大部分は、アメリカ国内にあるキャリアのネットワークを一度は経由する。つまり、ドイツとイタリア間の電子メールがアメリカを通って送られることがある。ブッシュ大統領の秘密命令によって、NSAはアメリカ国内の無数の電子メールに加えて、海外の電子メールをなんの制約もなしに詳しく調べられるようになっている。
 NSAがプログラムによって電話と電子メールを監視している海外在住の対象者は7000人に及ぶ。アメリカ国内の500人の通信もターゲットになっている。NSAは一日平均数千件の電話や電子メールなどのアメリカ国内の通信を傍受している。
 CIA上層部は、何年も前からイラク情報の収集に重大な欠陥があるのを承知しながら、イラクには大量破壊兵器があるという情報を強引に広めてきた。イラクではスパイを勧誘できないという致命的欠陥を当時のCIA上層部はみな承知していた。
 CIAのバグダッド支局長は、状況の悪化を率直に報告書に書いた。しかし、真実を告げるという、許されざる罪を犯したことになった。2003年夏に同支局に勤務している人員は80人以下だった。同年末には300人以上となっていた。支局長は、その年のうちに突然、失脚した。
 2005年夏、CIA長官はイラクでアメリカは敗北を喫しつつあるという秘密のブリーフィングを受けた。CIAが率直になったのは、イラク戦争が失敗になったことが多くのアメリカ国民に明らかになったあとのことだった。

瀕死のライオン

カテゴリー:未分類

著者:麻生 幾、出版社:幻冬舎
 自衛隊のなかに特殊作戦群(SOG)が存在することは報道されています。陸上自衛隊の精鋭である第一空挺団の隊員を中心とする300人編成です。2004年3月、防衛庁長官の直轄部隊です。指揮官は群長と呼ばれ、一等陸佐であること以外は秘密です。対テロ、対コマンド部隊ということですが、それ以上は何も公表されていません。
 内閣情報調査室(CIRO、サイロ)は、内閣総理大臣の決断を直接支える情報機関であり、トップの内閣情報官は、歴代、警察官僚が占めています。その活動一切が非公開です。この本は、この2つの組織の実態をベースとしています。
 特殊作戦群の隊員の訓練状況が描かれていますが、実にすさまじいものです。まずは人殺しなること、そのうえで、自分の頭で考えろ、というのです。両者は根本的に矛盾します。本当によく考えて人を殺せるものなのでしょうか・・・。そして、その訓練はすべて英語です。いかにもアメリカ軍のもとで訓練されてきたことを思わせます。
 付与した設想を復唱しろ。
 なんとも奇妙な日本語です。タスキングしたシナリオを復唱しろ、とルビがふってあります。日本の自衛隊は、大小兵器のサイズがすべてアメリカのものと同一になっていて、日本独自のサイズはないといいます。アメリカは日本軍が独立することを恐れて、許さないというのです。そして、アメリカ製兵器のもっとも大事な部分の製造方法は日本に教えていません。武器・弾薬についてもアメリカの言いなりになるしかない構造なのです。
 残念ながらアメリカの国家戦略と日本の安全保障とは、必ずしも一致しない。
 こんなセリフが出てきます。考えてみれば、まったく当然のことです。アメリカが自国のことを優先させる。言いかえると、日本をあとまわしにするのは当然のことです。自分の国の利害を考えず、まっさきに日本をアメリカが守ってくれるなど、万に一つも考えられることではありません。しかし、自民党を支持する多くの日本国民が、何かあったらアメリカは日本を守ってくれるはずだと盲信しています。恐ろしいことです。
 そしてまた、軍隊というものは自分(軍隊)を守るものであって、国民を守るということはないことも自明のことです。国民は、軍隊にとって邪魔で馬鹿な集団に過ぎません。このことは戦前の日本だけでなく、洋の東西で証明し尽くされてきた真理です。軍隊は、自分に余裕のあるときに限って、ついでに一般国民のことを考えるに過ぎません。軍隊に化した集団に思いやりなんて期待するほうが無理というものです。ですから、防衛省なんてつくって、彼らを野放しにしたらいけないのです。
 自衛隊の特殊作戦群が北朝鮮に潜入し、ある行動を起こすというストーリーです。まるでありえない状況というわけにはいかないところが怖いところです。
 瀕死のライオンというのは、スイスのルツェルンにあるライオン像のことです。私も、何年か前に見てきました。大きなライオン像です。スイスはヨーロッパ各国へ傭兵を輸出していました。フランス革命のときに、チュイルリー宮殿でルイ16世を守って生命を落とした786人のスイス傭兵に対する慰霊碑としてつくられた像です。
 ルツェルンには大きな湖があり、白鳥が優雅に泳いでいました。
 日本のスーパー自衛隊員が活躍する小説を読みながら、日本の平和を自衛隊にまかせていたら危ない、軍隊に頼って平和は守ることはできないと、つくづく思ったことでした。

健康診断・人間ドッグが病気をつくる

カテゴリー:未分類

著者:中原英臣、出版社:ごま書房
 医師が書いた本だとは、とても思えない本です。
 健康診断は、収益を重視しすぎる、見落としが多い。検査項目が中途半端だ。
 毎年、数千億円を費やしている健康検査の大部分は十分な根拠のないまま行われている。
 健康習慣を真面目に続けると、かえって短命になるというフィンランドの調査結果があるそうです。つまり、個人の事情を無視した健康管理は効果がないのです。
 X線検査には悪影響があり、短期間に何度も受けるべきではない。
 胃カメラを飲んだ1万4280人のうち1人は、この検査による医療事故にあっている。早期の肺がんは、症状がないので発見されにくい。胸部X線検査では早期の肺がんは見つかりにくい。
 CT検査だと放射線の被曝料が多くなるので、人体へのリスクが大きい。
 がん検診そのものの有効性は検証されていない。PETによるがん検診で85%のがんが見逃されている。
 高血圧や高脂血症の薬は、今や製薬会社にとってのドル箱だ。
 人間ドッグの受診者は、1984年に41万人、1996年に237万人、2003年311万人と急増している。この10年間で100万近く増えている。そして、その結果、異常なしという受診者は12%のみ。受診者の88%には何らかの異常があったことになる。正常値から少しでも外れると異常だというわけ。
 1965年に医師は11万人ほど。ところが、2004年には27万人以上になった。35年間で医師は2.5倍も増えた。医師は健康な人を病気にすることができる。
 脳ドッグは、小さな異常までよく見つかるので、手術を受けることになる可能性がある。しかし、それは怖いこと。脳の手術を受けたときのリスクは大きい。
 この本を読むと、下手に健康診断や人間ドッグは受けないほうがいいということが良く分かります。ところが、実は、私は40歳になってから、なんと毎年2回、人間ドッグに入っているのです。しかも、日帰りではなく、なんと一泊ドッグなのです。私にとって、人間ドッグは逮捕されそうになったとき検査入院という名目で病院へ逃げこむ口実と同じことです。つまり、静養したいということです。ですから、決して土・日曜日や祝祭日には入りません。平日に2日間、ゆっくり本を読むために入るのです。といっても、検査結果で何度かひやっとしたことはあります。でも、なんとか無事に今日に至っています。
 幸いにして、日ごろ薬はまったく飲みません。人間の自然治癒力を信じ、規則正しい生活を心がけています。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.