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笑いの免疫学

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著者:船瀬俊介、出版社:花伝社
 著者も団塊の世代です。北九州の荒牧啓一弁護士は早稲田大学の同級生だったそうです。消費者問題などの著書があり、私もいくつか読んだ覚えがあります。この本は、その延長線上にあるものでしょう。なかなか面白く、画期的な内容の本です。
 かの有名なシュバイツァー博士は、こう言った。
 いつも、自分がどんな病気にかかろうと、一番いい薬は、すべき仕事があるという自覚に、ユーモアの感覚を調合したものである。なるほど、ですね。
 たとえ若い人でも、健康な人でも、一日に約3000〜5000個くらい、がん細胞は発生している。毎年31万人が死んでいると言われるがん患者の8割、25万人は抗がん剤や放射線、手術などのがん治療で殺されている。白血病やリンパ球腫などを除いて、抗がん剤で治るがんはない。抗がん剤により、命を短くしている印象すらある。
 患者には抗がん剤をつかいながらも、自分ががん患者になったときには抗がん剤の投与を必死になって拒む。抗がん剤以外の代替療法でがんからの生還を期す医師(医学部教授)は少なくない。
 毎日、数千個も産まれているがん細胞が無限に増殖せずに、人類が100万年以上も生きのびてこられたのは、がん細胞の増殖を抑える免疫細胞があるから。キラー細胞の強い人の生存率は弱い人の2倍以上。だから、がん治療の最大の目的は、このキラー細胞を強くすることに尽きる。
 ところが、がんに対する三大療法は、どれも患者の免疫力を徹底的に叩き、弱らせてしまう。つまり、がんと戦うキラー細胞を徹底攻撃している。三大療法とは、抗がん剤、放射線、手術のこと。これは、実は、がん応援療法なのだ。
 抗がん剤の最大攻撃目標は、患者の造血機能。赤血球が殲滅されて、悪性貧血になる。血小板が壊滅して内臓出血で多臓器不全で死亡する。また、リンパ球も消滅させられる。ナチュラル・キラー細胞は、リンパ球の一種。だから、抗がん剤の投与で、がんを攻撃するキラー細胞は全滅し、がん細胞が大喜びする。放射線治療でも、造血機能が殲滅される。
 ところが、笑うことで脳血流が増加し、脳が活性化し、記憶力もアップすることが具体的な数値で立証されている。笑いは深呼吸に勝る。大量に息を吐くことで、その後、酸素を大量に取りこむ大深呼吸となる。ストレスで脳は興奮状態になり酸素を急激に消費する。すると脳細胞は酸欠となり、機能が低下する。しかし、笑うと大量の酸素が脳に取りこまれ、弱った脳細胞にいきわたり、脳のはたらきが活性化する。気分がスッキリすると、ストレス物質コルチゾールが減少し、ストレス状態が鎮められる。
 著者は、『笑うと免疫力』(ノーマン・カズンズ、岩波書店)を推奨しています。私も読みましたが、笑いはたしかに心身を健康にするものだと実感しています。
 私の法律事務所では、幸いなことに笑いが絶えません。ただし、深刻な相談を受けているときに大きな笑い声が聞こえてきて困ることもあります。それでも、深刻な内容を笑い飛ばせるような心の触れあいと交流を相談に来た人としたいものだと考えています。

社長の椅子が泣いている

カテゴリー:未分類

著者:加藤 仁、出版社:講談社
 一代で大企業をつくりあげたオーナーの前では、立派な実績をあげた有能な社長であっても、簡単に社長を解任されることがあるのですね。オーナーは可愛い我が子を企業の存続・発展を無視してまで優遇してしまうのです。まるで豊臣秀吉の世界です。その理不尽さに呆れてしまいました。
 舞台は静岡県の浜松市です。ここにホンダとヤマハが生まれました。ホンダの社長とヤマハの社長とが兄弟だったなんて、ちっとも知りませんでした。当事者も、それぞれの社員の手前、それを隠していたそうです。実の兄弟であり、ケンカしていたわけではなく、むしろ仲は良かったのに、公然と会うのは遠慮していたというのですから、やはり世間の目はそれだけ厳しいということですね。
 この本の主人公は、46歳でヤマハの社長になった弟の方です。アメリカにも6年半いました。ただし、社長の在任期間はわずか3年あまりで、ある日突然、オーナー(創業者)に解任されてしまったのです。
 会議をやれば、人間の能力がわかるんだよ。だれが馬鹿か、だれが利巧かね。
 組織の最高権力者からこのような牽制球を投げられると、管理職は萎縮し、プレゼンテーションひとつとっても、権力者の気に入るようにするのが会議の主流となる。
 ヤマハにおける川上源一は、実は、創業経営者でもなければ、オーナー経営者でもなかった。川上一族が所有する日本楽器の株式を合計しても3%にみたず、いわゆるサラリーマン経営者である。それでも源一が社長そして会長と30年にわたって君臨しえたのは、親が東大「銀時計」であるという出藍の誉れ、昭和30年代までのリーダーシップ、後継者候補を切り捨て続けた人事操作、くわえて自分を「殿さま」と思ってはばからない個性によるものだった。なるほど、そういうことだったのですかー・・・。それにしても、企業を私物化するエセ・オーナーって怖い存在ですね。
 徹底したマニュアル化は、人間のロボット化にほかならず、ノー・シンキングの社員を輩出することになりかねない。必要なのは、自分で問題を発見し、解決する人材である。
 河島博はヤマハ社長を解任されたあと、ダイエーの中内功に請われてダイエーの副社長に就任しました。ダイエーの建て直しに功績をあげ、続いてリッカーミシンの再建に力を注いだ。ところが、中内功に追放されてしまうのです。
 企業における社長の椅子がこんなにも重く、また軽いものなのか、驚き呆れながら500頁近い大作を読み通しました。

死刑執行人の記録

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著者:坂本敏夫、出版社:光人社
 懲役受刑者は四級からはじまり、三、二、一級と進級する。上位の級に進むにしたがって自由の範囲が広がり、社会復帰が近くなる。1933年(昭和8年)につくられた、当時は世界の最先端をいく画期的な制度だった。
 自由の範囲というのは、手紙を出せる回数、面会できる回数、自分のものがつかえる日用品等の物品の種類がふえるということ。手紙だったら、四級は月一回、三級は月二回、二級は週一回、一級になると毎日出せる。一級者になると、着衣や身体の検査もなく、独歩といって、刑務官の付き添いなしで構内を歩くことも認められる。
刑務官は1万5000人。その90%は幹部養成の研修も試験も受けない。幹部は転勤をともなうから。
 仮釈放は、刑務所の推薦があってはじめて審査の対象となる。それはパロール審査会で決まる。そのときもっとも参考にされるのは処遇係長の意見。
 死刑の執行は判決が確定してから6ヶ月以内に行うと刑事訴訟法に定められているが、実際には10年前後経過して行われている。もちろん、先日の大阪の例のような例外はある。
 絞首刑によって心臓が停止するまで、つまり生物学的に死亡するまでの平均時間は10分だといわれている。
 処刑に立会するのは高等検察庁の検察官と検察事務官、拘置所の所長、教誨師、医務課長。
 日本における死刑執行の状況を小説という形をとって克明に再現した本です。死刑執行の是非を真面目に考えるときにはぜひ読んでほしい本だと思いました。

ナスカ、地上絵の謎

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著者:アンソニー・ド・アヴェニ、出版社:創元社
 ナスカの地上絵は、世界の8番目の不思議、考古学最大の謎とも呼ばれてきた。ペルー南部の海岸近く、石と砂の大地に1000平方メートルの広さに1000以上の図像がある。1930年代に航空機のパイロットたちに発見された。
 パンパに刻まれた生物のなかで、もっとも多いのは鳥。最大のグンカンドリを描いたと思われるものは、6万7000平方メートルのスペースを占めている。コンドル、ペリカン、ウ、ハチドリ、そしてトカゲ、キツネ、サル、クモ、魚、昆虫。
 1200年以上前に刻まれたにもかかわらず、ラインは当初の状態をかなり良く保っている。これはパンパが比較的安定した状態にあることによる。風による侵食は最低限であり、水によるごくまれでなきに等しい。
 ひとつのチームの作業員が石を集めて積み上げ、その石をつかって別のチームがはっきりした黒い縁取り線をつくっている。ライン・センターの上に立つ親方が線のふちがまっすぐになるように照準棒をもった作業員に指示を出している。
 一般の人々が抱くイメージとはちがって、2000年前のナスカにはラインをつくるための労働力は豊富にあった。ナスカには、土器と織物だけでなく、かなりの数の建築物が現有する。居住地跡と埋葬跡も数多くある。

また会う日まで

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著者:早瀬圭一、出版社:新潮社
 私も、いつのまにか老後のことを少しは考えなくてはいけないと思うようになってきました。いよいよ団塊世代も50代から60代へ突入しようとしているのです。
 この本はラビドールという名の高級老人ホームの物語です。ラビドールというと、なんだかウサギ(ラビット)の小屋という響きですが、そうではありません。私の好きなフランス語で、「黄金の人生」というのです。
 入居一時金は6000万円以上です。そのうえ、管理費が月7万4000円(夫婦2人だと10万1000円)。食事は月6万円(2人で12万円)。要するに、一時金として6000万円もの大金を支払ったうえで、夫婦なら月24万円ほど支払っていかなければなりません。まさしく高級の有料老人ホームです。
 いったい、どんな人がこんな老人ホームに入っているかというと、大企業の管理職の退職者や公認会計士、大学教授といった人たちです。それでも、ここは良心的な老人ホームのようです。アルツハイマー症にかかった妻は24時間介護が必要になりました。1ヶ月56万円かかるうち、介護保険から出るのは、24万5400円。残りは老人ホームが全額負担してくれるというのです。預かり金から支払うのです。この老人ホームは終身介護の保証をうたい文句としているからです。だから、夫が負担するのは、一ヶ月のおやつ代3000円、リネンの洗濯代4000円、おむつ代1万5000円くらいのもの。
 2001年10月時点で、全国にある有料老人ホームは400施設、入居者は4万人ほど。ええーっ、こんなに少ないのかと驚いてしまいます。
 有料老人ホームにあっては、経営の安定と永続性にこそ事業目的が求められるべきである。しかし、現実には、このラビドールの母体だった千代田生命は経営が破綻してしまいました。そのとき、入居者がどうしたか。
 動揺して退出者が続出したら存続は危うい。しかし、みながじっと入居したままだと絶対大丈夫と叫ぶ人がいて、存続することができた。
 千代田生命のあとを日立グループの日立ビルシステムが引き受けた。入居者は、ものすごい不安を感じたと思います。でも、なんとか乗りこえたようです。
 私も福祉をビジネスにしてはいけない、なんてことは思いません。しかし、人間なら、誰しも等しく安全・快適な老後を過ごせるように保障するのが政治の役割ではありませんか。大金持ちだけが老後を快適に過ごせる社会は間違っています。オリックスの宮内義彦会長は、自分だって既に老人になっているにもかかわらず、老人切り捨ての先頭に立ち、金もうけだけにしか目がありません。そして52歳の首相は自分をまだ若いと錯覚しています。日本はますます年寄りに冷たい政治を目ざしています。あー、いやだ、いやだ。本当に嫌になってしまいます。でも、あきらめたわけではありません。

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