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戦争大統領

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著者:ジェームズ・ライゼン、出版社:毎日新聞社
 コンドリーザ・ライスはブッシュ大統領と親密な結ぶつきはあるが、重要な案件を実行する能力や権限に欠けていた。外交政策を立案したのは、副大統領府や国防長官官房など、ふつうでは考えられない部署で、それもごく少数のスタッフによって行われた。
 ホワイトハウスでは政策が議論されないのが、あたりまえになっていた。ブッシュ大統領の上級補佐官が正式な会議を開いてイラク侵攻の是非を議論したことは一度もなかった。きちんと機能する管理機構が欠けていることが、ブッシュ政権の外交政策の大きな特徴になっている。そのため、ろくに検討もされずに過激な決定が実施されてきた。
 ええーっ、ウソでしょ。そう叫びたくなる記述です。
 ブッシュ大統領は、FBIや国防総省を除外して、CIAにアルカイダ幹部の処理を一任した。FBIでなく、CIAを第一の担当部局にしたのは、法執行機関を中心にテロと戦うというクリントン時代のやり方を一変させるためだった。アルカイダは法執行機関が対処する問題ではなく、国家安全保障に対する脅威であるというのがブッシュの判断だった。だから、アルカイダ幹部をアメリカに連行して公判にかけるというやり方はしない。
 大人数の捕虜を拘禁する収容所を運営した経験のないCIAが、手荒な手段を用いてもよいというゴーサインをもらうと、それまではジュネーブ条約を遵守することで定評のあったアメリカ軍もルールを変えた。CIAの収容所が、ひそかに世界各地に建設された。一ヶ所はアフガニスタンにあるが、もう一ヶ所は厳重秘となっている。タイやポーランド、ルーマニアなどにも収容所がある。CIAは、被収容者の身許を明らかにしていない。
 NSAは、ターゲットとするアメリカ人ほとんどすべての電子メールを傍受する能力を備えている。インターネットの知られざる本質のひとつは、インフラをアメリカが独占していることで、世界中の電子メールのトラフィックの大部分は、アメリカ国内にあるキャリアのネットワークを一度は経由する。つまり、ドイツとイタリア間の電子メールがアメリカを通って送られることがある。ブッシュ大統領の秘密命令によって、NSAはアメリカ国内の無数の電子メールに加えて、海外の電子メールをなんの制約もなしに詳しく調べられるようになっている。
 NSAがプログラムによって電話と電子メールを監視している海外在住の対象者は7000人に及ぶ。アメリカ国内の500人の通信もターゲットになっている。NSAは一日平均数千件の電話や電子メールなどのアメリカ国内の通信を傍受している。
 CIA上層部は、何年も前からイラク情報の収集に重大な欠陥があるのを承知しながら、イラクには大量破壊兵器があるという情報を強引に広めてきた。イラクではスパイを勧誘できないという致命的欠陥を当時のCIA上層部はみな承知していた。
 CIAのバグダッド支局長は、状況の悪化を率直に報告書に書いた。しかし、真実を告げるという、許されざる罪を犯したことになった。2003年夏に同支局に勤務している人員は80人以下だった。同年末には300人以上となっていた。支局長は、その年のうちに突然、失脚した。
 2005年夏、CIA長官はイラクでアメリカは敗北を喫しつつあるという秘密のブリーフィングを受けた。CIAが率直になったのは、イラク戦争が失敗になったことが多くのアメリカ国民に明らかになったあとのことだった。

瀕死のライオン

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著者:麻生 幾、出版社:幻冬舎
 自衛隊のなかに特殊作戦群(SOG)が存在することは報道されています。陸上自衛隊の精鋭である第一空挺団の隊員を中心とする300人編成です。2004年3月、防衛庁長官の直轄部隊です。指揮官は群長と呼ばれ、一等陸佐であること以外は秘密です。対テロ、対コマンド部隊ということですが、それ以上は何も公表されていません。
 内閣情報調査室(CIRO、サイロ)は、内閣総理大臣の決断を直接支える情報機関であり、トップの内閣情報官は、歴代、警察官僚が占めています。その活動一切が非公開です。この本は、この2つの組織の実態をベースとしています。
 特殊作戦群の隊員の訓練状況が描かれていますが、実にすさまじいものです。まずは人殺しなること、そのうえで、自分の頭で考えろ、というのです。両者は根本的に矛盾します。本当によく考えて人を殺せるものなのでしょうか・・・。そして、その訓練はすべて英語です。いかにもアメリカ軍のもとで訓練されてきたことを思わせます。
 付与した設想を復唱しろ。
 なんとも奇妙な日本語です。タスキングしたシナリオを復唱しろ、とルビがふってあります。日本の自衛隊は、大小兵器のサイズがすべてアメリカのものと同一になっていて、日本独自のサイズはないといいます。アメリカは日本軍が独立することを恐れて、許さないというのです。そして、アメリカ製兵器のもっとも大事な部分の製造方法は日本に教えていません。武器・弾薬についてもアメリカの言いなりになるしかない構造なのです。
 残念ながらアメリカの国家戦略と日本の安全保障とは、必ずしも一致しない。
 こんなセリフが出てきます。考えてみれば、まったく当然のことです。アメリカが自国のことを優先させる。言いかえると、日本をあとまわしにするのは当然のことです。自分の国の利害を考えず、まっさきに日本をアメリカが守ってくれるなど、万に一つも考えられることではありません。しかし、自民党を支持する多くの日本国民が、何かあったらアメリカは日本を守ってくれるはずだと盲信しています。恐ろしいことです。
 そしてまた、軍隊というものは自分(軍隊)を守るものであって、国民を守るということはないことも自明のことです。国民は、軍隊にとって邪魔で馬鹿な集団に過ぎません。このことは戦前の日本だけでなく、洋の東西で証明し尽くされてきた真理です。軍隊は、自分に余裕のあるときに限って、ついでに一般国民のことを考えるに過ぎません。軍隊に化した集団に思いやりなんて期待するほうが無理というものです。ですから、防衛省なんてつくって、彼らを野放しにしたらいけないのです。
 自衛隊の特殊作戦群が北朝鮮に潜入し、ある行動を起こすというストーリーです。まるでありえない状況というわけにはいかないところが怖いところです。
 瀕死のライオンというのは、スイスのルツェルンにあるライオン像のことです。私も、何年か前に見てきました。大きなライオン像です。スイスはヨーロッパ各国へ傭兵を輸出していました。フランス革命のときに、チュイルリー宮殿でルイ16世を守って生命を落とした786人のスイス傭兵に対する慰霊碑としてつくられた像です。
 ルツェルンには大きな湖があり、白鳥が優雅に泳いでいました。
 日本のスーパー自衛隊員が活躍する小説を読みながら、日本の平和を自衛隊にまかせていたら危ない、軍隊に頼って平和は守ることはできないと、つくづく思ったことでした。

健康診断・人間ドッグが病気をつくる

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著者:中原英臣、出版社:ごま書房
 医師が書いた本だとは、とても思えない本です。
 健康診断は、収益を重視しすぎる、見落としが多い。検査項目が中途半端だ。
 毎年、数千億円を費やしている健康検査の大部分は十分な根拠のないまま行われている。
 健康習慣を真面目に続けると、かえって短命になるというフィンランドの調査結果があるそうです。つまり、個人の事情を無視した健康管理は効果がないのです。
 X線検査には悪影響があり、短期間に何度も受けるべきではない。
 胃カメラを飲んだ1万4280人のうち1人は、この検査による医療事故にあっている。早期の肺がんは、症状がないので発見されにくい。胸部X線検査では早期の肺がんは見つかりにくい。
 CT検査だと放射線の被曝料が多くなるので、人体へのリスクが大きい。
 がん検診そのものの有効性は検証されていない。PETによるがん検診で85%のがんが見逃されている。
 高血圧や高脂血症の薬は、今や製薬会社にとってのドル箱だ。
 人間ドッグの受診者は、1984年に41万人、1996年に237万人、2003年311万人と急増している。この10年間で100万近く増えている。そして、その結果、異常なしという受診者は12%のみ。受診者の88%には何らかの異常があったことになる。正常値から少しでも外れると異常だというわけ。
 1965年に医師は11万人ほど。ところが、2004年には27万人以上になった。35年間で医師は2.5倍も増えた。医師は健康な人を病気にすることができる。
 脳ドッグは、小さな異常までよく見つかるので、手術を受けることになる可能性がある。しかし、それは怖いこと。脳の手術を受けたときのリスクは大きい。
 この本を読むと、下手に健康診断や人間ドッグは受けないほうがいいということが良く分かります。ところが、実は、私は40歳になってから、なんと毎年2回、人間ドッグに入っているのです。しかも、日帰りではなく、なんと一泊ドッグなのです。私にとって、人間ドッグは逮捕されそうになったとき検査入院という名目で病院へ逃げこむ口実と同じことです。つまり、静養したいということです。ですから、決して土・日曜日や祝祭日には入りません。平日に2日間、ゆっくり本を読むために入るのです。といっても、検査結果で何度かひやっとしたことはあります。でも、なんとか無事に今日に至っています。
 幸いにして、日ごろ薬はまったく飲みません。人間の自然治癒力を信じ、規則正しい生活を心がけています。

新説 鉄砲伝来

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著者:宇田川武久、出版社:平凡社新書
 日本に鉄砲がもたらされたのは、天文12年(1543年)8月、種子島に漂着したポルトガル人による。これが日本史の教科書にものっている通説。ところが、その根拠となっている「鉄炮記」という本は、「伝来」から60年後の慶長11年(1606年)に種子島久時が祖父の鉄砲入手の功績を称えるために禅僧、南浦文之に書かせたもので、それほど資料的価値が高いものではない。著者はこのように冒頭、弾劾します。
 うむむ、では一体、誰が日本に鉄砲をもちこんだのでしょうか・・・?
 このころ明から密貿易で商船が日本に来航していた。それは、日本産の銀を確保するためだった。そして、日本人が倭寇の一員として活躍していた。すなわち、明の船が日本に鉄砲をもちこんだのだろうということです。しかも、それは一回きりではなく、続々と商船は入ってきていたというのです。
 日本全国に鉄砲がいきわたるのは永禄の年号に入ってから。毛利元就は永禄10年(1567年)ころ、最近、鉄砲という武器が戦場にあらわれて思いがけない被害にあうから気を許してはいけないと家臣にさとしている。
 永禄の次の元亀、天正(1573〜92)年になると、長篠合戦にあるように一度の戦いに数千挺もの鉄砲が投入されるようになった。
 いまの長浜市にあった近江国国友村は、大坂夏の陣のころ、空前絶後の好景気にわいた。鍛冶屋は73件、職人は500人をこえた。
 このように、種子島だけを日本にもちこまれた鉄砲の起点とするのには無理がある。西日本と広い地域に南蛮筒が続々と分散・波状的に渡来したのである。そして、職人層に属する砲術師が誕生した。このように著者は力説しています。
 日本人は鉄砲をみるみるうちに自己のものとし、秀吉のおこなった朝鮮半島出兵のときに、それを活用して日本を甘く見ていた朝鮮王朝を圧倒していったというわけです。

朝鮮戦争と日本

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著者:大沼久夫、出版社:新幹社
 朝鮮戦争に日本がこれほど深く関わっていたとは知りませんでした。
 日本政府は、朝鮮戦争に参戦した「国連軍」という軍隊のための戦争協力費として  183億円も立て替え負担した。1950年の183億円ですから、実に巨額です。
 朝鮮戦争でたたかったアメリカ軍には日系アメリカ人が兵士、通訳、翻訳者として  5000人は参加していた。うち200人あまりが戦死した。その多くはハワイ出身者。
 日本特別掃海隊(1200人の旧海軍軍人が従事)は、掃海艇20隻、巡視船4隻、試航船1隻で編成され、下関から出動して2ヶ月間、国連軍の元山上陸作戦をはじめとして、仁川の海域などでの掃海活動を行って、国連軍の軍事行動の成功に大きく寄与した。掃海活動中にソ連製の機雷に触雷し、1人が死亡、18人が負傷した。
 国連軍が仁川上陸作戦をはじめたとき、日本人のLST20隻も参加している。日本人の乗組員は朝鮮沿岸の隅々の地の利に精通しているので、アメリカ軍に役立った。このLST20隻には、それぞれ50人あまりの日本人船員が乗船していた。この日本人船員の給与は、2万5000〜3万5000円と高額であり、民間給与の4〜5倍した。それは生命の代償でもあった。LSTは日本各地から出動して朝鮮半島の主要な港へ兵士や軍事物資を輸送した。これに従事した日本人船員は少なくとも4〜5000人にのぼる。
 また、仁川基地などで、艦艇の修理・武器輸送・浚渫工事などに1000人以上の日本人労働者が働いていた。
 日本の調達庁は、朝鮮戦争に関連死者を56人としている。
 このように日本人は、アメリカ軍・国連軍を支援して朝鮮戦争に参加していた。ただし、北朝鮮を支持して参戦した中国人民志願軍のなかにも日本人兵士が参加していた。つまり、日本人も、南北双方を支持して朝鮮半島の戦場で戦ったのである。
 うむむ、そうだったんですかー・・・。
 在日の大韓民国居留民団(民団)は義勇軍を募った。高卒以上の学生・青年からなる義勇軍644人が日本から釜山港に向かった。結果として、戦死者59人、行方不明97人、帰国266人、未帰還222人という。朝鮮半島での戦争ですから、在日朝鮮人が南北それぞれを応援して戦ったのは理解できます。
 それにしても、朝鮮戦争はまだ休戦中なんですね。法的には終わっていないということ、だから、まだ未解明の点がたくさんあるという指摘に驚かされました。

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