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ティムール帝国支配層の研究

カテゴリー:ヨーロッパ

著者:川口琢司、出版社:北海道大学出版会
 チンギス・ハンのあとに中央アジアに広大な帝国をうちたてた有名なティムールとその帝国についての研究書です。本格的な内容ですので、難しいところも多々ありました。
 ティムール帝国の時代は、空前絶後の領土を有したモンゴル帝国が解体したあとに到来した。このころ、日本は室町幕府、足利尊氏から義満にかけての時代。中国では明帝国の前半の時代。ヨーロッパでは、百年戦争やバラ戦争を経て、大航海時代に入ったころ。ロシアでは、モスクワ大公国が力をつけ、モンゴル支配の桎梏から自立しようとしていた。
 ティムール帝国は、中央アジアのモンゴル国家チャガタイ・ウルスの領域に成立し、中央アジアから西アジアに及ぶ広大な領域に、6代140年間にわたって続いた。
 ティムールは、青年時代に右手と右足に終生の傷を負い跛者となったが、その類いまれな才覚と人望により、祖先の名望や所属部族の力をあてにすることなく、一代で広大な大帝国をうちたてた。1360年代、ティムールは、旧来の部族に頼らない新しい家臣団を組織しながら、有力部族たちを巧みに味方につけ、宿敵フサインとの権力闘争を制し、1370年、ついにサマルカンド政権を樹立した。
 ティムールは、チンギス・ハンを意識し、モンゴル帝国の再興を目ざしていた。   
 ティムール自身はチンギス・ハンの子孫ではない。バルラス部族の出身である。しかし、当時の中央アジアでは、チンギス・ハンの子孫でなければ君主になれないというイデオロギー(チンギス統原理)が生きており、支配の正当性の根拠となっていた。
 そこでティムールは、チンギス・ハンの子孫を実権のないハンとして擁立し、チンギス・ハンの子孫の女性と結婚して婿(キュレゲン)の地位を獲得することにつとめた。モンゴルの権威を利用して支配の正当性を得ようとしたわけである。
 ティムールは、チンギス・ハンの子孫である4人の女性と正室とした。しかし、その正室から生まれた嫡子は次男のみで、長男も三男、四男もみな側室を母とする。ところが、この4人の息子たちは、いずれもチンギス・ハンの子孫にあたる女性と結婚している。
 ティムール帝国では、明確な後継制度が定められていなかったため、実力で君主位継承争いに勝利した者が新しい君主になる場合が多くみられた。ティムールの遺言は無視された。
 ティムール帝国では、チュルク・モンゴル的な要素とイラン・イスラーム的な要素が融合し、きわめて高度なイラン・チュルク・イスラーム文化が花開いた。ティムール朝の人々はイスラーム教徒であった。
 ティムールは積極的な建築活動を展開した。そこで、チンギス・ハンは破壊し、ティムールは建設した、と言われた。
 ティムール帝国の末期には、北方のキプチャク草原からウズベグ族が侵入し、1507年にティムール帝国は崩壊した。1991年、ウズベキスタンが独立すると、ティムール帝国を滅ぼしたウズベグ族の子孫たちが、ティムールを英雄視し、自分たちの文化的系譜をティムール帝国にまでさかのぼらせている。
 ティムール帝国についての本格的な研究書です。素人にも分かるところだけを飛ばし読みしました。
 梅雨空の晴れ間に蝉があわてたように鳴いています。このところ例年より雨が多くて、蝉の出番がなくて、焦っている気がしました。庭にサルスベリのピンクの花が咲いています。お隣の家には、合歓の木が二度目の可憐な花を咲かせています。梅雨明けが待ち遠しいこのごろです。

ダイナスティ

カテゴリー:社会

 著者:デビッド・S・ランデス、出版社:PHP出版社
 ファミリー企業とは、創業者あるいはその家族によって所有され経営されている企業のこと。同族経営と言われると、マイナス・イメージもある。
 しかし、このところ欧米ではファミリー企業は再評価されている。『フォーチュン』誌の選んだ世界のトップ500社のうちの3分の1をファミリー企業が占めており、EU(ヨーロッパ連合)では国民総生産と労働市場の3分の2をおさえ、あなどりがたい勢力となっていて、その優位性は明らかである。日本では、245万社ある企業の94%は同族企業で、上場企業でも4割はファミリー企業である。
 この本は、世界のトップ巨大企業のうちのファミリー企業の内情を描いたものです。ファミリー企業は、一族が多産かどうか、その生命の再生産能力にかかわるところが大きい。
 また、風習や文化によっては、直系の男性だけを後継者とみなし、女婿はおろか実の娘でさえも会社に参加させず、彼らを部外者としてしまうファミリー企業も多い。反対に、トヨタ自動車のように、血統については寛大で、姻戚だけでなく、養子縁組でもよいとする文化もある。
 銀行業は二つの理由からファミリー企業向きである。銀行業で成功するには、基本的に人間関係が大切で、誰と知りあいで、誰を信頼し、誰から信用されるかというコネクションである。しかも、生産企業と違って銀行では絶えず発達する技術にそれほど依存することもない。一年単位でも技術革新に対応できるような有能な技術者は必要としない。つまり、家族以外の人材に頼る必要性に乏しい。
 ダイナスティ(王朝)は、愚者であっても支配でき、また、しばしば愚者が支配した。
 ユダヤ教の習慣では、おいとおばとの結婚は禁じているが、おじとめいの婚姻は認めている。ロスチャイルド家の孫たち18組の結婚のうち16組はおじとめいかいとことの結婚だった。一族のなかの婚姻は、社会的にも文化的にも利点があった。習慣や秘密を外部から守ることができた。
 逆境のなかで不屈であることこそ、ダイナスティを支える力である。ロスチャイルド家は外部からの支援は受けたが、その核心はあくまでも一族だった。
 フォードは反ユダヤ主義者で、ナチスから堂々と勲章をもらった。そして、ニューディール政策をとったルーズベルト大統領を毛嫌いした。工場内の労働組合をつぶすために暴力団に頼んで殺させることもした。
 アイアコッカは、フォード社でめざましい成果をあげた。会社の経営は好転し、社会でのフォードのイメージは定着した。アイアコッカが社長になってもおかしくなかった。しかし、彼は一族でなかった。精力的で野心家で、家族の手に負えなかった。強大になりすぎたため、アイアコッカはフォード社から排除されてしまった。
 ファミリー企業の継承は世界各国でも必ずしもうまくはいっていないようです。偉大な父親の下では虚弱な息子が生まれがちなのは、世の東西を問わないからです。

知られざる水の超能力

カテゴリー:未分類

著者:藤田紘一郎、出版社:講談社α新書
 高校生時代、恥ずかしながら、喜んでしていた、あのフォークダンス、「マイム・マイム」の意味を初めて知りました。
 マイム、マイムとは、水、水という意味のヘブライ語である。砂漠地帯で水を掘りあてた人々が喜んでいる様子をあらわしたイスラエルの民謡なのである。だから、この「マイム・マイム」は、キャンプファイヤーではなく、水を囲んで行うのがふさわしい。
 今どきフォークダンスなんて流行らないのでしょうが、お目当ての女の子の手をしっかり握れる貴重な機会でしたね。
 下痢したとき、下痢止めを飲むのはすすめられない。逆に、水を飲んで排出を促進するのがいい。ぬるま湯をこまめに与えることが大切。このときは、軟水のミネラルウォーターが最適。
 人間が本当に渇きを覚えると、ほしくなるのはジュースでも酒でも牛乳でもない。ただの水である。
 たしかにそうです。私は、中国の奥地のウルムチからトルファンに行ったことがありますが、そのときは冷たいミネラルウォーターがまさに「命の水」だと本心で思いました。それ以来、ビールを飲みたくなくなり、ミネラルウォーター派に私は転向してしまいました。
 お酒を飲む前に、この酒にはビールも含む、とりあえず水を飲むこと、これが大事なのだ。ビールは強力な利尿作用をもっている。どんどん体内の水分が奪われていく。だから、水分の補給が必要になる。
 水道水を安全にする方法は、決して煮沸することではない。
 私は、これを読んで、ひっくり返りそうになりました。沸騰したら安全な水になるとばかり考えていたのです。
 水を沸騰させると、たしかに塩素は飛ばせるし、殺菌効果もある。しかし、水道水に熱を加えると、塩素と有機物が化合しやすくなり、温度が上がるとともに、発がん性物質であるトリハロメタンの量は増えていく。つまり、煮沸によって、毒物トリハロメタンを増やしている。ええーっ、そうなんですか・・・。本当なんでしょうけど、信じられません。
 寝る前に水を飲むのはいいそうです。朝一杯のコンブ水を毎日のんでいますが、これからはコンブを煮沸水に入れるのはやめることにします。
 水をめぐる話を満載した面白い本です。

メディアと政治

カテゴリー:社会

著者:蒲島郁夫、出版社:有斐閣
 日本のテレビ報道の特性は5つ。
1.一つの事柄が視聴率をとれるとなれば、各局ともそれに話題を集中する洪水報道化すること。
2.時間的制約があるため、善玉・悪玉の二項対立で番組をつくる傾向があること。
3.視聴者に提供される情報はカメラがとらえた映像に限られるため、制作者の意図に誘導しやすいこと。
4.テレビは映像が命であるため、映像のない事柄はニュースになりにくいこと。
5.放送は一定の時間内に終わらせなければならないこと。
 これらの制約をのがれて番組を制作することは、物理的な事情もあって難しい。そのうえ、民法では、ある程度の視聴率が見込めない番組はつくることができない。
 そうなんですよね。テレビのワイドショーをふくめて、ある時期に一つのテーマに集中して報道し、しばらくすると、さっぱり取り上げなくなる。その後、どうなったのか、後追い記事(報道)はほとんどされません。私も、その点がすごく不満です。いろいろ多角的な視点からの報道をしてほしいものです。
 大嶽秀夫・京大教授は日本におけるポピュリズムの特徴について、次の3点をあげる。
1.新聞のテレビに対する批判姿勢が弱く、テレビの人気を新聞が増幅する傾向をもつ。2.メディアの横並び体質と、視聴者にこびる性質がとくに強い。
3.テレビでの意見表明は大きな権威をもっており、無批判に受けいれられる傾向がある。 テレビをまったく見ず、新聞を丹念に読んでいる私にも、この指摘はまったくあたっていると思います。一般紙がテレビ報道を批判することは、まずありません。
 新聞で社説は社論である。これを執筆しているのは論説委員。これは、経営にはしばられない社長直属の独立機関である。論説委員は、記者歴20年以上で、専門性が高く、各部から複数選ばれる。トップである論説委員長(論説主幹)の下に、デスクワークもする論説副委員長が数人いて、総勢20人はいる。結論は全会一致が原則。どうしても意見がまとまらないときは、論説委員長が最終判断を示す。重大な決断は主筆(社長)が下すが、そこに至るケースはめったにない。
 政治改革(小選挙区制の導入)のとき、郵政改革のとき、マスコミが誤った方向に世論をリードしていった責任は重大だと私は考えています。

情報戦の時代

カテゴリー:社会

著者:加藤哲郎、出版社:花伝社
 著者の個人ウェブサイト「加藤哲郎のネチズンカレッジ」は、累計100万件近いアクセスを記録しているそうです。
 IT技術が、それ自体として分権化をうながし、ネットワーク型コミュニケーションをもたらすというのは幻想である。むしろ、市民による活用と抵抗がないならば、地球的規模での独占・集積化も可能である。
 つまり、インターネットや携帯電話のような個人単位のコミュニケーション手段が広がることで、一方でさまざまな個性のネットワーク型結合が可能になると同時に、他方で、その大元を押さえ、個人情報や私的コミュニケーションまで集権的に管理し支配しようとする動きも現れる。
 私も、そのとおりだと思います。インターネットは大変便利なものですが、情報統制する怖いものでもあると思います。
 改憲論議は、世論レベルではムードが先行しており、賞味期限を論ずるよりも、まずは立憲主義と現行憲法の中身を知る知憲こそが国民的規模で必要なのだ。逆に言うと、護憲勢力の主張も、「昔の名前で出ています」風の保守的イメージでしか浸透していない。
 新聞の調査で「改憲」についてのイメージを問いかけたところ、現実的29%、未来志向28%、自主独立14%、軍拡10%、復古的8%という回答だった。
 このように、かつての護憲=恒久平和、改憲=軍拡・復古という構図では、今日の改憲ムードの流れは変えられないのである。
 うむむ、そうなんですか・・・。いろいろ考えさせられる本でした。
 6月17日に受けた仏検(一級)の結果を通知するハガキが届きました。45点でした。自己採点は50点でしたから、5点も下まわりました。合格基準は90点ですから、とてもとても足りません。ちなみに、150点満点です。今回はいつも以上に難しかったのですが・・・。めげずに毎朝フランス語を勉強しています。仏和大辞典を愛用しています。ボキャブラリーを増やし、なんとか用例を覚えて仏作文も少しはできるようにがんばりたいと思います。

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