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ケータイ・ネット時代の子育て論

カテゴリー:社会

著者:尾木直樹、出版社:新日本出版社
 私の法律事務所でも最近、ケータイにホームページを開設しました。今のところ、毎週140人ほどのアクセスがあります。もちろん、まだまだです。名刺や封筒にQRコードを刷りこんで大いに宣伝しているところです。今や若者のほとんどが手にケータイを持っている時代です。そこへアクセスして客を誘引しようという試みです。ちなみに、作成したのは最若手の事務職員です。したがって開設費はタダ。運営費もタダなのです。いやあ、信じられませんね。
 ケータイが鳴ると、多くの子は即座に返信する。このレスポンスが15分も遅れると、その子は「友人」のワクからはずされてしまう。メールの送信回数が1日41回以上の生徒は、5回以下の生徒に比べて、男子で1.7倍、女子では1.4倍も、いじめの加害者になっている割合が高い。
 小学校や中学校でいじめにあった被害者のうち、高校で加害者側に転換した者は、一貫した加害者に比べ、何と17倍にも達している。
 今やメールで知り合い結婚にまで進むカップルも珍しくない時代である。
 実際、私の知っている弁護士本人、そして弁護士の妹さんがメールで知りあった相手と結婚して、幸せな家庭生活を営んでいます。いかがわしい「出会い系サイト」ばかりではないのですね。
 親が子育てにどう関わるかで、最近、目立った特徴がある。それは、父親が子育てに参加するのがきわめて多くなったということ。授業参観に参加する父親は2割くらいいるし、学習塾の説明会となると6割になることもある。大学でも入学式から就職説明会まで保護者同伴が当たり前となった。
 そして、それはモンスターペアレントがダブルモンスターになることもあることにも直結している。つまり、父親が「まあまあまあ」と言う止め役、なだめ役にまわるのではなく、夫婦一緒になって興奮しながら教師や学校に抗議し続ける姿である。
 しかし、父親と母親とが同じ立場から子どもの教育に熱を入れ口出しすると、子どもが逃げ場を失いかねない。まずは、離れた目線で、子どもの表情や態度を観察してみる必要がある。そうなんですよね。でも、これって、口で言うのは易しでもあります。
 最近、連続して起きた家庭内殺人の家庭には共通の特徴がある。親が地域の名士、高学歴で社会的地位の高い職業に就いている、加害少年少女はまじめで成績優秀、という傾向。その子どもたちは受験などへの親からの圧力にさらされている。
 また、これらの少年少女には自尊感情がたくましく育っておらず、自己肯定感がきわめて脆弱である。家庭が心安らぎホッとできる居場所ではなくなり、息詰まる緊張感や抑圧感に満ちていた。
 うむむ、かえりみると、わが家は果たしてどうだったのでしょうか。胸に手をあててみて、深く反省せざるをえません。子どもに対して、かくあれかし、というのを強く押しつけ過ぎたように思って、顔から汗が噴き出してしまいました。一言、弁解すると、まあ、それだけ真剣に子育てに向かいあってはいたのですが・・・。ネット、ケータイ時代において子育ては、一段と難しいと思ったことです。
(2008年1月刊。1500円+税)

不機嫌な職場

カテゴリー:社会

著者:高橋克徳・河合大介ほか、出版社:講談社現代新書
 仕事というのは、言われたことをやるだけでなく、言われていないことをやることだ。そう、そうなんです。まさに、このとおりです。言われたことを、渋々、少しばかり手抜きして、能力の出し惜しみをしてするのは本当に仕事をしたことにはなりません。
 グーグルでは、採用面接のときには、20人近くが候補者と面接する。そのときに重視するのは、スキルはもちろんのこと、他のグーグルの人と一緒に働けるか(コワークが出来る人かどうか)という点と、その人が自分で動ける人(セル)スターターの人かどうかという点である。
 グーグルでは社員の個室をつくらない。日本法人では、社長もオープンな場所に自分の机がある。物理的な壁をつくらないということだ。
 別の会社のことです。2年間はたらくと5日間(休んでファイブ)、5年間働くと1ヶ月(休んで1ヶ月)のリフレッシュ休暇が与えられる。いやー、いいですね、これって・・・。頭というか発想を切り換えるには、なんといってもゆとりが必要ですよ。
 私も40歳代前半のころ、北九州第一法律事務所にならって、40日間のリフレッシュ休暇をとったことがあります。パリに前後泊したほか、南フランスのエクサンプロヴァンスで4週間近くの外国人向けフランス語夏期集中講座に参加したのでした。日本のことを一切忘れてフランス語の勉強をして、本当に心身のリフレッシュになりました。
 築城3年、落城1日。協力につながる信頼関係は、壊すのは簡単だが、構築するのには時間がかかる。一般に、社内の関係性が明らかに変わりはじめるのには3年くらいかかる。そして、継続の力を人に与えるものは、信念である。
 自分の仕事で最高の仕事をしたかったら、周辺分野の知見をあわせ持つことが必要だ。 うむむ、なるほど、と私も思います。お互いがタコツボに入り込んでしまうような状況をつくらず、お互いをよく知る。お互いの意図や人となりを知ることのできる状況をつくり出す。そのうえで、根源的な感情、つまり感謝や認知を通じた効力感というインセンティブが働くようにする。
 うーん、そういうことなんですね。これって口で言うのは易しくて、実行って大変なことですよね。ギスギス職場にならないよう、自戒他戒したいものだとつくづく思いました。
 9月の第一週の日曜日のことです。朝から奇妙なほど静かです。蝉の鳴き声がしないのです。おや、もう蝉の季節は終わってしまったのか、今年はやけに早いな、と思いました。すると、夕方になって早めにお風呂に入っていると、ツクツク法師の鳴き声が遠くに聞こえました。寂しい声でした。
 庭に甘い朱色の曼珠沙華が咲いています。秋を感じます。ヒマワリがまだ咲いていますが、隣の芙蓉のピンクの花の引き立て役になってしまいました。酔芙蓉はこれからです。黄色いエンゼルストランペットも咲いています。裁判所には白い花で、ちょうど逆向き、上向きの花があります。名前を聞くと、ダチュラということでした。あれ、エンゼルストランペットの別名もダチュラというんじゃなかったっけ、ふと疑問に思いました。
(2008年1月刊。720円+税)

タンゴ・ステップ

カテゴリー:ヨーロッパ

著者:ヘニング・マンケル、出版社:創元社推理文庫
 上下2巻のスウェーデン産ミステリー小説です。なかなかの読みごたえがあります。私はスウェーデンがナチス・ドイツのあいだに深い関係があったことを初めて認識しました。
 フランスに行く飛行機のなかで読みふけりました。実に面白く、ぐいぐい引きずられるように読みすすめました。第二次大戦前後、スウェーデンで大勢の人がナチス思想に共鳴し、ナチスの兵士になっていったというのです。今では信じられませんが、恐らく本当のことでしょう。著者は、私と同じ、1948年に生まれです。
 1930年代、40年代、スウェーデンは実にナチス信奉者の多い国だった。彼らはドイツ軍がスウェーデンに侵入するのを待ち望み、スウェーデンがナチズムに統治されるのを何より望んでいた。
 スウェーデンの軍事産業は多大な鉄鋼を寄贈し、それによってドイツの軍事産業はヒトラーの命じる最新式の軍艦や戦車を製造することができた。
 日本からパリまでの飛行時間は実に12時間あります。その長さを忘れ去れる充実した読書タイムでした。推理小説ですから、ここで種明かしをするわけにはいきません。そこで、オビなどに書かれている文句を少しばかり紹介します。
 影におびえ続けた男。元警察官の血まみれの死体は森の入り口で発見された。男は54年間、眠れない夜と過ごしてきた。森の中の一軒家、選び抜いた靴とダークスーツを身につけ、人形をパートナーにタンゴを踊る。だが、その夜明け、ついに影が彼をとらえた・・・。
 ステファン・リンドマン37歳。警察官。舌がんの宣告を受け動揺した彼が目にしたのは、自分が新米のころ指導を受けた先輩が、無惨に殺害されたという新聞記事だった。動機は不明。犯人の手がかりもない。治療を前に休暇をとったステファンは事件の現場に向かう。
 それにしても、スウェーデンにナチス信奉者がいたというのは何十年も前の過ぎ去った昔のこと、とは言えない現実があることを、この本は鋭くえぐり出しています。ネオ・ナチズムはヨーロッパのあちこちにひそんでいて、暗躍しているのです。それは、ちょうど、日本で大東亜戦争肯定論を唱える右翼のようなものです。どちらも歴史から学ぼうとはしません。
 アヴィニヨンの駅前からタクシーに乗ってシャトー・ヌフ・デュパープ村へ行ってきました。前にボルドーのサンテミリオンにも行ったことがありますが、とても似た雰囲気の小さな村です。この村は高級ワインを産出するので名高いところです。村の周囲にブドウ畑が広がっています。はるか遠くには頂に白いものも見える高い山々が連らなっています。村の中心部の高台には今や城郭の一部しか残っていませんが、古いお城がありました。またまた美味しいワインを飲みたくなったものです。
(2008年5月刊。980円+税)

フランスものしり紀行

カテゴリー:ヨーロッパ

著者:紅山雪夫、出版社:新潮文庫
 私は大学生のころからフランス語を勉強していますし、フランスにも5回ほど行きましたので、それなりにフランスのことは知っているつもりでしたが、なんのなんの、まだまだ知らないことばかりだということを思い知らされる本でした。この夏にフランスへ行ってきましたが、フランスへの飛行機のなかで一生懸命にこの本を読んで予習しました。
 パリはフランス語ではパリですが、英語ではパリスと、語尾のスまで発音しますよね。パリの語源はパリシイ族に由来する。
 3年前にはロワールの城めぐりとモン・サン・ミッシェルそしてボルドー、サンテミリオンを歴訪しました。この本にもロワール川流域にある美しい城がいくつか紹介されています。アゼ・ル・リドー城、シノン城、ブロワ城、シャンボール城、シュノンソー城、アンボワーズ城です。その優美さ、壮大さは思わず息を呑み、足を停めてしまいます。素人カメラマンでも美しく撮ることができます。
 そして、この夏は南フランスをまわってきましたので、そちらを紹介します。
 アルルはゴッホが住み、こよなく愛した町です。駅から歩いて10分もかからないところに旧市街入り口の古い門があります。
 ゴッホは、アルルは明るい色彩効果のため、日本のように美しく見える、と言ったそうです。もちろんゴッホが日本に来たことはなく、日本の浮世絵を見ていたことからの連想です。中心部にローマ時代の円形闘技場がほとんど完全な形で残っています。近づくと本当に圧倒されてしまいます。よくもこんな巨大な石造りの建物をつくったものです。この本によると、ローマ帝国が滅亡したあと集合住宅としてつかわれていたのが保存に幸いしたのだそうです。なーるほど、ですね。
 アルルの郊外に有名なゴッホの「跳ね橋」があります。私は20年近く前にアルルの町から歩いていこうとして、見つからずに断念したことがありました。今回、タクシーに乗って「跳ね橋」に行ってみて、歩いていけるような距離ではないことを実感しました。ガイドブックに女性の一人歩きは厳禁と書いてありましたが、私は、女性だけでなく、男性もやめたほうがいいと思いました。なにしろ遠すぎるし、迷い子になるのは必至だと思ったからです。ゴッホの「跳ね橋」は再現されていますが、晴れていたら絵になるロケーションにありました。残念なことに、私の行ったときには曇り空でしたので、絵にはなりませんでした。
 アルルから、タクシーでレ・ボーに行きました。ここは前にも一度行ったことがあるのですが、奇岩城としか言いようのない断崖絶壁の町です。
 松本清張がレ・ボーを題材に『詩城の旅びと』(NHK出版、1989年)という本を書いています。清張は次のように描きました。
 レ・ボーは、アルピーマ山塊の一部が平野に向かって突出した細長い岩山の上にあり、まわりを断崖絶壁で囲まれていて、まさに難攻不落としか言いようがない天然の要塞である。岩山の上に城塞の廃墟が延々と連なっている。
 私も一番高いところまでのぼりましたが、とても風が強くて吹き飛ばされそうなほどでした。写真でお見せできないのが残念です。
(2008年5月刊。590円+税)

ケータイの裏側

カテゴリー:社会

著者:吉田里織・石川一喜、出版社:コモンズ
 今や電車の1車両にいる乗客のうち、ケータイを手に持って操作している人の割合は3分の1に近い。
 2008年1月のケータイは1億550万台。固定電話の契約数は6196万台である。
 もっとも軽いケータイは80グラムしかない。卵1個半の重さだ。
 ケータイは、メールの回数が通話より圧倒的に多い。日本のケータイはメール中心だ。そして、女子のほうが男子よりメールの受発信数が多い。
 アンテナを外に引き出す必要がないようにチップ誘導体アンテナを開発したのは村田製作所。
 自ら発光する有機ELは背後から照らす必要がないので、薄型化を容易にした。
 リチウムイオン電池も軽量化に寄与した立役者のひとつ。マナーモード用のバイブレーション機能も、直径3.5ミリの小型モーターの内側にある田中貴金属の独自の技術によるブラシが不可欠である。
 世界のケータイの主流はメールの送受信ができれば十分というGSM方式だが、日本ではその上の第三世代である。日本のケータイは世界市場に占めるシェアは小さいのですが、これからどうなるのでしょうか。世界の人々が日本型の多機能型ケータイを目ざすのかどうか、予断を許しません。私は、けっこう世界に受け入れられると思いますが・・・。
 ケータイは宝の山。電池を抜いたケータイには1トンあたり200〜300グラムの金が含まれている。世界の主要金鉱山の平均含有量は1トンあたり5グラム。世界最高品質の金鉱である鹿児島の菱刈鉱山は1トンあたり50グラム。な、なんという含有率の高さでしょうか。
 NTTドコモグループは、2006年度にケータイ再資源として、金124キロ、銀が352キロ、銅に至っては2万9025キロも取り出した。
 ケータイは複数のレアメタルを必要とするハイテク製品である。ケータイを10年以上つかい続けていると、脳腫瘍になる可能性が増すことが明らかになった。
 頭部に発信源を近づけて使い続けるので、強い電磁波が頭を直撃する。
 動物実験では、脳の機能が影響を受ける可能性も指摘されている。
 いやあ、ケータイ依存症が日本の青少年にはびこっているわけですが、このまま放置しておいていいのか、大いに心配になりました。
 ちなみに、私のケータイは発信専用です。一日中、スイッチはオフにしてカバンの中にしまっています。1日に1回か2回、発信につかえばいいほうです。公衆電話がないので、持ち歩いているだけなのです。それでも、最近、ケータイ・ホームページを開設しました。パソコンに長けた事務員が2時間たらずで、あっという間に起ち上げてくれました。しかも、運営・維持費がいりません。毎週、法律相談コーナーを更新しているところです。
(2008年4月刊。1700円+税)

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