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名作映画には「生きるヒント」がいっぱい

カテゴリー:社会

著者  坂和 章平、  河出書房新社  出版 
 
テレビをみない私ですが、映画は大好きです。毎月一本はみたいのですが、なかなかそうもいきません。暗い映画館に座って、大きなスクリーンに広がる彼方の情景に胸をわくわくさせながら没入するのは、人生の生き甲斐を感じる一瞬です。先日みたのは『ロビン・フッド』でした。子どもたちが幼いころ、8ミリを上映していましたので懐かしくみました。すごい迫力がありましたよ。
 小学生のころは、すぐ近くにあった映画館に引率され、授業の一環としてディズニーの自然の驚異シリーズをみたことを覚えています。嵐寛寿朗の鞍馬天狗のおじさんが修作を助けようと馬を走らせる場面では、場内が総立ちとなり、励ましの声をみんなでスクリーン目がけて投げかけていました。あのときの熱狂ぶりは今もしっかり記憶しています。同じような館内のどよめきは『男は辛いよ』を場末の小さな映画館で何度も体験しました。笑いと涙と、拍手で、場内が騒然とするシーンを何回も体験しました。一度、銀座にある上品な広い封切館で『男はつらいよ』をみたとき、館内がシーンと静まりかえっているので、この映画はこんな雰囲気でみるものじゃないな。そう思ったことでした。
このように映画大好きの私ですが、著者は、私のレベルをはるかに超えています。同期の大阪で活躍している弁護士なので、よくもこんなに映画をみるヒマがあるものだと冷ややかに眺めていました。なにしろ、みた映画が私なんかより何桁も違うのです。10年間に評論した映画が1500本というのですから、信じられません。頭が痛くなりそうです。
大学生のころまでは、三本立ての映画をみても平気でした。今では、一日に一本の映画をみたら十分ですし、一ヶ月に一本のペースで映画をみたら(みれませんが・・・・)十二分です。それなのに、年間150本だなんて、ちょっと映画のみ過ぎでしょうと言いたくなってしまいます。そして、著者は、その映画評論を25冊のシリーズ本にしています。私も贈呈していただいていますが、あまりの数の多さにいささか敬遠せざるをえません。
ところが、この本は著者のみた数多くの映画のなかから、なんと50本の名作映画を厳選して紹介したというのです。では、どんなものなのかな、ちょっと知りたくなって頁をめくり始めました。すると、なんとなんと、厳選された名作映画50本のなかに、私の好みの映画がいくつも入っているではありませんか。それじゃあ、少しは紹介しなくっちゃ。そう思って、この書評を書きはじめたのです。
 ここに紹介されていないけれど、私の心に残る映画と言えば、韓国映画で言えば、パンソリの熱唱に感動した『西便・・・・を超えて』(正確なタイトルを忘れてしまって、申し訳ありません)と、タイ映画の伝統的な民族音楽(日本の琴に似た楽器でした)の競演を紹介したもの(これもタイトルを忘れてしまいました)です。中国映画では『芙蓉鎮』も心にのこる素晴らしい映像でした。日本映画では『おとうと』もとりあげてほしかったですね。それはともかくとして、私がみた映画で、この本もとりあげているもののタイトルをまず紹介しましょう。
 『沈まぬ太陽』『フラガール』『母べえ』『シュリ』『ライフイズビューティフル』「」山の郵便配達』『王の男』『ブラザーフット』『あの子を探して』『ハート・ロッカー』『エディット・ピアフ、愛の讃歌』『たそがれ清兵衛』『生きる』『スタンドアップ』『ぜんぶのフィデルせい』『さらばわが愛・覇王別姫』『初恋のきた道』
 50本のうち、なんと17本もありました。このなかで私にとって皆さんに一番おすすめしたいのは『初恋のきた道』です。チャン・イーモウのはじける笑顔にすっかり魅せられました。この映画は私の大学生のころの友人から、「ぜひみてね」と勧められたものですから、時間をやりくりしてみたのでした。いやあ、最高傑作でしたね。フランス語を勉強している私としては、エディット・ピアフのシャンソンも心に響くものがありました。「水に流して」という日本語のタイトルは、フランス語では、私は自分のこれまでの人生を後悔なんかしていないというものです。過去を水に流そうなんていう消極的なものではありません。この私も、過去をふり返って後悔したくなんかありません。
 いい映画には、著者のいうように生きるうえでとても役に立つ、というか心の慈養になるものがたくさんたくさん詰まっています。映画大好き人間として、この本を推せんします。
 日頃の本はあまり売れていないようですが、この本ばかりはたくさん売れることを私も祈っています。
(2010年12月刊。1400円+税)

肥満と餓死

カテゴリー:アメリカ

著者 ラジ・パテル、    出版 作品社
 いま私はダイエットに励んでいます。ビールは卒業しました。間食はしません。炭水化物は少なくしました。ご飯は30回かみます。それでも、なかなか腹にため込んだ脂肪は減りません。
 いま、世界で10億人の人々が飢えに苦しみ、逆に10億人の人が肥満で苦しんでいます。何というアンバランスでしょう。 そして、農業の危機はビジネスチャンスともなっているのです。いま菅政府が財界とマスコミの後押しを受けてやっきになって推進しようとしているTPPも日本の農業を破壊して、さらにビッグビジネスの支配下に置こうというものですよね。
たとえばリンゴ。見栄えの良いこと。ツヤがあって、無傷の果物である。長距離輸送に耐え、見栄えのよいようにワックスの乗りがよい、農薬がよく効いて大量生産に向いた品種が考えられ、つくられている。うへーっ、これはたまりませんね。
イギリスでも、アメリカと同じように6歳児の8.5%、15歳児の10%以上が肥満となっている。砂糖のとりすぎ。朝食のシリアルには砂糖が多すぎる。
アメリカの外交戦略は、飢えた人々はパンきれを持った人の言うことしか聞かない。食料は道具であり、アメリカにとっての交渉カードのなかでも強力な武器なのである。
アメリカのユナイテッド・フルーツ社は中南半諸国の貧困化に一役買っていた。アメリカ国内では知られていないが、これは事実である。
種子の供給において10社が世界全体の半分を占めている。種子にふくまれる大量の遺伝情報は農薬会社が開発したものではない。人々が数千年にわたって利用してきた結果なのである。それなのに、わずかな付加価値を持たせただけで、種子そのものに特許が設定されてしまった。遺伝子組み換え(GM)作物の安全性は証明されてないし、その恩恵は農民にもたらされない。
アフリカで人々が飢えているのは、食料があって売られてはいるけれど、人々がそれを買うことができないからである。慢性的な食糧不足の影響をもっとも受けやすいのは、女性と子どもと高齢者である。子どもは低体重児になっている。近年に起きたアフリカ南部の食糧危機は、世界銀行による一連の政策の結果であり、農薬産業にはビジネスチャンスとなった。
アメリカでは、スーパーマーケットのある地域の方が肥満率が低い。近所にスーパーマーケットが一軒もないのは最悪だ。そして、黒人の多いスーパーマーケットは、意図的に白人の多い地域よりも健康的でない食品をそろえている。健康的な食品の手に入る地域では、果物と野菜の消費量も多い。スーパーマーケットの現実は、「コーラかペプシか」を選ばせているというものである。ファーストフードの店舗は、貧困地区や有色人種の居住地域に集中している。そのうえ、アメリカの貧困地域には、たいていレクリエーション施設がない。消費者は、加工食品をたらふく食わされ、中毒にさらされている。
アグリビジネスの食品とマーケティングは、食に起因する病気を爆発的に増加させ、人間の人体を害し、世界中の子どもたちの身体に時限爆弾を仕込んでいる。うむむ、なんということでしょう・・・。
スーパーマーケットは、安価な高カロリー食品をたくさん取り揃えているが、そのせいで、地域の経済は大打撃を受けている。そして私たちは食べ物の生産現場からも、食の楽しみからも、ますます遠ざけられている。
食生活をもう一度考え直そうという気持ちにさせてくれる大切な本だと思います。
最後に、ぜひ紹介したい言葉があります。ぜひ読んでみてください。JA中央会などが集会を開いたときの宣言の一節です
「地域環境を破壊し、目先の経済的利益を追求し、格差を拡大し、世界中から食料を買いあさってきたこれまでのこの国の生き方を反省しなければならない。自然の恵みに感謝し、食べ物を大切にし、美しい農産漁村を守り、人々が支え合い、心豊かに暮らし続け、日本人として品格のある国家を作っていくため、我々はTPP交渉への参加に断固反対し、さらなる国民各層の理解と支持を得ながら、大きな国民運動に展開させていく決意である」
 まったくここに書かれているとおりではないでしょうか。日本人として品格のある国家を作っていくためには、TPPなんてとんでもないと私は思います。ところが、各紙は一斉に社説でTPP参加に賛成を表明しています。恐ろしいことです。私はここにも例の内閣機密費の影響もあるんじゃないかと勘繰ってしまいます。だって、菅内閣も自民党時代と同じく毎月1億円を自由につかっているのですよ。このなかにマスコミ対策費が入っているのは公知の事実なんですからね・・・。
(2009年2月刊。1600円+税)

動物たちの地球大移動

カテゴリー:生物

著者 ベン・ホアー 、  悠書館  出版 
 
この本を読むと、地球って広いようで意外に狭いものなんだなと思わせます。だって、キョクアジサシという小鳥は、毎年4万キロメートルもの往復旅行をするっていうんですよ。1年のうちに、北極と南極の夏を両方とも経験する固体がいるというのです。そ、そんな馬鹿な。うひゃあ、し、信じられません・・・・。同じような小鳥が他にもたくさんいるのです。
スグロアメリカムシクイは高度5000メートルを飛んで、カナダなどから越冬地の南アメリカへ片道4000~8000キロメートルを渡る。高いところを飛ぶのは、順風をえるため。そして、胸筋が酷使されてオーバーヒートしないように冷気で冷やすため。この旅に備えて、旅行前にせっせと食べるから普段は11グラムの体重が20グラムまで増える。この余分な脂肪は、旅のあいだに燃焼し尽くされる。うへーっ、そうなんですね。
 ご存知のツバメも、もちろん渡り鳥ですが、すでに紀元前4世紀にアリストテレスが渡り鳥だと確認したのだそうです。どうやって確認したのでしょうか。中世ヨーロッパでは、ツバメは泥のなかで冬眠していると思われていたというのです。ツバメは北欧からアフリカ南部まで10週間かけている。平均すると一日150キロメートルだが、実はツバメはしばらく休んでは発作的に進むことを繰り返す。ただし、春になって北へ向かうときには子育てが待っているので、約2倍の速さで北進し、同じコースを5~6週間で着く。これもすごいですよね。
 小鳥よりももっと小さい蝶も大移動します。たとえば、今や有名なオオカバマダラです。
オオカバマダラは、最大4750キロメートルも飛行する。無風状態では1000キロメートルを休まずに自力移動できる。数千万頭から成る蝶の群れが飛んでいく様子はオレンジ色の流れとなる。一日に130キロメートルすすむ。
 学者は、このような大移動を調べるため、たとえば体重1,5グラムのギンヤンマ(トンボ)になんと300ミリグラムの電子追跡装置をトンボの胸部下面に取り付けるというのです。すごい技術ですよね。
 海中にいるもヨシキリザメもすごいですよ。きわめて鋭敏な嗅覚があるので、泳ぎながら継続的に水を調べ、水に溶けた科学的物質のにおいの濃淡から行き先を判断している。このサメは、イカを捕らえるために、よく潜水し、350メートルも潜る。水を鉛直方向に泳ぐことから、電磁気を感知する能力を使って、磁方位を知るのに役立てている。
 陸上を移動する動物たちの写真もあります。広大なアフリカのサバンナ(太平洋)を一列になってすすんでいくウィルドビーストがいます。圧倒される大群です。
カリブー、ウィルドビースト、ハクガンのような平原の動物たちは、突然、子どもをどっと増やし、獲物の数で捕食動物を圧倒する。捕食動物が消費できる獲物の数には限度があるので、結果的に子どもの多くが生き残れる。
少々高価な本ですが、手にとって眺めていると、日頃の悩みがいかにちっぽけなものかを気が付かせてくれる写真集と考えたら、決して高くはありませんよ。せめて、図書館で手にとって眺めてみてくださいね
(2010年1月刊。8000円+税)

よみがえる脳

カテゴリー:人間

著者  生田 哲、  サイエンス・アイ新書  出版 
 
かつて脳細胞は大人になるにつれ、死滅していくだけとされていました。しかし、今では、脳細胞も生成していることが分かっています。だから、あきらめる必要はないのです。
この本は、運動が脳に良いこと、タバコは脳にも悪いことなども強調しています。
脳は、環境の変化に対応し、年齢に関係なく、どんどん変化していく。脳の本質は変わりやすいことなのである。
 カナリヤは平均して10年生きるが、毎年新しい曲を学んで歌う。毎春、同じ鳥がまったく違った歌をうたいだす。うへーっ、そうなんですか・・・・。一度じっくり聞いてみたいですね。
 タバコは頭を悪くする。タバコの煙にふくまれる一酸化炭素が血液中のヘモグロビンというタンパク質と結合することによって、脳が酸欠状態になり、脳に一過性の障害が起きる。また、タバコの喫煙によって発生するアセトアルデヒトという毒物がアセチルコリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどといった脳内の伝達物質に存在するアミノ基と科学反応を起こして生成するシッフ塩基という毒物が、脳内の神経細胞にダメージを与える。うへーっ、こんな大切なことをもっと国は国民に知らせるべきです。小学生のときから教えておけば、こんなに有毒なタバコを吸う人は絶滅する可能性がありますよね。タバコは税収に貢献しているなんてことは、もう言わないでくださいね。
 エクササイズ(運動)でうつ病が治り、脳は活性化するといいます。抗うつ薬を服用してうつから回復した人で、改善効果を10ヶ月後も維持できた人は55%、再発率は38%。これに対して、エクササイズだけでうつから回復した人の88%が改善効果を10ヵ月後も維持していたし、再発したのもわずか8%でしかなかった。そうなんですか・・・・。
 エクササイズの達成感が自己評価を高め、気分を向上させ、うつを改善する。
瞑想でも脳の機能が改善するそうです。これはありうると思いますが、残念ながら、瞑想を体験したことはありません。分かりやすい説明で、すっと読んで納得できました。
(2010年12月刊。952円+税)

江戸農民の暮らしと人生

カテゴリー:日本史(江戸)

 著者 速水 融、  出版 麗澤大学出版会
 
 岐阜県の一農村の97年間にわたる宗門改帳(しゅうもんあらためちょう)を分析した本です。農村の一断面、とりわけ江戸時代の農村が閉ざされていなかったことが良く分かります。この村から関西方面へ、男も女も出稼ぎ・奉公に行っていたのです。
 日本の江戸時代には豊富な史料・文献が残されている。公私にわたる膨大な文書、記録の山がある。これは識字率の高さにもよる。幕末期の日本において、成人男性の45%、女性の15%が読み書き能力を持っていた。これって、実は、すごいことですよね。昔から日本人の好奇心、知的欲求度の高さを反映している数字だと思います。
 初めの49年間では、夫婦5組に1組は離婚している。残り50年間には離婚数は減った。100年間を通してみると、離婚数は結婚数の11%、9組に1組の割合となっている。しかも、離婚件数26のうち14組には子どもがいた。日本では、離婚は昔から少なくなかったのです。
 女子の結婚年齢は、上層ほど低く、下層では高い。これは、小作層から多数の奉公人が出稼ぎに出ていたからである。
 そして、結婚の継続期間は比較的短かかった。5年以内では離縁が最も多く、妻の死亡によることも少なくなかった。わずか1年内で終了するときには、その8割が離縁だった。
 夫婦が若いうちに離死別したときには、残された夫または妻が再婚する事例は多い。男は、40歳前だと、そのほとんどが再婚し、女も、35歳以下なら半数は再婚している、
 長男が家督を承継する制度ないし慣習が確立していたとは決して言えない。
 ここでは、女性が戸主である率は全体の7.1%であった。
 そして、長男以外の男子による家督の継承は、戸主の死亡の時にかなりの頻度で見られる。戸主が死亡したとき、その半分で女性が継承者となっている。前戸主の妻が継承者となることが多い。これは、夫より妻の方が年齢が低かったことによる。
 江戸時代の農村の実情を知ることができる本として、おすすめします。
(2009年9月刊。2400円+税)

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