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中東民衆革命の真実

カテゴリー:アフリカ

著者   田原 牧 、 出版   集英社新書
 2011年2月、アラブの大国エジプトで革命が成功した。30年間にわたってこの国を統治してきたムバラク政権が民衆のデモによって倒された。
 エジプトの人口は国連統計で8400万人。実際はもっと多い。24歳以下の人口が半数をこえる。これって暑い国では人は長生きできないっていうことかしらん・・・?
 15歳から24歳までの85%は字が読めるものの、国民全体の非識字率は3割を超える。その人々にとってはフェイスブックは無用の長物だ。
 エジプト人は物知り顔で、見栄張りだ。一般にエジプト人は「口から生まれる」と言われるほどよくしゃべる。
 エジプトの失業率は9%。しかし15歳から24歳までをみると33%にもなる。1日2ドル以下で暮らす人が人口の2割いる。
エジプトはイスラエルと平和条約を結んでいるが、大半のエジプト人はイスラエル人を嫌っている。和平の現実は「冷たい平和」である。
 再びイスラエルと戦争したいというエジプト人は、まずいない。軍事的にも勝てる見込みは薄い。だから、エジプトの平和は屈辱によって支えられている。ところが、エジプトはイスラエルの電力施設が必要とする天然ガスの45%を供給している。矛盾ですね。
 エジプトには、複数の治安機関に100万人をこす職員がいると言われてきた。不当逮捕、拷問、こうした機関に支えられた政権は西欧の基準からいうと、独裁体制以外の何者でもない。
 ムバラク大統領は30年間の統治の間に、自らの腹心たちを軍から次第に内務官僚、政権与党に移していた。この変節が生んだ両者の隙間が、軍により自由な選択を許したといえる。
 エジプト軍は、単なる武力集団ではない。エジプトの反体制運動の主役だったイスラーム主義者たち、とりわけ急進主義者たちは革命前夜どうしていたか。結論をいえば、昔日の影響力を失い、社会の片隅で沈黙していた。
 これまでアメリカに追随してきたチュニジア、エジプトの独裁政権が倒れてしまった。アメリカの存在感は著しく凋落している。アメリカの対テロ特殊機関が捕まえたイスラム過激派をこっそりエジプトの移送し、ムバラク傘下の治安機関で拷問にかけるような秘密工作が横行していた。しかし、これからはそんな無茶は通らなくなるだろう。
 1979年のイラン革命以来、30年間のアメリカの中東戦略は、戦略と呼ぶには、あまりに場当たり的で、お粗末である。
 エジプト革命の実現について、現場からのレポートの一つとして興味深く読みました。中東も大きく変わりつつあります。日本も早く変えたいものです。
(2011年7月刊。760円+税)

働かないアリに意義がある

カテゴリー:生物

著者   長谷川 英祐 、 出版   メディアファクトリー新書
 アリがみんな働き者かと思うと、そうでもないようなんです。アリの面白い生態が明らかにされています。
 1980年代まで、真社会性の生物は、ハチ、アリ、シロアリくらいしか知られていなかった。その後、アブラムシ、最近ではネズミ、エビ、カブトムシの仲間、さらにはカビの仲間まで真社会性と呼べる生き物がいることが分かっている。
 真社会性のアブラムシには、無性世代のなかに攻撃に特化した「兵隊」がいる。
ハチやアリには司令塔はいない。では、どうやって適当な労働力を必要な仕事に適切に振り分け、コロニー全体が必要とする仕事を見事に処理できるのか・・・?
 アシナガバチの女王は働きバチが巣の上で休んでいるのを見つけると、「さっさと仕事しろ!」とばかりに激しく攻撃し、エサを取りに行かせる。ところが、やられた働きバチもさるもので、巣を出ていったあと、少し離れた葉っぱの裏で何もせず、ぼんやりと過ごしている。
 なーんだ、人間社会によく似ていますよね。営業マンが喫茶店で、ぼおっとコーヒーを飲んでいる光景を思い出します。
 巣の中の7割の働きアリは何もしていない。案外、アリは働き者ではないのだ。
 ハチもアリも、非常に若いうちは幼虫や子どもの世話をし、その次に巣の維持にかかわる仕事をし、最後に巣の外へエサをとりにいく仕事をする。このパターンは共通している。
 年寄りは余命が短いから、外で死んでも損が少ないということ。すごい仕組みです。
 ハウスに放たれたミツバチはなぜかすぐに数が減り、コロニーが破壊してしまう。ハウス内には、いつも狭い範囲にたくさんの花があるため、ミツバチたちは広い野外であちこちに散らばる花から散発的に蜜を集めるときより多く働かなければならない。つまり、それだけ厳しい労働環境に置かれる。この過剰労働がワーカー(ミツバチ)の寿命を縮めてしまう。うへーっ、ハウス内のほうが楽ちんかと思いきや、まるで逆なのですね・・・。
 みんなが一斉に働くシステムは、同じくらい働いて、同時に全員が疲れてしまい、だれも働けなくなる時間がどうしても生まれる。だれもが必ず疲れる以上、働かないものを常に含む非効率的なシステムでこそ、種全体としては長期的な存続が可能となる。長い時間を通してみたら、そういうシステムが選ばれることになったのだ。
 なるほど、ふむふむ、そうなんですね。よくぞ、ここまで観察したものです。学者は偉い!
(2011年7月15日刊。760円+税)

下町ロケット

カテゴリー:社会

著者  池井戸  潤    、 出版  小学館   
 直木賞を受賞していますが、なるほど最後まで期待を裏切ることのない、面白い小説です。著者の本としては『鉄の骨』も『空飛ぶタイヤ』も読ませましたね。ロケットを飛ばしているのは日本の大企業だけではない。町工場のような中小企業がしっかり技術力で支えているからだ。こんな日本の本当の現実を痛快小説に見事に仕立て上げています。
 日頃、大銀行の愛想のなさ、私も日々実感させられています。そこそこの預金と取引量があると自負しているのですが、有力地方銀行はてんで相手に(あてに)していないといった雰囲気です。この小説にも、企業が困っているときには貸し渋り、ちょっと景気が良くなるとぺこぺこして借りて下さいと頼み込む銀行支店長が登場してきます。こんなんじゃあ相手にしたくありませんよね。上から目線の銀行には、少しばかり反省してほしいものです。でも、それはまだ可愛いのかも・・・・。
 東京電力の対応、そして我が九州電力も同じですが、日本のリーディングカンパニーを自称する大企業のトップの無責任さ、いいかげんさは目を覆いたくなってしまいますね。
 どちらも最大の実力者である会長は椅子にしがみついて開き直るばかりです。責任とって早く辞めるべきだと思うのですが、社内には直言できる人がいないのでしょうね。残念至極です。
 日本が大企業だけ成り立っているかのような錯覚と幻想をみんなで捨て去りたいものです。スーパーにしてもコンビニにしても巨大スーパー、全国チェーン店ばかりになりつつあります。身近なパパママストアーがなくなってしまったら、本当に不便な社会になってしまうのですが・・・・。こればかりは世の中の流れだからといって、手をこまねいているだけというわけにはいきません。
 何のために企業はあるのか、社員は社長の「道楽」にどこまでつきあわなければいけないのか・・・・。そんな根本命題まで問いがなげかけられます。
 400頁の本ですが、一心不乱、一気呵成に2時間かけて読み切り、気分がスカッとしました。
(2011年6月刊。760円+税)

生活保護改革、ここが焦点だ!

カテゴリー:社会

著者  尾藤  廣喜 、 小久保  哲郎 、 吉永 純   、 出版  あけび書房   
 生活保護が増えたら地方自治体の財政が破綻するというのは真っ赤なウソ。
 生活保護費のうち給付費を意味する扶助費が93%を占め、福祉事務所の職員の人件費が5%、残りはその他の委託費など。扶助費の4分の3は団体負担金でまかなわれる。
 釧路市では自立支援プログラムを実施しているが、この5年間に3180人が参加し、
544人が仕事に就き、151人が保護を抜けた。
 釧路市では、保護費が144億円ほどで、一般会計の15%を占める。そして、この保護費は一次産業の111億円を上回っていて、地域経済を下支えしている。
 生活保護費のうち99.7%は適正に執行されており、不正受給は全体の0.3%にすぎない。大型公共事業の談合による被害に比べると、ものの数でもないということになります・・・・。
 ところが、この生活保護について、3年とか5年という有期保護制度に変えようという提案が指定都市市長会からなされています。とんでもない、時代の流れに逆行した提案です。ゼネコンと暴力団を喜ばせる大型公共事業のムダはそのままにして、貧困の結果である弱者の切り捨てを図るなんて、許せません。まるで、政治は強者のためにある、というのを地でいくような提案です。
 そしてまた、生活保護費のほうが年金や最低賃金より高くなっているので、保護費のほうを切り下げようというのです。これまた、とんでもない本末転倒の提案です。
 私も生活保護支援九州ネットワークに関わっています(恥ずかしながら、大したことは出来ていません)が、社会のセーフティーネットとしての生活保護制度は、もっと利用しやすく、もっと自立支援に役立つものになるようにしたいものだと考えています。
(2011年7月刊。1600円+税)

人間と国家(上)(下)

カテゴリー:社会

坂本 義和 岩波新書
 私が大学2年生のときに始まった東大闘争のとき、著者は加郎一郎総長代行を補佐して活躍していました。もちろん私は直接には何の関係もなかったわけですが、なんとなく東大当局のメンバーの一人として漠然と著者に対してマイナス・イメージを抱いていました。
 ところが、この本を読むと、著者は反核・平和の取り組みも熱心にすすめてこられたことを知り、私の認識不足を恥じいるばかりです。
 今はもう取り壊されてしまった駒場寮に、著者も生活していたようです。ただ、「一部屋10人前後」というのは本当でしょうか。私のときには「一部屋6人」でした。10人だといくら何でも詰め込みすぎです。戦前の一高時代、そして住宅難の終戦直後はそうだったのでしょうか・・・。
 戦前の一高、そして駒場寮には反軍意識がみなぎっていた。
 それはそうでしょうね。だって、勉強をほっぽらかして兵隊にとられて戦場へ死にに行けなんて強制されるって耐えがたいことですからね。
 終戦後の駒場寮で、寮のアパート化が進行したと書かれています。
 ベットの周囲にシーツをカーテン状につるして、共同の部屋をコンパートメントに分断することがあたりまえになっていった。
 ええーっ、これって東大闘争の終わったあとにも見かけた現象なんですよ。それまで、6人で読書会をしたり、みんなで集まって議論していた空間がどんどんなくなっていくのを、私も目のあたりにしたのです。そのころも、同じように「寮のアパート化」と言って問題にしていた気がします。
 著者はアメリカに留学し、帰国してからは、アメリカのベトナム侵略戦争へ反対する運動に関わります。さらには、1968年8月のチェコへソ連軍などが侵攻したことへも抗議しています。
 我妻栄名誉教授がベトナム戦争に反対していたことも知ることができました。
 以上が上巻です。下巻には、いよいよ東大闘争との関わりが登場します。
 著者は、さすがに「東大紛争」と呼びます。しかし、私は渦中にいた学生の一人として「紛争」という言葉には抵抗があります。
 だって、東大当局が警察機動隊を勝手に入れておいて、きちんと釈明しなかい、騒動の発端となった医学部生の処分に事実誤認があったとの指摘をまともに検討しなかったなど、そのときの東大当局の姿勢に大きな不手際があったことは明らかだからです。
 ただ、著者の認識について、「本当かな?」と首をかしげるところもいくつかありました。
 東大闘争を暴力化させたのは全共闘なのです。それなのに、「どちらかと言うと、日共系が武装をエスカレートさせました。・・・その日共系の『武力』に対して、全共闘系は恐怖心を持ったようで・・・。全共闘が武装し、安田講堂に『武器』を蓄えはじめるのは、10月頃からだと推測されます」としていますが、これは、明らかな間違いだと私は思います。9月の東大病院封鎖騒動などがすっぽり抜けています。
 しかも、「はるかに固い樫の棍棒」が日共系の「精鋭部隊」の持つ武器で、このために全共闘より強かったかのような表現は、とんでもないと私は思います。たしかに「樫の棍棒」は、私も手に持ったことがありますが、警察官の警棒と同じく硬いものでした。しかし、全共闘が持ったものには鉄のパイプもあったのですよ。
 「樫の棍棒」は短いので、接近接では役に立つかもしれませんが、衝突する前は長い鉄パイプの方が断然威力があります。脅威でしたよ。これは、中世ヨーロッパで長槍軍が活躍したのと同じことだと思います。
 東大全共闘が学内で孤立化していったのは日共系の「あかつき部隊」とか「硬い樫の棍棒」のせいだというのは、一部のジャーナリストが勝手に言っているに過ぎないものです。
少なくとも私の認識はそうです。このあたりは『清冽の炎』(とりわけ第4巻。花伝社)を読んでいただくと、詳しく理解してもらえると思います。
 それにしても、全共闘が「あれほどの犠牲を払って、一体何をしたかったのか。あの一連の事件と時代を弁護することは非常に難しいと思います」という著者の指摘はまったく同感です。
 さらに、「東大解体」を叫んでいた全共闘の学生が今では東大教授になっているが、「どうして東大教授になれたのか、私には理解できません」という嘆きは、本当にもっともだと思います。学生のとき「東大解体」を叫んでいて、今では東大教授になっている同世代の人が、東大闘争の意義をマスコミや東大新聞で堂々と臆面もなく語っているのを見聞きすると、読んでいる私の方が恥ずかしさを覚えるほどです。
 「全共闘は、みな正義に殉じた犠牲者であるかのように描き出され」たが、「あの凄惨なゲバルトの現場を一目でも見たら、そう簡単に全共闘支持とは書けない」のではないかという指摘こそ、まっとうなものだと、私も当時の東大にいた学生の一人として思います。 
東大闘争の展開についての貴重な証言の一つでもある本です。

(2011年7月刊。800円+税)

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