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過労死・過労自殺、労災認定マニュアル

カテゴリー:司法

著者  川人 博 ・平本 紋子  、   出版   旬報社
 身内が亡くなったことを前提として相談を受けているときに、それって過労死じゃなかったの・・・・?と思うことがあります。でも、遺族はなかなか問題にしようとはしません。生前、故人が世話になった会社に弓を引くわけにはいかないという気持ちからです。
 そんな人たちに気軽にすすめることのできるのが、この本です。マニュアル本として、とても実践的な内容です。本文100頁のQ&A方式で実践的かつ明快です。
 「もう疲れました」「悪いのは自分です」という遺書があっても労災と認めなられる。かつては、遺書があれば「故意」による覚悟の自殺だとして業務外とされることが多かった。現在では、遺書にみられる心身の状況や業務に関連する記述が本人の精神障害の症状や業務上の心理的負荷を証明するものとして積極的に評価されることがある。
 労災申請書を出そうとして会社が証明書を書いてくれなかったときには、そのことを書いた証明文をつけて監督署に提出すればいい。
ひどい長時間労働しながら、タイムレコーダーがそうなっていないときには、会社に残ったパソコンで稼働状況を証明する。そのための裁判所の証拠保全手続のときには、パソコンの専門家であるシステムエンジニアを同行して確実に保存する。
 電子的な記録がないときには、同僚から聞き取って報告書をつくる。
つぶれかかっている会社のようなときには、代表取締役個人に対する侵害賠償請求も考える。
 会社と示談するときには、労災保険とは別のものであること、慰謝料であることを明記しておく。慰謝料には所得税がかからない。
著者は私と同じころに大学生でした。今では過労死問題の第一人者です。そのうえ、東大駒場で有名な「川人ゼミ」を1992年から続けています。たいしたものです。引き続きがんばってください。
 著者より贈呈していただきましたので、感謝の気持ちをこめて紹介させていただきました。
(2012年5月刊。1200円+税)

先生、モモンガの風呂に入ってください

カテゴリー:生物

著者   小林 朋道 、 出版   築地書館
 なんとシリーズ第6巻です。偉いですよね。文体が軽くて面白く読めるうえに、観察の対象となった生き物たちが可愛らしいばかりでなく、著者と学生たちの対応がほのぼのしていて、いつも一気に読了してしまいます。場所は鳥取県の山奥深いところが舞台です。
 そこの森に棲むモモンガを探検し、よくよく観察します。
地上から6メートルの高さのところに据え付けた巣箱にモモンガの赤ちゃんを発見。そっと地上に降ろして計測して観察します。洞窟も探索します。冬眠中のコウモリを見つけました。さらに、カエルまで・・・。
 モモンガは、巣の材料として、杉の樹皮を使う。モモンガは巣の中で、スギの香りに包まれて、癒されながら休息する。
モモンガを捕まえると、顔の写真をとり、尾の毛を少し刈り、さらに注射器でマイクロチップを尻の皮下に入れる。いずれも、あとで個体識別できるようにするため。
 こんなユニークな教授とともに森の奥深くまで入りこんで実地調査できるなんて、この鳥取環境大学の学生はなんと幸せなことでしょう。
 恐らく学生である本人たちはそう思っていないでしょうから、私が代わりに言わせていただきます。
 先生、この調子で第7弾を続いて飛ばしてくださいね。
(2012年3月刊。1600円+税)

ティーパーティ運動の研究

カテゴリー:アメリカ

著者   久保 文明 ほか  、 出版   NTT出版
 アメリカの保守主義の実像を知りたくて読みました。ティーパーティって、いったい何なのか・・・・?
 ティーパーティ運動の主要な目的として、宗教的な争点があげられることはほとんどなく、経済争点が主である。
 ティーパーティ運動の支持者の半分近くは無党派層である。この運動は、保守的であり、共和党員と無党派とが混合した運動である。
 ティーパーティ運動は、ローカルでかつ小規模な団体が多く存在している。ティーパーティ運動には指導者がいない。運動全体をまとめる旗振り役は存在しない。
 多くのローカルなティーパーティ系団体は、巨大な連邦レベルの組織と結びつくことを望んでいない。一見すると連邦レベルで一つのまとまった集団のように見えるティーパーティ運動は、実は地域レベルの数々の社会運動の集まりに過ぎない。
 近年の無党派層の急激な保守化、無党派層の急激な経済保守化には、「大きな政府」化によっても好転しない現状に対する反発として理解できる。
 2008年から2010年にかけて、自らのイデオロギーを保守と答えた人が37%から42%へと5%も増えた。他方、穏健と答えた人は、37%から35%に、リベラル派は22%から
20%へと減少した。
 「大きな政府」化を行っても好転しない現状に反発する人たちのうち無党派の人たちは、その多くが近年になって保守化、しかも経済的に保守化した。そして、そうした人たちが、ティーパーティ運動の支持者の半分近くを占めるようになった。ティパーティと共和党主流派との政策的な溝は大きい。
 オバマ大統領について、マルクス主義者ではないが、マルクスモデルの一部を内面化している人物だと見ているそうです。ええっ、そんなバカな・・・・、と思いました。オバマ大統領は、史上もっとも急進的な大統領だというのです。本当でしょうか・・・・???
 減税、小さな政府、大きな自由。この理念というのは、大金持ちにとって住みやすい国づくりということですよね。私は、とんでもない政策目標だと思うのですが、案外、中間層がこれにころっと欺されてしまうのですよね。
ところで、自らをティーパーティと名乗るのは、18%で、実際に行動したり、寄付したりするのは4%に過ぎない。
ティーパーティの内情を分析した本として興味深く読みました。
(2012年1月刊。2800円+税)

メルトダウン

カテゴリー:社会

著者   大鹿 靖明 、 出版   懇談社
 3.11の起きたとき、東京電力の清水社長は夫人同伴で優雅に奈良を観光していた。そして、実力者である勝俣会長と筆頭副社長は大手メディアの幹部たちを引き連れて中国にいた。
3000人が働く東電の部門は、そこだけが東電全体から独立した王国を形成していた。東電の武藤栄副社長は、この日の来ることを知っていた。しかし、その対策は何ひとつ講じなかった。原子力村のお歴々は、みな巨大津波の想定を知っていた。それなのに、勝俣会長にも清水社長にも知らせなかった。
 東電の原子力部門は東大工学部率が主流を占めていた。吉田昌郎所長は、東京工業大学の大学院で原子核工学を専攻した。日本の原子力行政のトップは、誰も全電源喪失という事態を想定していなかった。
 共産党の吉井議員の想定のほうが、原子力安全・保安院の寺坂院長より勝っていた。ベントが必要だといっても、そんな実務的なことは、協力会社と呼ばれる「下請け」の社長や作業員のほうがはるかに詳しい。
東電の社長は現場に出るのを嫌がった。いざというときに役立つ原発についての知見は「空洞化」し、東電社員の力量だけではいかんともしがたい。
 福島第一原発事故で大気中に放出された放射性物質の量は、半減期が30年と長いセシウム137でみると、広島に落とされた原爆の168個分にもなる。ストロンチウム90で換算しても広島型の2.4個分もあった。このように、すさまじい放射能汚染をまき散らした。
 保安院の寺坂信昭院長は東大経済学部を卒業して経産省に入ったキャリア組の高級官僚だ。直近の仕事は、スーパーなど流通業界を管轄する商務流通審議官だった。要するに、原発のことを何も知らない人が原発の保全を監督するところのトップだったというわけです。恐ろしいことですね。ぞっとします。
 ベントが実施されたのは、古田所長が3月12日午前0時過ぎに準備を指示して14時間もたったあとのこと。しかし、そのときすでに1号機はとっくにメルトダウンしていた。
 メルトダウンとは炉心溶融ともいい、核燃料が高熱にさらされ、どろどろに溶け(メルト)、原型を失って原子炉の底に落ちる(ダウン)のこと。
 東電のなかには、怒鳴りちらした菅首相への嫌悪感やら反発心から「菅降ろし」につながっていった。菅政権への敵がい心が東電の深層に芽生えていった。
 枝野官房長官(元・経産大臣)は、「東電を殺人罪で告訴するぞ」と怒鳴ったそうです。大混乱のなかで、東電は自分たちに風当たりの強い首相官邸への不信感が増幅されていった。
吉田所長は「死」を意識した。社員や協会会社の作業員たちの人命を守らないといけない。吉田所長は制御に必要な要員を残して大半は退避させたいと思った。
菅首相が東電本社に乗りこんできた。「東電が逃げたら、日本は100%つぶれる」と叫んだ。
 福島第一原発には、3.11事故当日、3500人が脱出していき、ゴーストメルト化した。注水作業に必要な70人ほど(「フクシマ50」として有名なんですが・・・)を残して「フクシマフィフティーズ」が結成された。実際には50人ではなく、70人が参加した。
 この70人の肩に日本の将来がかかったわけなんです。不幸中の幸いが続いて今に至っています。こんな危ない原発は即刻すべてを廃止すべきだと思います。
(2012年3月刊。1600円+税)

自治体ポピュリズムを問う

カテゴリー:社会

著者   榊原 秀訓 、 出版   自治体研究社
 橋下流の「独裁政治」をマスコミが手放しでもてはやす昨今です。このブームは、いつになったら冷めるのでしょうか・・・。
 橋下への支持は、「何が変わるかが分からない」が、「バッシングにも負けず」に「庶民目線でメディアに発信を続ける」橋下がもたらす「何かの盛り上がり」への漠然とした期待で成り立っている。
 プレビシットという手法である。行政府の長が、選挙や国民投票など有権者の意思表明の機会を自分への信任投票と位置づけ、その結果を自身への「民意」の支持と見なそうとする政治手法のこと。必ずしも必要のない辞職で選挙を設定し、自己の政権基盤強化のために用いるのは、ポピュリズム政治家の本領発揮である。
 今日のポピュリズム首長は、自己の政治的地位の強化と政策の正当化のために意図的に議会を挑発し、意図的に対立構造をフレームアップしている側面のある点で、「革新首長」や「単一イシュー型首長」とは異なる。既存の議会内会派を基盤とする与党形成を追及せず、逆に、これらの諸会派を「敵」と位置づけ、自ら主導する地域政党によって議会内の多数派形成を目ざすという点では、自民・公明を基盤とする石原慎太郎都知事の政治手法とも異なる。
ポピュリズムの首長が多数の有権者に支持されている現実を直視したうえで、それとの理論的、実践的な格闘が求められている。
 ポピュリズム首長は、「無党派市民が支えている」というイメージに反して、実は、自民や民主などの既成政党支持層が基盤である。国政で自民・民主に投票した新自由主義・新保守主義の支持層が地方では、首長翼賛地域政党を支えている。
ポピュリズム首長の政治手法は、第一にレッテル貼りの政治、第二に抽象化された政治、感情の政治という二つの特徴がある。抽象化の政治とは、公益とか市民といった曖昧な概念を多用して自己の政治的立場を強化する手法である。感情の政治とは、政治家の個人的な心情を政治の言葉として表現し、本来ふまれるべき法的・政治的過程を素通りないし無視する姿勢である。
ナチスが設定した「敵」がユダヤ人やコミュニストであったように、日本のポピュリズム首長にとっての「敵」は、議員、公務員、教職員組合である。
大阪市民がもっと冷静になって橋下流のインチキな政治手法にだまされないことを心から願っています。
 橋下市政は公務員そして教員を自己の厳しい統制下において「独裁政治」を貫徹させようとする一方で、福祉を大胆に切り下げつつあります。ひどいものです。政治は弱者救済のためにあるはずなのに・・・。
(2012年2月刊。2400円+税)
 連休中にいつものように近くの小山に登りました。高さ380メートル、わが家から頂上まで1時間あまりです。途中に急勾配の斜面もあります。
 新緑の中を汗をかきつつ登り切りました。見晴らしのよいところでお弁当びらきをします。梅干しおにぎりを食べながら360度に広がる下界を見渡すと気宇壮大、浩然の気を養うことができます。
 薄陽のさすもとで、しばし寝ころがって風の音に耳を澄まします。すぐ近くにウグイスの清らかな鳴き声も聞こえてきました。至福のひとときです。
 山から下りる途中には赤紫のアザミの花があちこちに咲いていました。風薫る五月を実感できた一日です。
 この日、1万5000歩あるきました。翌日、なぜかお尻あたりが凝っていました。

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