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カテゴリー: 社会

風がおしえる未来予想図

カテゴリー:社会

著者  原発なくそう・風船プロジェクト実行委員会 、 出版  花伝社
 海外へ原発を輸出しようとしている安倍首相は、それだからこそ一刻も早く原発を再稼働させようとしています。とんでもないことです。
 だって、いまでも福島第一原発の周囲に人が住むことは出来ず、15万人もの人々が狭くて不自由きわまりない仮設住宅に住まされているのです。
 使用済み核燃料がどうなっているのか、3年たった今も皆目わからず、放射能に汚染された水や空気が拡散し続けているのです。
 東京電力の無神経さは今に始まったことではありませんが、九州電力だってまったく同じです。いずれも経済団体を牛耳ってきました。そして、彼らは教育に注文をつけ、教科書を思うように書き替えてきました。要するに、疑うことを知らない子ども、そして大人になることを求めています。そうなったら、まるで会社いいなりのロボット人間ではありませんか・・・。
九州にある玄海と川内(せんだい)の二つの原発を絶対に再稼働させてはなりません。
 原発はクリーンなエネルギーだと言っていましたが、3.11のあとは、とんでもない大嘘だということが誰の目にも明らかになりました。
 この風船プロジェクトは、玄海原発の近くから風船を飛ばしたら、いつ、どこへ落ちるだろうか、それを調べようというものです。もちろん、前例があります。2012年3月に福井県にある美浜原発から1000個の風船を飛ばしたのでした。100個が発見され、うち83個が岐阜県内で発見されたのでした。
玄海原発の周辺から風船を飛ばしたのは4回です。2012年12月8日が第1回目で4回目は2013年10月27日でした。
 ヘリウムガスを風船につめて飛ばしました。ゴム風船ですが、環境負荷(影響)の少ないものに工夫しています。
風船と放射性微粒子の動きは、水平方向では似たような飛行軌跡を示した。
 風船は捨てられたら環境から除外する。放射性物質は違う。地上に降り積もった放射性微粒子は、自然環境や生活環境中にとどまり続け、晴れて乾燥した日や、風が強い日などには、再び大気中に浮遊し、風などに乗って拡散する。この半減期は長く、30年であり、何十年も生き続ける。
 風船プロジェクトは楽しい企画でした。一杯100円の豚汁、コーヒー1杯100円だなんて、まさしく困ったときの神頼みですよね。
 100頁あまりの手頃なブックレットです。ぜひ、あなたもお読み下さい。読みやすく、ためになる面白い本です。
(2014年6月刊。1000円+税)

アトミックス・ボックス

カテゴリー:社会

著者  池澤 夏樹 、 出版  毎日新聞社
 推理小説なので、ネタバレをするわけにはいきませんが、日本の「核開発」をめぐる怖い話です。
 原子力発電といい、核開発といい、アメリカの強力な統制下ですすめられてきたことは間違いありません。
 そして、そのなかで原発については「安全神話」が形成されてきました。他方、「核開発」のほうは、依然としてヤブの中にあって、不明なままです。
瀬戸内海の小島に逃げてきて、漁師になり切った科学者。その死後、娘が動き出し、島内で監視していた男が島を脱出した娘のあとを追います。その東京で追跡劇が見事に描写されています。
しかし、ハラハラドキドキの逃亡手法と追跡者のからみあいに目を奪われていると、話の本筋を見失ってしまいます。
 要するに、アメリカの支配からの脱却を目ざした「核開発」をアメリカが探知し、その圧力によって頓挫させられ、研究者は四散させられるのです。
なるほど、そうなるだろうなと思わせるだけの確かな筆力によってぐいぐいと本のなかに引きずりこまれていきます。
 戦後日本の「核開発」が、どこまで実際にすすんでいたのか知りたくなります。
 それにしても、いまの安倍首相のような無定見で、口先だけの男に、日本の運命をゆだねたくはないと思ったことでした。
(2014年2月刊。1900円+税)

自爆営業

カテゴリー:社会

著者  樫田 秀樹 、 出版  ポプラ新書
 カローシするまで働かせるブラック企業は許せませんが、ノルマ達成のため自腹を切らせる企業も許すわけにはいきません。
 ところが、ここでまず登場するのは、なんと、あの郵便局なのです。ええーっ、郵便局員が「自爆営業」しているのか・・・。
 郵政公社になってから、年賀状のノルマが厳しくなった。正社員なら1万枚、非正規社員でも1000~3000枚。売上げの少ない「恥ずかしい社員」は、数百人の社員のそろう朝礼のとき、「お立ち台」に立たされ、「申し訳ありません」と謝罪させられる。
 ノルマを達成しない社員は昇進できない。そこで、金券ショップに駆け込んで買ってもらう。管理職だと自腹を切る金額は数十万円になる。
 郵政公社がスタートした2003年に、精神疾患による休職者は400人だったのか、4年後の2007年度には800人近くへ倍増した。自殺者も、毎年30~50人出ている。
 ひえーっ、これって怖い数字ですよね。小泉「郵政改革」の結末の一つがこれなんですね。ひどいものです。
日本郵便の社員は正社員が10万人で、非正規社員が15万人。非正規社員が6割を占めている。そして、非正規社員の6割以上が年収200万円以下。
日本郵便は、20011年、2012年と赤字を出していたが、2013年の決算では黒字となった。それは、非正規社員の大量解雇によって500億円もの人件費を削減したことによる。
現場には、正社員がほとんどいない。非正規社員の時給は720円で、手取りは付き11万円台。
 日本郵便の社員の起こす交通事故の割合は、一般社会の4~5倍と高い。叱責と罵倒の毎日は、労働者を確実に委縮させ、気持ちを急がせ、作業から安全性と確実性を奪う。
 定時の前に出勤し、昼休みに昼食を食べず、午後と夕方の休憩時も働く。
残念なことに、こんなひどい自爆営業は、ひとり「郵便局」だけではありません。他の業種にも、今では広く認められます。そこには、労働基準法も労働組合も存在しないかのようです。でも、権利はたたかわなければ、自分のものになりません。ぜひぜひ、みんなで、少しずつ声をあげていきたいものです。
 ひどいことは許さないという声をあげるのは、自分のためであり、世の中のためなのですから・・・。
(2014年5月刊。780円+税)

作家の決断

カテゴリー:社会

著者  阿刀田 高 、 出版  文春新書
 いずれも名の売れた、ベテラン作家19人が大学生たちのインタビューにこたえたものが本になっています。モノカキを自称する私には、とても参考になり、かつ刺激的な内容が満載でした。
作家を名乗るものはとにかく書き続けなければレースから外される。駄作でも何でも、書き続けていけば、充電される。そして駄作がどうかを決めるのは、本人ではなく読者なのだ。森村誠一。
 たくさん読んで、たくさん書く。とにかく書くこと。佐木隆三。
 やっぱり書くこと。いろいろ表現しているうちに、自分の内側の一番辛いことが、コンプレックスみたいなことが、そういうものがあれば、それをテーマに書き始めると、大勢の人に訴える。 結局、過去をふり返ったときの自分の胸の痛み。これが小説だ。津本陽。
 なんでも、とにかく思いついたことは、短くしていいから書いておく。断片があれば、思い出すことができる。断片がないと、何を思いついたのか、あとでたどるのはほとんど不可能。思い出せないと、いいことを思いついたのにと、すごく悔しい気がする。阿刀田高。
 ミステリー、推理小説は、モチーフ、つまり小説を通して読者に訴えたいメッセージを必要としないもの。阿刀田高。
 いろんな人の書いたものを読んでそこから外していく。そして、自分の世界がないものは、まったくダメ。読み直す。何度も読み直す。そして、たくさん読むこと。読んだことによって、他人が書いていないもので自分が書けるものが何かあるって気がつくはずだから、それを書くこと。そして、読み直すこと。最低でも3回は読み直す。大沢在昌。
 モノを書く人が、「知りたい」っていう気持ちをなくしたらダメ、田辺聖子。
 新人は、とくに読者なんか意識してはダメ。小池真理子。
 若いころは、自意識過剰だ。その自意識がないとダメなんだけど、自意識だけでもダメ。小説家は、計算ができて、ナンボだ。藤田宣永。
 小説化には、二つの才能が必要。一つは、文章をつくる才能。もう一つは、ストーリーをつくる才能。面白いストーリーをつくるというのは、努力では、いかんともしがたい。文章については、数を読み、数を書けば誰でもうまくなる。しかし、ストーリーを造る才能のほうは、嘘つきの才能だし、想像力がどれだけ豊かなのかということなので、天賦の才だ。そして、小説化するのに必要なのは、体力。浅田次郎。
 高名な作家のうち、少なくない人が原稿を手書きしているのを知って、同じく手書き派の私は大いに安心しました。漢字変換の、あの一瞬が思考を中断させてしまうのです。
 モノ書き志向の私にとって、大いに役立つ実践的な本でした。
(2014年3月刊。850円+税)

有次と庖丁

カテゴリー:社会

著者  江 弘毅 、 出版  新潮社
 私は料理ができませんし、しませんので、庖丁のありがたみがさっぱり分からないのですが、プロの料理人は、それこそ庖丁一本というように庖丁を大切にするようです。
 この本は、その庖丁を扱う京都の老舗の周辺を丹念に取材しています。なるほど、そうだったのかと思わずうなずいてしまいました。「有次」は、ありつぐと読みます。創業は元禄3年、1560年という超老舗です。禁裏(きんり)御用鍛治にさかのぼる店で、現在の当主は、なんと18代目。
 京都市中庸区錦小路通御幸町西入ル。錦天満宮の鳥居がある寺町通りから錦小路を西筋一本の御幸(ごこ)町通りをこえて三軒目。鍛治町219番地だ。
 京都の老舗の、あらゆる業態の店では、必ず「有次」印の道具が使われている。ウナギ専用の京サキ庖丁、フグ専門店の出刃包丁、鶏肉店の相出刃庖丁、漬けもの店で大きな赤かぶらを切る両刃庖丁、スシ店の柳刃刺身包丁、カマボコ屋の練り物や天ぷらのすり身をつくる付庖丁。
 「有次」の多種多様な料理道具は、料理人たちの技とこだわりに応えた本物のプロ仕様だ。
 創業が永禄3年(1560年)というと、戦国時代のまっただ中、桶狭間の合戦があった年。関ヶ原の戦いはもっと後の1600年だ。
 さすがによく切れる。だから、おしゃべりしながらつかう庖丁ではない。そんなことをしていたら、自分の手をスパッと切ってしまう・・・。
 良い庖丁というのは、よく切れるうえに、切れ味が長く持つのが一番。切れ味を決定するのは研ぎ。その前に、毎日のお世話が大切だ。「有次」の扱う庖丁は鉄。だから、さびないように、毎日、使い終わったらクレンザーをつかって磨く。
 庖丁をまな板の上にきっちり置いて、刃の方向へ汚れを落としてやる。そして、乾いたタオルで、しっかり拭いてあげる。食器乾燥機を使うと、刃が傷む。自然乾燥で片付けること。
 使い終わって片付けるときには、「ありがとう」と言って、庖丁をみがく。
 「有次」で庖丁が主力商品になるのは、明治から大正にかけてのこと。それまでは、庖丁ではなく、小刀をつくっていた。
 「有次」の店員は、毎日のように、ユーザーの店をまわり、料理人から要望を直接きき、注文をとって修理やメンテナンスをする。これこそ、すぐれた庖丁を京料理界に普及させ、さらによりすぐれたものに昇華させる原動力だ。
 「有次」の和庖丁は、メイドイン堺だ。料亭などのプロは、9割が堺でつくられた刃物・庖丁を使っている。
 毎日、つかった庖丁をきちんと手入れするというのは、信じられませんが、それほど、使い勝手のいい庖丁なんだと思いました。日本のプロ職人は健在なんですね。
(2014年3月刊。1600円+税)

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