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カテゴリー: 社会

資本主義の終焉と歴史の危機

カテゴリー:社会

著者  水野 和夫 、 出版  集英社新書
 資本主義の死期が近づいているのではないか。このような問題意識で書かれた本です。衝撃の問題提起なのですが、そこで言われているのは、しごくまっとうな内容のものばかりです。そうだ、そうだと、ついつい何度も深くうなずいてしまいました。
昨今の先進各国の国債利回りは、利子率が際立って低下している。日本の10年国際は、2.0%以下という超低金利が20年近く続いている。
 金利は、資本利潤率と同じなので、利潤率が極端に低いということは、すでに資本主義が資本主義として機能していないという兆候なのだ。
 利子率=利潤率が2%を下回れば、資本側が得るものはほぼゼロ。そうした超低金利が10年をこえて続くと、既存の経済・社会システムはもはや維持できない。
 10年国債の利子率が2%を下回るということは、資本家が資本投資をして工場やオフィスビルをつくっても、資本家や投資家が満足できるリターンが得られなくなったことを意味する。
 利潤率が異常に低下したのは、1974年に始まる。
 資本配分を市場に任せたら、労働分配率を下げ、資本側のリターンを増やすので、富む者はより富み、貧しい者がより貧しくなっていくのは当然のこと。これは、中間層のための成長を放棄することも意味している。
 国境の内側で格差を広げることもいとわない「資本のための資本主義」は、民主主義も同時に破壊する。民主主義は、価値観を同じくする中間層が存在してこそ機能するもの。
グローバリゼーションとは、「中心」と「周辺」の組み替え作業であり、ヒト・モノ・カネが国境を自由にこえ、世界全体の繁栄に導くなどといった表層的な言説に惑わされてはいけない。
 中間層が没落した先進国で、消費ブームが戻ってくるはずがない。
 資本主義は、中産階級を没落させ、粗暴な「資本のための資本主義」に変質していった。
これは、資本主義の「退化」である。
 これまでは、2割の先進国が、8割の途上国を貧しくさせたままで発展してきたため、先進国に属する国では、国民全員が一定の豊かさを享受することができた。ところが、グローバリゼーションのすすんだ現代では、貧富の二極化が一国内で現れてしまう。
 中国で「13億総中流」が実現しないとなれば、中国に民主主義が成立しないことになり、中国内で階級闘争が激化するだろう。これは中国共産党による一党独裁体制を大きく揺さぶることになる。そして、中国にバブル崩壊が起きるのは必然。成長率の高い中国バブル崩壊が世界経済に与える影響は日本の比ではない。
 バブルとは、資本主義の限界と矛盾を覆い隠すために、引き起こされるもの。資本主義の限界とは、資本の実物投資の利潤率が低下し、資本の拡大再生産ができなくなってしまうこと。
 アベノミクスのような、過剰な金融緩和と財政出動、さらに規制緩和によって成長を追い求めることは、危機を加速させるだけであり、万国崩壊と過剰設備によって国民の賃金はさらに削減されてしまうことになる。
 マルクスの『共産党宣言』とは真逆に、現在は、万国の資本家だけが団結し、国家も労働者も団結できずにいる状態である。
 法人税や金融資産課税を増税して、持てる者により負担してもらうべきなのに、逆累進性の強い消費税の増税ばかりが議論されている。
 法人税に至っては、財界は下げろというだけで、新自由主義とは実は無政府主義(アナーキスト)なのかとも思える。法人税を下げたところで、利益は資本家が独占してしまい、賃金には反映されていない。
 労働規制を緩和するのは資本家の利益のためでしかない。逆に規制を強化して原則として正社員としての雇用を義務付けるべき。
 財界本位のアベノミクスを一刻も早く止めさせる必要があることを痛感しました。胸のすく思いのする新書です。ぜひ、ご一読ください。
(2014年8月刊。740円+税)
 今年もジョウビタキが来てくれました。土曜日の朝、あっ、声がすると思ったら、すぐそばにジョウビタキが来ていました。ぷっくら可愛い姿のジョウビタキは、人なつっこく、いつも身近に来て、尻尾をチョンチョンと下げて挨拶してくれます。
 日曜日の午後、チューリップを植えました。畳一枚分の広さにぎっしり詰めて球根を植えます。すぐそばには黄色いエンゼルトランペットの花がたくさん咲いています。酔芙蓉の花は終わりましたので、また来年ねと声をかけて、せんていバサミで切りました。

波よ、鎮まれ

カテゴリー:社会

著者  沖縄タイムス「尖閣」取材班 、 出版  旬報社
 尖閣諸島付近の漁業の実情を知ることのできる本です。この海域は、かつて日本人も中国人も共存共栄していた漁業だったのです。知りませんでした。
 偏狭な領土ナショナリズム思想をもつ活動家たちが魚釣島に上陸して緊張感を高めた。そして、石原慎太郎都知事(当時)が尖閣諸島の購入計画を発表して、緊張関係は一挙にエスカレートした。
 中国漁船の衝突事件では、日本政府も中国政府も対応を誤った。
 中国漁船による尖閣諸島周辺の操業は、日中漁業協定によって合法である。中国漁船と沖縄漁船のトラブルはほとんどない。起きるトラブルの大半は、台湾漁船のマグロはえ縄漁による漁具の交差・切断や漁具盗難である。
小さな徴発の応酬が戦争にまで発展した事例は世界にはいくつもある。
 マグロはえ縄漁船は、最前線で台湾漁船と激しい漁場の競合に直面している。
 尖閣海域は、高級魚(フエダイ、ムツ、ハチビキ科など)が捕れる好漁場だが、近年は漁場を利用する人はほとんどいない。
 尖閣海域は、石垣島から170キロ離れ、自船で行くと、10時間かかる。そして、尖閣諸島周辺の海は荒い。
 尖閣海域は、かつて沖縄と台湾の農民が魚を分けあう「生活圏」だった。この背景には、台湾の漁場が日本に比べて圧倒的に「視野」が狭かったことにある。
釣魚台周辺は、好漁場。サバの産卵地域でもある。
安倍首相のように、中国や韓国・北朝鮮について頭から敵視して、対話交流もしないというのは、信じがたいほどの誤りです。70人もの大企業代表国を引きつれて世界各地に出かけている安倍首相が、今もって中国にも韓国にも行ってないなんて、許せないことです。
(2014年4月刊。1600円+税)

虚像の抑止力

カテゴリー:社会

著者  猿田 佐世、マイク・モチヅキほか 、 出版  旬報社
 この本の発行主体である新外交イニシアティブ(ND)の事務局長である猿田佐世弁護士は、日本とアメリカで弁護し活動しながら、アメリカ議会で活発なロビー活動を進めています。その猿田弁護士が企画した沖縄でのシンポジウムが本になっていますので、大変読みやすく、問題の本質が明快にえぐり出されています。
 柳沢協二氏は、海兵隊が沖縄に存在することが抑止力であるという論理は成り立たないと力説しています。
 そもそも、抑止力とは何か? 抑止力とは、相手が侵略してきたとき、これを抑止し、その目的に見合う以上の損害を与える意思と能力を認識させることによって、侵略を思いとどませることを言う。
 いま、アメリカと中国とは、相互にライバル意識を持ちながら、経済的には切っても切れない関係にある。それは、冷戦時代のアメリカとソ連との関係は決定的に異なっている。つまり、相互に最大の貿易・投資のパートナーであり、国の存立の基盤である経済活動において互いに必要としている。だから、両国のあいだには、相互に相手を破滅させるような戦争をする動機はない。
 アメリカは、尖閣諸島をめぐる日中の対立軍事衝突に発展し、そこに巻き込まれることを心配している。
 沖縄の海兵隊は、能力はともかくとして。投入の意思がない以上、抑止力とはなりえない。
 沖縄にアメリカ軍の基地が集中していることは、中国にミサイル能力が向上するに伴い、基地の脆弱性が増していることを意味する。いざというとき、中国のミサイルの格好の標的になって、破滅してしまう恐れが強い。
 屋良朝博氏は、なぜアメリカ軍の海兵隊が沖縄に移ってきたのか、いまも謎だという。沖縄には、そもそも海兵隊はいなかった。知りませんでした。
 尖閣諸島を中国軍が占拠したとき、沖縄にいるアメリカ軍海兵隊が奪還してくれるはずだ。日本人の多くは、このように思い込んでいる。しかし、アメリカ軍の海兵隊トップは、小さな島の奪還に、海兵隊は無用だと断言する。海兵隊は地上戦闘兵力であり、シーレーン防衛とか中国の艦船と対決するような事態には投入されない。
 アメリカの国防総省(ペンタゴン)は、海兵隊を沖縄から全面撤退するように提言した。
在日アメリカ軍の駐留経費は年間3600億円。日本の負担は、ヨーロッパのNATO諸国の負担の2倍。イタリアの12倍、韓国の8倍。まさしく大盤振る舞い。「おもてなし」だ。
 半田滋氏は、日本政府はアメリカ政府に対して盲目的な主従関係にあるという。
 アメリカ軍の駐留経費の75%を日本政府が負担している。
 いえ、決して安倍首相のポケット・マネーで負担しているのではありません。私とあなたの税金によって、まかなわれているのです。毎日、苦労して働いて納めている税金がアメリカのために使われているなんて、とんでもないことです。プンプン・・・。
 アメリカ軍の海兵隊は、沖縄に常駐しているのではない。海兵隊は、沖縄に1年の半分以上はいない。
 新書版より少し大きなポケット・サイズの本です。190頁しかありませんので、大切なポイントをつかみやすい本になっています。それにしても、猿田弁護士は会うたびに若々しく、美しくなっています。やっぱり、時代の要請にこたえて活動すると、人は若返ることができるんですね。こんな外交活動を支えるためにも、ぜひ本屋の店頭で手をとり、お買い求めください。あなたの、そのささやかな行動が日本を救うのです。
(2014年8月刊。1400円+税)

限界にっぽん

カテゴリー:社会

著者  朝日新聞経済部 、 出版  岩波書店
 ほんの少し前まで、「ジャパン・アズナンバーワン」とされ、安定雇用のもと、経営と働き手が一体になった日本型経営は、日本の強い競争力の根源だと言われていた。終身雇用と手厚い福利厚生で企業が従業員を支え、分厚い中流層が社会の安定の基盤だった。
 いま、社内に首切り旋風が吹き荒れている。残った社員にも不安と不信が強まり、職場では誰もが孤立し、会社は乾いた荒漠としたものになった。
 雇用の危機を放置したままで、経済は成長できるのか・・・。
マクドナルドの店内は、午前0時になると、店内の風景が一変する。サラリーマンや学生たちと入れ替わりに、しびれた手提げ袋を抱えた男性たちが入ってくる。「マクド難民」と呼ばれてくる人たちだ。
お金がないから、ネットカフェには泊まらない。ネットカフェは1000円かかる。マックなら100円のコーヒー1杯で午前2時までいられる。
マック閉店のあとは、「ブックオフ」に向かう。マックの店員は大半が非正規社員。17万人がアルバイトで働く。
 大阪では、働く人の45%が非正規社員だ。
 非正規社員が広がったのは、1990年代後半の「派遣の原則自由化」による。これは、本当に罪深いと思います。大企業本位の自民党政治の最大の誤りの一つだと思います。大企業は栄えても、日本の若者からは将来展望を奪ってしまいました。
 生活保護のバッシングがひどい。しかし、不正受給は全体の2%。保護を受ける資格が十分にあるのに、わずかな収入でガマンしている人が圧倒的に多い。ところが、残念なことに、そのような人が身近な生活保護受給者の足を引っ張るような行動もするのです・・・。
 安倍内閣は生活保護費の給付水準を引き下げるのに狂奔しています。強いものには税金を安くしてやって、弱者には「自己責任」を押しつけるのですから、政治家失格です。
 現実の日本社会には、ばりばり仕事をするサラリーマン男性だけがいるわけではない。高齢者も障害者も社会に適応できない若者など、さまざまな人がいる。みんなが、それぞれにがんばれる多様性を組み込まないと、経済も社会も活性化しない。
日本の超有名大企業が社員に自主退職を促し、株主や銀行に約束した「人減らし」計画を達成するために「追い出し部屋」をつくっている。
 パナソニック、NEC、ソニー、朝日生命などなど・・・。
 ノエビア化粧品は、「苛酷なノルマ」を押しつけて、社員を追い出す。その手口が明らかになった。会社側は「辞めろ」とは決して言わない。社員が自ら「辞める」と言い出すまで、じりじりと追い込む。
 2012年8月、東京地裁立川支部は、ベネッセコーポレーションの「追い出し部屋」を違法と断じる画期的な判決を出した。
 人減らしをすすめるとき、人事担当は、「解雇・クビ・やめろ・やめてくれ」とは絶対に言ってはならない。会社に残るのを、いかにあきらめさせるか、だ・・・。
 ユニクロは、ブラック企業としても有名です。新入社員が入社して3年内に退職した割合(離職率)は、2006年組で22%、2007年組は37%、2008~2010年組は46~53%と高まっていった。同期の入社組の半数は会社を去っていく。そして、休職している人の42%はうつ病などの精神疾患にかかっている。これは正社員の3%にあたる。
もっと働く人を大切にすること、とりわけ若者が安定して長く働ける職場を確保すること、これをなくして日本社会の平和と安定的成長はのぞめないと思います。
 いま安倍首相のやっていることは、それに真っ向から逆行しています。働く中高年を大切にせず、若者を使い捨てにして、超大企業のみを優遇しています。そして、軍需産業だけは栄えるというのです。本当に、戦後最悪の政治が進行中だと思います。
(2014年月刊。760円+税)

自衛隊と防衛産業

カテゴリー:社会

著者  桜林 美佐 、 出版  並木書房
 自衛隊と防衛産業を積極的に評価した本です。
 10式戦車は「ひとまる」戦車。90式の50トンと比べて44トンと大幅に軽量化された。90式戦車は重すぎて北海道でしか使えなかった。
 10式戦車は、完全国産。2000メートル先の目標に対して畳一枚の大きさの制度で撃ち込むことができる。そして、車体がどんなにブレても、照準点が変わらないように制御できる高度な技術がある。ジグザグにスラローム走行しながら射撃し、命中させる能力は世界初。追尾を90式の熱源方式から、映像方式に替えたことで実現した。そして、眼鏡式だった標準あわせが、10式ではタッチパネル式に変わっている。
 現在、戦車をエンジンまですべて国産にできる国は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イスラエルそして日本だけ。戦車を製造しているのは、相僕原市にある三菱重工業の汎用機・特車事業本部。最盛期には年に72両の戦車を製造していたが、いまは8両ほど。かつての1200両が今では3分1まで減らされている。
 ヘリ搭載型護衛艦というのは、ヘリ空母のこと。「ひゅうが」「いせ」に続いて「いずも」が就航した。2万トン、ヘリコプター9機を同時に運用できる。F35も搭載可能だ。
 「いずも」の建造費は1200億円。潜水艦を製造しているのは、川﨑重工業と三菱重工業の二社のみ。大気に依存しないスターリングエンジンAIP発電システムによって、水中航続性能が大幅に向上した。
 日本の自衛隊を装備面から政府広報のように紹介した本です。
(2014年8月刊。1500円+税)

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