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カテゴリー: 生物

観察の記録、60年

カテゴリー:生物

著者  矢島 稔 、 出版  平凡社
 すごい写真のオンパレードです。その息を呑む美しさに圧倒されます。
 アオスジハエトリというクモがいる。昆虫を食べて生きている。このクモは、前脚をいかにもありの触覚のように動かして、ときどきアブラムシの背中をトントンと叩く。すると、アブラムシが尻から甘い液を分泌する。クモは、それを飲むのではなく、アリになりきって、アブラムシの回りを動きまわっている。そこへクロオオアリがやって来る。すると、クモは体をひるがえしてアリに飛びかかってきた体をおさえこむ。牙でかみついて、そのままクモの餌食になってしまう。
 クモはアブラムシのいる所にアリが集まってくるのを知っていて、アリそっくりの動きをして待っているのだ。この瞬間を写真に撮っているのですから、すごいものです。よほど辛抱強くなければなりません。
 クヌギがコナラの樹液を求めて昆虫たちが寄り集まる。だいたい勝つのは、カブトムシのオスで、次がクワガタのオス。カミキリの大型種は、脚が長いせいか、力負けしてしまう。意外に強いのは、スズメバチ。
樹液にはお酒というより、薄いビール程度のアルコール分が入っている。木から樹液がしみ出してくるのは、篩管に穴を開けるものがいるからのこと。それは、ボクトウガの幼虫である。
 ニホンミツバチが天敵であるスズメバチを取り囲んで熱死させる情景をとった写真もあります。これも、すごいと思いました。
 ニホンミツバチは、集団で体温を上げ、48度でスズメバチを殺す。自らの体温を限界ぎりぎりまで上げて相手を熱死させる。これは、いわば捨て身の戦法だ。この習性は、セイヨウミツバチにはない。おそらく、ニホンミツバチが長い間、同じ地域にスズメバチとともに生活してるために生まれた護身術であり、それが世代をこえて伝えられているということだ。
 驚異の写真といえば、カンガルーの袋のなかの、生まれたばかりの「胎児」の写真はすごいものです。「胎児」は、目が見えなくても、生まれ落ちたあと母親の乳首を目ざして、ついにたどり着くのです。感動しました。
 写真をめくるだけでも楽しい大自然のすばらしさを語る本です。
(2014年4月刊。1800円+税)

先生、ワラジムシが取っ組みあいのケンカをしています

カテゴリー:生物

著者  小林 朋道 、 出版  築地書館
 鳥取環境大学のコバヤシ教授による先生シリーズも、なんと8冊目です。すごいですね、驚嘆するばかりです。
 この書評コーナーでずっと紹介してきました。生き物観察を通じて生物の神秘を知るのは面白くもあり、人間の存在を深く考えさせられます。
 私が今回の本を読んでもっとも印象に残ったのは、ツバメにコバヤシ教授が何回も襲いかかられたというくだりです。親ツバメたちにとって、子どもを襲う危険な存在だったのでした。
 ツバメは、つがいで共同して巣作りをし、子育てする。つがいの2個体が相次いで巣に戻ってきたとき、巣づくりや子どもたちへの餌やりを先に終えたほうは、そのまま飛び立つのではなく、あとの個体が作業を終えるまで待っている。そして、あとの個体が作業を終えると、そのまま飛び立っていくのではなく、待っている相手の横に止まる。そして、互いの労をねぎらうかのように顔を見合わせて、それから一緒に飛び立つ。
 ええーっ、これって、夫婦のコミュニケーションが大切にされているっていうことですよね・・・。驚きました。
 コバヤシ教授が、親鳥のいない留守に巣に接近し、ヒナたちと目線を交わし、写真をとったころ、親鳥が巣に戻ってきた。ピチーッ、ピーッ、ピーッという甲高い、強烈な声がした。ヒナたちは一斉に身をかがめ、巣の奥に身を隠す。急いで巣から離れたコバヤシ教授の頭上を飛びかい、その数が次第に増えてきた。攻撃するように飛びかうツバメたちにはかなり迫力があった。
さすがのコバヤシ教授もタジタジになってしまったのです・・・。
 写真もたくさんあり、学生たちのさまざまな反応も面白おかしく紹介されていて、今日もコバヤシ教授は元気いっぱいなのでした。いつ読んでも面白いシリーズです。
(2014年5月刊。1600円+税)

ペンギン

カテゴリー:生物

著者  藤原 幸一 、 出版  講談社
 私は、ペンギンも大好きです。
 ええっ、ペンギンって鳥だったの、しかも大空を飛んでいたの・・・、と思ってしまいました。
 海の中をすいすいと気持ちよさそうに泳ぎ、陸の上で子育てするペンギンを、いつのまにか人間と同じ哺乳類だと勘違いしていたのでした。
 1億年前、ペンギンの祖先は大空を飛ぶ鳥だった。そして7000万年前に、ペンギンの祖先は空を飛ぶのをやめてしまった。空中より水中により長くいて、大好物の魚をとれるように進化したのだ。
 地球にすむペンギン19種のうち、南極を繁殖地とするペンギンは5種類だけ。赤道直下や、人間と共生して街に住む種もいる。森の中にすむペンギンもいる。ただし、北半球には人間が連れてきたもの以外には、いない。
夏はペンギンにとって衣替えの季節。羽毛が抜けかわる。その換羽のあいだは海に入れないので、ペンギンは絶食状態となって、体重も半減してしまう。ええーっ、そうなんですか。犬のようにはいかないのですね。
 ペンギンのオスとメスを見分けるのは、至難の業だ。混ざっていたら、判別不可能。つがいがそろって並んで初めて、オスとメスを判別できる。メスがオスよりひとまわり小さい。
 メスは主としてオキアミを食べ、オスは魚を多く食べる。
 メスは繁殖地から200キロ以上、オスは160キロもの旅をする。
 集団で一糸乱れぬ行動をするペンギンは、捕食者であるアザラシに襲われにくい。
アデリーペンギンにとって巣作りの材料となる小石は、マネー(貨幣)のような価値をもっている。
 小石のほしいメスは、独身オスに売春まがいの行為をして小石を手に入れる。連れあいのオスは、メスが小石を手に入れて帰ってくると大歓迎する。
 見ていて楽しくなるペンギンの写真がどっさりの写真集です。写真を撮る苦労は大変なものがあったことだと思います。ありがとうございました。
(2013年12月刊。2800円+税)

海への旅

カテゴリー:生物

著者  中村征夫 、 出版  クレヴィス
 海中の生物の、不思議で、素敵な生きざまを紹介する写真集です。
 海中に、なんとカラフルで、意表をつく形をした生き物がたくさんいることでしょうか・・・。
 ともかく圧倒されます。すごいです。
 世界各地の海に潜って、魚たちの見事な色と形と生きざまを紹介してくれる写真集です。
 これだけ生命の神秘を満載した写真集を2000円で手にして、何度でも見直すことができるなんて、本当に安いです。ありがたいことです。
 鮮やかな色と形のオンパレードです。朱色あり、黄色あり、紅白あり。量の形をしたもの、円塔形のもの。光るものも、さまざまです。いったい、何のために、どうやって光っているのか、不思議です。神秘にみちた世界が海中にもあるのですね・・・。
 天使のような可愛らしいクリオネ。プランクトンの一種です。その多くが他の生物に食べられてしまいます。しかし、それが、この生物界を底辺で支えているのです。
 イカは子を産むと、海底に沈み、他の生物に食べられてしまいます。
クマノミの顔のおかしさには、つい笑ってしまいます。ホヤの仲間は、はじめからマンガチックな笑い顔です。
 ウミムシは、まるで海中の宇宙船。どこの星から来たのでしょうか・・・。
 海中に潜り、海底を探しまわり、ときにはサメやトドと遭遇したり・・・。危険をものともせずに、海中写真をとり続ける勇気に対して、心から敬意を表します。
(2014年1月刊。2000円+税)

犬が私たちをパートナーに選んだわけ

カテゴリー:生物

著者  ジョン・ホーマンズ 、 出版  阪急コミュニケーションズ
 犬派の私ですから、このタイトルなら読まざるをえません。
 アメリカの犬は、1996年に5300万頭だったが、2010年には7700万頭になった。
 ペット用品は、年商380億ドルという一大産業に成長した。
飼い主のほとんどは、犬に話しかけることがある。81%は犬を家族の一員とみなしており、犬のなかには飼い主と同じベッドで寝る特権まで享受している。
犬は、人間がビクトリア時代に「発明」した文化の産物である。
 犬は全世界に3億頭いる。人間は70億人。牛と羊は、それぞれ13億頭いる。
 犬の経済的貢献度はほとんどゼロに等しい。犬の社会性は、人間自身の性癖を繁栄している可能性がある。
 仕事から帰ったときに出迎えてくれる犬がいるのは、誰にとってもうれしいものだ。
 犬が人間を注視することをいわない性質は、犬とオオカミの基本的な違いのひとつだ。
 犬には人間に敏感に反応する驚くべき能力がある。
 犬は、どんなときでも人間に支援されることをいとわない。その典型が、冷蔵庫をじっと見つめてから、飼い主の顔を振り返ること。
 犬は、基本的に自分で自分を家畜化していった。犬の家畜化が起きたのは、1万5000年前にすぎない。そして、犬の遺伝的多様性は東アジアでもっとも大きい。
 犬の最大の強みは、決して人間の助けを断らないことにある。
犬がこの瞬間を精一杯生きようとする姿は、人間の心を打たずにはおかない。どんなに困難な状況に置かれても、犬は快活さを失わず、新たな体験に自ら進んで飛び込んでいく。
 多くの遺跡で、犬は人間と同じように埋葬されており、犬が死後も「名誉人類」として扱われていたことを意味する。
犬をもう一度、飼ってみたいと思いつつ、旅行優先で断念している私でした。
(2014年2月刊。2500円+税)
 天神の映画館「KBCシネマ」で『チスル』をみました。「済洲島4.3事件」を映画化したものです。
 1948年4月3日、済洲島で300人ほどの武装隊が警察署(支所)を一斉攻撃してはじまった惨劇です。韓国軍がアメリカ軍をバックとしてゲリラ部隊の鎮圧作戦に乗り出し、以来、完了するまでの7年間に3万人の島民が犠牲になりました。その大半は政治やイデオロギーとは無縁の島民でした。済洲島から日本へ避難した人も多く、そのほとんどが大阪にたどり着いています。
 この映画では、3万人の虐殺場面が出てくることはほとんどありません。島内を逃げまとう島民の姿が静かに描かれ、鎮圧する側の部隊の兵士たちの葛藤も浮きぼりにされています。
 いまや年間観光客が1000万人をこえる済洲島ですが、65年前にこんな悲劇があったことを思い返すのは決して無意味なことではありません。
 情感あふれるシーンに見入るばかりでした。

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