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カテゴリー: 生物

世界は変形菌でいっぱいだ

カテゴリー:生物

著者 増井 真那 、 出版  朝日出版社
いやはや驚嘆しました。すごい少年がいます。藤井6段は15歳、中学生ですが、こちらも16歳です。変形菌と10年間いっしょに暮らしながら研究を続けています。
この研究は学会にも参加しているほど、本格的なものです。10年間の蓄積があり、写真でも紹介されていますが、見事なものです。ぜひ、あなたも、この本を買うか図書館で借りるかして、写真をじっくり眺めてみて下さい。変形菌の、たとえないようもない美しさに魅入られてしまうことでしょう。
著者は、変形菌の存在をにおいでも察知することができます。
土と水のにおいを足したような・・・。土から腐った感じを抜いて、キノコから酸っぱい感じを抜いて、混ぜたようなにおい・・・。とにかく、さわやかで、やさしいにおい。これって、本当にどんなにおいなんでしょうか、知りたいです。
著者の書斎の写真がありますが、まさに研究室です。理解ある両親の下で、研究一筋ということがよく分かります。なにしろ、この10年のあいだ、毎日欠かさず変形菌を育て、観察しているのです。
1日に2回チェックする。飼育するときの餌は、オートミール。添加物の一切入っていないもの。
変形体はキレイ好きなので、汚れたキッチンペーパーを取り替えてやる。キッチンペーパーは年間30ロールも使う。
変形体は温度に敏感で、急激な温度変化にさらさないようにする。
変形体とは、変形菌の一生のなかで、ネバネバのアメーバとして動き回る形態(段階)のこと。変形体は子実体(しじつたい)に変身する。もう餌は食べないし、自分から動くこともない。子実体の役割は、胞子を外の世界に飛ばして子孫を増やすこと。子実体一つひとつの中には無数の胞子が詰まっている。たくさんの子実体が並んでいる様子は見事です。
変形菌は世界で800種みつかっていて、そのうち半分の400種が日本でみつかっている。四季が豊かで、気候や風土のバリエーションが多く、そこに季節や台風が世界の胞子を運んでくるからだとみられている。

数をかぞえるクマ、サーフィンするヤギ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  ベリンダ・レシオ 、 出版  NHK出版
 とても面白い本です。人間だけが遊ぶ動物だ、なんて思っていましたが、今ではそんなことはないと思い直しています。
 人間だけが悲しいとか感情があり、仲間の死を悼むことができるというのも間違いなのです。ゾウが仲間の死を悼んで、なかなかその場を離れようとしないし、骨になっても戻ってくるというのはテレビの映像で知っていました。
 この本では、ヤギだって仲良しが死んだら、その死骸のそばから数日間は離れない。ゴリラもチンパンジーも静かに仲間の死骸のまわりに集まって、順番ににおいをかいだり、そっと触ったりする。それだけではない。カササギもカラスも友の死に「お葬式」をする。くちばしでそっと死骸をつついてみて、そのあと草を加えて戻ってきて死骸の横に置く。カラスも同じように草や小枝を順番に死骸にかぶせていく。
 ネズミは思いやりを行動で示す。仲間のネズミが苦しんでいるのを見たネズミは、目の前に好きなチョコレートがあっても、ひとまず仲間のネズミを助け出そうとする。これは思いやりの心があることを示すものとしか解せない。
 ネズミは、くすぐられるのが大好き。くすぐられると甲高い声でチュウチュウ鳴くが、これは喜んで笑っているということ。
 魚だって遊ぶ。水槽の水をこっそり飲みにくる猫と「待ちぶせごっこ」をする。猫が水槽のそばにくるまで魚は隠れていて、それから、いきなり水面まではねあがって、水を飲もうと思ってる猫を驚かせる。魚と猫は、このやりとりを何回も繰り返し、どちらも傷つくことはなかった。つまり、遊びとして楽しんでいた。
 サルは自分が公平に扱われないことに気づくと腹を立てる。
 イヌ科の習慣では、公平に遊ばない犬は、群れから追い出されることもある。公平に遊ぶ犬は群れの仲間と信頼の絆を深める。
 熊も大いに遊ぶ。そして、クマは数をかぞえることができる。いったいぜんたい、人間は万物の霊長だなんて、誰が言ったのでしょうか・・・。人間なんて、核のボタンを頭上にぶら下げていつ絶滅するかもわからないのに、ノー天気に自分だけ特別な存在だと空威張りしているだけの存在でしかないのですよね・・・。あなたも、ぜひご一読ください。
(2017年12月刊。1600円+税)

動物園ではたらく

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  小宮 輝之 、 出版  イースト新書
 上野動物園の元園長が動物園で働いた半生を振り返った興味深い新書です。
 ナチス・ドイツ支配下のワルシャワ動物園で迫害されるユダヤ人を脱出させていった勇気ある人々を描いた映画を見たばかりでした。動物園というところは、子どもに夢をもたせるばかりでなく、人助けもするところなのですね。
 この本は、動物園がなぜ人間社会に必要なのか、子どもも大人もみんなが行きたがるのかを考えさせてくれる本でもあります。
 動物園は楽しくなければいけない。私も本当にそう思います。子どもも大人も楽しめ、動物たちも生き生きと動きまわっている。そんな動物園であってほしいものです。私も旭川にある旭山動物園には2度行きましたが、圧倒されましたね。また機会があれば行ってみたいところです。
 飼育している野生動物が安心して暮らせるのは、動物たちが飼育係を自分の生きる環境として受け入れたとき。お客さんも楽しくを実現するには、動物が人前に出るのを嫌がったり隠れたりしてしまわないように、いろいろな工夫をしている。職員も楽しくするためには、自分が休日のとき、誰が世話をしても怖がったり暴れたりしないような飼育が必要になる。
動物園の役割の一つにひとの心を癒し笑顔にすることがあげられる。
 ゾウやチンパンジーの飼育係になれるかどうかは、動物たちが担当者として認めてくれるかどうかが大切。いつまでたっても認めてもらえない人もいる。
 ライオンには馬肉を中心として、1頭で1日に5~7キロのえさを与える。
飼育係の職業病の人は腰痛。えさを準備するときに重労働で腰に負担がかかる。また、長靴を常用するので水虫になりやすい。
 動物園内の樹木はエサにすることがあるので、害虫防除のために農薬は使えない。
熊にえさを与えるには、できるだけ同じ時間、決まった時間に熊舎に行く。いつもどおりの時間に飼育係が来ないと不安がる。いつもと違うことをするのは、絶対に避ける。
 動物たちにとって、夕方から夜、そして夜明けを迎えて朝になる。人のいない16時間こそ、マイペースで過ごせる大切な時間なのだ。
 人工保育で育てた動物は、成長してからも人間を恐れない。しかし、動物同士で溶け込めず、繁殖行動がとれない危険がある。
野性のゴリラは群れで暮らし、群れのなかで子は育つ。子が1歳ころ、母親は子育てを父親にまかせる。ゴリラの子は父親に遊んでもらいながら、ゴリラ社会のマナーやルールを学んで成長する。
飼育係は危険と隣りあわせの仕事でもあります。私の小学生のころ、動物園からトラが逃げ出し、そのとき、飼育係と見物客が死んだ(殺された)という事件が起きて大騒動になったことがあります。見物客が便所のなかに隠れ、トラが扉をガリガリひっかいていたというのです。生きた心地はしなかったでしょうね・・・。
昔、上野動物園にパンダが来たばかりのころ、子どもを連れて見物に行きましたが、寝ている姿がちらっと見えただけでした。パンダを間近に見たいなら、やっぱり白浜のアドベンチャーパークですね。読んで楽しく、ためにもなる動物園の話です。
 (2017年11月刊。880円+税)

アリ!なんであんたはそうなのか

カテゴリー:生物

著者 尾崎 まみこ 、 出版  化学同人
子どものころから、地上を歩むアリをじっと観察していて、今ではアリと会話までしている著者による面白いアリの本です。
迷子にならず自分の巣に帰るアリ。クロシジミの幼虫にせっせと餌を運ぶアリ。体臭の違いによって敵か味方かを識別しているアリ。働かないアリは、何が違うのか、、、。
アリがどれだけの重さを背負って運べるのか、実験してみた。アリの背中(胸部背面)は、ヒトコブラクダのように盛り上がっていて、平坦ではない。そのうえ、その大きさと形は一定ではなく、きわめて個性的。そこで、ハンダを溶かして、一頭一頭のアリの背中の起伏にあわせた形の荷物をつくった。10ミリグラム、20ミリグラム、40ミリグラムと過重を増やしていく。体重と同程度になってもアリは「平気で」歩いた。しかし、力自慢のアリであっても重たいものは重たいと感じ、歩き方を変えていることが分かった。
クロオオアリの結婚飛行。初夏の5月6月、少し湿度の高い、風のない穏やかな日に一斉に穴から空中へ飛び立つ。早すぎても遅すぎても台なしなのだが、どうやってその同期性を確保しているのか、、、、。何か通信手段をもっているのか、謎のままである。
一斉にオスとメス(女王)のアリが飛び立ち、空中で交尾する。そして、交尾した女王アリは天からおりてきて地面にもぐり、たったひとりで営巣をはじめる。オスのアリは、一人で生きていくことは出来ずに死んでいく。
アリの社会は巣が基本単位。働きアリどうしの仲間づきあいのルールは、巣が同じなら、みんなが共通にもっている体臭による。
働かない働きアリは、すべてにものぐさなので、わざと体表の炭化水素パターンの異なる敵を連れて行き出会わせても、攻撃しようともしない。働かない働きアリの脳の中では、働く働きアリに比べてオクトパミンという神経伝達物質が増えていることが最近判明した。脳内にオクトパミンが多いとやる気がなくなるということはザリガニを調べて実証できた。
アリの小さな脳から脳内物質を取り出して研究するなんて、本当に学者は大変ですよね。
(2017年5月刊。3000円+税)

にっぽんスズメ散歩

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ポンプラボ、 出版  カンゼン
 身近なスズメたちが写真に生き生きとうつっています。
 驚くのは、そのスズメを固体識別として、名前までつけて観察していることです。
 よほどじっくり、そして長期間見ていないと、とても出来ませんよね。
 毎日観察していると、スズメの個性も見えてくる。
 オデキちゃんは、くちばしの上にオデキがある。性格は穏やかでなぜか高いところが好き。ケンカは苦手で、仲間たちの周りをいつも走り回っている。
 ゲンちゃんは元気一杯に生きている。右足の先に障害があり、いつもべたんと座っている。
 シロマユ君。左目の上に眉毛のように白い筋がある。いつも仲間を一緒で絶えず動き回っていて、カメラを向けていると、割り込んでまで写ろうとする。
 ボサくん。ボサボサの毛をしていた。臆病で仲間に食べ物をとられることが多い。
スズメを写真にとるとき、人の気配があると近くに来てくれないので、窓ガラスにマジックミラーフィルムを貼って、ことらの気配をさとられないようにする。
 スズメは聖書にも登場している。身近な鳥の代表選手だった。
 大きな公園のスズメは人間が来てもあまり怖がらず、むしろ人間を見ると近寄ってくるのもいる。なので、スズメをよく観察したいのなら公園に行くのは一番の近道。
 スズメのドアップで鮮明な写真がたっぷりみられる、楽しい写真集です。
 
(2017年7刊。1400円+税)

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